メジロマックイーンとお兄様と愉快な元極道たち 作:ライステイオー
「約束だよ!実お兄様!」
「うん!」
守れなかった、約束を... 俺と彼女には立場も位も生まれも違いすぎる... 彼女の横に立つのは俺ではない... もっと最適な人がいる... 夢ならばどれほどよかっただろう。いまだに彼女のことを夢に見る。うちは父と母と俺の3人家族だった。決して裕福ではなかったが、父の趣味でもある旅行には頻繁にいっていた。かといって遊園地に行ったりなどではなく、常に親が行きたいところだった。だけど俺は暇ではなかった。そこで起きたものや見たもの。感じたものをすべて彼女に伝えられたからだ。彼女は格式高い家に生まれた。幼いころから病弱で走り回って遊んでは熱を出すほどだった。それを彼女の執事から聞いたとき、俺はおとなしく遊べる遊びを考えた。それがこれだ。いろいろと話すものは旅行でできた。俺は一生懸命景色を見たりして彼女に言えるようにした、けど...
ある日を境に俺の人生は高空から落下して地面に衝突するかのようにどん底に落ちた。
その日、うちの家族は事故にあった。反対車線で前の車を抜こうとしたトラックと正面衝突したのだ。俺は顔に深い傷を負った。眼球に傷がつき、右目の視力は失われた。そして両親も... ここから俺の人生は一気に黒くなった。両親を失ったことで親戚の家に引っ越すことになったし、それを彼女に伝えられることはできなかった。そして大人の都合で親戚を転々を移された。それは中学になるまで続いた。名前を知る頃には転校だったために2回目の転校の時くらいから俺は友達を作るのをやめた。もともと物静かだったし、顔に大きな傷があるのは子供なら少しでも怖がるだろう。それが拍車となっていじめに発展した。やけくそになった。いじめてきた相手を殴り返そうとした。けど複数人に囲まれて勝てるような喧嘩上手ではなかった。俺は考えた。どうしたら勝てるか、そしてあるドキュメンタリーを聞いた。
そこにはなぜゼロ戦が徐々に弱くなったのか。ゼロ戦は登場した当初は無敵だった。軽量な機体と大きな翼からくる高い機動性、当時としては強力な機関砲を持って敵機を制した。だが、戦争が続くにつれアメリカは大馬力のエンジンを搭載した戦闘機を開発した。ゼロ戦はタイプによって違うが、最高速度は大体500Km後半程度だ。だがアメリカの戦闘機は早いやつで700Kmを超える。そいつは後半から日本機と相まみえたがそれ以前から大型エンジンを搭載した戦闘機がゼロ戦を蹂躙していた。
そしてそれを見て俺は感じた。戦いはすべて速度で決まると。俺は鍛錬した。早くなれるなら何でもした。筋トレ、ランニング、食事、幸いそのころにはもう誰も何も言わなくなってきていた。里親も過去一で俺のことを気にせず、食事はこっちでとるから金だけおいてくれといったらそうしてくれた。そして俺は食生活をも利用して足を鍛え続け、ある程度筋肉が発達したところで反撃を開始した。その日にいじめられ始めたところを仕掛け、攻撃に転じた。とにかく足を使った攻撃を行い、蹴り、タックル。かかと落とし。思いついた技はすべてだし、相手を半殺しにまで追い詰めた。もうここで今までの自分はいなくなったと感じた。死んだ父親は暴力はいけない、守るためだけに使えと言っていたが、これは過剰だった。でも後悔はしていなかった。だがそれをしたことによって相手は後遺症を残し、俺は少年院入りになった。そこでも同じことをした。だがそこはもっとひどかった。相手から売られた喧嘩を買って喧嘩すれば懲罰房入り、何か問題を起こしたら懲罰房行き。中学生になって出所するころには心は荒み切った。もう誰も親戚は俺を養おうとしなかった。そりゃそうだ、喧嘩が日常的なものを誰が欲しがる。それで刑務官のつてである男の家に養われることになった。その男は独身で、全体的に鍛えられた筋肉をしていた。早速俺は家を出て一人で街を歩いていた。そして朝になって帰ってくると男に殴られた。俺は蹴り返そうとしたが受け止められた。初めてだった、受け止められたのは。その後ぼこぼこに殴られた。だが殴る痛みよりも心の痛みの方が強く出た。
