Fate/Extra Summon (バカテス*Fate/Extraクロス)   作:新月

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タイトルがおかしい?
いえ、これであってます。


教会へ惨状

 ――――時は少し戻り、僕が遠坂さん達と別れた直後。

 

「――――と、言う訳で改竄に行くよ!」

 

 僕はマイルームで爆睡二日目に突入しかけていたセイバー達を叩き起こして、廊下を歩いていた。

 後ろにいる三人は、あくびをしたり、眠い目をこすりながらついて来ている状態で、まだ少し眠そうだった。

 って、もう24時間以上寝ていたのにまだ寝足りないの!?

 

「ふわぁ……何を言うか奏者よー……これは魔力節約も兼ねておるのだぞ……」

「節約?」

「うー……クシクシ……私達サーヴァントは、ご主人様からの魔力供給で現界している状態なんですー……けれど、それ以外に睡眠や食事などで、少しだけ魔力を回復出来たりするんですよー……」

 

 へー、そうなんだ。

 成程、つまり僕からの魔力供給が足りないから、苦肉の策でそれ以外の睡眠という方法で少しでも補おうとしていたのか。

 決して、無駄に惰眠を貪っていた訳じゃなかったんだね。

 

「うー……あともう少しで、余のリサイタルが開催、と言う所まで見られておったのにー……」

「私もー……ふあ~……お供え物で、油揚げとお稲荷さん食べ放題状態でしたのに~……途中で起こされたので食べ損ねました~……」

 

 ……決して、惰眠を貪っていた訳じゃ……

 

「全く、君達そろそろシャキッとしないか。いつまでもそんな状態じゃ、とっさの事に対応できないぞ」

 

 そんな中で、流石のアーチャーはちゃんと起きていて、そんな注意を二人にしてくれていた。

 

 ……が、その横顔に何かをずっと押しつけていたような変な模様が出来ていて、正直全く説得力が無い。

 

「というか、紅茶の顔の方こそ全然シャキッとしておるようには見えんのだが」

「いますよねー、クラスで授業中の時に机に突っ伏した状態で寝て、横顔にノートに書いた文字とかが写っている奴。あれって傍から見るとマヌケの一言に尽きますね」

「言いたい放題だな貴様ら……」

 

 多分、アーチャーのスペースに転がっていた机の残骸とかが、寝ていた時にずっと顔の下にあったんだろうなあ……

 何か結局、起こした時にまたガラクタの下敷きになっていたし。

 何、アーチャーってそんなに何かの下敷きになるのが好きなの?

 

 

「あー、そうそう。そう言えばさっき、遠坂さん達と話してた事なんだけどさー」

 

 まだ本調子とは言えない状態の三人に、歩いたまま例の事を聞こうとする。

 

「あのさ、三人の宝具って……」

 

 …………………………………………返事が無い。

 

 チラッと後ろを振り返ってみる。

 

「……………………」

「……………………」

「……………………」

 

 全員あさっての方向を向いていた。

 

「……あのさ」

 

「う、うむ! 奏者! 早く教会に行った方がいいのではないか!?」

「そ、そうですよ! いつぞやのエレベーターの時みたく待たされたくないですよ!!」

「そ、そうだな! こういう事は早めにやっておいた方がいいぞ、うん」

 

 セイバー達が、急かす様にそう言ってくる。

 

 目を逸らした状態で。

 

 

「……まあ、そうだね」

 

 セイバー達の意見も一理あるので、僕達は再び歩き出す。

 ただ先程とは違い、もの凄く静寂な時間が流れていた。

 

「……………………」

 

「「「……………………」」」

 

 何か、凄く空気が重い。

 とりあえず他の話題も振ってみようと思う。

 

 

「……そう言えばさあ」

 

「「「っ!?」」」

 

「スキルって……」

 

 

「うむっ!! 向こうの景色なかなかのデッサン場所かもしれんな!!」

「あ! 清姫ちゃんからのメールだー、カチカチっと!!」

「ああ、いい天気だ! 今日は絶好の洗濯物日和だなあ!!」

 

 三者三様、別々の事を言っていた。

 

 決して僕の方を見ないで。

 

 

「…………………………………………」

 

 僕はその様子を、もんの凄く冷めた目で見つめていた。

 

「こ、これは違うぞ奏者!? 決して、目を逸らしていた訳じゃっ」

「そ、そうです!? ほら、メールだからさっさと返事しなきゃーっ」

「か、家事は一人暮らしの男は必然的になあっ」

 

「はあ……もういいよ」

 

 僕は盛大にため息を付く。

 まあぶっちゃけ、予想通りだったんだけど。

 

「どうせ一つも使えない状態なんでしょ? 宝具もスキルも」

 

 ステータスがほぼ全部Hで最低以下なんだし。

 遠坂さん達から話を聞いた時から、まあそうなんだろうなとは思っていたけどさ。

 けど、一つくらいは使えるもの持っていてもいいんじゃないかなーとは、少しだけ期待はしちゃっていたりしてさー。←(多少グレ気味の状態)

 

「むっ!? 見損なうな奏者よ!! 流石に一つ位はそれぞれ持っておる!!」

「なあっ!? ちょっとセイバーッ!?」

「じゃあ何が残ってるの?」

「あ、いやっ!? それは……その…………」

「馬鹿か君はっ!? 何自分から墓穴を掘っている!?」

 

 むう……結局セイバーの言っている事が正しいのか分からない。

 と言うより、三人とも何か別の事で慌てているような……?

