Fate/Extra Summon (バカテス*Fate/Extraクロス) 作:新月
「マスター、来たぞ!!」
「うん! 起動(アウェイクン)ッ!!」
僕が起動キーを叫ぶとともに、僕達を中心として、ブゥンッと音を立てて立方体の半透明な壁が形成された!
やっぱりこれって、召喚フィールドそのままだ!?
驚いている僕の考察など関係なしに、ライダー達の砲撃がすぐ目の前まで迫ってきている!!
ゴウッ!! ドオォンッ!!
「ぐうっ!!!」
砲撃が壁に当たると、密閉空間上にも関わらず凄い轟音が響き渡っているけれど、ライダーの砲撃を完全に防ぐ事が出来ている!!
でも、これ魔力がガンガン奪われて……っ!?
「奏者、気張るのだ!」
「あと少しです! ご主人様、ファイトーッ!!」
横でセイバー達が応援してくれるけど、本当にもう魔力が残ってな、
「やばっ!? 完全に切れた!?」
魔力が完全に無くなった途端腕輪の機能が切れ、同時に展開していた壁も消えてしまった!
うわやば!? あと少しで防ぎ切れたのに!
ドゴウッ!!
「「「「うわあぁーっ!!!??」」」」
最後の一撃が防ぎ切れず、僕達は直撃こそ免れたが、衝撃でバラバラにふっとばされてしまった……
★☆★
「っ……たたたた……。みんな、無事!?」
「けほっ! っう~、余は何とか無事ではあるが……」
煙と砂埃の中、僕の真横からセイバーのそんな返事が聞こえてきた。
その姿は埃まみれで、彼女の赤いドレスがうっすらと煤けてはいたけど、怪我らしきものは見当たらない。
「ゲホッ! ゲホッ!! く~、体中あちこち痛いのもありますけど、何より煙とかが凄くて、ゲホッ!
もう!! 尻尾が汚れちゃいます!!」
「ゲホッ! っだが……一応、全員無事なようだな……」
残り二人の声も聞こえてきて、僕は取り合えずほっとした。
どうやら、衝撃で僕達とキャスター達で、少し離れた場所に飛ばされただけみたいだ。
「うむ。しかし、その腕輪凄いな! まさかあれだけ強力な砲撃の中、それらを防ぐことのできる程の強力な障壁を張れるなどとは!!」
「まあ、完全とまではいかなかったけどね」
黒金の腕輪。
ラニに修理してもらった、ファイアーウォール発生装置。
正直ダメもとで起動してみたんだけど、まさかあれだけの砲撃の殆どを防いでくれるとは思わなかった。
後でラニに感謝しておこう、“ラニには”。
作った人でなしババアはどうでもいいとして。
「けど、残っていた魔力、ほぼ全部持ってかれたんだよなあ……」
端末のステータス欄を見てみると、MPが見事に0を切っている。
完全に防ぎ切れなかったのは残り魔力が足りず、展開し続ける事が不可能だったからだ。
一度使っただけで僕の持っている魔力を全部使われるなんて……
これ、使いどころ間違えると、一気にこっちが不利になる危険な物かもしれない……
「まあ、敵の宝具を防ぐほどの礼装だ。むしろ当然の対価と言った所だろう」
「……? “宝具”って、なにそ」
――――ミシッ――――ミシミシッ
「……? いま何か聞こえなかった?」
「うむ……聞こえてきたが……」
「なーんか、ものすごーく、嫌な予感がするんですけど……?」
そう、例えるなら、木の枝か何かにぶら下がって、それが重さに耐えきれずに折れてしまう直前のような――――――――って、
ミシッ!
ミシミシミシッ!!
ミミシミシミシッシミシミシッ!!
バキイイイイィィイィッィイッィイッィィイィィッィイッィッ!!!!
「「「「折れたああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああっ!!!??」」」」
やっぱりぃっ!!!??
