メジロマックイーンとお兄様と愉快な元極道たち   作:ライステイオー

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徹夜明けって結構しんどいですよね(唐突)さてこの話予定だと30話で終わらせようか考えてたんですけど書きたいことやりたいこと増えてきてどうも30話で終わりそうにないんですよね...とりあえず13話目。どうぞ。


地獄のレビュー

パドック入り前の控室。私は椅子に座っている。1着を取れ。じゃなきゃ明日からトレーニングの内容を強化する。トレーナーにそう言われた。体からは冷や汗が止まらない。このレースで私はケガをするだろう。入学してからずっと無理な量のトレーニングをやらされてきた。このチームに入ってから休みをもらえたことは一度もない。最初はいいチームだと思った。そこそこに成績のある先輩たちはたくさん排出していて、私もここに入ればもっと早くなれると思っていた。けど違った。あくまでも先輩たちの成績は飾りのためであって、このチームの本来の目的は賭け事だったのだ。私は気づくのが遅すぎた。気づいたときにはもう逃げたくても逃げられなかった。そのチームは私たちを強制的に過酷なトレーニングをさせて疲労がピークに達したあたりでレースに出させる。そこでケガするかしないかでかけられる。チームに入るには入団届を出す必要があるのだが、言葉巧みに騙された私はまんまと書いた届をトレーナーに預けてしまった。きっと提出はしていないだろう。ケガしたこの大半は二度と走れなくなる。けがせずに走った子は1位を取ればまたトレーニングを課せられる。1位以下の子はもっとひどい量のトレーニングをさせられる。告発しようとしても学園側は飾りの方のチームしか見ないし、警察に行ってももみ消される。告発がばれたらそれこそ死よりも怖い結末が待っている...

 

「走りたくない... 走りたくないよ...」

 

そんな言葉を不意に口にする。けど走らないとよりきつい地獄が待っている。私伊選択肢などない。勝つか死ぬかしかない。係員がパドックに行くよう指示する。足がすごい重い。体全体が動くことを拒否している。けど無理して体を引っ張る。パドックまでの距離が長い。その時間が苦痛に感じる。パドックに出るととある人に目が行く。顔に傷のある男性だ。あぁ、彼がこの状況を救ってくれないだろうか。そう思って見つめ返す。神様、どうか私たちを救ってください...

 

 

パドックに出てくるウマ娘たちをずっと見る。今のところ全員なんも問題がなさそうな様子だ。

 

「ほんとに今日あるのかよ。真島の兄さん。」

 

「なんや、ワシの情報が信用できないっちゅうんか?」

 

兄さんが突っかかる。ここまでは日常茶飯事である。

 

「どっちにしても今の俺が信用できるのは兄さんの情報とウマ娘たちだけだ。」

 

そういうと兄さんは少し黙って正面のパドックに顔を移す。

 

「とにかく、今はウマ娘たちに集中するで。」

 

「あぁ。っと、次が最後か。」

 

最後のウマ娘がパドックに現れる。少し違和感を覚える。オレンジの髪はいたって普通のように見えるが体は服に見合わないほど痩せている。顔には生気が底をついているような感じもした。

 

「なんや、あの子だいぶやつれてへんか?」

 

少し黙ってその子を見てこういう。

 

「多分あの子だ。」

 

「ほーん。まぁお前さんが言うのであれば間違いはないな。」

 

なんてボロボロの体だ。こんな奴が学園にいるとは思わなかった。というかなぜ気づかなかったのだろうか。制服のおかげで少しは健全そうに見えたからか。正確にはわからないがおそらく栄養不足ではあるだろう。内臓器官へのダメージもあるかもしれない。ふと注意深く見ているとその子が見てくる。どこかとにかく楽になりたいというような顔をしていた。俺はそいつを少し見続けてコースの方を見る。

 

「兄さん。行こう。」

 

「なんや、もうええのか。」

 

「あの様子だと事故る可能性はかなり高いよ。さっさと最終コーナーあたりで場所とっておきたい。行こう。」

 

「はいはい、せかすなや。」

 

・・・

 

「さて、今日はこけてくれますかね。」

 

恰幅のよい男がワインを片手にテレビを見る。そこには数人の男がテーブルを囲んでいた。

 

「前々回からずっと外れてますからな。今日こそはこけてくれないと困るってもんですな。」

 

「えぇ、ところで、メジロ家の令嬢を今度の賭けに出すとはほんとですかな?」

 

「はい。そろそろ疲労もピークに達してると思いますので、明日は忙しくなりますよ。」

 

 

レースが始まって少し経つ。例オレンジの子は大逃げで最初からすごい速度で走っていた。

 

「なんや、お前の言うてた子、序盤からすごいペースやな。」

 

オレンジの髪の子はレース序盤から首位を取っている。そのペースはとても早く、果たして走り切れるのかと思うくらいだ。

 

「早すぎる。いくら2400mの良馬場とは言えこれじゃあ後でスタミナ切れ起こすぞ。」

 

そういってレースを見物していると中盤、予想通りにその子のペースが落ちていった。息は途切れ途切れになってフォームは崩れかけている。

 

「ほらやっぱり。どう走ってもあの走り方じゃあ並大抵のウマ娘はスタミナを切らす。」

 

あきれ顔でそういう。俺はずっとその子を見ていてわかった。序盤よりも走りのフォームが少しずれてきている。

 

「あれ怪しいぞ。」

 

そういって身構える。第3コーナー抜けて第4コーナーに入る。

 

 

ハァハァハァハァ... 息が途切れる。足に力が入りづらくなる。まだ半分しか走ってないのに体力が切れ始める。序盤で作った差も徐々に縮まっていく。第3コーナーで余裕は完全になくなった。

 

「走らなきゃ。走らなきゃ。」

 

体は完全にボロボロだ。けど走らないともっとひどいことになる。足を出さないと。第4コーナー終わり、内側から一人に抜かれたのをきっかけに私のフォームは完璧に崩れた。そして少しでも風を受けまいと戦闘の子の真後ろに着いて走る。すると足が滑った。

 

「あ、これ...」

 

そのとたん私は意識を失った。

 




オレンジの髪って誰でしょうか。マヤノかな?テイエムかな?フクキタルかな?さぁ次の話はどうなるでしょう。

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