 あ、そーだ。

 

「そーだよ。端末で自分達のステータスも確認できるんだから、それで調べれば……」

「な、なあっ!?」

「は、早まらないで下さいご主人様ぁっ!?」

「待つんだマスターッ!? それは……それだけはあっ!!」

 

 三人の忠告も無視して、僕は端末の操作をし続ける。

 ていうか、本当にそんなに慌てて一体どうしたのさ?

 本来の力が全く出せないって事は既に承知の事実だし。

 今さらスキルゼロとか言われたって、もう僕は驚かない位に慣れて……

 

 

 ★☆★

 

<スキル>

 

 ■クラス:セイバー

 

 ・無駄遣い:B

 

 その名の通り、無計画に無駄遣いしまくるスキル。倹約などと言う言葉とは完全に無縁などとほざく者に与えられる。

 ちなみに、黄金律を持っていないと一向に財産が消費していくだけなので赤字のループに陥ってしまう。

 余は皇帝だ、節約など知らん!

 

 

 ■クラス:キャスター

 

 ・一夫多妻去勢拳:B

 

 女性をはべらかす野郎に対し、男子の弱点に一撃必中の打撃技を繰り出す奥義。まず当たったら殆どの相手はその痛みに地獄に落ち、完全行動不能状態に陥る。女の嫉妬は怖い。

 うふふ……ご主人様ったら、ハーレム展開なんて神が許してもこの私が許しません!

 

 

 ■クラス:アーチャー

 

 ・女運:F-

 

 女性関係との運。ランクが高ければ高いほど道行く野郎共が嫉妬するほどの女性とのウハウハ生活が送れる。

 ちなみにF-だと、逆に女性に振り回されまずそこら辺を歩いているだけで女性関係トラブルを持ってくる超ハタ迷惑野郎になる。

 だからこれは俺のせいじゃないってなんでさ――――っ!!

 

 ・ガラクタ王:C

 以下略。(アルバイト回参照)

 

 ・うっかり:D-

 以下略。(アルバイト回参照)

 

 ・料理人:A++

 以下略。(アルバイト回参照)

 

 

 ★☆★

 

 

「……うわあ」

 

「ち、違うのだ奏者!? これは何かの間違いなのだっ!!」

「そ、そうなんです! これはセラフが勝手にねつ造してーっ!!」

 

 何かセイバー達が言い訳がましく言って来ているけど、それすら耳に入らないほどに僕はこの表示に驚く……というか、呆れていた。

 何ていうか、もう酷い。それしか言えない位に酷い。特にアーチャーが一番多くて酷い。

 何故かデジャブを感じるけど、本当にもう三人とも全く戦闘に役に立たないスキルしか持っていないって……むしろ逆に自分達に不利になるようなスキルばっかりだし。

 

「し、しかしマスターッ!! 見ろ、此処の料理人:A++を!! これなら聖杯戦争中、調理に困る事は無いぞ! むしろそこらの三ツ星すら霞むほどの上手い料理を食わせてやろう!!」

「なあっ!? 紅茶、お主だけ言い逃れようと――――」

 

 

「“材料そのものが買えないのに”?」

 

「……………………っ(ホロリ)」

 

 根本的な問題に突っ込むと、アーチャーは静かに涙を流して目を逸らした。

 今現在の僕達の縛りプレイ状態を甘く見るな、あっはっは。

 

 

「まあ結論から言うと、このままじゃ凄くヤバいから、さっさと教会に行って力取り戻してもらおう、と言う事でいいよね」

「異議なしだっ!!」

「私もっ!!」

「ああっ大賛成だ!!」

 

 そろそろセイバー達が本気で落ち込みそうだったので、話を適当に終わらせてさっさと教会に向かう事にした。

 まあ……なにはともあれ、これでこれからの戦いも楽になりそうだよ。

 

 

 

 ……なりそう、だよね?

 

 

 

 ★☆★

 

 

 で、教会前。

 

 到着。

 

「ここが……教会」

 

 僕は今、ちょうど扉の前に立っていた。

 その数歩下がった位置に、セイバー達は横に並んで立っている。

 

「う、うむ……何か厳かな雰囲気を感じるな……」

 

 セイバーの言う通り、扉の前に立っているだけで何かに圧倒されるような感じがする。

 ただこうしているだけで、此処が普通とは違う場所だと言う事が嫌でも思い知らされるような感じ。

 

「うー……私にとって此処、すごーく嫌な感じがするんですけどねー、化け狐的に」

「宗派が違うだろう。しかし、確かに妙な圧迫感を感じるな」

「うん……僕でも凄く感じる」

 

 けど……この圧迫感、つい最近何処かで似たようなものを感じたような気がする。

 

 そう、例えば一回戦の時にライダーの宝具を腕輪で防いでいた時のような……

 

