Fate/Extra Summon (バカテス*Fate/Extraクロス)   作:新月

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受験が近いのに、何故か余計に執筆がしたくなる不思議……


明久の初陣

「もう一回アリーナに稼ぎに行こう」

 

 マイルームに戻った僕は、留守番をさせていたセイバーとキャスターに向かって開口一番そう言った。

 

「帰って来ていきなりだな、奏者よ」カンカンッ

「ほんとですねー。何かあったんですか、ご主人様?」ズズッ・・・

 

 そう、割と大きな石を削って何かの彫像を一生懸命に作っているセイバーと、高そうな急須にお茶を注いでまったりとしているキャスターが返事をした。

 

「うん。ものすごく趣味に没頭していたのは良く分かるけど、その金欠の原因の大半を担った君達の台詞じゃないよね。ていうか、むしろ今使ってるものも原因の一部だよね」

 

 セイバーとキャスター、これ明らかにお風呂と鳥居以外にもお金使ってたよね。

 あの時はあまりのショックで履歴の流し読み程度しかしていなかったけど、もしかしたら他にも何か大きな買い物をしていたのかもしれない。

 念のため、後でもう一回確認しておこうと心に決めておいた。

 

「まあ、実は結局今回のお昼ご飯は遠坂さんに奢って貰ったんだけどさ……」

「うん? あの赤いツインテ痴女の事か?」

「うん、セイバーの遠坂さんに抱いているイメージは置いといて、そのおかげでとりあえず今日は飢えをしのぐ事が出来たんだ。けど、流石に何度も頼るって訳にも行かないでしょ」

 

 既に僕達は、いくつか遠坂さんに迷惑を掛けてしまっているし、これ以上失礼を重ねる訳にもいけないと思うし。

 

「だから、やっぱり自分達で稼いで少なくてもご飯だけは買える位にしておかないとって思って。今晩のご飯代すら無いし」

 

 それにもしかしたら、食事以外にもお金が必要な場面が出てくるかもしれない。

 そう考えると、やっぱりアリーナに行って稼いでおかなくちゃいけない、という結論に達した。

 

「まあ、そうですねー。どの道トリガーも集めないといけませんし、アリーナに行く事に越した事はないでしょうね」

「でしょ。そんな訳で、早速二人の準備が整ったら、直ぐに行こうと思うんだけど」

「ちょっと待ってくれ、奏者よ。あと4~5時間でこの作品が……」

「よーし! じゃあ準備は出来てるっぽいし、行こうか!」

「あ!? ま、待つのだ奏者!? 背中を引っ張るでない!? あと、もう少し、もう少しなのだ!!」

「4~5時間はもう少しの範囲じゃないと思う! ほら、さっさと行くよ! アーチャーと合流しないといけないし」

「嫌だー。余は彫刻がしたいー」

「駄々っ子!? ていうかこれ二回目!!」

 

 とりあえず、今回はキャスターに引っ張ってもらってマイルームを出た。

 

 

 ★☆★

 

 

「む? おい、マスター!」

「あ、アーチャー!」

 

 一階に下りた僕たちは、とりあえずアーチャーと合流しないと思い、どこから探そうかと悩んでいたけど、向こうから僕達の事を見つけたくれた。

 食堂で別れて以来、あちこちに食材とかそういった物を探しに行ってたけど、何か収穫はあったのかな?

 

「マスター、食事は済んだのか?」

「うん。そういえばアーチャー、風邪は大丈夫なの?」

「ああ。保健室に行って間藤桜に頼んで治して貰った」

「って、あなた風邪なんか引いたんですか? サーヴァントの名折れじゃないですか、それ」

「くっ、仕方ないだろう! 対魔力も格段に減少しているんだぞ!」

 

 キャスターの言葉に、アーチャーはそう叫ぶように言い返す。

 まあ、確かにステータスが、本来なら悪くてもE止まりなのが、Hまで下がっているし。

 しかもアーチャーにいたっては幸運Jだしね。

 

「けど、凄いね此処の保健室。普通学校の設備程度じゃ、1,2時間で治らないよ」

「まあ、此処は仮にも電子の世界だからな。現実の世界とは違い、しかも魔術もあるなら、これくらい分けないだろう」

「へー……じゃあ治ったばっかで悪いけど、早速これからアリーナに行くけどいい?」

「ふむ。それは承知したが……」

 

 ……?

