Fate/Extra Summon (バカテス*Fate/Extraクロス)   作:新月

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ものすごく間が開いてしまって申し訳ないです。
最近受験勉強で時間が取れない……


遠坂凛の長い一日

~前回までのあらすじ~

 

 セイバー達が無駄遣いして残金ゼロ

 

 以上。

 

 

 ★☆★

 

 

 そりゃあね、アーチャーのが善意だったってのは分かってるよ?

 

「へえ! お前が一回戦の相手かよ!!」

 

 セイバーとキャスターの無駄遣いしまくったのも悪い事だけど、そういう僕も元の生活で食費を削ってゲーム買ったりしてたし、二人の事を言えない。

 

「ここの主催者も、一回戦からなかなか盛り上げてくれるじゃないか」

 

 けど、流石に今回は自重するつもりだったんだよね。

 命懸かってるっぽいし。

 

「そうだろう? いかに仮初の友情だったとはいえ、勝利のためには友をも手にかけねばならないとは!」

 

 まあ、結局は僕達全員が悪いんだよね。

 連帯責任って奴かな?

 

「何て過酷な運命なんだろうか。主人公の定番とはいえ、こればかりは僕も心苦しいよ!」

 

 そしてついでに言うと、昨日から何も食べていなくそろそろ僕のお腹も限界に近い。

 

「それじゃあ次会う時は敵同士だ。僕達の友情に恥じないよう、いい戦いにしよう」

 

 しょうがない、とにかく食堂に行こう。

 何、流石に食堂には“あの二つ”があるはずだから、それさえあれば僕なら一週間は生き延びられる。

 

 

「っていうか、お前聞いてる?」

 

「あーうん。ワカメっておいしいよね」

 

「何一つ聞いてないなお前っ!?」

 

 

 二階掲示板。

 其処にはこう書かれていた。

 

 

『一回戦 吉井明久 対 間桐慎二』

 

 僕の一回戦の相手が決まっていた。

 

 

 

 ★☆★

 

 

 

「明久君、一体どうしたんでしょうか……」

「そうね。まああの様子からすると、大方自分のサーヴァントが勝手に行動して何かしてたってとこでしょうけど」

 

 私、遠坂凛は今姫路さんと一緒に一階の廊下を歩いていた。

 どうやら、彼女は昨日の吉井の突然の行動について、一晩中悩んでいたらしいわね。

 まあ、十中八九彼のサーヴァント、確かセイバーって叫んでたっけ? が何かしたんでしょうね。

 全く、あんなに他の参加者が集まってる場所で、自分のサーヴァントのクラス名をばらすなっての。

 

「そう言えば、姫路さんのサーヴァントの件は大丈夫だったのかしら」

「あ、はい。ちゃんといましたので大丈夫です」

「そう、よかったわね」

「はい。ありがとうございます」

 

 まあ、私自身も何してるのかしらね。

 彼女もこの聖杯戦争の参加者。

 本来なら、彼女のサーヴァントがいない方が私にとって都合がいい筈なのに、よかったわね、だなんて。

 あー駄目だ、これ完全に心の贅肉だわ……

 

「まあ、とにかく私は食堂に行って食事をしてくるけど、姫路さんはマイルームに寄ってからだっけ?」

「はい。遠坂さんに教えてもらった事を、先に試しておこうと思って」

 

 けど、この子結構凄いのよね。

 確かにこの聖杯戦争じゃ、ちょっとした油断や準備不足で簡単に敗北し、そして死ぬ。

 けどそれにしても、昨日今日いきなりこの魔術の戦いの世界に巻き込まれた女子高生に対して、いきなり魔術を使え、というのも無理な話だ。

 それなのに、彼女は少しずつ魔術の世界に適応しかけてきている。

 昨日この子に魔術の簡単な勉強をさせてあげたけど、いくら真面目に聞いてるからって一晩で基礎を簡単に習得して行ったときは少し戦慄したわ。

 あー、これもしかして私とんでもない子育ててるんじゃ……

 

「あの、どうかしたんですか?」

「いえ、なんでもないわ。ただちょっとやりすぎたかなーって……」

「はあ……」

 

