メジロマックイーンとお兄様と愉快な元極道たち 作:ライステイオー
「小学生のころに3人半殺し、中学で5人。全員後遺症を残した。」
「ってことあがったんだよトレーナー!あれほんとなの!?」
部室でテイオーがトレーナーに質問攻めをしていた。テイオーはマックイーンに実が屋上へ来てほしいと言ってると伝えた後、ドア越しに話を聞いていたのだ。テイオーの質問を聞いて親父さんは少しの間沈黙を守る。そして小さな声でこういう。
「あいつ大事なところ全部抜いて言いやがったのか。」
「大事なところ、ですか?」
スズカが聞く。顔を上げた親父さんは瞑っていた目を開く。そして言った。
「確かにあいつは小中で8人半殺しにした。けどそれは仕方なかったことなんだ。」
「ど、どういうこと?」
ライスが不審がる。親父さんは仕方なしに説明を始めた。
「小学校の時、あいつはいじめられていた。それをやり返すために反撃した結果半殺しにしてしまったらしい。もとから鍛えていたけど程度がわかんなかったんだろう。けど中学はほんとにあいつに否はない。いじめられていたやつを助けようとしたらそいつらは全員刃物を出してきたからあいつは手加減しようがなかったんだ。5対1で自らを守るためにはそうするしかなかった...」
「じゃあなんで実さんはそのことを...」
「おそらく...自分に負い目を持ってるんだろうな。あいつは少し自虐的なところがあるし、自分を追い詰めすぎる性格をしているんだ。メジロ家はウマ娘界隈でも名を知らない人はいないほどの名家だ。そんな家の娘と犯罪者である自分が釣り合うわけがないとでも思ってるんだろう。馬鹿な奴め。」
「でもマックイーン泣いてたよ。実さんがいなくなってから。」
それを聞いて親父さんは少し黙ってつぶやく。
「あほが、女泣かしてどうするんだ。」
部室に沈黙が続く。息が詰まるような場所に実はやってきた。
重苦しい雰囲気を察知してかドアの入り口で止まって少しして問いかける。
「なんか起きた?」
「実。おめぇあの子に一部誤魔化して伝えたそうだな。」
バツが悪いのか、実は少し黙って答えた。
「俺はあれが最善だと思ったんだ。」
そういうと親父さんは立ち上がり俺の方に向かって歩き、そして思いっきり殴った。俺は地面にたたきつけられる。そして親父さんは怒鳴る。
「てめぇ!このチームの育成論を忘れたか!」
俺は親父さんの顔を見て反論する。
「忘れてないさ!マックイーンは俺の作ったチームに入りたいと爺やさんが言っていた!けど俺はチームは作っていない!それに俺が隣にいたとしてあいつはどうなる!メジロのウマ娘と犯罪者の俺が釣り合えるか!」
「てめぇ!マックイーンに似合う男を家柄で決めるな!」
そうして親父は倒れた俺に馬乗りになり胸倉をつかむ。
「てめぇは大事なレースがあるウマ娘に心配させるのか!そんなトレーナーは俺のチームにはいらねぇ!いいか!お前がマックイーンを秋の天皇賞に導け!ほんとはサイレンススズカを充てようと思ったが今のお前に任せられん!」
そう言い切ると親父さんは立ち上がってこういう。
「お前は罪を意識しすぎてるんだ。お前がすべきことは贖罪ではなくてメジロマックイーンを幸せにさせることだ。誰かの幸せの裏には誰かの不幸があるんだ。それはレースの世界も普段の生活でも同じだ。お前は偶然そいつらが最も不幸な時を見ただけだ。」
親父さんの言葉聞いた後、俺は立ち上がって部室を出る。そして学園の外に出て壁にもたれ着く。確かにそうだ。俺はきっと意識しすぎてたんだろう。親父さんに説教されて少し納得がいった。けどもう俺はマックイーンとは一緒に走れないだろう。言い方的に俺はもう屑人間と言われても仕方ない。どうしようか長考していて、気づけば日は沈んでいた。部室に一回戻るかと思って移動すると、そこにはゴルシがいた。
「なぁ、お前。ほんとにマックイーンと一緒になりたくないのか。」
ゴルシが尋ねる。いつもは常時頭のネジが20本は抜けてるであろうゴルシは珍しく真顔でいた。俺は静かに言い始める。
「なりたいさ。今でも覚えてるよ。幼かったころのあいつの笑顔。見ていて幸せだった。できることなら今でも見たい。けど俺は...」
「あぁ?聞こえねぇよ。もっと大きな声で話せ。」
「俺は...俺はマックイーンと一緒にいたい!あいつの笑顔!笑い声!ずっと聞いていたいんだ!」
叫びにも近い大声で俺は話す。するとゴルシは少しの間黙った後、ニヤッと笑う。
「だってさ。マックイーン様よ。」
ゴルシは横を向いて人気のない電柱に話しかける。俺はそれを見て電柱の方を見る。すると泣きじゃくったかのような顔のマックイーンが出てきた。俺は唖然としていた。マックイーンは少しずつ話始める。
「ずっと、あなたにあうために頑張ってきました。トレーナーさんから聞きました。あなたが一部の情報を伏せて話したことを。実お兄様、私はあなたの隣にいられるだけで十分なんです。ただ一人の女として、私を隣にいさせてください...」
マックイーンは途中から大粒の涙を流していた。自然と俺も涙が出てきた。泣いたのなんていつぶりだろう・・・そして俺は大声でこういった。
「あぁ、マックイーン!俺はお前の専属トレーナーになる!」
マックイーンは笑顔で泣きながら俺を抱きしめた。俺も抱きしめ返す。
「ごめんなマックイーン。10年も待たしてしまって。」
「ほんとですわ、これからはずっと一緒にいてくださいまし...」
「あぁ、ずっとだ。」
俺たちは長時間ずっと抱きしめていた。けどこれは失態だった。ゴルシはにやにやと写真を撮っていたからだそれがわかったのは後日だった。
最後に若干甘めの展開来ましたね。自分は若干の甘めでもコーヒーを求めるタイプなので隣にコーヒーがないと死んでましたね。次回はゴルシが小さなことをしでかしてくれます。それでは次回もお楽しみに