Fate/Extra Summon (バカテス*Fate/Extraクロス) 作:新月
いろいろ引っ越し作業とかで忙しくなりそうです。
「――――ヤバい、久々に完全な寝不足だ」
休日が最終的にカオスな日になった翌日、僕は改めて二階の掲示板の前まで来ていた。
来ていたはいいんだけど……正直、すでにもうフラフラ状態だったりする。
昨日の夜、ずっとキャスターに泣き疲れ、そしてそれを引き離そうとするセイバー、加えてずっと残骸の下敷きで唸っていたアーチャーの三人がうるさ過ぎて、全然眠れてない。
多分今の状態で鏡を見たら、目の下にもの凄いクマが出来ているのが確認できるだろう。
ちなみにその寝不足の原因の三人は、朝にはグッスリ眠り込んでいて、マイルームで留守番中だった。
くそう、何か凄い理不尽を感じる。
「あー……とりあえず、二回戦の対戦相手はー……」
とにかく、さっさと対戦相手を確認してマイルームに戻って仮眠をとろう、うんそうしよう。
そんなことを誓いながら、目の前の掲示板を改めて見直す。
『二回戦 吉井明久 対 ダン・ブラックモア』
「――――ふむ。君か、次の対戦相手は」
「え?」
ふと横を見ると、いつの間にか一人の老人が立っていた。
老人と言っても、白い頭髪と髭をしている所以外は、まるで老いというものは感じられなかったけど。
長い年月を相応したその風格から、ある嫌な予感を感じ、……“とある人”を連想した。
「……若いな。実戦の経験値もないに等しい。相手の風貌に臆するその様が、なによりの証だ」
この人が、僕の次の対戦相手の、ダン・ブラックモア……
歴戦の戦士のような佇まいをしながら、僕の方を値踏みするような視線を向けてくる。
その威圧感を受けながら、僕は直感的に感じ取る……
――――――あ、これ話長くなりそう。
「……ふむ」
……と、僕の目を覗き込もうとしてる老人を見ながら、そんな嫌な予感が凄くしてきた。
あー、そうだよ、誰かに似てると思ったらこの感じ、“校長先生”を連想するんだ。
ほら、全校集会の時とかでやたら無意味に長く話す人。
ヤバい、僕今もの凄く早くマイルームに戻って仮眠を取りたいのに、よりにもよってこんな会話が長くなりそうな感じの人と当たるなんて……っ!
「それに、君の目……酷いクマだ。よほどこの戦いへの恐怖心で、心が休まる時間が無かったのだろう」
まさか、味方陣営が喧嘩して騒がしかっただけです。などとは、夢にも思わないんだろう。
けど、僕はその事を言おうとしたのをぐっとこらえる。
身内の恥をさらす気は無いし、言ったら言ったで事情を詳しく追及されでもしたら、余計に眠る時間が無くなる……!!
「案山子以前だ。そのような状態で戦場に赴くなど……不幸なことだ」
むしろ校長先生と当たった事の方が不幸です。
と思ったけど、これも言ったら言ったで老人お得意のお説教タイムに突入する感じがするので言わない。
このままじゃ駄目だ、何とか自然に話を逸らし、速やかにここを離脱する話題を出さなきゃ!
えーと……
<シュミレーション1>
僕:そのお髭、ご立派ですね!
老人:そうだろう、ここまで整えるのに苦労してな。かれこれ何十年近く……
はい却下、次。
<シュミレーション2>
僕:趣味は何ですか?
老人:盆栽を育てる事だな。儂が隠居する頃から初めてな、その頃は……
うん、これも駄目。次。
<シュミレーション3>
僕:すごくお若く見えますね!
老人:いやいや、これでも結構な年をいってるんじゃよ。儂が定年してからもう何年か経っていての。その仕事といったら……
駄目だぁっ!?
くそうっ! 僕の灰色の脳細胞を駆使しても、何言っても長時間会話コースに入る未来しか予想できない!!
おのれセラフッ!
縛りプレイを強制させたり、老人を使って睡眠時間も削らせようとするとは、何処まで僕を不幸に陥れれば気が済むんだ!!