 あーもう、純粋そうな顔しながら首傾げちゃって……

 そんなだから、こっちも警戒心が薄れちゃうってんのよ。

 

「あ、あと明久君を見かけたら教えてくれませんか?」

「まあ、見かけたらね」

「はい。それじゃあ」

 

 そう言って、姫路さんは二階へ階段を上がっていった。

 全く、こんな馴れ合いなんていつか戦うときには枷でしかはずなのに。

 ……そういえば、吉井に関しても結構謎だらけなのよね。

 あいつも元々ただの高校生って聞いてたけど、ある意味姫路さん以上にこの戦争に適応してる。

 魔術の腕は知らないけど、心構えだけならもう出来かけているし、そういう意味では今まで普通の高校生だったとは思えないんだけど……

 

「まあ、そんな考察は後でいいか」

 

 それはともかくご飯よご飯。

 昨日は鮭定食だったから、今日は麺類にしようかな~。

 

 なーんて、そんな気持ちで食堂に行くと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待てマスタァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!?? 流石にそれは料理人として見過ごせんっ!!!!」

 

「放してッ!! 僕にはこれしか無いんだッ!!! これが僕の食事なんだッ!!!!」

 

「いや食事ってってそれ“塩”と“水”だろうが!? それは食事とは言わん!! 断じて言わんっ!!」

 

 

 馬鹿二人が騒いでいた。

 

 というか、片方は例の吉井明久だった。

 食堂のど真ん中で騒いでいるせいか、思いっきり他の参加者達の注目の的になっていた。

 もう片方の、多分彼のサーヴァントの赤い男が、あれ? 声女っぽかったような……? まあ、いいか。

 とにかくその男が必死に吉井を羽交い締めをして止めていた。

 その騒いでいる二人の前には、水の入ったコップと、食堂のテーブルに備え付けられていた塩の入った容器。

 

 

「いくら何でも!! そんな物全部食べたら一気に塩分過多になるぞッ!?」

 

「仕方ないじゃないかお金無いんだしっ!! それに元々僕の生活これが基本だったし!!」

 

「君は一体地上でどんな生活送ってたッ!?」

 

 

 

 そんな二人の様子は傍から見ていると、馬鹿らしいの一言に尽きた。

 かなりの強さをもったウィザード? なにそれ?

 そんな事を目の前の馬鹿に思った予選のときの自分を凄く殴ってやりたい。

 もしかして私、姫路さんと吉井に関して、とんでもない勘違いをしていたんじゃ……

 

 

 

 

「大丈夫僕はこれで一週間は保てたことがあるんだそれなら一、二ヶ月位もわけないよきっと大丈夫だよやれるようん!」

 

「いや無理だろッ!? いやほんとにやめてくれマスターオレ達が悪かったからあああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!」

 

 

「ってかいい加減うるさいわよ其処の馬鹿主従がああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!!!」

 

「「ぐけぱあぁっ!!!??」」

 

 

 だからそんな二人に切れてガントを撃った私は悪くないと思う。

 

 

 

 

 ★☆★

 

 

「いたた……いきなりなんで狙撃したのさ遠坂さん? おかげでせっかくの僕のご飯がテーブルから落ちて食べれなくなっちゃったんだけど」

「うっさいわ馬鹿。食堂で馬鹿馬鹿しい馬鹿騒ぎを、馬鹿二人が起こしてるのを見て、いらっとしたのよ」

「全く誰なんだろうね、君にそんなに馬鹿って言わせる二人は」

「ええ、本当ねえっ!!」

 

 こいつ、凄く殴りたいっ!!

 もうペナルティとか関係無しに、全力でこの馬鹿に殴りかかりたいっ!!