「…………………………」

「む? どうしたのだ奏者?」

「あ、いやなんでもない。さっさと中に入ろっか」

 

 そう言って、僕は扉の取っ手に手を掛ける。

 

「あ、そうそう。念のため離れといてね」

「む? マスター、何を言って……」

 

 ガチャリと音が鳴り、そのまま僕は扉を引き――――

 

 

 

 

 

 ――――そして執事とかがやるように、開けた扉の横に立つように移動した。

 

 

「え? ご主人様何やって……」

 

 キャスターが何か言おうとした瞬間……

 

 

 

 

 

 ゴウッと長椅子が飛んできた。

 

 

 

「いやなんでサボゴォウッ!!!??」

 

「アーチャーが死んだぁッ!!!??」

 

「この人でなしっ!!!」

 

 そしていつかの再現のように吹っ飛ばされる幸運Jさん。

 

「ああ、やっぱり……」

 

 だから離れといてって言ったのに。

 開ける前に、何かもの凄い嫌な予感がして来たから、一応注意して置いたんだけど……

 一番背が高かったから、一人だけ顔面に当たったんだなあ。

 つくづくアーチャーって、本当に不幸だよね……

 

 そして吹っ飛ばされて二人に介抱されるアーチャーを横目に、僕は開けた扉から教会の中をチラリと覗く。

 開けた扉からは、何故だか大量の煙が溢れてくる。

 

「姉貴ィッ!! あんたいい加減にしなさいよっ!! 何百、いや何千本タバコ吸えば気が済むのよ!?」

「うるさい。こっちはセラフ内での喫煙を全域禁止されてイライラしてるんだ。唯一吸える場所がこの教会内しかないんだ。だったらここで吸えるだけ吸うのは当たり前だろう」

「けど限度ってもんがあるでしょうがっ!! あんたの吐いた煙だけで、このだだっ広い部屋全域埋め尽くしてもう軽く火事現場状態よ!! こっちの肺まで副流煙で悪くなるでしょうがっ!!」

「なら望む所だ。そのまま中毒症状で死んでくれれば本望だ」

「その前にあんたを殺してやろうかぁ――――――――――っ!!!」

「やってみろよこの歩く宇宙戦艦がぁ――――――――――っ!!!」

 

 何かバトってた。

 それはもう盛大に、何か赤いのと青いのが、手からビームっぽいのを出したり、使い魔的なものをゾロゾロ出してたりと。

 そしてその衝撃で教会の中の椅子やら十字架やらが、そこら辺を飛び回っていたりして、その一部が僕の開けた扉から出てきたりと……

 

 ……ああ、空が青いなあ。

 

 そんな感想が、心に広がった。

 

 

 ★☆★

 

 

 ――――そんなこんなで、一時間経過。

 

「はぁい、ようこそ教会へ。君も魂の改竄をしに来たのかな?」

「凄い。何が凄いのかって言うと、さっきまでの事を何事も無かったかのように進めるのが凄い」

 

 さっきまで暴れていた二人……青い髪の【蒼崎橙子】さんと、赤い髪の【蒼崎青子】さんが、まるで普段通りと言わんばかりにそれぞれ椅子に座ってこっちを向いてきた。

 ……が、その椅子と彼女たちの間にある変な浮かんでいる立体的な発光する物体を除いて、教会内の装飾などは軒並みボロボロ状態だった。

 

「むう……外観から見た時に感じた厳かな雰囲気が台無しだな……」

 

 同感。正直、無かった事にするのがもの凄い強引すぎる。

 もう足元に椅子とかの残骸がボロボロ転がっている状態だし。

 というか、これ直せるの?

 

「ていうか、ここらへんまだ煙たすぎですって……ゲホッゲホッ!!」

「そうなのよねー……あんた達からもこの馬鹿姉貴に言ってやってよ。おかげでこっちはタバコ吸わないって言うのに、体中煙の臭いがこびり付いちゃってんのよ」

「まあ、あれだけの煙の中にいて何とも無い方がおかしいですよね……」

 

 さっきも開けた瞬間に、長椅子と一緒に大量の煙が出て来てたし。

 あれ、リアルで見かけたら普通に消防車呼ぶほどだと思ったくらいだよ。

 というか、それだけ吸って大丈夫なのかな橙子さん。

 

「うるさい。全く、こっちだってうちの坊やの頼みで人を探しているところなのに、一向に手掛かりが見つからなくてイライラしてたんだ。だからタバコを吸って気分を落ち着かせようとしてたのに、それすらも禁止するなど……鬼か、君達は」

「あんたは吸い過ぎなのよ! こっちも譲歩に譲歩して、電子タバコ位は許してやったんだからそれで我慢しなさいよ!!」

「ふん。こんな味のない、ただ香りがする煙を吸ったって何の意味も無いだろう。ニコチンを摂取させろ、ニコチンを」

「それだと振り出しに戻るでしょうが!!」

 

 あー……話が全然進まない。

 このままじゃ、今日一日タバコの議題する日になっちゃう勢いだよ……

 

「というか、そんなに吸って体の方は大丈夫なのか?」

 

 さっき思い浮かんだ疑問を口にしてくれたのは、気絶から立ち直ったアーチャーだった。

 こっちも何ともないですと言いたいような感じだけど、思いっきり顔面が真っ赤で、少し頭から血も出ていたりする。

 うわあ、痛そう……

 

「あー……そっちの赤い男の君については済まなかった。質問の答えだが、特に問題は無い。どうせ事が終わったら、この体は“破棄”するつもりだしな」

 

 流石にアーチャーに対しては非があると感じたのか、申し訳なさそうな感じで答えていた……

 ……あれ、今何か変な言葉が聞こえて来たような……?