 そう、アーチャーは歯切れの悪い返事をした。

 一体どうしたんだろう?

 

 

「マスター、この聖杯戦争の注意点は覚えているか?」

 

 聖杯戦争の注意点?

 えっと、確か……

 

「この聖杯戦争はトーナメント形式で、計七回勝ち続けなくちゃいけないんだよね?」

「うむ! あと、一回戦ごとに決戦までは幾日かの猶予があるはずだったな、アーチャー」

 

 僕の台詞の後に、セイバーが補足を加えてくれた。

 うん、確か……大体七日間ずつだったっけ。

 ……七日か。

 

「決戦日までに飢えで脱落しないか心配だよね」

「いや、其処はあまり重要では……いや、我々に限って言えば重要か?」

「そうですよね。結構死活問題じゃないですか?」

「その原因の一部は君にもあるんだがな……」

「紅茶も同類でわないか」

 

 ま、まあそれはともかく……と、アーチャーは話を続けようとする。

 誤魔化したね……

 

「その猶予期間中に、アリーナで特訓したり、トリガーを回収といった事をしなくてはいけない」

「うん。そのアリーナのエネミーを倒して、お金を稼がなくちゃいけないよね」

「すまん、一旦金欠関係は置いといてくれ。で、ここからが重要なんだが……」

 

 そう前置きをしてから、アーチャーは続きを放し始めた。

 僕もそれを真剣に聞く。

 

「そのアリーナでは、自分達の対戦者も同じ場所になっているらしい。つまり、訓練中に遭遇し、いきなり戦いという可能性もある」

「そうなの? って、あれ? たしかあの神父の話じゃ、決戦までは対戦者同士の争いは禁止とか言ってなかった?」

「実際には、セラフの介入があるまでタイムラグが存在するため、その間に決着をつけることは可能だ」

 

 なるほどね。

 つまり、油断していると決戦前に敗北って言う事もありえるわけだね……

 マスター、っと、アーチャーは改めて僕に呼びかける。

 

「今回、我々三人は全く戦力にならず、実際には君一人で戦う事になってしまうだろうが……はっきり言うと、今の君では相手のサーヴァントに勝てる確率は、ほぼ0に近いだろう」

「え、でも……」

 

 こう見えても、改造学ランとか一見ふざけたような格好してるけど、元の世界にいたときより、かなり体の動きが良くなっていたり、力が満ちているのが感じられる。

 多少は勝率は低くても、ゼロは言いすぎじゃ……

 

「確かに、君は召喚獣という力があり、サーヴァントレベルのステータスは持ってはいるが……如何せん、戦闘経験が圧倒的に足りない。素人がいきなり拳銃を握ったようなものだ」

「う……」

 

 確かにアーチャーの言う例えは的を得ていた。

 実際、人形との戦いのときは殆ど無意識状態だったし、最初のエネミー戦だと指示が無茶苦茶だったとはいえ、雑魚レベルの敵にボロボロにされてしまっていた。

 

「加えて、君にはアイテムの使用も不可能の上、更に魔術礼装が一つも無い状態。今の君は、考えられる中で最悪の状態と言ってもいい」

「うわあ……改めて振り返ってみると、結構私達やば過ぎるんですね……」

 

 キャスターの言う通り、こう客観的に見てみると、かなり最悪だという事が良く分かる。

 本当に僕は勝ち残る事が出来るのかどうか、だんだん自信がなくなって来た……

 

「全く。紅茶と女狐がいなければ、今頃余は奏者と一緒に直ぐ勝利できるというのに」

「何か言いましたか、セイバー?」

「そこ、喧嘩するな」

 

