Fate/Extra Summon (バカテス*Fate/Extraクロス) 作:新月
まだ不慣れだけど、早速使って小説書いていこうと思います。
「鉄人!! 補修室ぅぅぅーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
「む、吉井か? やっと来たのか貴様は」
「ん? 何をやっているかって? 決まっているだろう。見ての通り、補修の監督を務めている」
「何? 全く意味がわからないだと? まったく……仕方ない、貴様の為に1から説明してやろう」
「実は先ほど、藤村先生と名乗る者がやってきてな。そしたら、貴様のようなゲームオーバーを迎えた者のために、救済措置を与える役を代わりにやってくれ、と言われてな」
「本当はその人がやる予定だったのだが、確かタイガークエストとか言うものの準備とかで忙しいから残念ながらできない、とからしい」
「本来は道場の形をしているそうなのだが、多少内装を替えてもいいらしいので、私なりにこの空間に少しアレンジを加えて、補修という形で救済措置をとることにしたのだ」
「では、早速仕事に移るとするか。今回は貴様の死亡原因についての反省だが……」
「ん? まだ言いたい事があるのか? いったいどうし……何? まだ死んでいないだと? おいちょっと待て勝手にコンティニューを“はい”にするんじゃーーーー」
Continue?
“Yes” No
★☆★
なんか今、走馬灯? 的な凄く嫌な何かを見た気がしたんだけど……とりあえず、
「起動
アウェイクン
ーーーーッッッ!!!」
咄嗟に起動キーを叫んで、アーチャーと青子さんとの間に障壁が通り極太レーザー砲を防ぐ!!
うわあっ!? 一気に魔力もってかれてるんだけど!?
「なあっ!!!??」
「うおおーーーーっ!?」
紙一重の差で青子さんの攻撃を防ぎきり、とりあえず僕達は生き残った!
「このっ!! 何で邪魔すんのよっ!?」
「邪魔しないとこっちは全員死ぬんですけど!?」
「連帯責任よ!!」
「最悪すぎるっ!?」
アーチャーに下ろされたズボンを上げながら、全身から怒りのオーラと魔力を噴き出すように巻き散らかして、怒りを叫ぶ青子さん。
ダメだ!? 完全にプッツン切れしちゃってる!!
「紅茶ぁっ!! お主何をやっておるか!?」
「いや!? ワザとじゃないっ!? 断じてオレのせいではっ!!」
「ちょっとぉっ!? やったのは事実なんだから早く謝って下さい!! もうあの方、次の砲撃準備始めてるんですけど!?」
ちょっ!? これヤバい!!
次撃たれたら完全に終わりの状況なんだけどっ!
「……っ! おい、少年。今君は何をやった?」
「へっ!? 何って、この腕輪を発動しただけですけど!!」
「なぁーっ!? もう二次波の準備完了中ーーーーっ!?」
今まさに、こんなしょーもない事で命の危機にされされている僕達には、橙子さんの言葉に冷静に応えられる訳もなく、半ば叫ぶようにして返事をする。
そして目の前の青子さんは既に魔力が完全に溜まったらしく、大きく腕を振りかぶってこっちに止めを差そうとしてる!?
「むう……さすがに全力で撃った訳では無いだろうが、目の前の相手を殺す気で放たれた青子の砲撃を一度とはいえ、完全に防ぎきるとは……」
横の方で橙子さんが何かブツブツ言ってるんだけど、出来れば妹さん止めてくれないかなーーーーっ!?
「よし、取引だ少年。その腕輪をこちらに寄越せ。代わりに今回の事は不問にしよう」
『えっ!?』
「はあっ!?」
橙子さんのその言葉に、彼女以外の全員が驚く。
そのおかげで青子さんの溜めてた魔力が霧散して、僕達はまたギリ助かった。
けれど、僕達はその案は賛成だけど、被害者である青子さんは当然その言葉に納得できる訳なく、激怒しながら橙子さんに詰め寄る。
「ちょっと馬鹿姉貴!? 何勝手にあんたが決めてんのよ!! こっちはいきなりズボンズリ下ろされて下着見られたのよ!!」
「お前は興味ないのか? ご自慢の砲撃を一度とはいえ、完全に防ぎきった礼装の事。どう見ても、こんな度素人なウィザードが持っているにはいささかおかしい代物だぞ?」
何かよく分からないけど、どうやら橙子さんはこの腕輪の事が気になったらしい。
ラニといい、何でみんなそんなにこの腕輪の事に興味を持つのかな……?
