メジロマックイーンとお兄様と愉快な元極道たち 作:ライステイオー
「なんやまずくないか?あの子抜かれてから完璧に走りが劣悪になったで。」
兄さんが警戒する。その子の走りは後ろの子一人が先頭を取った瞬間ハチャメチャになった。とにかくもう前に出ることだけを考えているような走りだ。
「兄さん。あと任せるわ。」
「なんやて?」
俺は音もなく飛び立つ。例の子はおそらくスリップストリームを受けようとして戦闘の子の真後ろに着く。スリップストリームは空気抵抗の影響を大きく減らすことができ、カーレースでも頻繁に行われるテクニックだがウマ娘たちの場合は少し変わる。先頭を走る子の後ろを走るため馬場状態の悪いところを走る可能性ができるのだ。運が悪ければ転倒してしまう可能性もある。
「クソ、高く飛び過ぎた。頼むから持ってくれよ。」
そう思ってるとあの子の姿勢がより悪くなる。
「間に合わねぇ。一か八か・・・全力で走って助けに行けられるか賭けるか。」
そういったとたん地面に着く。瞬間地面をける。それと同時にあの子は足を滑らせた。距離は300mあるかないか。全身全霊を足にそそぐ。状態の悪い芝など関係ない。どんどん蹴り続ける。加速はどんどん続く。あの子の顔と地面との距離が1㎜になったあたりで俺は両手をあの子の良わき腹に潜り込ませ、再度両足で地面をける。すると地面が音を立てて土埃を舞う姿が見えた。少しして地面に着地する。女の子は気絶したままだ。間近で見てこの子が余計ひどい状態だってのがわかる。腕は骨の形がわかるほどに痩せており、足には小さな傷跡が無数にある。お腹もろっ骨がわかりかけている。端的に見て栄養失調に近い状態だと判断する。そして呼吸の仕方がおかしいのに気づく。吐く量と吸う量が釣り合わないのだ。
「救急車待ってたら危険だな。仕方ない。」
俺は女の子をおんぶで背負う。そして
「タキオンのやつに任せるしかないか。」
そういった瞬間にまた飛び立つ。ここからトレセン学園まで2Km。全力で走って6分ってところだろう。地表に着地して同時に走り始める。車道だろうが歩道だろうが関係なく走る。止まる車の横をすり抜け、右左折する車は飛び越える。そうこうしているうちに学園へ着く。学園の塀を思いっきり飛び越し、ついでに校舎も飛び越える。着地したときにはブラックウィドウの部室だった。
「タキオン!」
大声で呼びつつドアを開ける。タキオンと親父さん、シチーはびっくりした顔でこっちを見る。
「お前、その子どうした。」
「事情は後で話す。タキオン。こいつの容態を見てくれ。」
そういって背負っていた女の子を下す。タキオンはすぐに近寄り、容態を確認する。
「極度の疲労状態と過呼吸気味だ。医務室のボンベを持ってきてくれたまえ。酸素が足りないんだ。それで呼吸はどうにかなる。シチー君は救急車を呼んでくれ。一応のためにね。」
わかったというと同時に部室を出っていった。タキオンは運んできた子を見る。
「それにしても随分と痩せこけてるな。素人でもこんな状態で走ろうとは思わない。これはいったい...」
「あいつ、今度は何に首突っ込んだんだよ...」
酸素ボンベを使って呼吸を正した後、その子の呼吸は落ち着いた。柔軟用のマットの上に寝かせ、タオルをかける。
「モルモット実君。こればかりは説明が必要だよ。」
タキオンが解説を要求する。俺はタキオンを見てこういう。
「ここではしゃべられない。とりあえずこの子を病院に連れて行ってから俺の家に向かうぞ。そこで話す。親父、俺は救急車に乗るからこいつら乗せるために車出してくれ。」
「あ、あぁ...」
救急車が来てその子を載せる。俺は事前にマックイーンに電話してメジロ家お抱えの病院に準備してもらっていたため、救急隊員にそこに向かうようお願いする。病院に搬送される頃にはオレンジ髪の子はすでに状態は良好だったため、意識はまだ回復していないが脳への損傷もないためタキオンの監視付きで特別に帰宅を許された。
そしてシチー、タキオン、俺、親父さん、オレンジの髪の子で俺の家に向かう。
「おかえりなさい。すでにベッドは準備しています。その子が例の子ですわね。」
ドアを開くとマックイーンが迎えに来てくれた。けど抱えているオレンジの子の見るなり察するのはさすがの頭の良さだ。
「ありがとう。マックイーンはこいつを見ていてくれないか?俺は話すことがある。」
マックイーンは少し黙った後に承諾する。
「わかりました。」
「おめぇマックイーンと同棲してるのかよ。さすがにそれはやばくねぇか。」