 

「こんな馬鹿に、一瞬でも警戒してた私って……」

「大丈夫遠坂さん? 風邪でも引いた?」

「お願い、暫く黙っててもらえないかしら。今ものすごく頭が痛くなってるから……」

 

 そう言ってから、私は両手で頭を抱えてテーブルに突っ伏した。

 さっきの騒動の後、私は今吉井と向かい合わせの状態で座っていた。

 こいつの相手は本当に疲れる……

「あ、そういえば風邪と言えばさ……」

 

 そう前置きを言ってから、吉井は視線を私からはずして食堂のキッチンの方を向いた。

 其処には……

 

 

 

 

「いや、ちょっと待ってくゲホッ! 料理を作るんだったゴホゴホッ!! ら、屑野菜とか余った材りょ、ゲホガホッ!! が出てくるんじゃ。何、データで作るから、そんな物存ざ、ゴホガホゲホッ!!! しないだと!? そこをだから何とか、ゲホッ! ゴホガホゲホガホッ!!!」 

 

 

 っと、誰が見ても明らかに風邪を引いたようにしか見えないこいつのサーヴァントが、食堂のおばあさんと交渉していた。

 

「何でああなっちゃったのか教えて欲しいんだけど」

「むしろ私が知りたいわよ……っ!!」

 

 何でこいつのサーヴァントがそんな事をしているのかというと、流石に塩と水をご飯にするのは彼の料理人としての魂が許せないらしく、自分が材料を調達して作ると宣言した。

 聞くと、料理を作ると普通野菜の皮とか魚の骨とか、所謂捨てる部分がでて来るけど、彼の料理スキルならそれらからも無駄にせずに完璧に調理することが出来るとかなんとか……

 で、その材料を手に入れるために、今まさに交渉の真っ最中といったわけらしいけど、見ての通りさっきから咳込んでいる。

 

「ええ? けど、さっき遠坂さんの撃った何か黒いの、に当たってからああなったんだけど」

「だから、何でサーヴァントが【ガンド】程度で風邪を引くのかが分からないのよ……ッ!!」

 

 確かにガンドは、当たった相手の身体活動を低下させて体調を崩させる、という間接的な呪いで、結果的に相手を風邪の状態にすることが出来る。

 けど、こんな初歩的な魔術がサーヴァントなんて規格外の存在、ましてやセイバーにとっては全く効果がないはずなのよねぇっ!?

 

「ああーもうっ!! 何で“セイバー”に私の魔術攻撃が通るのよ!? どう考えても対魔力低すぎよあれ!!」

「くそ、交渉失敗だったって、はあっ!? おいちょっとま、ゲホゲホッ!! 私はセイっゴッホゲホッ!! じゃな、ゲホッガホッ!!」

「うっさいわ風邪引きサーヴァントッ!!」

 

 私はいつの間にか戻ってきていた駄目セイバーにそう怒鳴った。

 そして今確信した。

 この聖杯戦争で今一番危ないのは姫路さんじゃない、目の前の馬鹿達だ。

 

「って、あれ? セイバー……? あのさ、遠坂さんもしかし――――」

「そしてッ!!」

 

 何か吉井が喋ろうとしたけど、盛大にイラついてる私はそれを遮って言葉を続けた。

 

「何で同じ攻撃を喰らったあなたは平気なのよっ!? おかしいわよそれ!?」

「うえっ!?」

 

 サーヴァントには効いた攻撃が、マスターには通らないって、ありえなさすぎるわよそれ!?

 何、あんたどっかぶっ壊れてるんじゃないの!? 

 何処か分かんないけど!! あんた馬鹿だし!! エラー起こりまくってそうだし!!

 自分でも無茶苦茶な理論だって事は自覚してるけど、もうそんな事知ったこっちゃ無い状態だった。

 

「碌な食事しないといい、風邪を引くサーヴァントといい、あまつさえ料理するセイバーとか、ああぁああああああああああああああああああああああっ!!!!」

 

 そう私は叫び続けたが、暫くすると流石に疲れてしまい、はあっ……と、テーブルに突っ伏した。

 何か髪の毛がぼっさぼさの状態でテーブルの上に広がってしまったが、それを何とかする気にもならなかった。

 

「あぁ~~~~……」

「えーと……大丈夫?」

「ゲホッ。すまないが、マスクかなんか持ってないか? 流石にずっとこれだと不便でな……」

「お願い、ほんとに黙って……この食券あげるから」

「え!? 本当!?」

 

 私がさっき買っておいた食券を上げると、吉井はキラキラした目でそれを受け取った。

 どんだけ嬉しいのよ、あんた……

 