僕達の乗っていた沈没船が、ライダーの砲撃に耐えられなかったのか、全体が前後に真っ二つに分かれてしまったっ!!
「うおおぁーっ!?」
「うにゃああーっ!!」
アーチャーとキャスターが飛ばされていた船首側の方が、下に何の支えも無かったのか、そのままゴゴゴッと落ちて行ってるーッ!!!??
「アーチャーッ! キャスターッ!?」
「なんと……っ!? アチャ男とキャス狐が落ちて行ってしまったではないか!?」
ズウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!
幸い落ちて行った部分は変にひっくり返ったりもせず、途中で何かに引っかかったのか、ある地点で止まった。
砂煙でよく見えないけど……アーチャーとキャスターは無事な、筈……
「な、なあ奏者よ……その、二人は……無事、なのかの……?」
珍しく狼狽えて二人の心配をしているセイバーだけど、多分あの二人なら、生きている筈だとは思う……
キャスターはともかく、幸運Jのせいか、校舎側で情報収集しているときでさえ怪我をしまくりながらも、なんやかんやで生きているアーチャーも一緒だったし。
多分アーチャーが下敷きになって、キャスターも助かっているだろうという予想がありありと頭に浮かんだけど、それは置いといて……
「とりあえず、二人の事は信じるしかないとして……っ!? ヤバッ!? 慎二達がこっちに向かってくる!?」
「っ!? 何!!」
まだ砂埃が舞ってよく見えないけれど、遠くにいたはずの戦艦がいつの間にか一番大きなもの一つだけになっていた。
それが、明らかにさっきより大きく見え、確実に近づいてきている事が分かった!
「どうする奏者よ!? 隠れるといっても、この古臭い船じゃ、殆ど場所がないのでわないか!?」
「くそっ! どこか、船内に入れる場所は……あー、もう!! 鍵が掛かってる!!」
多分船内への入り口らしき扉を見つけたけど、扉をガチャガチャ動かしても全く開きそうな気配がない!
「うー……これは鍵が掛かっているというより、セラフ自体が封鎖していると思った方がよいな……恐らく、今回の決戦場で使えるのは甲板のみと言う事なのだろう」
「て言う事は、無理やり扉を力づくで開ける事も不可能って事!?」
「うむ、そう言う事になるな」
ヤバい!!
慎二達に、僕達が無事な事がばれた瞬間、この船に降りずにまた遠距離狙撃をされる!!
そうしたら、魔力が完全に尽きた以上、今度こそ防ぐ手段が完全になくなって、終わりになる!?
少なくても、慎二達が降りてくるまでは気づかれない場所にいないといけないって言うのに、どうす
ゴンッ!!
「っいだあ!!!?? 何々っ!? タル!?」
頭に地味に強い物理的な衝撃を食らい、とっさに周りを見渡した後、一つのタルが近くをゴロゴロ転がっていた。
あー、これが当たったのか……
確か、“船尾楼”って言うんだっけ?
船の後方の上甲板より一段高い部分の事で、多分そこから落
ガンっ!! ゴンッ!!
「づおぁぁぁぁぁぁっ!? 今度は連続二個!?」
考察していたら、今度は連続で頭に衝撃が来た。
正直、かなりジンジン響いて、頭がくらくらしてきた……
「何!? 上の方、何か壊れ」
ガンゴンギンゴンガンギンガンッッッ!!!
「~~~~~~~~~~っ!!!??」
既に言葉にならない悲鳴を上げながら転がっている僕を見て、セイバーがポツリと。
「奏者よ……お主、どれほどタルに好かれておるのだ?」
「タルに好かれても全く嬉しくないよ!! ていうか何で全部僕!?」
セイバーに当たれとは言わないけどさぁ!!
けど一つくらい直接床に当たっても良くない!?