この腕輪は、ただ学園長から貰っただけなのに。
まあ、そのおかげで僕達の事は見逃そうとしてくれてるのはありがたい話だけどさ。
「思わぬ所で収穫が入ったな。何、こっちはたかが色気の無い女の下着姿を見られただけだ。こちらから払う代償は無いに等しすぎる」
「私にとっちゃ大損もいいところなんだけどっ!! 色気の無い女って何!? ていうかアンタは全くの無傷でしょうが!?」
「はん。頭に宇宙戦艦が付くような女に色気? 失笑ものだな。 むしろそんな醜いものを見せられた其所の少年達が気の毒に思うよ」
「だったらアンタもこの場で脱がせてやろうかああああああぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!!!!」
「断るに決まってるだろうがこの痴女がああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!!!!」
こうして、第二次姉妹対戦開始。
★☆★
ーーーーで、さらに一時間後の今。
「ーーーーとまあ、こんな感じで」
「アンタ等、馬鹿でしょ」
バッサリとそう言い切られた。
ここまでの話を文章にしたら、訳二万弱の文字数になるお話を、たった10文字でまとめられたよ、うん。
いや、まあ確かに内容をざっくりまとめて結論を言うと、アーチャーがやらかした、だからなあ……
「それでそこの白髪頭は簀巻きになって転がされてるのね……ていうかいきなり女の人のズボン脱がすなんて、もしかしてこいつって痴漢とかして有名になった英霊とかなの?」
「ムゥーッ!? ムゥ〜〜〜〜〜〜ッ!!!」
下の方で、断じて違うっ!!! と言いたいようなアーチャーのうなり声が聞こえてくるけど、やったのは事実だし、否定のしようがないよね……
ちなみに簀巻きになっているのは教会から避難した後セイバーとキャスターがやった事で、その二人は『紅茶のせいで凄く疲れた……』と言って、先にマイルームに帰っている。
まあ僕は、すぐにマイルームに帰る気力さえ無くなっており、ここでしばらくぼーっとしていた訳だけど……
「まあ、おかげで僕はとっておきの礼装を没収されるし、教会にはしばらく行けそうも無い……ていうか、今いったら殺される状態でさ……」
正直、ラニから返してもらったばかりの黒金の腕輪を没収されたのは痛い……
あのファイヤーウォール発生装置は実際に使った所かなり便利な物だったし、できれば後で返してくれるといいんだけど。
けど最後に見た青子さんのあの怒り様は、2〜3日所か数週間は確実に収まり様が無いとはっきり分かるほどだったっけ……
仮に改竄以外で何か用があったとしても、少なくても三回戦まで……いや、もしかしたら四回戦まで行けないかも……
「もう笑うしか無いわね……けど見た所、教会の建物そのものにはそれほどダメージがあったとは思えない感じね? アキの話が本当なら、既に崩れていてもおかしくないんじゃない?」
アーチャーから視線を移し、美波は近くにある教会の方を見てそう言う。
彼女の言う通り、改めて見てみても教会にはどこも崩れた様子も無く、僕達が入る前と全く同じ外観を崩さないで存在していた。
「あー……それなんだけど、あれってあらかじめ結界は張ってあったからそう見えるだけであって、実際にはあちこちヒビだらけらしく、いつ崩れても本当はおかしくない状態らしいよ……」
今はまだ崩れないよう、コードキャストで強化して支えているらしいけど、これ以上の衝撃を与え続けたら本当に崩れてしまうらしい。
……ていうか、今現在もまさに喧嘩中で衝撃を与え続けている状態だったりする。
今言った結界の効果で、防音効果も発動しているらしいからここら辺が静かに聞こえるだけであって、それが無かったらもうバキッビキッ!! と、嫌な音が常に鳴り響いている状態らしい。
もしかしたら、ほとぼりが冷めたと思って出直しに来た時には、既にここ等一帯はガレキに埋もれていてもおかしくないかもしれない……
「とにかく、今教会に行くのはヤバいって事ね……まあ、仕方ない、か。ちょっと残念ね……噂に聞く蒼崎姉妹って人達を、一目みたかったんだけどね」
「ん? あれ? あの二人って、そんなに有名なの?」