 

「……すいません。もう一回言ってもらっていいですか?」

「うん? だから破棄だよ破棄。君達も知っているだろう、聖杯を手にしなければムーンセルから生きて出られないことは。私がここにいられるのはムーンセルと締約を結び、マスターたちへの手助けを条件に永続権を得ているからだが、その条件は普通のマスター達と変わらない。だから“死んでもかまわない自分”を作って来ているんだ」

「……………………」

「マスター、そんな迷子の子供みたいなような顔で見られても困る」

 

 ……言っている事の意味が分からない、特に最後の部分。

 あれ……? これって理解出来ない僕がおかしいのかな。

 

「あー、気にしなくていいからそこ。とっくに自分の事オリジナルと複製(コピー)の差なんて分かんなくなってる変人の言葉だから。深く考えるのは止めた方がいいわよ?」

「え、コピー……? え、えー……」

「余計な事を言うな。それより、君達は改竄をしに来たのだろう? そっちの方はいいのか?」

「え、あ……いや、します。はい」

 

 もう頭の中がいろいろこんがらがってきて、しどろもどろな状態での返事をしてしまった。

 そうだ、元々改竄をしに来ただけだったんだ。

 青子さんの言うとおり、この話題について深く考えるのは止めておいた方がいいのかもしれない、うん。

 

「はーい。じゃあ早速魂の改竄を始めちゃうから、サーヴァントの方はちょっと前に出てくれない?」

「うむ! なら早速余が」

「何一番乗りしようとしてるんですか! 私が先です!」

「止めろ君達。この教会に止めを刺す気か?」

 

 二人がまた喧嘩しそうな所をアーチャーが釘を刺す。

 アーチャーナイス、これ以上暴れまわれると流石にこの教会が持ちそうにないと思う。

 

「ていうか、すごい今さらだけどさ。君ってサーヴァント三体連れているのね」

「ああ、はい……何か、いろいろあって……」

「確かにこのケースは珍しいな。今までいろんなサーヴァントを連れているマスターを見てきたが、三体同時使役なんて君が初じゃないか? そんな現象、真っ先にセラフにエラーの対象にされそうなもんだがな」

 

 そう言えば、予選の時にもそう言われたような……?

 確か人形達と戦った時、何処からか謎の声が聞こえてきて、イレギュラーがどうとか……

 

「あいこでー……しょおっ!! うむ! 余の勝ちだ!!」

「なあっ!? またセイバーですか!? あなたやけにジャンケン強くありません!?」

「ふふん。皇帝特権と言う奴だ!」

「いや、君今そのスキル使えんだろう」

 

 っと、蒼崎姉妹と話している内に、セイバー達の方は誰からするのか決まったようだ。

 ていうか、ジャンケンって……英霊って言う割には、偉い庶民的に感じるのは気のせい?

 

「じゃあ、そこの赤いドレスの女の子ね。ちょっとそこに立ってくれるかしら?」

「うむ。こうか?」

「そうそう。じゃあそのまましばらくじっとしててね」

 

 そう言って、青子さんが急に目の前に浮かんできたキーボードをカチカチと操作する。

 すると、セイバーの立っている場所が赤い光の柱みたいのがパァーッと出て来て包まれていった。

 

「おお、これは……っ!」

「何か、凄そうな感じがしますねー」

「うん。って、あれ? 橙子さんの方は何もしないんですか?」

 

 目の前で改竄作業を続けられていくセイバーを横目に、ふと橙子さんの方を見ると、彼女は相変わらず電子タバコを吸っているだけだった。

 てっきり、二人で作業を進めていくのかと思っていたのに。

 

「ああ、私はただのお目付け役だからね。改竄の仕事は、もっぱらそこの妹が担当だ」

「しかし、二人で作業した方が早く終わるんじゃないかね? 見た所、君の方も相当高位の魔術師とお見受けするが?」

 

 アーチャーの意見に同感だ。

 というか、どっちかって言うと青子さんより橙子さんの方が、何か細かい作業が得意そうな気がする。

 さっきも何か、使い魔的なものをいくつも操作してたし。

 

「うん? そりゃそうだ、改竄は私のほうが上手いよ。青子の十倍は効率よく強化できる」

「うわー、本人を目の前にして、よくそんな堂々と嫌味が言えますね……」

「嫌味じゃなく、純然な事実だからね。本当のコトを言っているだけだから、見ろ。青子も黙ってるしかないだろう?」

「うぐぐぐぐ…」

「な、なあ! お主、そんなよそ見しながらで大丈夫なのか! なあっ!?」

 

 何か橙子さんの方を見て青子さんが唸っていて、それを見たセイバーが光の中から凄く狼狽えていた。

 気持ちは凄くよく分かるよ……ていうか、本当に大丈夫なのかなこれ?