「まあ、奏者のステータスはマシと言っても、幸運はE止まりだからな」
「セイバーに至ってはHじゃなかったっけ!? 何この違い!?」
ふむ、それはまあ……と、セイバーは片手を顎に当て、
「日ごろの行いの差であろう?」
「嘘だッ!!!」
120%あり得ない暴論を出されて、思わず某どこぞのひぐらし風に叫んでしまった。
散々パーティのお金散財しながらマイペースで行動していたセイバーの行いが!?
それがまかり通るなら、この世に神などいないっ!!
「それより奏者よ! 急がねば、あのワカメ達に気づかれてしまうのでわないか!?」
「くうっ!! いろいろ言いたい事はあるけど、今はぐっとこらえる事にして……じゃあこんなのはどう?」
★☆★
「げほっ! えほっ!! くそ、煙が酷いな……おい、ライダー!! さすがにこの惨状じゃ、向こうはとっくにやられてんじゃないのか?」
「確かに決戦場の舞台は、完全に前後で真っ二つになる位だけどねえ……」
決戦場だった沈没船の、残っている方の上に戻ってきたアタシ等は、煙と砂埃の舞う中周りを見渡していたけれど、あの坊やたちの姿は確認できなかった。
シンジは完全に勝利を確認してるっぽいけど……
「いや、気を抜くんじゃないよシンジ。前に図書室の前で嵌められた時の事、忘れたのかい?」
「ぐっ!? ああ、忘れて無いさ! くそ、今思い出しても腹が立つ!!」
そう言いながら慎二は拳を作って、もう片方の掌に打ち込んでいた。
あの時も、あの坊やが確実に死んだとアタシ達は思い込んでいたからねえ……
アタシもあの坊やなら、あんな馬鹿な作戦を本気で実行すると思っていたから、完全に罠に嵌ったわけで。
つまりは相手を軽く見た、こっちの完全な油断さ。
「たとえ生き残っていたとしてもそれを隠して、完全に勝利をしたと思い込んでいるこっちを不意打ちする位なら、むこうはやりかねないよ。注意しときな」
「ああ。生きていたなら、今度こそまた宝具でぶっ飛ばしてやる!」
そんな簡単に連発するもんじゃないんだけどねえ、宝具って奴は。
しっかし、こんな相手に慎重になるなんざ、アタシの性格じゃないんだけどねえ。
そんな事を考えていると……
――――ゴロゴロ……
明らかに不自然なタルが、ぽつんと一つ転がって登場。
「「…………………………………………」」
その光景に、アタシらは一瞬無言になった。
そのタルは明らかに不自然な揺れをしながら、ゴロゴロと近づいてきていた。
無言のアタシらの横を通りぬけて、やがて後ろの方で揺れが収まり、完全に静止したのが分かった。
ポツンと一つだけ存在しているタルがアタシらの真後ろに。
そして前の方には、これまた不自然なほど積み上げられて、後ろに誰かいても見えないほどのタルの山。
「…………シンジィ、分かってるね?」
「ああ、あの時の再現だって事は、嫌というほど」
ふーん……やっぱり、あの坊やは意外と姑息な知恵を持っているねえ。
前回は、向こうの馬鹿さ加減を印象付けられて、ポツンと置かれた段ボールの中に本当に隠れていると思わせて、実際には別の場所に隠れていたが……同じ事はするとは思えない。
そこが向こうのみそとなる。
つまり、前回そう印象付けておいて、裏をかいて今回は本当に後ろのタルに隠れていて、アタシ等が山の方を攻撃している間に、背後から奇襲……
そして、もしかしたらそのさらに裏をかき、山の方に隠れているとも考えられる。
あの坊やなら、どっちの作戦をとってもおかしくないねえ。
……まさしく“二者択一”という言葉がふさわしいねえ、この状況。
坊やたちが隠れている方を当てれば、ほぼ勝利は確定。
逆に外したら、一気にこっちがピンチになる。
今度はこっちの宝具の発動なんて待ってくれないだろうしね。
……ああ、なかなかいい作戦さ坊や。
深く考えれば考えるほど、思考のループに嵌っていきそうだよ。
ただ、この作戦。
致命的な欠点がある
「行くよぉシンジィ!!」
「は! 分かってるよぉっ!!」
その掛け声とともに、アタシは前を、シンジは後ろに向き直る!