 しかも、セイバーとキャスターも仲が悪いし、これチームワークからして上手くいってない。

 うわあ、ほんとに考えられる限り、最悪に近い……

 

「正直、エネミー相手に特訓したとしても、相手のサーヴァントに必ず勝てるという保証は無い。だからマスター。この猶予期間中、絶対対戦者と遭遇する事が無い様、気を付けてくれ」

「うん。分かった」

 

 確かに、僕たちは今金欠状態だけど、それでエネミー狩りに夢中になってしまい、相手に倒されましたー、なんて笑い話にもならない。

 アリーナは結構広そうだし、そんな直ぐには互いに見つけられないだろうとは思うけど……用心するに越した事は無い。

 そう考えながら、僕たちはアリーナへの扉を開いて、其処に入っていった。

 

 

 ★☆★

 

 

 アリーナに到着。

 

 2分後。

 

 

「う、うわあっ!? よ、吉井! お、おま、お前、何サーヴァント三人も連れてるんだ!? おかしいだろそれ!? ルール違反じゃないか!!!」

 

「おやあ、こいつは賑やかだねえ」

 

 

「いきなり遭遇したぁ―――――――――――――――――――――――――――――――――っ!!!??」

 

 

 僕達は速攻で対戦者と遭遇した。

 

「ホント、ゴメンアーチャー……」

「何も言うな……」

 

 アリーナについて早々、僕はアーチャーに申し訳ない気持ちで一杯だった。

 せっかくアーチャーがわざわざ忠告してくれていたのに、まさかカップラーメンすらまだ出来ないほどの時間で遭遇するとは思わなかった。

 

「なあ、奏者よ……いくら何でも、あまりにも運が悪すぎだと余は思うのだが……」

「あのー、よく考えてみれば、私達全員幸運ランクすらかなり低かったですよね……紅茶にいたってはJとかですし」

 

 ああ、確かに……

 そういえば、セイバー達が殆どのステータスがHだったから目立たなかったけど、実際僕の幸運もEで、普通のサーヴァントでも最低のランクに含まれていたんだった。

 幸運が最低以下のメンツが四人……うわあ、最悪の状況に更に下があったよ。

 

「く、くそっ!? お前、どんな裏技使ったんだ!? そっちは三人がかり何て、卑怯じゃないか!!」

「あたしゃあ、別に構わないけど、ねえ……」

「何のん気なこと言ってんだライダーッ!?」

 

 ただ不幸中の幸いなのか、慎二はこっちのセイバー達が全く戦えないってことは、ばれていないっぽいってことだ。

 だったら・・・…

 

「ふ、ふふん、どう? 凄いでしょ慎二、僕の方にはこんなに強い味方が三人もついてるんだよ。おとなしく降参した方が、身の為じゃない?」

 

 このまま口八丁で押し切って、戦わずに勝つ……っ!!

 真正面から勝てないなら、向こうに戦いに降りてもらう!

 若干喋り方が、慎二っぽい嫌味ったらしい口調を参考にしようとして変になっちゃったけど、まあいっか騙せればいいし!

 

「う、うむ!! 正直、これだと余は張り合いが無くて詰まらんがな!」

「全くです。弱いものいじめは、あまり興味はありませんけど」

「まあ、どうしても言うなら、やぶさかではないが」

 

 セイバー達も僕の作戦に気づいてくれたのか、それぞれ乗ってきてくれた。

 こうして見ると、実際本当に頼りに出来そうに見えるんだけどなあ……

 あと、セイバーが微妙にしどろもどろなのに対して、キャスターとアーチャーはすらすらと喋れたのが少し気になった。

 

「う、うぐ……」

 

 セイバー達を見て、慎二は明らかに気後れしている様子だった。

 よし、このまま行けば……

 

 

 

 

 

 

 

「いいや、違うねえ」

 

 

「「「「っ!!?」」」」

 

 そう思っていたけど、いきなり慎二のサーヴァントの方がそう言い出した。

 ……にしても、あの人、確かライダーって慎二は呼んでたっけ?