 

「まあ、確かに前科持ちの奴が作業してるから心配になるのは当然だろうが。以前失敗して、ムーンセルからの苦情が来たしな」

「ちょっ!? アレはマスターが悪かったんだってば! 違法スレスレで改竄してくれ、って言うから、スキルを幾つか付加しただけじゃない!」

「はっ。そのオチが、巨大(G)化した挙句ロストでは、笑い話にもならない」

「なあっ! ここから出してくれぬか! なあっ!? 奏者ぁっ!! 助けてくれぇ――――っ!!!」

 

 ものっそい不吉な言葉の応酬で、中にいるセイバーがもう狼狽えを通り越して、泣き始めていた。

 何かさっきからドンドンッと光の柱を叩いてきているけど、ビクともしていない。

 というか、流石に僕も何か凄く可哀想な気持ちになってきた……これ、止めた方がいいんじゃ……

 

「うわー……私が最初じゃ無くてよかったと思いました」

「同感だ……まあ、最近セイバーは調子に乗っていたから、いい薬だろう」

 

 横の二人は微妙に冷たい言葉を出していた。

 ……なんか、この世界に来る直前の実験前、最後にしたいつものメンバーとのを思い出すなあ……

 みんな薄情すぎる……いや、外道過ぎると思ったあれ。

 そう言えば、結局この世界に来たのは何人なんだろう?

 既に会っているのは姫路さんと雄二だけだけど……雄二の話だと、もっと他にも来ていそうだけど……?

 

「奏者ぁっ!? 何か考え事してないで余を助けてくれぬかぁ――――っ!!?」

 

 あ、ゴメン。

 ちょっと回想にふけっちゃってたよ。

 

「――――ふう……これで良しっと。もういいわよ」

「はあっ……はあっ……余は、生きてる……生きてるよな……?」

 

 暫くすると、青子さんがキーボードを叩くのを止めると、セイバーを包んでいた赤い光の柱も消え、仲から息切れを起こしているセイバーが倒れるように出て来た。

 ひたすら自分の体をぺたぺたと触って確認して、生を確認しているようだった。

 そんなに怖かったんだね……さすがに可哀想だったよ。

 

「とりあえず、これでステータスはアップしてると思うわよ? 早速確認してみたら?」

「あ、ああ! 奏者、早く確認しようではないか!! というか、これだけ余が怖い目を見たというのに何の変化も無しじゃ泣くぞ……余は泣くからなっ!!」

「う、うん。分かった、分かったから。いったん落ち着こうよ、ね?」

 

 そうやって、再び泣き始めようとしたセイバーをなだめてから、改めて端末を取り出してステータス欄を開く。

 

「さてさてー。セイバーさんは一体どうなったんでしょうねー」

「まあ、出来ればEまでは上がっていて欲しいが……高望みしすぎか?」

 

 横からキャスター達も気になったのか、端末を覗き込む。

 さてと、結局どうなったのかな……

 

 

 ■クラス:セイバー

 

 筋力:E

 耐久:F

 敏捷:F

 魔力:F

 幸運:E    

 

 ■クラス:キャスター

 

 筋力:J

 耐久:J

 敏捷:I

 魔力:H 

 幸運:H 

 

 ■クラス:アーチャー

 

 筋力:H

 耐久:I

 敏捷:H

 魔力:I 

 幸運:L

 

 

 

「お、おお……っ!? 上がっておる……上がっておるぞ奏者よ!!」

「よし!! これで改竄は成功ねっ!!」

 

「「ちょっと待てえええぇえええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!??」」

 

 喜んでいるセイバーと青子さんをよそに、紅茶と狐さんから盛大な突っ込み。

 しごく当然だと思う。

 ついでに言うと、青子さんの方は何故か冷や汗を掻いていたりする。

 

「よく見てくださいよっ!? 明らかに私達のステータスもその分下がってるじゃないですかっ!!」

「こっちもだ!! というか何で相変わらず幸運を中心に下がってるんだ!? さすがにもうこれは嫌がらせを感じるぞおいっ!?」

 

 それはもう、必死だった。

 まさかこれ以上下になる事は無いだろうと思っていた所に、この仕打ちだしね……

 というか、改竄に関わっていなかった二人のステータスまで、何で下がってるんだろう?

 

「紅茶の不運はどうでもいいとして!!」

「良くないっ!?」

「そこのあなた! 結局改竄失敗したんじゃないですか!? さっきちらちらよそ見してたし!!」

「はあ……全く、案の定か。今さっき失敗するなと忠告したばかりだろうに」

 

 そして青い二人組に責められる青子さん。

 どうでもいいけど、この姉妹って名前と髪の色が逆だと思うんだけど、突っ込んだらやっぱり不味いのかな?