「カルバリン砲っ!!」
「コードキャスト・shock(32)っ!!」
アタシのカルバリン砲はタルの山に。
シンジのコードキャストは、後ろのタルに襲い掛かる。
そう、どっちに隠れているか分からないなら……
「両方選んじゃえばいいってだけの話さっ!!」
ましてやアタシ等は海賊さ!
どっちか一つ何てケチな事はせず、両方取る強欲な奴なのさ!!
「ライダー! こっちは外れだ!!」
後ろのタルがバキィっ!! と音を立てて壊れたのが聞こえ、その後にシンジのそんな声が聞こえてきた。
と言う事は、つまり……
「うぅああぁっ!?」
そして、アタシの砲撃が当たる直前に、坊やについていたセイバーがタルの山の横から飛び出して、直撃をかわした!
ビンゴだ!
「そ、奏者ぁっ!? みんなぁっ!?」
自分が飛び出した後、砲撃でボロボロに壊れたゴミ屑の山となった物を見て、セイバーがそう悲痛な声を上げる。
策に溺れるとはこの事さね。
本来この戦いは、マスターとサーヴァントが共に戦うもの。
アタシ等は二人いて、それぞれ強力して戦っていたから、あんた等の策を打ち破れた。
どっちか片方しか戦ってなかった時点で、そっちの負けは決定していたのさ。
「さて、まだまださねぇっ!!」
ゴウッ!! ドオォンッ!!
私はありったけの魔力を使って、壊れたタルの山にカルバリン砲を打ち続けた!
あの坊やはなかなかしぶとい、死んだと思い込んだ時点でこっちが逆に追い込まれていたのは、経験上分かっている!
死んだ後に追い打ちを掛ける位じゃないと、勝ったとは言えないさね!!
「あははっ!! いいぞライダーッ!! このまま原型を留めなくなるまで、撃ち続けろ!!」
「や、やめろ……やめるのだあっ!!」
泣いたって止めりゃあしないよ。
勝負っつうのは、非常なもんさ。
ましてや聖杯戦争、情けは無用なも――――
「――――――――っ!!!??」
ゾクリッと。
そんな嫌な予感がアタシの背筋に走った、そのセイバーの顔を見た時に。
あいつは泣いてなんかいない
“笑っていた”
「シンジィッ!!!」
「おわあっ!?」
アタシは横にいるシンジを押し飛ばして、自分は反射的に前に転がるように飛び出す!
ズガアァァァァァァァンッ!!
直後、アタシらのいた場所が、大きな轟音を立てて何かが降ってきた!!
直撃だったら、確実にアタシ等はやられていた。
今のは、やっぱり……!!
「くそっ!! 避けられた!?」
「坊や……っ!!」
今度こそ殺したと思った坊やが、上から攻撃してきた!
くっ、何処から降ってきて……あの後ろの船尾楼の上か!?
さっきまでそこに待機していて、アタシ等が完全に油断した時に、上から今度こそ確実に仕留められるように……!!
「あーもう! 今度こそ捉えたと思ったのに! “タルを使って隠れている”と思わせた時点で読み合いは勝っていたんだけどなあ!!」
「……っ!?」
そうか……アタシ等は前提からして間違っていた!
前回この坊やが段ボールを使って、そこに隠れていると思わせて引っかける作戦を使ったから、今回はその印象を利用して、一つだけのタルに隠れているか、“他の場所”に隠れているかを考えていた。
その他の場所に、分かりやすい隠れそうなタルの山が置いてあったせいで、アタシ等はどちらかに確実に隠れていると思い込んでしまっていたんだ!
