Fate/Extra Summon (バカテス*Fate/Extraクロス)   作:新月

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ようやく明日CCCの発売日!
早くプレイしたいです!

この小説じゃ、まだ前作二回戦止まりだけど!
……はあ。


保健室の大騒動

 

「鉄人!! 補習室ぅぅぅーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

 

「吉井ぃ〜! 貴様前回話の途中だったのに逃げ出すとは、相変わらずいい度胸しているな!」

 

「確かに、あの時はまだ死にきってはいなかったな……そこはこちらの落ち度だろう、それは認める」

 

「しかし、だからと言って話を聞かず勝手にコンティニューを選択するのは許さん! 結果的に生き残ったとはいえ、反省するべき点を見直さなければまたすぐ危機的状況に陥るだろうからな!」

 

「今回は逃がさんぞ、選択画面など出す隙も与えん! ちゃんと最後まで話を聞かせるからな!」

 

「では、早速今回の貴様の死亡原因についての反省だが……」

 

「って、また何かいい訳があるのか!? 全く、まあいい……前回のこちらの落ち度の謝罪として、一度だけ聞いてやろう」

 

「で、今度は何だ……………………何? 今度は“ゲームオーバー表示すら出ておらん”だと?」

 

「何を言っている。ちゃんと前回の話の最後の文の所に……………………ん? 無いッ!?」

 

「な、何故だ!? 確かに前回、吉井は毒矢にさされて………!?」

 

「……は? その答えは簡単だと? 何故ならーーーーーーーー?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーー“今更毒物関係で死に切れる程、碌な人生を送ってない”んですよ鉄人……」

 

「ご、ご主人様!? いきなり起き抜けにどうしたんですか!?」

 

「何でも無いです」

 

 

 二回戦、四日目の朝。

 

 夢見が最悪な起床だった。

 

 

 

 ★☆★

 

 

 ーーーー時は少し戻り、とある緑茶さんの視点より

 

 

 

「あ……あいつ等、馬鹿か……?」

 

 正直、狙撃した俺自身が、こんな結果になるとは思っていなかったんだが……

 えーと、ちょっと待て、待てよー……少し、振り返ってみるか。

 

 確か俺は、先にアリーナに来て、今回の対戦相手に引っ掛ける為の罠を張ろうとここで準備をしていたら、早速カモが来やがって。

 見たら奴ら、サーヴァントを三人も連れていて、それには驚いたが、ご都合な事に奴らは揉めて、マスターらしき人物が集団を離れ、絶好のチャンスに俺は毒矢を放って。

 しかし流石に腐ってもサーヴァントだったのか、奴らのうち二人は俺の攻撃に反応し、そのまま俺の矢は防がれると思って……

 

 ……思ったん、だが……まさかあの状況から、そのまま当たるとは思わなかったんだがなあ……

 

 

『奏者ぁっ!? 紅茶ぁっ!?』

 

『くっ!? 二つ矢とは小癪な!!』

 

 

 いや、二つ矢関係ねえ。

 確かに初撃を防がれる事前提にして二本撃ったが、両方当たってるし。

 防げなかったの、ただ単純にアンタ等の連携下手なせいだから、こっちに擦り付けんな。いや元の原因作ったのは俺だけどさあ。

 

「あー……何か、調子狂うぜ……」

 

 遠目で見ると、喧嘩していた二人の女性らしき人物が、倒れた野郎どもを引きずって来た道を戻っていた。

 本当なら、このままここで全員倒しておく所なんだが……さっきのが馬鹿すぎて、やる気が全然でねー。

 

「まあいい、帰るか……」

 

 一応は毒矢を食らったのは確認したし、放っておいても問題ないだろ。

 そう考え、俺はその場の隠蔽工作もせずに、さっさと帰っていった。

 

 

 

 

 

 ★☆★

 

 

 

 

 ーーーーそして、場面は保健室の少年視点に戻る。

 

 

「奏者ぁっ!? お主やっと目を覚ましたのか!?」

「うわぁーんっ!! ご主人様が起きて下さってよかったですーーーーっ!!」

「あー、うん。起きた……起きたから……出来れば、耳元で叫ぶのは止めて欲しい……」

 

 何故かマイルームではなく保健室での起床をした僕は、いきなりセイバーとキャスターが抱きついて来てそう叫ばれる。

 正直、二人の女性特有のふくよかな感触を味わうのは最高の気分ではあったけど、寝起きに鼓膜破られそうな音量を出され続けるのは流石に耐えられない。

 とりあえず抱きついて泣きじゃくる二人を(ものすごく惜しみながら)少し強引に離して、そのままベットの端から足を出して座り込むように体制を直した。

 

「つうっ……うぁー……何か右腕が焼けるように痛い……」

 

 いつの間にか包帯ぐるぐる巻きにされている右の二の腕から、ズキズキと鈍い痛みが響いてくるのを感じながらそんな言葉を漏らす。

 心なしか、体全体もなんかだるいような……?