 

「ちょ、ちょっとっ!? わ、私のせいじゃないわよ! とりあえず言い訳させてくれない!?」

「言い訳と言っている時点で自分の罪を認めているようなものだと思うのだが」

「違うって!? そうじゃなくて、あなた達が特殊なのよ!!」

「自分の罪を認めず全て相手に押し付ける、か……我が妹ながら、とんだ愚者に育ったものだな」

「あんたは黙ってろ馬鹿姉貴っ!!」

 

 フー、フー、と荒い息を吐く青子さん。

 暫くすると、落ち着いたのかヤレヤレと頭を振っていた。

 というか、いい加減話が進まないから聞いた方がいいと思うよ?

 

「と、とにかく。あなた達が特殊なの。あなた達全員、ラインで繋がっているらしいのよ」

「ライン?」

「魔力供給のパイプみたいなものだ。マスターとサーヴァントは令呪を通して、そのラインで繋がっている」

「しかし、繋がっておるのは当然ではないか? ここにいる三人、全員奏者のサーヴァントなのだからな」

「そうじゃくて、マスターだけでなく、あなた達“サーヴァント同士”もラインで繋がっているのよ」

「え? それ本当ですか?」

 

 サーヴァント同士?

 正直ラインの言葉からして分からなかったから全然状況が把握できないけど……それって、もしかしておかしいの?

 

「何ていうか……“マスターを頂点にして、ラインが三角錐”になるように繋がっている。ちょうど、あなた達三人で底面の正三角形が出来上がるように……ある意味、“三位一体”の状態なの」

「三位一体……?」

「成程。それで三体同時使役にも関わらず、セラフに消されない訳か。三体で一体扱いされているみたいだからな」

 

 蒼崎姉妹の言葉に、ふと心当たりが頭に浮かんでくる。

 そう言えば、確かに最近この三人が一緒にいて一組って感じがしてきてたっけ。

 時々別行動もするときあるけど……やっぱり、全員がいて僕達っていうか。

 

「だから、一つのラインだけを強化するとバランスが崩れて、他の二人が逆に弱くなっても仕方ないっていうかー……」

「だったら、三人同時に改竄するのはどうだ? それならバランスもそんなに崩れないのでは?」

「ちょーっと、そこまで器用な事をする技術は、私には無かったかなーって……」

 

 ……えーと、要はまとめると……

 

 

 

 

 

 

 

「――――僕達の強化は無理ってこと?」

 

「あー……何ていうか、その……うん、ゴメン」

 

 

 

 ――――は。

 

「あはハハハハハハハハはハハハハハハハハはハハハハハハハハはハハハハハハハハはハハハハハハハハはハハハハハハハハははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」

 

「あーっ!? ご主人様が壊れたぁ――――っ!!?」

「そ、奏者ぁ!? しっかりするのだ!!」

「……………………(ホロリ)」

 

 

 ★☆★

 

 ――――また一時間後。

 

「……何ていうかさ、最近僕の周りって上げて落とすってパターン? それがルーチンワーク的なものになってると思うんだよね。希望の光を見つけても、すぐに闇の中に埋もれて行くっていうか? 夜空に輝く星を見つけても、物理的に手が届かない感じって言うか? そんな当たり前の感じ? 学校での僕のバカって言われるのももうしつこ過ぎるくらい繰り返し使われて飽きられるネタの感じになってるし。そんな単純な人生で楽しいのかって問われると、こっちは楽しくないに決まってるよと言い返したいけどだったらどーしろといいたいのであるからして――――――」

 

「ああー……これ完璧に駄目っぽいです。既にダークサイドに落ちてずっと呪詛撒き散らかしてます……」

「うー……心なしか、奏者の周りに黒い負のオーラが見えてくるような気がするぞ……」

「確かに……“この世全ての悪”に近いかもしれんな、この感じは。まあ濃度は圧倒的に薄いが……」

 

 後ろでセイバー達が何か言ってるっぽいけど、もう気分がどん底状態な僕の耳には何にも入ってこなーい。

 どうして世界はここまで僕に酷いんだろう……何でだろう、この仕打ち。

 神様はそんなに僕の事嫌いなのかな……

 

「あー……そんなにショックだった? いや、ホントごめんねー……」

「むう……本当に三人同時は無理なのか? そこの橙子とか言うのも手伝わせれば、お主と共同でいけるのではないのか?」

「まあ、確かに私なら青子と違って同時にやる事は出来るが……それでも、サーヴァントなんて高位的な存在の同時調整なんて二体が限度だ。そこの妹と同時にやれば一応はやれるが、いかんせん技術力が違う。そんな事をやったって、結局はバランスが崩れ、一体ずつやるのと変わらなくなる。わざわざ妹のレベルまで自分の技術力を落とすなど器用なマネ、私には出来ないしな」

「ちょっとそれ、言葉の端々にこっち貶してるわよね……っ」

「そういう意味じゃない。英霊などという複雑なデータを扱うのに、ワザと手抜きをしようと注意力散漫な状態で挑むのは、より危険になると言う事だ。やるからには全力を出す気でいかんと確実に失敗する。ましてや同時調整なのだから、自然と意識も高まってしまうだろうしな」

 