美波が少し落胆した様子で喋った言葉が気になった。
確かに改竄とかやってくれる所は凄いと思ったけど……正直、喧嘩中の場面の印象ばっかで、それ以外の凄さに付いてはあまり分からなかったりする。
「そりゃあもう有名中の有名よ。ウィザードなら誰でも知らない人はいないと言われる姉妹ね。ていうか、こんな所で参加者達の世話をしているなんてあり得ない話なんだけど……」
「……へー……」
そう言って最後にもう一度教会を見てから、まあいっか、と言いながら、美波はこっちに向き直る。
「とりあえず、今日の所は戻るとするわ。ウチは二回戦の準備とかいろいろあるから、またしばらく会えなくなるかもしれないけどね」
「あ、うん」
「それじゃあね、アキ! アンタも頑張んなさいよ!」
そう言って、美波は校舎の方に向かって走り去っていった。
……その姿が見えなくなるまで見つめ続け、その後僕は深いため息をついた。
「全く、頑張ってって……こっちがどれだけ大変な目に遭っているのかもよく知らないで……」
ていうか、僕のあの話を聞いて、笑うしかないって……
ああ、本当に……
「…………笑い話、じゃあないよなあ……」
その僕の声は、憎たらしいくらい清々しい青空に吸い込まれていった。
「むぅ〜〜〜〜〜〜っ!! ムゥゥゥーーーーーーーーーーッ!!!!!」
……そしていろいろと台無しになった。
こうして、グタグタに二回戦二日目が終了した。
★☆★
【ステータスが更新されました】
■マスター:吉井明久
<スキル>
・ファイヤーウォール:-
黒金の腕輪没収のため、発動不可。
★☆★
そして、三日目。
お昼頃。
「てぇいッ!!」
僕達は全員でアリーナ・二階層にやって来ていた。
そして今現在、僕は大きな牛……いや、猪? あ、やっぱ闘牛だ闘牛。
とにかく、闘牛型のエネミーと戦っている。
僕はそのエネミーの攻撃をガードした後、カウンターに木刀で殴り飛ばした。
「ーーーーーーっ!」
けれど止めには至らなかったようで、地面にうまく着地するとまたこっちに突進して来た!?
「つうっ!!」
同じようにガードをしたけど、今度は助走ありの攻撃だったから衝撃が結構違う!
殆ど突進しか攻撃方法を出してこないから、左右に飛んで避けれたらいいんだけど、この狭い通路じゃそれも出来ない!
「こ、のおっ!!」
「ーーーーっ!!」
僕はガードしたままの状態で木刀を握り直し、そのまま力任せに掬い上げるような形でエネミーを切り上げた!
斜め上に吹っ飛んでいったエネミーは、今度は空中で体制を整える事が出来す、そのまま地面に衝突して消滅する。
「……ふうっ」
「お疲れさまです、ご主人様!」
「うん、ありがとう」
エネミーの消滅を確認して一息ついたとき、後ろに待機していたキャスターから笑顔で労いの言葉が掛けられる。
反対に、その隣に立っているセイバーとアーチャーは多少難しい顔をしていた。
「これで今日倒したエネミーの数は五体目か……そろそろ厳しくなって来たか、マスター?」
「うーん……いや、後三体はいけそうだよ」
「しかし、動きの切れが始めより下がって来ておるぞ。さすがに結構なダメージが溜まっておるのではないか?」
セイバーとアーチャーに、二人が僕の戦闘を見て思った事を教えられる。
普段は結構ふざけまくっていたり、うっかりやらかしたりしてるけど、こうやって戦闘を終了するたびに僕の状態と反省すべき点を分かりやすく教えてくれる。
しかもその指摘が的確で、それに耳を傾けていれば、アリーナでの行動がかなりスムーズになる。
その言葉を聞きながら、やっぱりこの三人は戦闘のプロなんだな、と改めて感じる。
……まあ、戦闘中に教えようとすると、また三人同時に指示を出そうとしてバラバラになるのは相変わらずだけど。
「うーん……というか、そろそろ"木刀で戦い続ける”っていうのが難しいんじゃないんですか?」
「う……」
「確かにな。相変わらず君は、戦闘のセンスは素人と思えない程にある。しかし、普通に木刀ではなく剣などで戦った方がもっと効率がいいのではないか? ここまでの戦闘を見続けて思った事なのだが、そのせいで君は受ける事の無かった傷まで受けているように感じる」