親父さんはうちに来て早速そういう。俺は頭を抱えながらも答える。
「俺も正直寮生活してほしいとは思ってるよ。けどもうメジロ家の長でさえ許可しちゃってる状況だしな... マックイーンもこれだし...」
「実の事情は置いといて、とりあえず真島兄さんがこっちに来るまで待てばいいんだね。」
シチーが問いかける。正直兄さんがいなくても説明できるだろうが、兄さんに質問したいところもある。だからまとめてやりたいので待つ。
「そういえば、モルモット実君の血液DNAを解析が終わったよ。」
「なんだよその芸名みたいな名前。で、どうだった。」
「私の予想以上だったよ。まさか遺伝子に人間とウマ娘の両方が入っているとは。これは発表したらノーベル賞者だった。」
「発表するなよ。」
「はいはい。ただ、君の上半身が下半身と違って貧弱なのはまだ原因がわからない。こればかりはもう少し待ってくれ。」
「まぁ、上半身が使えなくたって足が使えりゃ何とでもなる。」
そう話していると兄さんが家に来た。開口一番こういった。
「とりあえずどこまで話したんや。」
「何も話していない。兄さんが来てから言おうと思ってたんだ。」
「そか。じゃあ始めようか。」
そして俺と兄さんはすべて話した。説明を終えて神妙な顔で聞いていた親父さんが言い始める。
「実、お前はどうしたいんだ。」
俺は少し無言になる。けどすぐに
「わかんね。けど正直できることなら救いたい。」
「贖罪でか。」
「贖罪ね... 本能的にはそうなのかもしんないけど、正直今は正義感ぶってるって感じのほうが正しいわ。」
親父さんは黙りこくるがしばらくすると顔を上げてこういった。
「しゃあねぇ。真島。」
「なんや。」
「こいつのこと頼むぞ。」
「何が頼むぞや。もうこいつは一人で何でもできるんや。喧嘩も救済も。」
「お前がそういうならいいか。とりあえず、あの子どうするんだ。」
「仕方ないから今日はここに置いて俺が看病しとく。マックイーンの練習メニューは親父、わかってるよな?」
「併せだけでいいのか?」
「今あいつに必要なのは経験値だ。それならシチーとあいつだけで行けるだろう。」
「わかった。しっかり看病しとけ。それじゃあみんな帰るぞ。」
そういってタキオンを除くみんなが帰っていった。俺はあの子がおかれている寝室へ向かう。タキオンはとりあえず起きたら教えてくれとだけ言って仮眠を取り始めた。俺は寝室に向かった。寝室ではマックイーンが星座で例の子を看ていてくれていた。
「実お兄様、この子は...」
「いわゆるブラックトレーナーの被害者ってところだ。」
「ブラックトレーナーですか。ちなみにチーム名は?」
「ダービートレノ。」
「ダービートレノ... あぁ、あそこですか。」
「知ってるのか?」
「実は入学前にスカウトされてたんです。」
「ほーん。で、どうしたんだ?」
「いろいろ見てから決めますと言って蹴らせていただきましたわ。それにしてもすごいしつこかったですわよ。うちのチームに入れば君は無敗の3冠を目指せるとか。ほかのチームは君を3冠にさえ立たせられないとか、とにかく私をチームに入れようとしてましたから。」
「まぁよかったわ。マックイーンがこっちに来てくれて。」
「えぇ、一歩間違えていたらこの子みたいに...」
「とにかくあとは俺が見るからマックイーンは寝な。あ、でも布団...」
「ベッドじゃなくても構いません。わかりましたわ。それではお言葉に甘えて」
そういうとマックイーンは布団に潜り込む。
「実お兄様。覚えていますか?私が熱を出して寝込んでるときのこと。」
「そういえばそうだったな。病弱のお前が心配でよくそばにいてた。俺も風邪ひいてたのにお前が寝込んでるって聞いて無理にお前の横に引っ付いて、夕方になっても隣にいるって言って動かなくて結局俺のかあさんに引きずられて帰っていったんだよな。」
「そうですね...」
マックイーンは少し暗い顔をする。そして俺に問いかける。
「お兄様。また無理していませんか?私はもうお兄様に無理はしてほしくないです...」
俺は少し考えたうえでこういった。
「今までのような無理はしていないな。マックイーン。お前は心配するな。俺は大丈夫だ。今度は必ずお前の隣にいる。だから安心して寝ろ。明日からのトレーニングに響く。」
マックイーンは安堵したのか少し顔を緩めて目を閉じる。
「えぇ、おやすみなさい。」
「あぁ、お休み。」
最後少ししっとりでしたね。さぁいつになったら甘々展開は訪れるのでしょうか・・・