メジロマックイーンとお兄様と愉快な元極道たち 作:ライステイオー
家に向かう途中、俺は明日の朝ごはんを買う。夜ご飯は食べない。時間対効果で考えたら別のことにあてた方がいいと最近わかったからだ。さて明日は何を食べようと考えていると一人の男から声をかけられる。
「もしや・・・もしや実様ではありませぬか!!」
聞こえた方に顔を向ける。そこには知った顔がいた。そう、あいつの執事である爺やさんだった。
「爺や...さん?爺やさんか!」
「えぇそうです!大きくなられましたねぇ。」
「爺やさんは変わってないなぁ。10年ぶりか?」
「えぇ、あの時は別れも言われずに去られてしまわれましたから、探しておりました。」
「ごめんな爺やさん。俺も言う暇がなかったんだ。」
そういうと爺やさんは俺の胸元を見る。胸元には取り忘れてたサブトレーナーのバッジをつけている。爺やさんはそれに気づいたのだ。
「もしかして・・・トレセン学園のサブトレーナーに・・・」
「今日からな。といってもトレセン学園自体は中学のころから入り浸ってたから大して変わらないんだけどね。」
「実さま。その... マックイーンお嬢様にはお会いになられましたか?」
「あいつにはあったよ、むしろあいつからあってきた。けど俺は知らないふりをしたよ。」
「そんな、どうして...」
爺やさんは驚きのあまり言葉を失っていた。それもそうだ。あの頃の俺らはとても仲が良かった。こんな結果なんて誰も思いもしなかっただろう。
「爺やさん、俺はもうあいつの隣に立つ資格はないんだ。」
「お聞かせ願います。この10年間。実様に何が起きたのかを。」
「いいけど、爺やさん仕事は・・・」
「実は軽い肺炎を患いまして、完治はしましたが大事をとって1週間休みをいただいております故。」
「・・・わかった。近くに準喫茶がある。そこで話そう。」
そうして俺は爺やさんに今までのことを教えた。親族を転々とさせられたこと、いじめっ子を半殺しにして後遺症を残させたこと。少年院のこと。親父さんのこと。資格試験のこと。すべて話した。途中から爺やさんは泣いていた。そりゃそうだろう。俺らはまるで孫のように扱ってくれた。そんな孫と大差ない子がひどい仕打ちを受けていたことを知ったら誰も涙をこらえられないだろう。
「そんなことが...」
「爺やさん。今は俺は満たされているよ。親父さんという尊敬すべき人やチームのこと。今やってる仕事とか充実した人生を送っている。」
「さようですか... ですが実様、お嬢様のことをどうかお願いします。」
爺やさんは深々と頭を下げる。
「爺やさん、いっただろ?俺はもう犯罪者。名家であるメジロ家の令嬢にかかわることはダメなんだ。できないんだ。」
「実様。それでもです。今マックイーン様は誰が見てもわかるほど無理をしておられます。私たちが少しお休みになられてもと言われても無理をおやめになられないのです。お嬢様にはメジロ家の悲願である天皇賞を3代で手に入れるという大役を背負われています。それに以前テレビで実様がトレセン学園のトレーナー資格試験に合格したというニュースを見られたようで。一生懸命頑張って成果を上げて実様のチームに入るといっておられました。実さま。使用人である私がお願いするなど図々しいかと思われますが、お願いします。マックイーンお嬢様をどうか...」
「爺やさん。頭を上げてくれ。俺はもう爺やさんが頭を下げてまで必要とされるような人じゃ「そんなわけありませぬ!」」バンッ
爺やさんがテーブルをたたく。
「実様!どうしてそこまで自分を卑下なされるのですか!お嬢様の隣に立てられるのは昔も今も実様しかおりませぬ!どうか自分を自虐されることはおやめくださいませ!」
「爺やさん...」
「すみません。つい声を荒げてしまいました。」
「いや、いいんだ。どっちにしても俺には無理だ。経験値も足りない。マックイーンはトレーナーたちでも名が知れているからもっといいところがあるだろう。そこに入ったほうがあいつは心理的にも楽になれる。だからあきらめてくれ...」
そういって伝票をとって店を出る。帰宅して仕事をする。仕事中も爺やさんのあの荒げた声を忘れることはできず、いつもより集中力が落ちている。
「俺にできることなんてない、きっと俺が犯した過ちを知れば。」
そして思いつく。俺の過去をあいつに話せばあいつは幻滅して、あきらめてくれるだろう。
そうしよう。それが一番なんだ。きっと...
果たしてマックイーンは主人公の過去を聞いてどう思うのでしょうか。というか主人公卑屈すぎませんか?