初めから二者択一何かじゃない……!!
そう思い込ませることが、坊やの狙いだった!
「何処まで驚かしてくれるんだい、この坊やは……!」
セイバーだけをタルの山に隠れさせていたのもそのため……
転がってる方のタルにいないなら、確実に山の方に隠れていると誤認させるためだった!
セイバー一人だけが飛び出たって、こっちの攻撃で壊れたタルの山じゃあ、中に誰か隠れていなくても見えっこないから!
「けど、もう逃がさないよ。さっきの連続攻撃で、結構魔力使ってるんじゃない?」
「く……全く、こいつはヤバいね」
しかも今の位置は、後ろにセイバー、横の離れた位置にシンジ、そして目の前に坊やがいる状況……
挟まれたように見えるが、実質セイバーの戦闘力は今までの行動からほぼ無いとして、それは問題ない。
むしろ、船が折れたせいで背後が何もない崖状態の前に、坊やがいると言う事が問題さね。
一見、逆に坊やが追い詰められた状況に見えるが……アタシに関しては逆になる。
アタシの宝具は戦艦、つまり乗り込んで発動するものだが……どうしても乗り込むために決戦場の端まで行かないと行けなくなる。
もし坊やたちが生きていたとしてもすぐに宝具を再発動できるように、船の壊れた部分を背後にして近くにいたんだが……位置取り上、それは無理。
もし無理やり乗り込もうとしたら、今度こそその隙を坊やは見逃さないだろう……そもそも、さっきので魔力をだいぶ使っているし、発動自体が怪しいもんだけど。
「さあ、とどめぇっ!!」
「つうっ!?」
一気に距離を詰めようとする坊やに対して、二丁拳銃で連射して止めようとするが、もう坊やを止められない!!
もうあと数歩で届く……っ!?
「コードキャスト・shock(32)っ!!」
離れた所から、シンジの魔術の発動の声が聞こえた。
その魔術の塊は、坊やを止めようと打ち出される!
「もう引っかからないよ!!」
坊やも学習したのか、シンジの撃ったコードキャストすら、木刀で防ぐ。
だが、ナイスだシンジィ!!
今この瞬間だけ、坊やの大きな隙となった!
「ハアァーッ!!」
その瞬間、アタシは坊やの“木刀”を狙って狙撃した!
坊や自身ではなく、武器そのものを狙った攻撃に不意を突かれたのか、一瞬慌てたような顔だった。
カァンッ!
「っ!? やばっ!?」
意外な攻撃に対処し切れなかったのか、狙い通り坊やの獲物は何処かに飛んで行った!
これで坊やは丸腰! 防ぐ手段は完全に無くなった!
「終わりさあっ!!」
今度こそ、確実に討ち取る!!
武器が無くなったといっても、坊やなら直接殴る位はして来そうだ!
ここで弾幕を張って、決して坊やを近づけさせずに、このまま倒し
「奏者ぁぁぁぁぁぁぁあああああああああっ!!」
「「「っ!?」」」
背後をチラリと見てみると、セイバーが大剣を構えて向かって来た!?
セイバーは戦闘なんて出来ないはず……っ!?
いや、まさかそれすらも策としたら……!?
「くうっ!!」
アタシは片方の拳銃を、それでいて坊やの方の警戒も保ちながら、セイバーに向けた。
ただのハッタリかも知れないが……丸腰の坊やより、武器を持ったセイバーの方が脅威と思ったから。
「甘いさねぇっ!!!」
アタシはセイバーに向けて発砲した。
不意打ちなら叫んだ時点でそっちの失敗、ハッタリならそれはそれでいい。
そして、セイバーは……
「っヤアアアァァァァァァァッ!!!」
大剣を……“投げた”
「はああっ!?」
自らの獲物を投げ捨てる行動に、アタシは素っ頓狂な声を上げた。
セイバーは投げた瞬間、体制を崩し転んでいたが、そのおかげでアタシの弾丸を避けていた。
そしてアタシに向かって投げてきた大剣は、そんなに勢いがなく軽々と横に躱せることが出来き、後ろにそのまま飛んで行った。
自棄になったのかい?