「では失礼する。君の迷いが晴れるといいのだが。決戦で君と正面から向き合うために、な」
もうこの際仮病使おうかな!?
ちょっとお腹が痛くて……いや、ありきたりか。
頭痛が酷くて……これも似たようなものか。
もっとこうなんかひねりが欲しいな……嘘だとばれず、もの凄く自然で且つ斬新な……
あ、そうだ! “白髪頭を見ると気分が悪くなる”と言うのはどうだろう!?
うん、我ながら斬新なアイデアだ!
恐らくこんなこと考えたの僕が初じゃない!?
よし、さっそく実践……
「あのー、すみませ……ん?」
あれ、誰もいない?
おっかしーな、さっきまでここに居た筈だよね?
「……まあいっか、さっさと戻れると思えば。さーてと、早くマイルームに戻って二度寝しよーっと」
――――こうして、一日目が終了。
★☆★
二日目。
「――――で、それであんたはここ二日間、私達の前に顔を出さなかった訳?」
何故か屋上で正座状態からスタート。
目の前には、怒れるツインテールと苦笑い中のフワフワガールが立っていた。
「何でこんな事になってるんだろう……」
「それはですね。朝起きてマイルームから出て来たら、いきなり凛ちゃんにガンドで気絶されて拉致られたからですよ、明久君」
「ありがとう、よく分かったよ」
「うっさい! 勝手に喋るなっ!!」
「理不尽過ぎるっ!?」
「あはは……」
何かよく分からないけど、本当に遠坂さんは子供が見てもすぐ分かる位ご立腹の様子!!
ていうか、ホントに僕何もやってないよね!?
怒られるような事最近はしてないよね!?
「何もしてなかったからよ! 全く……アンタの様子がおかしかった事を瑞樹に話したら、この子が心配だって言うから、次の日とかに立ち直ってるのかどうか確認しようとしてたのに、全然くる気配が無いし!」
いや、そりゃあ約束も何もしてなかったら、会うも何もないんじゃ……
「それで今日、こっちの心配も知らずものすごく爽やかそうな顔してでてきたりしたら、普通にイラッときてガント位撃つわよ!! しかも会わなかった理由が、ラノベ読破と丸一日昼寝って、何処まで私をブチ切れさせるつもりよ!!」
いや、だって本当に寝不足で……
やっと久しぶりにグッスリ眠れたから、凄く気分がよかったからさあ。
って、あれ? もしかして……
「……何だかんだ言って、僕の事心配とかしてくれてたんだ?」
「そうなんですよ。凛ちゃん、私の事が大丈夫と分かった後、明久君の事もずっと気に掛けてくれていて、ここ二日間ずっとこんな調子で」
「ちょっと瑞樹っ!? 何言ってんのよ!? べ、別にそんなんじゃないわよ!! 私はただ、こいつの言ってたが普通と違ってたから、ただそれを確認しようとしただけで! 精神に異常がないかどうかちょっと調べようかなーって気まぐれで思っただけで、こんなマヌケ面の奴自信なんてこれっぽっちも心配してないって言うか――――」
――――ただいまツンデレの嵐が発生中・好きな言葉を想像してお待ちください――――
で、三十分後。
「――――だから別に大した意味なんてなかったって言うか、あんた等聞いてるっ!?」
「あー、うん。聞いてた聞いてた」
ホントは途中から今日のご飯は何処から仕入れてこようかと考えていたんだけど、言ったらまたさらに長くなりそうだから適当に誤魔化しておこう。
けど、まさかツンデレの言葉だけで三十分間も続くとは思わなかった……
改めて、遠坂さんは本当に凄いと思う。いろんな意味でだけど。
「何故だか今、もの凄くイラッとしたのだけど……はあ、まあこの話はもういいわ。本題はこれじゃないもの」
「え? 用ってこれだけじゃ無かったの?」
「え? そうなんですか?」
「あんた等私の事をどう思ってんのよ」
何って……
「ツンデ……お人よしな人」
「ツンデ……大切なお友達です」
「今凄くハモって言いかけた言葉を小一時間程問い詰めたくなったんだけど、まあ置いといて……あなた達の対戦相手の事よ」
対戦相手?