 胸元があんなに開いて、その下の白い肌と柔らかそうな乳房が覗いていて、もの凄くエロ過ぎてムッツリーニがいない事が悔やまれて――――

 

「ご主人様ぁ?」

「はっ!?」

 

 ヤバイ、変に欲望を出してしまった、それどころじゃないよね、うん。

 それはともかく、違うって何!?

 まさか、ばれた!?

 

「確かに、あんた等三人ともサーヴァントではあるけど……見た所、それほどの強者って訳でも無さそうだねえ……」

「な、何!? 本当かライダーッ!?」

「う、え……そんなの、やってみなくちゃ分からないじゃないか!!」

 

 僕はそう言いながらも、内心動揺を隠せないでいた。

 まさか、見ただけで見破れるなんて……っ!?

 

「そ、そうだぞ! 何を根拠に言っているのだ!」

「うん? むしろこんな事、あんた等の方が分かっていそうだけどねぇ……いいかい、強い奴ってもんは、本人も知らない内に気迫みたいのを出していて、周りにその強さを誇示してるようなもんなんだ。まあ、中にはあえてそれを伏せて、実力を偽ろうとする輩もいるが……あんた等“三人には”、まるでそれが感じられない」

「くっ! 的を突かれたか……」

 

 確かに、ライダーの話は漠然と僕にも理解できた。

 僕も多少、今まで面識が無かった人を見たとき、あ、この人強そうだな、とかおぼろげに感じることがある。

 現に予選の時、レオと葛木先生を見たときに、この人達に関わっちゃいけないと感じた奴も、似たようなものなんだろう。

 つまり、初めから騙そう何て事、通用しなかったんだ……!

 

「は、はははっ!! 何だ、やっぱり大した事無かったんじゃないか!! 馬鹿にしやがって、やれライダーッ!!」

「はっ! 了解さあっ!!」

「っ!?」

 

 そう声を上げて、ライダーは両手に持っている銃からダンッと一発放ってきた。

 その弾丸は、真っ直ぐセイバーの額に吸い込まれていき――――

 

 ガキイッ!!

 

「っ!? 奏者っ!?」

 

 セイバーと入れ替わる形で僕が前に出て、その弾を木刀で防いだ。

 

「くっ! 大丈夫、セイバーッ!?」

「う、うむ」

「なっ!? またかよ!? おいライダー!! どういう事だよ、何で吉井なんかに防がれてんだよ!!」

「はは~ん、やっぱりそうかい」

 

 そう言って、ライダーは値踏みするような目で僕の方を見つめてくる。

 その表情は、確信がいったという顔をしていた。

 

「言っただろう。其処の“三人からは”強さが感じられないって。あたしが本当に感じたのは、其処の坊やの方さ。あんたが一番強いらしいねえ」

「んなっ!? マスター自身が戦えるって言うのかよ、それ!?」

 

 うわっ、完全にこっちの戦力を把握されてる。

 舐めてはいなかったつもりだけど、これ本気でやばいかも……

 

「まあいいだろシンジ。戦う相手がサーヴァントからマスターに代わっただけさ。むしろ他は何も変わりゃあしない。予定通り、ぶっ放すだけさ!!」

 

 改めてライダーが構えに入る。

 どうやら、完全に逃がしてもくれなさそうだ……!!

 

「ご主人様、来ますっ!!」

「うんっ!! 皆、何か状況が変わったら指示して!!」

 

 僕はそう言って前に出る。

 これはあらかじめ決めていた事なんだけど、エネミー戦の反省を生かして、まず基本は僕が独断で戦闘をこなす。

 そして、敵が何らかの変わった動きを見せたり、僕が気づけない変化があったらそれを教えてもらう、という作戦にした。

 正直、作戦と呼べるような物でもないけど、出たとこ勝負だ!!

 

 

 ヴォーンッ!! ヴォーンッ!!