そんな大雑把な攻撃で、このアタシが倒せる訳が
いや、待て……後ろに飛んで行った?
“後ろには誰がいた?”
「ありがとう、セイバー。ナイス、アシスト」
「――――――――――っこのぉ!!?」
しまった。
今のは攻撃じゃなくて、丸腰の坊やへの、パス――――っ!?
「ハアアアアアァァァッァァァァァァ――――――――ッ!!!!!」
両手で大剣を構えた坊やが、走りながらすでに振り下ろすモーションに入っていた!
「このぉ、舐めるんじゃないよォォォォォ――――――――ッ!!!!」
それをアタシは、振り向きざまに発砲して向かい撃つ――――っ!!
――――――タァンッ
――――――ザンッ
……アタシと坊やの擦れ違い際、一発の銃声と、剣の切り裂く音が響いた
「…………………………………………」
「…………………………………………」
暫くの間、静寂の時間が過ぎた。
そして……
「……っ!! げほっ!? がほっ!!」
「っ!? 奏者ぁっ!?」
膝をついたのは坊やの方だった。
持っていた大剣を地に落とし、四つん這いの状態になって咳を荒くしていた。
そこにセイバーが、演義でもない本当の悲痛な声を上げて近づいていくのが見える。
――――ああ、
「は、はは……あははははっ!! やった、やったぞライダーっ!! 今度こそ、吉井の馬鹿を倒したんだ!!!」
ウチの船長の声が響いてくる。
その声は、今度こそ勝利を得たと確信した響きを含めて、
「悪いねえ、船長――――――――」
「はは、は……? お前、何言って……!?」
……だが、
アタシの前に回り込んだシンジが、それを見つけたようだ。
そう、胴体を斜めに切り裂いている太刀筋の跡が。
「こりゃ……いいの貰っちまったみたいだね……」
両手に力が入らず、拳銃が音を立てて床に落ちる。
背後で坊やが立ち上がろうとしているのが、気配で分かった。
逆にアタシは立つこともままならず、アタシはそのまま背中から倒れて行く――――
「アタシらの――――負けさ」
★☆★
【ステータスが更新されました】
■マスター:吉井明久
<スキル>
・悪知恵:C
相手との読み合いで、裏をかくことのできる策を思いつく。バカなりの突拍子もない発想と、悪友との付き合いの中で培ったスキル。だてにあいつの友達をやってる訳じゃない! 週に七回くらい疑うけど!
ちなみにその悪友の場合は、ランクはB+位だとかなんとか。
<礼装>
・黒金の腕輪(ファイヤーウォール):B+
学園長から貰った特殊召喚フィールド発生装置を、ラニが修理した礼装。並のサーヴァントの宝具級の攻撃すら防ぐ事の出来る障壁を発生させることが出来るが、魔力の消費量が激しく、展開は数秒が限度。
コードキャストの構造上、簡単に複製が出来、量産が可能な危険な礼装でもある。
ちなみに余談だが、当初は外からの攻撃を防ぐ盾ではなく、ババアが明久を利用した実験の際、何があっても明久だけにしか被害がいかないようにする隔離空間発生装置だったらしい。
≪ここから下を消去しますか?≫
“YES” NO
■マスター:吉井明久
<スキル>
・タルに愛されるもの:C+
このスキルを持っているあなたは、とにかくタルに好かれます! 近くにタルがあったら、まず間違いなくあなたに近づくでしょう! 犬のようにゴロゴロ転がってきたり、空から降ってくる系の少女のように!! これを受け入れれば、あなたはきっとタルソムリエにな
≪消去完了しました≫