「ありがたい! マスターはそれで食事をしておけ、私は駄目元で他の場所に当たってくる!」

「分かった!! 遠坂さん、ありがとねー!!」

「あーはいはい……」

 

 そう言って、吉井は食堂の受付に向かい、こいつのセイバーは階段を使ってどっか別の場所に向かって行った。

 つ、疲れた……

 正直、まだ一回戦すら終えていないのに、もう精神的疲労が半端じゃないんだけど……

 よし決めた、今後何があっても極力あいつ等に関わらない事にしよう←(極力と言ってる時点で甘い事に気づいていない)

 あー、食券買いなおさないとなあ……けど、暫く動きたくな――――

 

「ははっ! 君、遠坂凛だろ? 噂に聞く一流魔術師が何て格好で――――」

「死になさいワカメ」

「お、おいおい、それはちょっと無いんじゃないかい? ほら、一流同士ならではの会話とか――――」

「うっさい黙れ。息しないで。目の前から消えて。惨たらしく死んで」

「取り付く島もないっ!?」

 

 やっと吉井をどうにかしたと思ったら、もっとうざいのが私の所に来た。

 正直もう私の精神的余裕が皆無なのよ、限界なのよ。

 

「ちょ、ちょっと待てよ!! この僕を邪険にするなんて――――」

「ガンド」

「う、うわあっ!? いきなり何するんだ!? 僕はただ話し掛けようとしただ――――」

「ガンド、ガンド、ガンド」

「ひいいぃ―――――――――――――――――っ!!?」

 

 ヤバイ、こいつウザすぎる。

 もうペナルティなんてしったこっちゃないと思える位なんだけど。

 もしこれを狙って戦略ダウンを図ろうとしてるんなら、確かに効果的だと認めるわね。

 まあ、このワカメがそんな事を考えてやってるとは思えないけどね。

 

「ふ、ふん!! まあいいさ! 考えてみれば、最終的に聖杯を手に入れるのは僕なんだからさ!! いつか消える相手に気にかけてやる必要なんて無かったんだからね!!」

「あー、もうラーメンでいっか。よっこいしょっと」

「聞けよっ!?」

 

 あー、もういい加減にして欲しいんだけど。

 

「正直、あんたなんかに気にかける余裕なんて無いのよ」

「なんだとっ!」

「何かえらそうな事言ってたけど、ここから見えるだけでもかなりの大物達が揃ってる。聖杯を手に入れるという事は、そいつ等全員倒さなくちゃいけないって事なんだけど……あなたの場合、直ぐに脱落しそうね」

「言ってくれるじゃないか……っ」

 

 やれやれ……だからなのよ、こんな簡単な挑発に引っかかってるようじゃ、直ぐに負けるってーの。

 まあ、ぶっちゃけ……吉井もどっこい状態なんだけどね。

 

「ふ、ふん!! 直ぐにその言葉、後悔することになるさ!! 君も吉井を倒した後に、直ぐに相手してやるよ!!」

「って、え゛!? まさかあなた、初戦が吉井なの?」

「ああ、そうだけど」

 

 うあちゃー……

 あの馬鹿、いきなりなんて奴と当たってるのよ……

 ゲーム感覚で参加しているこいつは、確かに私にとっては敵じゃないけど、碌に戦闘も魔術経験も無い吉井にとっては、かなりの強敵になるじゃない。

 オマケに、サーヴァントがあれだし……

 

 

「それは興味深いですね」

「「っ!?」」

 

 いつの間にか、私達の近くにある男が来ていた。

 こいつは……!

 

「レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイ……!!」

 

 まさか、ハーウェイ家御自らがお出ましとわね……!

 

「レオでいいですよ遠坂さん。僕とあなたが直接お会いするのは初めてですね」

「ええ、本当ね」

 

 ハーウェイ家とは、結構レジスタンス活動で争っていたけど、こいつ自身と見える事は無かった。

 今回、本気で聖杯を取りに来ているわけね……

 

「いいわ。地上での借り、天上で返してあげる。魔術師としての腕前ならこちらに一日の長がある……!」

「なるほど。話に聞いていた通り、かなりの強者のようだ。あなた達と戦うのが、今から楽しみに思います」

「あなた……“達”?」

 

 何でわざわざ、達って言ったのかしら……私のサーヴァントの事?