「そうですねー。というか始めからちゃんとした武器を使っていたなら、ご主人様ならここまで全部ノーダメで、しかももっと早くこられたと思いますけど。さっきの戦闘だって、それなら反撃を食らう事も無く速攻で倒してたと思いますし」
「それは……そう、だね……」
アーチャーとキャスターの指摘は至極当然の事だった。
僕はずっとこの聖杯戦争中、一回戦のライダーとの決戦のある時を除いて、ずっと木刀だけで戦って来ていた。
それは僕自身が召還中と融合した身で、元々の召還中の装備が木刀だったから、それで文月学園の時からずっと戦い続けてきていたからなのと。
そして……
「うむ、やはり余の大剣も使った方がよいのではないか? 一応奏者なら使う事は出来るのであろう? 実際に振るっていたからな」
「あっ……」
そう言って、セイバーは何処からか彼女の大剣を取り出し、僕の方に差し出して来た。
その形は、以前見た時と全く変わらない……ライダーと戦った時と……
「そうだな。我々は直接戦えない以上、自分の武器を持ち続けるより、マスターに使いこなしてもらう方が効率がいい、か」
「う〜……なら私も、この鏡をご主人様に預けます!!」
「いや、それはむしろ邪魔になるだろう。君のその鏡の操作など、他人に出来る物では無いだろう? 何か浮かんでいるし」
「其所はご主人様との愛の力で!!」
「便利だな愛の力」
横の方で漫才っぽくしてるアーチャー達はともかく、僕はセイバーに差し出された大剣をじっと見つめていた。
僕は恐る恐る、それを受け取ろうと片手を伸ばす……
ーーーーピチャッーーーー
「ッ!!?」
……が、脳裏に液体の滴る音が鳴り響く。
同時に、両手にもあの時に感じた手応えが再現されていくようだった。
それは、赤黒く、生暖かくて、嫌な感触を感じて、凄く震えて、命がーーーー
「ーーーーいやっ。今はまだ止めておくよ」
僕は伸ばした手を慌てて引っ込めながら、セイバーにそう言う。
「奏者……」
「ほ、ほら! 僕って戦いのセンスはあるっぽくても、実戦経験そのものは全く無かったでしょ? だから、一刻も早くその経験を積むために、始めから武器に頼った戦い方をしていちゃいけないんだと思うんだ。だから、今はまだ……これで……」
段々と、自分でも言葉が小さくなっていくのを感じ、慌てて話を切り替えようとする。
「あ! そうだ、倒したエネミーからお金を回収しておかないと! ちょっと取ってくる!」
「あっ」
そう言って、セイバーが何か言おうとしたしたのを無視しながら、僕はエネミーの消えた位置に、その場から逃げるようにして走っていった。
★☆★
「奏者……」
やはり……お主はまだ、あの事を引きずっていて……
「どうやら、まだマスターは振り切れていないか……」
「まあ、当然と言えば当然ですけどね。ご主人様が初めて人を殺してから、まだ3〜4日程しかたっていませんし」
「アーチャー、キャスター……」
奏者が離れたタイミングを見計らって、二人がこっちの方にやって来た。
余の考えている事が手に取るように分かっていたのか、いきなり本題を切り出してきおった。
「その短期間で、克服する事など不可能に近い、か……だが、このままではヤバいな。正直、他の武器も使えるようにして貰いたかったのだがな。無論、慣れない武器で戦うのはむしろ危険だがだからこそ、この準備期間中に経験を出来るだけ積んでもらう予定だったのだが……あの様子じゃ、暫くはまだ無理か」
うむ……確かにアーチャーの言う通り、このまま木刀という、リーチも攻撃力も低い武器を使い続けるのは不可能だと思う。
代わりに、その軽さゆえに奏者の素早さは上がってはいるから、絶対に使わない方がいいと言う訳でもないのだが……逆に言えば、それだけだ。
素早さはあっても、決め手にはならない。
このままでは、これからの対戦者達に簡単に対策をとられ、勝つ事がさらに難しくなっていってしまう。
余もそう思ったからこそ、自らの武器を差し出そうとしたのだが……
「ていうかー。そのトラウマの原因となった武器を一番始めに勧めるなんて、人の心分からなさすぎじゃないですか? 傷口をすぐ掘り返すようなまねしてどうするんですか」
「ううっ……」
だ、だって!