遠坂さんはそうと言って、何処からか出したのかいつの間にか手に持っていた眼鏡を掛けて、僕達に説明を始める。
「まず、吉井の対戦相手はダン・ブラックモアよね?」
「ああ、あの校長先生」
「誰よそれ!? 何勝手にキャラ作ってんのよ! “軍人”よ軍人!!」
あ、なるほど軍人か。
それはともかく、キャラ作ってんのって……今まさにメガネ掛けて先生キャラになってる遠坂さんが言う事じゃないと思う。
「気分の問題よ。それはともかく、ダン・ブラックモアは西欧財閥の一角を担うある国の狙撃手。流石に今は現役を引いているけど、女王陛下の懐刀とさえ呼ばれていて、かなり名の知れた人物よ」
「そ、そこまで凄い人なんですか?」
「ええ。匍匐前進で1キロ以上を進んで、敵の司令官を狙撃するとか日常茶飯事。並の精神力じゃない事は確かね」
「匍匐前進でステージに上がって全校集会……嫌すぎる光景だね」
「校長から離れなさいっ!!」
まあ、冗談はこれくらいにして。
にしても、本当に凄い人物なんだね、ダン・ブラックモアって人。
「って、じゃあ姫路さんの方は?」
「え? 私ですか?」
うん、二回戦で既に僕の方は凄そうな人と相手なのに、姫路さんの方は大丈夫なのか気になる。
出来れば、楽そうな人だといいけど……
「私の方は……何ていうか……」
「どうしたの? まさか、そんなにヤバい相手?」
「いえ、そう言う訳じゃ……いえ、そうなのかもしれません」
……?
何か歯切れが悪いなあ。
本当にどうしたんだろう?
「えーっと、一言で言いますと……」
「うん」
「……ま、“マク〇ナルド”? でしょうか……」
「……へ?」
……マク〇ナルド?
「だから、マク〇ナルド、です」
「……マク〇ナルド?」
「はい」
……えーと、
「マク〇ナルドって……つまり、あの、“ランランルー”……の、あれ?」
「あ、はい! それです! それが一番しっくりきます!」
……えー……
「ちなみに、名前は【ランルーくん】です」
「まんまだね」
「そうですね」
「「…………………………」」
……なんか、暫くの間、何ともいえない時間が流れた。
「……ま、まあ、ともあれ姫路さんの方は大丈夫そうかな?」
「いえ、そうとも言い切れないわ」
僕の考えをバッサリ切り捨てるように、遠坂さんが話に入ってきた。
そうとも言い切れないって……だって、パクリでしょ?
某有名なバーガーショップの。
「そのランルー君って人自体は知らなかったけど、一応私の方でもそいつを見に行ったのよ。あ、もちろん直接話しかける事はしなかったけどね」
あ、姫路さんのために、ワザワザ自分の相手じゃない人の事も調べてあげようとしてたんだ。
やっぱり、こういう所遠坂さんは優しいよね。
言ったらまたツンデレ始まりそうだから言わないけど。
「それで、見てきた感想だけど……ヤバいわよ、あいつ」
それはともかく、至って遠坂さんは真面目な顔をしてそんな事を言ってきた。
「ヤバいって……?」
「言葉通りの意味よ。あれ、傍から見ても精神が破綻してるみたいにしか見えないわ」
「はい。私も、掲示板を見に行ったときに、チラッと見ただけだったんですが……何か、普通の人と違うな、と思いました」
精神が、破綻……?
それって、僕が一回戦終わった後気にしていた……
「……へ? あ!? 吉井が気にしてる奴じゃないわよ!? むしろあんたは十分マシな部類よ。アイツに至っては、もっと酷いって言うか……狂気すら感じられたわ」
「狂気……?」
「あ、そう言えば。前に私が見た時、あの人、こちらの方を見て……」
姫路さんが、思い出したようにそう切り出す。
え、姫路さんの方を見て……?
「……その、“美味しそう”とか言っていたような……」
「姫路さん。即刻そいつを倒そう。速やかに、決戦を待たないで」
僕はそいつに恐怖を通り越して殺意と戦慄を覚えた。
何しようとしてるんだその対戦者はっ!?