 

 

「っ!? な、何これ!?」

 

 僕が前に出ると、突然けたたましい警告音が響き渡り、周りが赤く点滅し始めた。

 すると、視界の端にはこんな表示が出されていた。

 

 

『セラフより警告>>アリーナ内でのマスター同士の戦いは禁止されています』

 

『戦闘終了まで、残り30秒』

 

 

「ちっ、もう嗅ぎ付かれたのか!」

「これって……」

 

 もしかして、これが言っていたセラフの介入って奴?

 戦闘終了まで、30秒……これがアリーナでの戦闘の制限って事か!

 

「マスターッ!! 今のままじゃ勝ち目は無い!! 逃げ切る事に徹しろ!!」

「分かった!!」

「くそ、させるか! ライダー、介入前に倒しきれ!!」

「アイサーッ!!」

 

 ライダーの二丁拳銃から、ダンッと音が連続で鳴り響く。

 まるで狙いは適当に見えるけど、その全てが僕の頭や心臓といった急所を確実に狙っていた。

 

「よっ! とっ! たあっ!!」

 

 けど僕はそれらを木刀で叩き落し、横になぎ払いを繰り返し、一つずつ確実に弾き返していく。

 キンキンキンッっとあたりに音が鳴り響き、僕の近くに弾いた弾が落ちてくる。

 

「おおっ! ご主人様、その調子です!!」

 

 離れた場所から、キャスター達の感心したような声が聞こえる。

 僕自身も、こうやって耐えていることに驚いてるよ。

 多分、元の世界にいた時の僕なら、直ぐに一つも弾き返せずに蜂の巣状態になっていただろうし。

 

「まさかっFクラスとの生活が、こんな所でっ役立つなんて、ねっ!!」

 

 FFF団のメンバーの投げてくるシャーペンやらカッターやら避けている内に、結構こういう飛来物の回避能力は元から高かった。

 しかも、僕は今召喚獣と融合しているせいか、動体視力もアップしている。

 おかげで経験した事の無い銃の弾道も、FFF団との交戦の時とあまり大差ない位に見えるようになっていた。

 

 ……ただ、

 

「っ痛~!! 結構痺れるね、これ……っ!!」

 

 食堂の時は殆ど無意識でやっていたから気づかなかったけど、流石に飛んでくる銃弾を木刀で防ぐのは結構痛い。

 しかも、それが何連続も続いているため、既に結構腕に負担が掛かってしまっている。

 

「ホラホラホラァッ!!!」

「っく、うあっと……」

 

 更にライダーは何十発と連続で撃って来る。

 片腕では防ぎきれなくなり、両手で木刀の端同士を横に持って構え直した。

 けれど、そのせいで衝撃が逃げなくなり、余計に腕に痺れが襲ってくる。

 おかげで僕はだんだん後ろの方にたたらを踏んでしまっていた。

 

「なっ!? 奏者っ!」

「おやおや、情けないねえ……こいつで終わらせるかい!」

「うわっ!?」

 

 そう言って、ライダーは連射の速度を更に上げてきた。

 このペース、裁ききれない……っ!!

 

「こ、のおっ!!」

 

 僕は防ぐのをやめて、右に転がり込むように飛んだ。

 僕の立っていた場所に、ヒュンヒュンッっと一気に何十発もの弾丸が通っていった。

 

「くそっ!」

「逃がしゃあしないよっ!!」

 

 僕はそのままライダーの周りを囲むように走り出す。

 僕とライダーの距離は、十メートルといった所。

 逃げる僕を追撃するように、ライダーは連射をし続け、その弾丸が僕の後ろを横切って行った。

 

「っいた!?」

 

 その内の一発が、僕の左肩を掠める。

 このまま単調の動きじゃ駄目だ、直ぐにパターンが先読みされて、狙いが修正される!

 こうなったら、直接一撃を入れて、一回この連射を中止させないと……

 僕は更に加速させようと、右足を思いっきり踏み出して……

 

「そこさあっ!!」

「っ!?」

 

 僕のタイミングが読まれていたのか、ちょうど僕の一歩前に弾丸が飛んできていた。

 このままじゃ僕は打ち抜かれ、やられる――――――けど、

 

 

「かかったあっ!!」

「何っ!?」

 

 狙いどうりだっ!!