余の武器を使って欲しかったし、何より余の大剣が原因なら、むしろそれを使った方が克服が早くなると思ったのだ!
結果は……まあ、手に取ってもらう事すら、出来なかった状態ではあるが……
「しかし、本気でマスターの武器に関しては、近いうちにどうにかしなくては不味いぞ。ただでさえこちらはハンデを背負って戦っている状態だ。これ以上自分の首を縛るような事をしていては、確実に勝てる戦いも勝てなくなる」
「とはいっても、こればかりはご主人様しだいでしょうね。戦い行く以上、誰でも必ず自分の力で乗り越えなくてはいけない壁ですし……」
そう、だな……
キャスターの言う通り、これだけは奏者自身で乗り越えなくてはいけない壁だ。
我らが手助けできる事など、こればかりは、無い……
……結局余は、何も出来ない。
決心を改めて、必ず奏者を勝たせると誓ったのに、何一つ役立てていない。
余は、奏者の剣なのに……いや、むしろ剣だから、奏者を怯えさせておる。
これじゃあ、余は……
「セ、イ、バー?」
「ふえっ?」
「な〜に、珍しく長考なんてしちゃってるんですか? まあどうせ、“自分は結局お荷物にしかなっていない”ーって、変な事考えちゃってるんでしょうけど」
「うぐぅ……」
完全に図星を指された余は、少したじろいだ。
此奴……なかなか鋭い……
「ま、確かにご主人様のお荷物状態なのは事実でしょう。けど、それは私たちも同じ事だし、貴方だけが気にしている事じゃありません。それに、直接助けてあげる事は出来なくても、精神的に支えてあげる事は出来るでしょう?」
「精神的に……?」
「ええ。例えば、笑っているんです。ご主人様が辛く、どんなに苦しい感情に陥ったとしても、ただ一緒に笑ってあげればいいんです。それだけで、ご主人様の支えになるんです」
笑う……
確かに最近、奏者がふと暗い顔をしているのを見かけるが、こっちが見ている事に気づいたら、すぐに笑顔になってこっちに向いて来た。
あれは、ただ誤摩化そうとしていただけなのかと思っておったのだが……もしかして、奏者も……?
「笑う、か……キャスター、ふと気になったのだが、君が普段ふざけたような態度をとっているのは、もしかしてそれを積極的に行おうとしているからかな?」
「さあ、どうでしょうね〜。なんせ私は狐ですし、化かすの得意ですし〜」
むう、よく言う。
最近分かった事なのだが、キャスターの奴、普段はおちゃらけているように見えて、意外と周りの事に気を配っておる。
たまーにこうやって、ふと余が弱音を吐いてしまった時などは、適当にあしらうのでは無く、ちゃんと親身になってこうやって声をかけて来たりする。
悔しいが……こういう時、素直に頼りになる。
「あー、もうヤメヤメ! 何でこんな辛気臭い話になっちゃってんですか。元々ご主人様の武器の話してたのに」
「君が最初に切り出したのではなかったか? 確かセイバーの様子がおかしいとおも」
「ちょっとそこの茶坊主さん? 暫くお黙りいただける?」
そういって強引に話を切り上げて、キャスターはやれやれと言いながら歩き始めようとする。
「さ、て、と〜。それじゃあご主人様と一緒に、さっさとトリガーとマトリクス集めに行きましょうか! 後、ついでに対戦相手の落とし物でしたね。正直、あの痴女の頼みなんて聞きたくないんですけどー」
「む、そういえばそうであったな。あのラニとか言う女子に頼まれておったな、お主」
そう言いながら、余は昨日の紅茶を縛ってマイルームに戻ろうとして、廊下を歩いていたラニを見つけた時の事を思い出す。。
確か奏者に会いにいこうか、などと独り言を言っておったから、こんな痴女を奏者に会わせる訳にはいかぬ!! と言う事で、それで顔見知りであるキャスターの方が霊体化を解いて話を聞いてみたら、何でも奏者に頼みたい、というか取引をしたかったから代わりに奏者に伝えてくれ……と。
「内容は、えーっと……あのダーなんたらとかいう我らの対戦相手のあれがどうたらこうたらで、そのあれをなんやかんやしたいから、どーにかしてその持ち物をそうしろ……であったか?」
「いや、あやふやすぎでしょうっ!? ていうか合ってる部分が殆どないし!! あなた話し全然聞いてなかったんじゃないんですか!?」
「だって、余が直接話した訳じゃないし」
その時、余はマイルームに戻った後今度はどんな芸術作品をつくろうかなーと考えておったのだ。
痴女と駄狐の会話など耳に入れる余裕なんて無かったに決まっておろう!!