俺はその日からまじめに学校に行くようになり、その男を親父さんというようになった。だが学校の先生とは完全に相性が悪かった。特に年寄りの女性先生は俺が少年院入りしているのを悪く思ったのか、何か俺の周りで問題が起きれば俺のせいにし始めた。そのうち俺は学校に行きたくなくなった。学校に行きたくないことをおやじに説明もした。すると親父さんは仕事場に連れて行ってくれた。そこはトレセン学院。親父さんはそこでチームブラックウィドウのトレーナーをしていた。当時はレースに出るのにチーム人数の制限はなく、親父さんのチームには2,3人しかいなかった。だがその2人は学園内最速の異名を持っていた。学校に行きたくなかった俺はトレーナーとして働く親父さんの手伝いをした。親父さんは別に学校に行かないことを咎めなかった。俺は見ていて思った。みんな早いと。そこで俺は試しに追いかけてもいいかと親父さんに聞いた。親父さんは潔く許可した。そこで併せをしている二人を追いかけるようになった。最初は追いかけても追いつかなかったが、毎日追いかけていると徐々についていけるようになった。人間がウマ娘に追随できるという話は聞いたことがない。と親父さんは言った。そしてその噂は広まり、いろいろなウマ娘から併せをお願いされた。そこで俺は気づいた。ウマ娘には4通りの走り方があるって。試しにすべての走り方を真似してみた。
一つは逃げ、最初からフルで走るというもので、走ることにのみ集中できるだが、消費する体力と足が半端ではなかった。
次に先行、体力と足はそこまでだったが考えながら走るのでそこそこ疲れた。
その次に差し、体力の消費は一番少なかったがブロックされたら終わりだった。
そして最後に追い込みだった。これは一番楽しかった。一か八かの賭けのような走り方だったが、集団を一気に追い抜くのはどこか楽しかった。
そしてこの日に思った。トレーナーの仕事をしてみたい。親父さんにその相談もした。親父さんは喜んだ。そのためには学校に行けと言われた。学校で学問を学んで来いと。俺は中学3年から一生懸命学校にいった。そのころには相性が悪かった先生はいなくなっており、多少の環境は改善された。平日は学校、土日は親父さんの手伝いをした。学校では特にしゃべる人もいなかったから昼休みにトレーナー試験の勉強も始めた。高校に入って初めて友達ができた。そいつもトレセン学園で教員をしたいといっていた。俺らはウマが合った。高校2年でトゥインクルでのトレーナー資格を得た。もちろんニュースになった。なんせ大学も言っていない高校生が資格を取得できたのは大きかった。それを見たトレセン学園理事長は短大を卒業し次第うちにこいと言ってきた。もちろん二つ返事で快諾し俺はわざとFランクの大学を選び、時間に余裕を生ませた。その時間はすべてバイトや親父さんの手伝いをした。そして今日。俺はトレーナー補佐として親父さんのサブトレーナーとして正式に採用される。
「お前もついにトレーナーになったかぁ。」
親父さんは運転しながら物思いにふける。
「出会った当初はこうなるとは思わなかった。てっきりお前は格闘技の世界で活躍するかと思っていた。」
「親父さん。あの時親父さんに拾われなければ俺は人としてやってはいけないことをやっていたかもしれない... 親父さんには感謝している。」
「なんだよ。急にかしこまって。」
親父さんは照れる。けどその顔はどこか懐かしがっていた。
「それで?今日からお前は正式なトレーナーとなるわけだが... どこのチームで研修を受けようか考えてるのか?」
「もちろん親父さんのチー「やめとけ。」...え?」
唖然とする。てっきり俺はそのつもりだった。親父さんのチームは俺が継ぐと思っていたからだ。親父さんは真顔になっていた。そしてこういう。
「俺のチームで学べることは何もない。だから別のチームに行け。」
「...親父さん。トレーナーのウマ娘育成論は戦術、鍛錬、すべて徹底管理によるものだけれど、周りを見てもそれは半分間違っていると思う。」
「...どういうことだよ。」
「ウマ娘によってこの育成論は合うわないかもって思ってるんだ。現に他チームで活躍できずにチームを抜けたウマ娘が親父さんのチームに来たら活躍できたって話は多かっただろ?親父さんのチームの育成論は基本ウマ娘の考えを尊重する。どう戦いたい、このレースに出たい。この走りを真似してみたい。中には自分は走らず、研究に専念していうやつもいる。俺は少なくともロボットのようなウマ娘は作りたくない。あくまでもウマ娘たちがレースを楽しめるチームがいいんだ。だから頼む親父さん。俺を親父さんのブラックウィドウで研修させてくれ。」
「...ふふふ。」
親父さんの強張った顔がゆるばむ。するとすぐに大声で笑い始めた。
「ははははははははは!!いうじゃねぇかよ実。わかった。いいだろう。けど条件がある。」
「条件?なんだよ。」
「今度入ってくるウマ娘。俺が指名したやつで3冠を達成させろ。」
「...なるほどな。わかった。3冠だろうが6冠だろうが達成させてやる。」
親父は笑顔のまま車を動かす。なんてことない、やることは今までやってきたことと変わらないから、当時はそう思ってた...