 僕はそのまま後ろにバックステップする。

 いきなり変化した動きに、僕は一瞬だけライダーの照準から完全に外れた。

 

「こっこ、だあぁーっ!!」

 

 僕は足に思いっきり力を溜め、ライダーの方に向かって飛び出した。

 ライダーは再び僕の方に銃を向けたけど、遅い!

 このまま走りながら、僕は木刀を大きく振りかぶり――――

 

 

 

 

「あたしの勝ちさ、坊や」

 

 ――――ゾクッ!?

 

 次の瞬間、全身に嫌な寒気がした。

 

「っ!? 駄目だ!? マスター下がれっ!!!」

「遅いさねえっ!! 砲撃用ー意!!」

 

 アーチャーの声が響くけど、それを遮るようにライダーも叫ぶ。

 次の瞬間、ライダーはその場から真横に飛び、その後ろにあったのは――――“四つの大砲”

 

「なぁ――――っ!?」

 

 何故後ろに大砲なんかがあるのか、それは空間を割いた場所から出ていてどうなっているのか、一瞬で様々な疑問が浮かぶも、それ所じゃない。

 あわてて後ろに飛ぶも、完全に間に合わない。

 

「さよならだ、坊や。藻屑と消えなっ!!」

 

 ゴウッと砲撃音が鳴り響く。

 その弾の数は、四つ。

 それらが全て、僕の体に吸い込まれるように迫ってきて……

 

 ――――あれ、死んだ?

 

 漠然と、思考が停止した頭でそんな言葉がよぎり、そして……

 

 

 

 

『3・2・1――――』

 

『セラフより警告>>戦闘を強制終了します』

 

 

 バッシィィィィィィイィィイイィィィィッ!!!!

 

 

「うわあぁっ!!?」

「くうっ!!?」

 

 僕達は互いに弾かれた。

 そう、ライダーも同時に。

 砲台の弾ではなく、見えない何か大きなものに、強制的に互いを引き剥がされたような感じだった。

 

「奏者っ!!」

「ご主人様っ!!」

 

 倒れた僕の方に、セイバー達が寄ってくる。

 僕は弾き飛ばされた衝撃で体のあちこちが痛むけど、それを押さえ込んで上体を起こす。

 

「っいったー……生きてる、よね」

「ああ、大丈夫かマスター」

「あ、うん。何とか、ぎりぎりあの砲撃には打たれなかったっぽいけど……」

 

 それでも弾き飛ばされた衝撃の痛みの方も結構強く、僕は直ぐには動けない状態だった。

 離れた場所から、慎二の苛立ちげな声が聞こえる。

 

「くそっ、あともうちょいだったのに! かまうもんか、ライダー! このまま直ぐにそいつをぶっ殺せ!」

「了解っと!」

「いっ!?」

 

 まだ立ち上がれていない僕の方に、ライダーが追撃を撃って来る。

 駄目だ、もう……!?

 そう思ったとき、バシンッ!! っと音が鳴り響き、ちょうど僕と慎二達との間で、銃弾が何か見えない壁に阻まれたように弾き返された。

 

「へ……?」

「あー、どうやら無理っぽいねえ……流石に戦闘が中断されたばっかで挑むのは、禁止されてるらしい」

「ちっ、命拾いしやがって……まあいいさ、君みたいな奴を今すぐ倒しておく必要も無いしね! そうやってゴミのように這いつくばっていればいいさ!」

 

 そう捨て台詞を残して、慎二とライダーは踵をかえして、アリーナの奥へと消えて行った。

 ……僕には、その背中を見ている事しか出来なかった。

 

 

 ★☆★

 

 

「ムッカーッ!! 何ですかあのワカメ! もうむかつくったらありゃしない!!」

「全くだ! あのワカメ達には、いつか灸を据えてやらねばならぬ!」

「全く……とりあえず、二人とも落ち着ついたらどうだ? 今ここで喚いても意味が無いだろう」

 