「全く……【占星術】ですよ、占星術ー。要は、星占いみたいな物です。何でも、私たちの対戦相手の事が知りたいからそれを使って情報を得ようとしたいけど、何かその相手の縁の品が必要らしくて。それで、私たちにその品の回収をお願いして、お礼に分かった情報を私たちにも教えてくれる、といった内容です」
「おお! それだ、そうであったな!」
「少し位ちゃんと聞いていてください。まあ、結論から言うと、マトリクスを埋めるのを手伝ってくれる訳ですから、このまま無視するというのも損かなと思いまして……」
うむ、そうだな。
確かに現状、こっちはマトリクス・システムだけが唯一相手より優位に立てる。
しかもこちらの情報は殆ど相手にばれないから、その点でのこっちのリスクは無いに等しいし。
だからこそ、そのマトリクスを埋めるのはこちらの勝利の絶対条件と言える。
それが分かっているからこそ、キャスターはいやいやながらも、その依頼をこなそうとしておる訳だ。
「……ん? おいちょっと待て。その話、私は初耳だぞ」
余とキャスターの会話を、ずっと言われた通り黙って聞いておったアーチャーが、いきなりそう言って割り込んでくる。
いや、初耳も何も……
「それは当然、お主が簀巻きにされて教会前に取り残されておったかであろう。その場にいなかったのだから、話など聞いておるはずもないであろうに」
「簀巻きにさせた張本人が何を言っている……」
「あーら。元はと言えば、アチャ男さんがあんなどこぞのエロゲの主人公みたいなラッキースケベを起こさなければ、あんな目には遭わなかったでしょうに。というか、アンタのスキル、ふざけ過ぎー」
「欲しくて持っている訳じゃないっ!? そんな事より、その取引を君たちが勝手に交わしてた、という事後報告を聞かされていないといいたいんだ!」
アーチャーのその言葉に、余は何? と疑問を思える。
キャスター、お主が既に話していたのでは無かったのか?
「あはは、何いってるんですか紅茶ー。その話はちゃーんと昨日貴方がご主人様と一緒にマイルームに帰って来た時に話してなかったそういえばあああぁぁーーーーーーーーっ!!!??」
最後には完全に叫ぶような大声になり、キャスターは思いっきり慌てた様子となった!
お主、まさか忘れておったのか!? 余にあれだけ言っといて!!
「しまったー!? そういえば昨日マイルームに帰ったとき、既に疲れで眠気が誘っていたから、帰りの遅いご主人様達を待たずにそのまま熟睡してしまいましたぁっ!?」
「おい、君は何をやっている。結構重要な情報なのに、それを忘れて寝るとは何事だ?」
「その疲れの原因を作ったのはあなたですけどねえ女運:F−さん!?」
「なっ!? 私が悪いのか!? それだったらむしろ私と違ってその場に一緒にいたにも関わらず、何も言わなかったセイバーの方じゃないかね!?」
「ぬっ!? 紅茶、お主余に罪を被せる気か!?」
この茶坊主、どさくさにまぎれて全て余のせいにする気だ!
何たる外道! その根性、ここでたたき直してくれようか!