 それとも他の近くの奴……は、このワカメしかいないから、ありえないわよね。

 こんな雑魚に、ハーウェイが注意する理由もないし。

 

「ええ。さっき話題に出ていたでしょう。彼、吉井明久の事」

「へ? 吉井?」

「はい、そうです」

 

 その後にでた名前に、私は余計に混乱した。

 何で吉井がこいつに目を付けられているのよ?

 正直実力じゃ、隣のワカメより劣ってるかもしれない位なのに……

 

「あなたや彼に戦えるのは、二回戦か、三回戦か、はたまた最後の方か……いずれにせよ、あなた達との戦いが待ち遠しく思います」

「お、おい、ちょっと待て!! 何なんだよお前は!! 後からシャリシャリでて話に割り込んだ挙句、僕の事を無視するなんて、生意気にも程があるんじゃないか!!」

 

 さっきからずっと黙っていたワカメが、いきなりそう割り込んできた。

 まあ、当たり前よね、普通。

 こんな奴をわざわざ相手にする必要もないし。

 

「それは失礼をしました。ところで、あなたの初戦の相手が吉井さんらしいですね」

「ああ、そうだよ!! お前、まさか僕があんな奴に負けるとでも思っているのか!?」

 

 確かにそれは、慎二の言う通りだと私も思う。

 客観的に見ても、彼と慎二の実力にはかなりの差があると思う。

 よしんば吉井が勝つとしても、かなりの低い確率だと……そう思っていたのに、

 

 

「ええ。彼が必ず勝ち上がってくると思いますよ」

 

 っ!?

 この男はそう言った、言い切った。

 確定事項を繰り返すように、ただ当たり前の事を言うだけのように。

 こいつにここまで言わせるなんて……ほんと吉井って何なのよ!?

 

「っ!! ふざけやがって!! 来い、ライダー!」

「ち、ちょっと!?」

 

 横でその言葉に激昂した慎二が、いきなりそう叫んだ。

 私が急いで距離をとると、私がいた所の近くに、髪が長く紅い女性が立っていた。

 

「……ガウェイン」

「はっ」

「な!?」

 

 レオがそう言うと、そいつの横にも白い甲冑を着込んだサーヴァントが現れた。

 けど、私が驚いたのは其処じゃない。

 

「真名を名乗るなんて、舐めてくれるわね……!」

 

 あろう事か、こんな大衆の目前で、堂々と自分のサーヴァントの情報を提示した。

 こいつが馬鹿なんじゃない、それ位知られても、勝ち残れるという自身の表れ――――!!

 

「シンジ、あたしゃ雇われ海賊だ。予定外の仕事は高くつくよ?」

「金なら幾らでもやるさ!! あの生意気なガキのサーヴァントを倒せ!!」

「やりなさい、ガウェイン」

「御意」

「ちょっ!? あなた達ここでやる気!?」

「あれー? 遠坂さん何やってんの?」

 

 気が付けば、既に食堂にいた他の参加者達もほぼ全員、彼等の方に注目していた。

 勝手に手札見せ合ってくれるのはいいけど、こんな近くで始めるなってーの!

 あーもう!

 何なのよ今日は!

 吉井の馬鹿さ加減に呆れたり、うざいワカメに声をかけられるわ、レオが話しかけてくるわ、いきなりここでやりだしたり、もーっ!!

 

「アイサーキャプテン。そんじゃ、やるかねぇ!」

「行きますよ!」

「あー! 始まった!?」

「もぐもぐ……あ、この鮭定食凄いおいしい」

「そしてあんたは何そこでナチュラルに食べてんのよ!?」

 

 いつの間にか戻ってきていた馬鹿、もとい吉井がさっきまで座っていた席についてのん気にご飯を食べていた。

 あんたこの状況で何やってんの!?

 見ると、この世全ての幸福を受けたかのような顔で、周りのことなど気にせず……というか、全く気づいていない様な様子でおいしそうに食べていた。

 てか、あんたそんなに感動するほどお腹減ってたの!?