 ふとした時に、周りの声が少しだけ頭に入ってくることがあるけど、その内容は完全にこれ以上状況がよくなる事が無いと言った物だった。

 ははは……希望なんてどこにもありゃしない……

 

「結局は、もう改竄に関してはどうしようもないと、そう言う事ですね……」

「あ、そう言えば改竄の時に気になっていたんだけど……あなた達のラインも異質だったけど、マスターのあの子も結構おかしい感じがしたのよねー」

「ッ!?」ビクッ

「おかしいとは、具体的にどういう事で」

「そうだよ……いろいろみんなのステータスが上がらないとか戦えないとか言うけど、“結局は全部僕の魔力不足”が原因なんだよね……ちょっと今のみんなより戦えたからって、マスターとしてのやるべき事を何にもやっていなくて棚に上げてた僕のせいだよね……こんな屑で馬鹿野郎がみんなのマスターでごめんなさい……生まれ変わったらミジンコになりたい……」

「あー……すまんが、マスターに関する話は後にしてくれないか? どうやら話題に上がるだけでアウトらしい……」

「ああ、うん……」

 

 ホントに何様なんだろうね吉井明久って……ただ自分のやるべき事もやらないで全部不幸とか他人のせいにして自分は知らぬ存じぬって……どっかのBクラス代表並みだよね……何でそんなやつが生きてるんだろう……もう救いようがないのに……もういっその事死んじゃえば

 

「というか、サーヴァントを例外的に三人も連れている時点で、魔力が足りないとかどーとかの問題ではないと思うんだがな……」

「けど……うわー、最低がLとか、初めて見たわ。ていうか、これだけステータスがランクダウンしてるって事は、それだけ存在が薄くなってるって事なんだけど……むしろ、あなた達よく普通に現界出来ているわね? これだともう、通常ならいつ“消滅”してもおかしくな」

 

「ええぇっ!!!?? セイバー達消えちゃうんですかっ!!!??」

 

「奏者っ!?」

「ちょっ!? 君ちょっと近すぎっ!」

 

 青子さんが狼狽えたような感じになっているけど、そんなの関係なかった!

 

「今絶対に聞き逃せない言葉言いましたよねっ!? 消滅って言いましたよねっ!!? それって慎二達見たくセイバー達がボロボロになって消えていくって事ですよねっ!? そんなの絶対認めないっ!! させたくないっ!!」

 

 僕が未熟なのはいいっ!!

 けど、そのせいでセイバー達が消えていくのだけは絶対に許せない!!

 

「お、落ち着きなさい!? 落ち着いて!! 大丈夫だから! 少なくてもあなた達には当てはまらないから!!」

「本当ですかっ!?」

「ええ! さっき言った三角錐のラインのつながり!! たぶんあれが魔力が足りない状態でも互いの存在をつなげ合っているみたいで、消滅までいかないから!!」

「そ、そっか……よかった……」

 

 僕はその言葉に安心して、青子さんに詰め寄っていたのを止めて離れた。

 よかった……本当に。

 

「マスター、君はもう大丈夫なのか? さっきまで凄い落ち込んでいたが」

「え? あー、まあ一応ね……だって、みんなが消えるなんて話が出て、僕のどーでもいいような愚痴を気にし続けるなんて馬鹿げてるし」

「ご主人様……そこまで私達の事を思ってくれているなんて……私、感激です!!」

「うむ! それでこそ余が選んだ奏者だ!! やはり、そなたは最高のマスターだな!!」

 

 あれ、何かよく分からない内に感動されてる?

 僕はただ、自分の思った事を言っただけなんだけど……

 

「あなた達、そんなに仲がいいのね……けど、正直君、情緒不安定の状態じゃない? さっきまでの慌てよう、普通じゃないわよ?」

「あー、すみません……ちょっと、この世界来てからいろいろおかしくて……」

「おかしいって……そういえばさっきの続きだけど、あなたの存在も異質なのよ。なんていうか、マスターなのに、サーヴァントに近すぎる存在って言うか?」

 

 サーヴァントに近いって……

 それって、召喚獣と融合したこの体の事かな?

 そう言えば、そんな予想を立てていたけど、この体の状態の事、詳しくはよく分かっていなかったよね……

 

「それだけこの少年の存在が異質なのか? 興味深いな……どうだ、少年? 少しばかり、君のその体詳しく調べさせてくれないか? 何、最終的にはちゃんと“直して”返す」

「……いや、すみません断ります!!」

 

 調べてもらうのはありがたいけど……直して返すって何!?

 思いっきり不安な予感しか出てこないんだけど!

 何、解剖でもするの!? 別の理由で命の危機を感じるんだけど!!

 

 

「そう言えば、さっきの改竄の話ですけど……」

「ん?」

 

 ある程度、話が一段落した所でキャスターがそう切り出してきた。

 どうしたんだろう、もう改竄は出来ないって結論は出てるのに?