「セイバーのあやふや具合はさっき聞いたでしょう! たとえセイバーが話してたとしても、全く内容が解読出来なくて当てにならないのは分かりきった事でしょう! セイバーだし!!」
「く、そうか、セイバーだしな……」
「って、こらあ!! 何故其所で納得する!! 泣くぞ、余は泣くぞっ!?」
そうして、余を含めた三人がギャーギャー騒いでいる内に、結構時間がたっていたらしく……
「……あのさー。そろそろ行動再会していい?」
「へ? あ!? すみませんご主人様、つい話に夢中になーーーーーーーって、何でそんな離れた所にいるんですかーっ!!?」
ふと声の聞こえて来た方角を見ると、明らかに奏者はお金の回収に先ほどまでいた位置から、さらに奥の方の広場らしき場所まで離れていた。
しかも体育座りで。
その様子は遠目から見ると、まるで小学校の体育の授業でいくつかグループを作ってくださーいと、担任の先生から言われたので、いつもの仲良しメンバーでみんなはどんどん集まりを作っていくのに、自分一人だけポツンと残されたボッチ少年にみえる。
「いや、なんかさー。回収作業終わったからそれを言おうと戻って来たら、三人がなんか凄く真面目な顔で話していたのを見かけてさー。流石に何か入りづらくって、聞いちゃいけない内容かなっと思って、声の届かない位置まで離れて待っていたら、最終的にこの場所にー」
「典型的なボッチ少年の思考だな、まるで」
「う、うむ……とにかく、奏者ーっ! 今から其所にいくから少しばかり待ってくれぬかー!!」
余はそう大声で呼びかけた後、余とキャスターが先に行き、後ろからアーチャーが付いてくるいった隊列で移動し始めた。
ちなみに、これに奏者を一番先頭に置いて移動する状態がいつの間にか我らの基本陣形になっておったりする。
奏者を先にする事で前方からの襲撃での対処はもちろん、他の三人はそれぞれ左右後方を常に意識を向ける事で、不意打ちを対処できるようにしている。
まあ、対処と言っても殆ど奏者に呼びかけると言った仕事しか無いのではあるが。
それに基本、アリーナの通路は狭いため殆どこの陣形を生かす機会など無く、効果を成すとすれば、例えば今奏者の立っている広い空間の時などーーーー
ーーーー次の瞬間、背筋に悪寒が走った。
奏者の今立っておる場所、その遥か後方の上の位置。
そこに、何か全体的に緑っぽい色をした何かが見え、同時にキラリと輝く何かが……
「奏者ぁっ!?」
「ご主人様ぁっ!?」
「くっ!!」
「っえ?」
余と殆ど同じタイミングで気づいたのか、余が駆け出すと同時にキャスターも真横で走っておった!
後ろにいたアーチャーは一瞬遅れ、数歩下がった距離で付いてくる!
そして、奏者は完全にこっちを向いた状態だったせいで、その後ろにいる奴に気づいておらんかった!!
いつもなら奏者だったら気づいたのだろうが……気が沈んでいた今さっきじゃ勘が鈍っておったか!?
ちょうど余とキャスターが奏者の所に追いつこうとした時、あの緑のからキラリと光る何か……矢が放たれた!!
「「間に合えーーーーっ!」」
隙だらけの状態だった奏者と入れ替わりになるように余とキャスターは前にでて、余は大剣を振り、キャスターは鏡を放つ。
たとえ本来の力が殆ど出せないとしても……この一撃くらいは防ぐ事は出来るはず!
そして、余とキャスターの武器は吸い込まれるように、飛んで来た矢に向かい、ガキンッとーーーー
“そのまま互いの武器を弾くだけに終わった”。
「「何やってんだこのバカアアアアアアアアアァァァァァァァァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!??」」
まあ何となく予想はしておったがなあっ!?
同時に防ごうとした時点で嫌な予感はしておったけどなあっ!!
「何をするかこの駄狐ぇっ!? 余が先に反応したのだ! ここは余がいく所であろうが!!」
「何するんですかこの馬鹿皇帝ぇっ!? 私の方が早かったのに!! 邪魔しないでください!!」
「「ぐぬぬ……っ!!!」」
互いに唸りながら、睨み合いの状態に陥った。
くっ! やはりこの駄狐など頼りにならんっ!!
一瞬でもそう思った余が愚かだった!!
「あー……君達、唸っているより、先にこっちをなんとかして欲しいかなあ……」
「「へっ?」」
声の聞こえて来た方を見てみると、奏者と紅茶がそれぞれ腕と脇腹に矢が刺さって倒れておるーーーーっ!?
「奏者ぁっ!? 紅茶ぁっ!?」
「くっ!? 二つ矢とは小癪な!!」
そう叫びながら、余とキャスターは倒れた二人に駆け寄っていった……