 

「そらよっ! 藻屑と消えな!!」

「ふっ!!」

 

 キンキンキンッっと、音が三回。

 とりあえず吉井は置いといて、意識を戦闘の方に向け、視覚強化の魔術を自分にかけて見ると、ライダーと呼ばれた彼女が持っている両手銃から弾丸が三発放たれていた。

 それを特に慌てた様子も無く、ガウェインは手に持っている剣でそれを全て弾く。

 そして、その弾かれた一発がちょうど吉井の方に――――

 

「っ!? あ――――っ!!」

 

 危ない、と。

 言おうとしたが、明らかに間に合わない。

 その弾丸は、一直線に吉井の方に向かっていき――――

 

 

 

 

 

 

「って危なああああああああああああああッ!!???」

 

 

 キインッ!っと……

 

 彼の目の前で“直角に上に曲がった”

 

 

「――――――――は?」

 

 私はいつの間にか、そんな声を出していた。

 目の前に起きた異常を直ぐには認識できなかったから。

 見ると、吉井はいつの間にか手に木刀を持って、それを上に振り上げていた。

 

「まさか、こいつ……!?」

 

 “弾いた?”

 仮にも、“サーヴァントが放った、しかもほぼ不意打ち気味の状態から?”

 

「もう、一体なにさ……って、あれ? 何で皆僕の方を見るの?」

 

 既に戦いを見続けているものはいなく、今度は全員、人間離れした芸当を見せた吉井に注意を払っていた。

 当の本人は、自分が何をやったのか全く自覚がないようだけど。

 

「な、何なんだよお前は……?」

 

 横を見ると、慎二が吉井の方を見て、そう震えた声で呟いていた。

 自分の一回戦の相手が、とんでもない事を目の前でして見せた事に驚いているんだと、直ぐに予想は付いた。

 

「なるほど……やはり君は、とても興味深い人だ」

 

 ただその中で以外なのは。

 今の瞬間を見たレオは、かすかに驚いた様子はあったようだけど……

 その声は驚愕といったものでは無く、これ位ならやりかねない、と。

 そう、予想していたような声だった。

 

「ん、あれ? レオ?」

「ええ。予選以来ですね、吉井さん」

 

 吉井がレオに気づくと、レオは親しい知人に出会ったような態度で話しかけた。

 

「うん、そうだね。レオももしかしてご飯食べに来たの?」

「まあ、そうですね。君に会ったら、少しばかり話したいことがいくつかありましたが……食事中のようですし、サーヴァントの挨拶だけ済ませようと思います――ガウェイン」

「はっ。従者のガウェインと申します。以後お見知りおきを。どうか、我が主の好敵手であらんことを」

「あ、えーと、これはどうもご丁寧に……」

 

 その吉井の態度は、傍から見るとなんとも滑稽な感じにも見えるけど、さっきの芸当を見た後じゃ、逆にみんなの警戒を強める結果となった。

 

「あなたにもご挨拶できたことですし、行きましょうガウェイン。それでは」

「はっ」

「お、おい! ちょっと待てよ、逃げる気かお前!!」

 

 今にもここから立ち去ろうとした二人を、慎二がふと我に帰った様子で引きとめようとした。

 

「舐めやがって……!! ライ――」

 

「そこまでだ」

 

 急に声が聞こえてきたほうを振り向くと、其処には黒い神父服をまとった男が立っていた。

 あいつは……NPCの言峰神父ね。

 騒ぎを聞きつけて、今ようやく来たって所か……

 

「学園内での私闘は禁止されている。自粛したまえ」

「くそ! セラフ側の監視者か! まあいい! 行くぞライダー!」

「……あいよ、キャプテン」

「それでは僕達も。また会いましょう吉井さん」

 

 そう言って、レオ達は食堂から出て行った。

 その後ちょっとすると、吉井もお盆を持って立ち上がった。

 

「ご馳走様でした。っと、あーおいしかった。遠坂さんありがとうね。おかげで一週間は戦えそうだよ。じゃあまたね」

 

 そういい残して、吉井は返却口に食器を返した後、階段を上がって食堂から出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう一体何なのよこれエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!!!????」

 

 

 

 

 後日。

 私はこのやりきれない思いを一回戦の相手にぶつけ、速攻で二回戦進出を果たした。

 

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