 アリーナから帰還した僕達は、マイルームに戻っていた。

 隣でセイバー達が慎二に対して文句を言っているけど、僕も正直同意見だった。

 それは、僕が彼等に負けそうだったというのも理由の一つだけど、他にも……

 

 

「しかし、あのワカメ……あろう事か、我等の邪魔をした挙句、アリーナのアイテムさえ根こそぎ奪っておったのだ! これで落ち着けなどと、無理な話であろう!」

「そうだね……はあ、結局今日の成果は、このトリガーだけかあ……」

 

 そう、あの後僕達は、ある程度アリーナを探索しようとしたけど、僕自身の戦闘ダメージが抜けていないため、戦闘は避ける事となった。

 で、そのせいで全くエネミー相手にお金や戦闘経験も稼ぐ事が出来ず、仕方ないからアイテムフォルダのお金狙いで探そうと、作戦を切り替えた。

 けれど、既に慎二達にあらかた取り尽くされた後だったようで、お金所か普通のアイテムすら見つけられなかった。

 おかげで手に入れる事ができたのが、このトリガーだけ。

 つまり、結局慎二達のせいで、今日の僕たちの収穫はほぼゼロなのだった。

 

「あのワカメ、とことん私達の事をからかってますね……」

「うん……このままじゃ、冗談抜きで決戦まで持たないかも……」

 

 慎二達に対して、僕達は完全に後手状態。

 何とか先手を打って、状況を打開したい所なんだけど……

 

「しかし……実際問題、向こうのサーヴァントとせめて対等で戦えるようにならなくては、此方から手を出すことなど不可能だぞ」

「あー、うん……」

 

 今回のライダーとの戦いは、完全に僕の負けだった。

 もし、セラフの介入が無かったなら……僕はあのまま聖杯戦争を脱落していただろう。

 

「正直、マスターがあそこまで持ち応えられたのは予想外であり、嬉しい誤算でもあったが……それでもまだ、ライダーに勝つには至らない。出来れば、何かマスター自身の強化などといった魔術礼装があればよいのだが……」

「その魔術礼装を手に入れるために、更にお金が必要になるっていうね……」

 

 お金を稼ぐためには、慎二達が邪魔になってしまい戦わなきゃいけないわけで……

 その慎二達と戦うためには魔術礼装が必要になって……

 で、その魔術礼装を手に入れる為にはお金が必要で……

 とまあ、こんな感じの悪循環になってしまっている。

 

「完全に悪いループに陥ってますね、これ」

「紅茶よ。お主の買ったアイテムの中に、本当に奏者自身の役に立つアイテムが入っておらぬのか? 一つくらいあっていいだろうに」

「すまない……マスター自身の戦闘を慣れさせる為に、回復系しか買っていなかった。その特訓の際に倒したエネミーから出たお金で、改めて装備を整えようと考えていたのでな」

「ほんと、使えない紅茶ですねえ……」

「役立たずにも程があろう……」

「完全に私用で使った貴様等だけには言われたくないがな!」

「アイテム、ねえ……」

 

 僕は何気なく、持っていた端末をもう一回覗き込んだ。

 無いと分かっていても、どうしても自分の目で確かめたいと思ってしまう無意識の行動だった。

 

「って、あれ? この【MATRIX】って欄、何? 何か点滅してるんだけど」

 

 何?っとセイバー達も言い争うのをやめて、僕の端末を覗き込む。

 僕はそのMATRIXと書かれている欄をタッチして選ぶ。

 

 

 ■MATRIX■

 

 CLASS :ライダー

 マスター: 間桐 慎二

 真名 : ?

 宝具 : ?

 キーワード : ?