まさか姫路さんに対して、あんな事やこんな事をしようとしてるんじゃないだろうな!?
くそっ!! 僕が対戦相手だったら即ぶっ飛ばしてやったのに!!
あ、いや、この際ペナルティ覚悟で学園側で僕が倒したら……
「あ、ちなみに何か勘違いしてるみたいだけど……ランルー君って“女性”らしいわよ?」
「って、ええっ!?」
「えぇーっ!? あの見た目でですか!?」
確かに僕は直接見てないけど……
よくCMで見る黄色と赤の服で色白な顔をしているピエロが女性……?
あ、全然想像できない。いや、元から性別がどっちなのか分からないような存在だけど。
「ええ、近くにいた参加者とかに聞いた事だけど。ちなみにあの格好、本人いわく“レンレンバーガー”のマスコットキャラクターのを真似たらしいわよ」
「マッ〇じゃないんだ!?」
「何よそれ」
衝撃の事実!?
今までずっと有名な方のピエロを想像してたよ!
え、あれ!? 一気に頭の中のイメージが訳分かんなくなってきた!
「え、じゃあ美味しそうって……?」
結局その言葉の意味はどういう事なんだろう?
男だと思ってたから、思い浮かんでいた方だと意味が通らないし。
いや、まさかそう言う趣味が……?
「これも噂でしかないんだけどね……」
そう遠坂さんが、前置きをしながら……
「――――彼女、“人”を食べた事があるらしいわよ」
「「――――え?」」
……その後に言った言葉は、すぐには僕達には理解できなかった。
何を……食べたって?
「私も、最初は信じられなかったんだけどね……さっきも言ったように、彼女からはそれが本当だと思えるほどのヤバい感じがした」
そこには、欠片も冗談を言っているような雰囲気は無かった。
遠坂さんは、至って真面目に、彼女自身が感じ思った事を話している。
だからこそ……彼女の言っている事が、それが真実という重みが感じられた。
「それに、あなた達は予選を最後の方で突破したから知らないだろうけど……彼女は一足早く本戦会場に入っていて、そこで人知れず参加者やNPCを襲っていたそうよ。実際に、それは運営からの横槍が入るまで続いていたみたい」
「そんな……っ」
そんなヤバい相手が姫路さんの相手だって……!?
冗談じゃないっ、これが聖杯戦争だって言うのっ!?
そんな狂っている奴が普通に参加しているなんて、正気じゃ無さすぎる!!
「だから、十分気を付けなさい。一回戦とは訳が違うわよ。まあ、私もギリギリまでは、ある程度は強力なコードキャストとか教えてあげるから」
「あ、ありがとうございます! 凛ちゃん!!」
「か、勘違いしないでよね! わ、私はただあんな精神破綻者より、お人よしそうな貴方と当たった方が楽そうだから、手を貸してあげているだけなんだから!! だから私はあなたに対して好意で優しくしてあげてるなんてこれっぽっちも――――――――」
――――ただいまツンデレの嵐が発生中・好きな言葉を想像してお待ちください――――
「――――だからそれ以上の感情なんて持ってないって言うか、聞いてるっ!?」
「えっと……ツンデレが正直で、照れ隠しが正気で、精神が優しくて、あれ? あれー……?」
「何かショートしてるっ!?」
まあ、そりゃあ今度は一時間近くの照れ隠しをされてたら、ねえ……
精神的に丈夫な僕はともかく、直接言葉のガンドを浴びせられた姫路さんじゃ、体制が殆ど無かったんだろうと思う。
……けど、人を食べた事がある精神破綻者、か。
あくまで姫路さんの相手で、僕が手出しする事は出来ないけど……
もしこっちの手が出せる学園側で、彼女に何かしようものなら、僕は……
そう、心の中で静かにある事を決心していると、ある事に気づく。
「……あ、じゃあ遠坂さんの相手の方は?」
そう言えば、遠坂さんの相手はまだ聞いてなかったよね?