 流石に出来ないって言われた時はショックだったけど、そんなのみんながいなくなる事に比べれば大したことじゃなかったし。

 

「あれって、どうやっても三人同時に上げる事は出来ないんですよね?」

「ああ、くどい様だが、少なくとも現段階じゃ何とも言えんな」

 

 

 

 

 

 

「じゃあ――――逆に、一人だけを他の二人の能力から集めるだけ集めて強化は出来るんですよね?」

 

 

 

「………………………………」

 

「「「………………………………」」」

 

「「………………………………」」

 

 ……キャスターのその言葉に、一瞬の静寂が訪れた。

 まるで、嵐の前のような静けさ……そんな感じの。

 

 

「………………………………っ」バッ

 

 先に動いたのはセイバーだった。

 ステータスダウンしているとは思えないほどの俊敏さで、一気に青子さんの目の前までいく!

 

「そこの青子とやら!! 今すぐ余にありったけのステータスアップを施せ!! あっちの紅茶と狐から搾り切るほどの!!」

「ちょっと待ったぁっ!! セイバーばかりいい思いなんてさせません!! あなたはさっきやったんだから今度は私の番でしょう!?」

「それでお主に全部強さがいったら、結局余はまた弱くなるではないか!!」

「ちょ、ちょっとあなた達っ!?」

 

 ギャーギャーとセイバーとキャスターが騒ぎまくる。

 というか、ちょっと離れてる僕の耳にも痛く聞こえるほどうるさい。

 目の前で騒がれている青子さんにとっては、もう騒音に聞こえるほどだろう。

 

「お、おい!! 君達、いい加減に――――」

 

 そう言って、アーチャーが二人を止めようと近づこうとして……

 

 

 ガッ!!←(幸運L、発動)

 

 

「――――しィッ!?」

 

 彼の足元にあった、長椅子とかの残骸に足を取られる!

 そしてそのままバランスを崩して二人のいる位置に倒れそうになった!

 

「うわっと!」

「よっと!!」

 

 それを反射的に避けた二人だったけど、すぐ奥にいたある一人は反応が遅れて……

 

 

 

 

「……へ?」

 

 

 

 

 

 

 

 ――――その瞬間、全ての時間が止まったような感覚がした。

 

 

 気が付いたら

 

 

 

 

 

 

 青子さんのズボンが“脱げていた”

 

 

 

 

 ……正確には

 

 

 アーチャーが倒れそうになってとっさに掴んだのが彼女のズボンで、そのまま全体重をかけてズリ下ろしてしまっていた。

 

 

『…………………………………………』

 

 

 全員、無言だった。

 いや、誰も声を出す事が出来なかった。

 さっきまで争っていたセイバーとキャスターも

 あの橙子さんでさえ、目を丸くして電子タバコを口からポロッと落とすくらいだった。

 無理もないと思う……目の前には、青子さんのズボンがズリ下ろされて、彼女の下着が完全に丸見えの状態だったのだから。

 

 ていうか、青子さんの穿いていたのってズボンだよねスカートじゃないよねあれってジーパンに近そうだしベルトもしてるし全体重掛けたと言っても簡単にはずり落ちるとは思わないし何でそんなラッキースケベ的な事をアーチャーが出来ちゃったのかよく分からなくてだってどう考えてもリアルでやろうと思っても普通無理でしょだから目の前の光景はあり得ない訳で

 

 ……いや、止めよう

 

 いろいろあり得ないと考えを総動員しても、目の前の現実は実際に起こってしまったのだから

 

 とにかく、結論だけ言うと

 

 

 

 

 

 

 “アーチャーが脱がした”

 

 

 

 

 

『…………………………………………』

 

 

 いまだ無言の空間に閉ざされたまま。

 暫くすると、ガシャッと何か金属製の者が落ちる音がした。

 発信源は僕の真下で、僕が持っていた端末だった。

 その画面は、さっきまで見ていたみんなのステータス欄のままで、落ちた衝撃なのか表示がスキル欄を表示していた。

 

 

 ■クラス:アーチャー

 

 ・女運:F-

 

 女性関係との運。ランクが高ければ高いほど道行く野郎共が嫉妬するほどの女性とのウハウハ生活が送れる。

 ちなみにF-だと、逆に女性に振り回されまずそこら辺を歩いているだけで“女性関係トラブルを持ってくる”超ハタ迷惑野郎になる。

 だからこれは俺のせいじゃないってなんでさ――――っ!!

 

 

 

 ああ、なるほど。

 アーチャーのスキルは、絶対にありえないという可能性のトラブルすら起こす事が出来るんだね。

 そう言えば、前に遠坂さんが言っていたっけ。

 科学とかで自分の力で再現できる現象は魔術、それで絶対に到達できないのが魔法って呼ばれるって。

 じゃあ、ある意味アーチャーのこれって、魔法と呼んでも差し支えないんじゃない?

 

 そんなどうでもいい考えが浮かんだ。

 

 

 

「…………………………………………っ」

 

 

 気が付くと、青子さんが顔を真っ赤にして、プルプルと震えながら何か光らせていた。

 ていうか、何か右手を構えて魔力を集めていて、そこだけ空間が歪み始めて見えている所だった。

 

 それを見て、僕達一同は思った。

 

 

 

 

 

『あ 死んだ』

 

 

 

 

 GAME OVER

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