 

 MATRIX・level 【1】

 

「これって……ライダーの情報?」

 

 其処には、さっき会ったばっかのライダーと慎二が表示されていた。

 その横には、殆どが“?”と表示されていたけど、明らかに彼等のステータスだった。

 

「これは……!? 敵の情報が表示されるのか!?」

「おお! これは凄いな!!」

「けど、これ殆どの情報が隠されてますよね?」

「うん。ていうか、この【MATRIX・level】って何だろう?」

 

 相手の情報が載っているっていうのは分かったけど、ちょっとしか表示されてなかったり、他にもよく分からない点がいくつかある。

 

「そういえば、一階に確か言峰神父がいたよね。ちょっと聞いてくるね」

「あ、なら私も行きます」

「うむ。なら余はさっきの彫刻の続きを……」

「おい。やるのはいいが、何故私のスペースに破片を寄せる!!」

「うん? ごみ置き場だからであろう? 紅茶のスペースは」

「よし、ちょっと其処に座ろうか」

 

 とりあえず、セイバーとアーチャーの赤コンビは置いといて、僕達はマイルームを出て一階に向かった。

 

 

 ★☆★

 

 

「む、MATRIX(情報)の事かね?」

 

 一階に来た僕とキャスターは、いつも通り此方を見透かしたような表情で立っていること峰神父に、早速話を持ちかけた。

 

「ふむ……この聖杯戦争は、情報が鍵となる。英霊というのは、その有名すぎる伝説ゆえ、同時に弱点も広く知れ渡っているものだ。つまり、その英霊に関する伝説を調べることで、おのずと相手の攻略の糸口も見えてくるだろう。それは、この君達が集めた対戦相手の情報を、随時まとめて更新してくれる機能の事だ。」

 

 なるほど。

 つまり、僕達が集めた対戦相手の弱点の情報を、自動的にまとめてくれる訳か。

 

「じゃあ、このMATRIX・levelって奴は何ですか?」

「それは、君達が集めた情報の量に応じた段階が表示されるだけなのだったが……」

「だが?」

「それだけではいささか物足りないので、少し私から趣向を凝らして追加機能を付けておいた」

 

 へ、へえー……

 この人、勝手にルール変えていいのかな……

 

「その機能は、MATRIX・levelに応じて、対戦相手だけに対応する抗防御結界術式(アンチプロテクトコード)を、君達自身に自動的に組み込むといった物だ」

「なっ!? アンチプロテクトコードですか!?」

「……?」

 

 何それ?

 そんな僕の表情を読み取ってくれたのか、キャスターがこっちを向いて簡単に説明してくれた。

 

「えっと、つまりですねご主人様。その術式を組み込むと、それに対応する相手との戦いがずっと楽になるって事です!」

「へー……。あれ? それってつまり、情報を集めれば集めるほど、ライダーとも戦えるようになるって事!?」

「そういう事です!」

 

 おおっ!!

 それは嬉しい機能……はっ!?

 

「ちょっと待って!? それってまさか自分のサーヴァントにしか組み込まれないって落ちじゃあ……」

「あっ……」

 

 キャスターがしまった、というような表情をする。

 が……

 

「いや、マスター自身にもサーヴァントに攻撃される可能性もあるため、どちらにも組み込まれるように設定されているが」

「いよっしゃああああああああああああああっ!!」

 

 ナイス言峰神父!

 ものすごく僕達にとって嬉しい機能だよそれ!!

 

「聞きたいことは以上かね? では、君達に幸あれ」

 

 そう言って、言峰神父は何処かに立ち去っていった。

 そういえば、NPCって夜とか普段何処にいるんだろうか。

 まあ、どうでもいいか。

 

「やりましたね、ご主人様!」

「うん! 正直お先真っ暗状態だったけど、何とか勝機が掴めそうだよ!!」

 

 つまり、僕たちがまずやらなきゃいけないのは、慎二達の情報集め!

 そうすれば、この悪循環から脱出できる!

 

「それじゃあ、明日から頑張ろうか!!」

「はい!!」

 

 そう、僕たちのこれからの行動指針が決まった所で、僕達はマイルームに戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、今日の晩御飯はどうするんですか?」

 

「………………………………………………………………」

 

 

 

 その後。

 

 食堂で手に入れて来た水と塩を持って帰ったら、セイバーと一緒にアーチャーに怒られた。

 

 




次回の更新は、正直受験終わるまで出来ないかも知れません。
楽しみにしてくれている人、ごめんなさい。
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