僕達で、ただでさえ元軍人と精神破綻者が相手の二回戦だ。
もしかしたら、遠坂さんの相手もただの人じゃないのかも……
「……私? そう、私ね……」
そう言って、遠坂さんはフッと遠い目をしながらため息をつく。
あ、あれ? どうしたんだろう?
「何ていうか……極度な“ごった煮宗教家”って感じで……」
「ご、ごった煮宗教……ですか?」
宗教って、あのキリスト教徒とかって奴?
僕は別に何かの信者って訳じゃないけど、ごった煮ってどういう事だろう?
そう疑問に思っていると、遠坂さんは心から憂鬱そうに話し始める。
「そう。名前は【臥藤門司】と言って、何か古今東西のありとあらゆる宗教を混ぜたミックス宗教論を唱えてる、それはもうもんの凄く暑苦しい奴だったわ。テンションがやたら無意味に高くて、自分のサーヴァントの事を神とか言っちゃってるし、もう意味不明な事しか口走って無かったわよ」
「何か、そっちも凄く大変そうですね……」
「ええ、それはもう。話が全く通じないし、こっちもある意味の精神破綻者と言えるほどね。全く、ろくな対戦相手がいないんじゃないの、この聖杯戦争っ!!」
確かに……
遠坂さんの叫びに、凄く同感する。
と言うか、三人の対戦相手中の二人が精神破綻者って……
「何か、僕の対戦相手が凄くマシな部類に思えてきたよ……」
「とは言っても、あくまで精神的な面で見たらって事だけよ。むしろブラックモア卿が聖杯戦争においては当然な精神で、普通に強者って事がはっきりと分かってるわ」
「あー、そうか……」
そうだ、二人の対戦相手があまりにも異質だったからマシに思えていたけど、僕の相手も十分ヤバい相手だったんだ。
むしろ遠坂さんの言うとおり、二人よりこっちが一番厄介な相手かもしれないんだ。
「何か、本当に勝てるかどうか自信無くなってきた……」
「当然よ。一回戦の相手とは何もかも違う。 いや、まあこっちの二人も異質すぎって言えばそうだけど……それでも、これは聖杯戦争。それ位の事は当然だと考えるべきだわ。いくらあなたのサーヴァントの“宝具”が強力だと言っても、それだけじゃこれから勝ち残る事は出来ないわよ」
「うん……って、宝具? 何それ?」
「は?」
「え?」
「うん?」
遠坂さんが何か聞き慣れないワードを言ったから、それを聞き返したら、何か二人がハトが豆鉄砲食らったような顔をした。
え、何? 何か僕おかしい事聞いたの?
って、
「いや、何って……宝具よ宝具。サーヴァントをサーヴァント足らしめる絶対的な力の事よ。ほら、アーサー王だったら、聖剣エクスカリバーみたいな」
「私達の召喚獣で言うと、腕輪の能力に近いですね」
ああ、そう言えば一回戦の時にアーチャーが言ってたような……
成程、要は姫路さんの召喚獣の“熱線”みたいな強力な力が宝具って事か。
前に試召戦争で見た時は、強力なエネルギー波で、相手の召喚獣を二体同時に葬り去っていたしなあ。
傍から見ても凄い能力だったとはっきりと覚えてるよ、うん。
「あ。と言う事は、慎二のライダーが使ってきた“黄金鹿と嵐の夜(ゴールデンワイルドハント)”、あれも宝具だったのかな」
「あら、それがフランシス・ドレイクの宝具? どんな感じだったのかしら?」
「何か、遠距離から大きな船と大量の小船から一斉砲撃されたけど」
今思い返しても、あれは本当に大変だった……
ラニから貰った腕輪が無かったら、確実にやられていたよ……
重ね重ね、ラニには感謝しておかなくちゃ。
「ふーん、やっぱり艦隊って所なのね。にしても、宝具を知らなかったって事は、あなたの方は使っていなかったって事よね?」
「まあ、そうだね」
「あれ? 明久君のサーヴァントは宝具の事は教えてくれなかったんですか?」
「むしろ、持ってるのかどうかすら怪しいかも……」
セイバー達は何も言ってなかったけど、多分持っていたとしても、今のオールHステータスじゃ発動すら出来ないとか言ってきそうだし……
うわあ……やっぱり僕達の陣営って、本当にヤバい状態なんだなあ……
「私はてっきり、あなたのサーヴァントが桁違いの威力を持った宝具で慎二達を倒したと思っていたんだけど……あなたその状態でよく生き残れたわね。どうやってライダー相手に戦ったのよ?」
「どうって……えーと、主に“木刀”と“タル”と、うで――――」
「あ、もういい。やっぱ言わなくていいわ。何かもうそのワードだけで、頭の中がこんがらがって来たから」
「えー」
後、腕輪の能力と大剣って続けようとしたけど、いきなりバッサリと切られてしまった。
聞いておいてそれって、少し酷くない?
まあいいか、あんまり戦いの時の話なんて、正直思い返したくないし……
「木刀とタルって……状況がよく分からないんですけど……」
「深く考えるのはよしなさい、瑞樹。コイツの頭の中がどうなってるかなんて、誰にも分からないと思うから」
「あれ? 今遠まわしにバカって言われたような気がする」
「気のせいよ。けどまあ、凄いっちゃあ凄いと思うけど、それヤバいわよ。これから先、もっと強大な実力を持った相手が出て来るのに、サーヴァントの宝具を出せない状態なんて、とんでもないハンデ背負ってるって事じゃない」
それどころか戦闘すら出来ない状態です。
といったら、多分また理不尽に撃ち抜かれるんだろうなあ……
そう思うから、言わないで置いておこう。
「まあ、流石に“スキル”は持ってるわよね……?」
「何それ?」
「ねえ。あなた本当にどうやって勝ったの? ゴメンやっぱり言わないで」
再び説明しようと口を開き切る前に、再びバッサリと切られた。
むう、何かちょっと失礼に感じる。
「まあ単純に言ったら、特技とか特殊能力の事よ。宝具ほどの威力じゃないけど結構強めの技とか、あと肉体強化とかの魔術的補助効果があったりとか」
「“タルに愛されるもの:C+”とか?」
「ねえ。一度あんたのステータス欄本当に見せてくれない。いや見ないけど!!」
今度は端末を取り出そうとしたら、そう断言された。
全く。これで三度目だよ、幾ら僕でもこれにはイラついてくるって。
仏の顔は三度までって言葉知らないの?
「ていうか何よそのスキルッ!? 名前からしてふざけ過ぎよ!! あんた本当に真面目に聖杯戦争する気ある!?」
「僕だって好きで手に入れちゃったわけじゃないよっ!! それにこの間消しちゃったし!」
「私もその判断は凄く正しいと思います……」
あーもう、と言って遠坂さんはガシガシと頭を引っ掻く。
あーあー、頭がボサボサになっちゃうよ。
そんな僕の感想も知らず、遠坂さんは完全に逆切れ状態で話を続ける。
「ホントにあんたのサーヴァント酷過ぎよ!! 最悪なんてもんじゃないわ!! あんた“魂の改竄”しに“教会”に行って無いの!?」
「何それ?」
「仏の顔は三度までって言葉を知らないのかあんたわぁぁぁ――――――っ!!!!!」
「り、凛ちゃん落ち着いて! 落ち着いて下さい――――っ!!」
「ちゃんと知ってるよ? ていうか、さっきまで思ってた事だったし」
「ムキャアアアァァァァ――――――――――――ッ!!!!!!」
「すでに言語が人じゃなくなってます――――っ!? 明久君も煽らないでくださいっ!!」
だって知らない物は知らないし。
暫く奇声を上げていた遠坂さんは、姫路さんにずっと押し止められて気が収まって来たのか、フーッと荒い息を吐きながら落ち着いた。
「ハアッハアッ……あんたとの会話は、凄く、疲れるわ……」
「凛ちゃん、大丈夫ですか? 少し休んだ方がいいんじゃないでしょうか……」
「だ、大丈夫よ瑞樹……とにかく、魂の改竄って言うのはね、マスターとサーヴァントの魂のリンクを強化して、サーヴァントの失われた霊格を取り戻す作業の事」
「霊格?」
「もう突っ込まないわよ。要は、大雑把に言うと“サーヴァントのステータスアップ”をしてくれるのよ」
……今、何か凄い重要な言葉を聞いたような気がする。
寝耳に水な状態でハッキリと聞き取れなかったのかもしれないやいやただの気のせいかもしれないしいい話を聞いた後はそのあと決まってすぐ落とされていたじゃないかよしちゃんと落ち着いて聞きなおそうそうしようん
「……ゴメン、もう一回言ってくれない?」
「はあ? だから、サーヴァントのステータスアッ」
「そんあ便利且つ素敵な事で天国のような救いの希望が存在する場所があるの――――っ!!!??」
「「はいっ!!?」」
落着けなかった。
けど仕方ないよだってhんとうにうれしかたtんだからなんでそんnそんざいをしえてくれなかったのdすかとおさかさんはそれがしっていたらぼくはほんとうにいまよりらくなじょうがいになっていdのかもしrなかったかもしれなkもないかもしれなかったのn
――――OK。静まれ朴。じゃなかった、僕。
もはや頭の中で自分でも何考えているのか分からない状態になっている。
見なよ、僕の奇想天外摩訶不思議な状態に、二人はドン引き状態だ。
よし、今度こそ落ち着こう。うん落ち着いた。
「ああ、うん。ゴメンゴメン。それで、その魂の改竄って奴、僕でもできるの?」
「え、ええ……教会にいる二人組が、その作業をしてくれるそうよ。戦いを通して、マスター自身の霊格も上がるそうですから、それを使ってサーヴァントの能力を上げてくれるみたい」
「明久君も一回戦を勝ち抜いたんですから、十分に改竄をしてくれると思いますけど……」
「ありがとうっ!! じゃあさっそく行ってくるね!!」
「えっ!? あの、明久君っ!?」
「ちょっ!? 待ちなさいよアナタ!?」
後ろで姫路さん達が呼び止めているけど、完全に心が舞いあがっている状態の僕はそれが耳に入らず、急いでマイルームに戻ってセイバー達を呼びに行った……
★☆★
――――――三時間後
「………………ふう」
姫路さん達と別れてから暫く経ち、僕は教会前のベンチに座っていた。
ム~っム~っ
「――――どうしたのよ、そんな所で座っていて」
「……え?」
そう何もせずだらだらしている内に、ふとそんな声が聞こえてきた。
その声は、僕には聞き覚えがあった。
この声は忘れもしない、いつもFクラスで一緒にいたメンバーの一人の……
「……“美波”!?」
「ヤッホー、アキ」
僕の友達の一人、“島田美波”がそこにいた。
ム~っム~っ
「今まで何処にいたのさっ!? こっちはずっと雄二に話を聞いてから探してたんだよ!!」
「悪かったわね、こっちも大変だったのよ……ここにいるって事は、一回戦勝ち抜いたみたいね」
「うん、まあ……」
ム~っム~っ
「他のみんなは? 美波は僕以外の人に会ってきた? 姫路さんとか」
「ううん、まだアキだけよ。けど、そっか……坂本と瑞樹もこっちに来てるのね」
「うん。僕も美波を含めて、いつものメンバーの三人しか会えていないけど……」
ム~っム~っム~っ
「で、アキはこんな所で何してる訳? まるで会社で何か失敗して帰宅途中のサラリーマンのような様子だったけど?」
「何その微妙な例え……そんな雰囲気出してた、僕?」
「うん、それはもうすっごくね。もしかして、何かやらかしちゃった?」
「まあ、僕というか、仲間がやらかしちゃったっていうか……」
ム~っム~っム~っム~っ!!
「所でアキ?」
「……何?」
「さっきから気になっていたんだけど……
そのベンチの横で“簀巻きになって転がされている白髪頭”って、何?」
「ムーッ!? ムゥ~~~~~ッ!!」
……ああ、うん、いい加減にやめよう、現実逃避は。
奇妙そうな視線を向けてくる美波と。
下で唸り声をあげているアーチャーの。
その二人の様子を感じながら、このセラフによって作られた人工的な青空を見上げて、ポツリと思う。
――――どうしてこうなったんだろう。
この話書いていて思った事。
原作の四回戦相手って、ロクなのがいねえ。