 そんな僕の様子を見て、セイバーとキャスターはううっと唸り、少し落ち込んだような顔をしていた。

 

 

「奏者、済まぬ……」

「ご主人様、すいません……」

 

 二人がいきなり、そんな謝罪をして来て……

 

 

 

『こいつが邪魔したせいでーーーー』

 

 

『ーーーーあ"?』

 

 

 直後、互いを指差して、その後二人はドスの効いたような声を出した。

 二人のその表情は、何故かどこぞのヤクザ同士のボス立野の対峙の瞬間を連想させた。

 

「キャスター……? そなた、まさか自分の事は棚に上げて、余に全責任を擦り付けるつもりではなかろうな……?」

「そちらこそ、何を言おうとしたんですかセイバー? もしかして、何の罪も無い良妻ギツネにあらぬ罪を被せようとしてるんじゃないですよねー……? もしそうなら、うわっ、さすが暴君。私みたいに可憐で清い心を持つ者には、とても真似出来ませんねー」

「ふむ……そういうそなたこそ、さすが化かす事が本質の女狐。よくそんなスラスラと根の葉も無い嘘を吐けるよな、むしろ感動したぞ。どうだ、今度余の劇場で演目をやらぬか? タイトルは“嘘つき狐の愉快な末路”だ。うむ、ベストヒット間違いなしだな」

「こちらこそ、貴方の事本当に凄い人だと思いましたよー。まさかそんなセンスゼロを通り越してマイナスな作品を、そんな自信満々に傑作品だと言い張れるのですから。やはりローマ第5代皇帝は言う事が違いますねー。脳味噌湧いてんじゃないですか?」

 

「ははっ」

「ふふっ」

 

 最終的に、二人の顔は笑顔に変わり、互いに微笑みかけ……

 

 

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」

 

「フフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ」

 

 

 次の瞬間、瞳孔が開ききった目で、壊れたレコーダーのように一つの言葉を永遠と繰り返していた。

 仮に小学生とかがこの状況を見たら、即刻泣き出す程の光景だった。

 ていうか、これもう軽くホラー。

 

「ちょ、ちょっと! 二人とも、落ち着いて……って、無理だよね……」

 

 一応は声を掛けて、二人を静止させようとしたけど、三秒で“あ、これ無理だ”と思った。

 残念ながら僕には、目からハイライトが消えた女性二人組を止めるスキルなど持っていない。

 ていうか、そんなスキルを持っていたなら、文月学園にいたとき姫路さんと美波に追いかけられる事など無かっただろうし。

 そういえば、未だに学園で僕が二人にお仕置きされる理由が分からない時があるんだよね。

 確かに美波の真っ平らな部分を言っちゃった時なんかは、流石に僕が悪かったとははっきりと自覚してるけど、たまーに理不尽だと思う折檻とか受けるのは何でだろう……

 

 

「ハハハ」ガシッ

「フフフ」ガシッ

 

 と、そうこう考えている内に、セイバーとキャスターはまだ笑い声を上げた状態で、そのまま近くにあった椅子を互いに構えてーーーーーーッ!!?

 

「いやホントちょっと待ったあッ!!? てか、何かこの光景凄くデジャブッ!?」

 

 ちょっと目を離した隙に、最近マイルームで見たばかりの状況を再現しようとしていたよこの二人!!

 流石に保健室で投げ合いの喧嘩はマズいって!! いや別の場所ならいいっていう訳でもないけど!

 何でいつもこんなに喧嘩っ早いのさ!? とりあえずその手に持ってる物下ろそう!

 このままじゃ、保健室がアーチャーのスペースみたくガラクタ置き場と化するから!!

 

「っていうか、こんな時にアーチャー何処さ!?」

 

 アーチャーのスペースで気づいたけど、ベットから起きてからこの二人はいるのに何故かアーチャーが全く姿を現さない!

 何でよりによってこんな状況でいないのさ!? 一応このメンバーで唯一の常識人なのに!!

 一瞬霊体化している事を考えたけど、それでも近くにいたなら令呪のラインで気配が……って、“隣のベットから”!?

 何で其所からするの!? そう言えばカーテンしまってたから、僕達以外の誰かもいたのかなーって思ってたけど、まさかアーチャーが其所で寝てただけ!?

 

「ちょっとアーチャーッ!! 二人がまた喧嘩し始めてもうヤバい状況なんだけど、なんで寝っ転がったままでーーーー」

 

 とにかく僕はそう叫びながら、恐らく眠っているであろうアーチャーを叩き起こす為にカーテンを勢いよく開い

 

 

 

 

 

 

「うふふ……センパーイ……」

 

「ムーッ! ムゥーッ!!」←(猿ぐつわされた状態で登場)

 

「怖がらなくていいんですよぉ……これからするのは、ただの治療ですからぁ……」

 

「ムーッ!? ムゥーーッ!!」←(それは断じて治療では無い! と言いたい顔)

 

「ほらぁ……こうやって、ここから毒を吸い出してぇ……」

 

「ムーッ!? ムムゥ〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」←(そこから先はダメー!!! と言いた

 

 

 

 シャーッ!!!←(カーテンを閉める音)

 

 

 ……お邪魔しましたー。

 

 ああ、そういえば桜さんの姿もみてなかっけ……

 保健室で二人が盛大に騒いでいるのに注意の声も入らないから、もしかして留守にしてたのかなーって何となく思っていたけど、アーチャーとお楽しみの最中でしたか。

 なるほど、二人はそういう関係だったんだね。まさか未成年者お断りの事をする程の仲とは知らなかったよ。

 本来ならFFF団を代表して制裁を加える所なんだけど、最近アーチャーは割と不幸続きだったし、ここは多めに見て上げよう。

 うんうん、仲良き事は美しきかな、だっけ? この場合。 微妙に違う気もするけど、まあいっか。

 何故か今、雄二と霧島さんの事が頭に浮かんだんだけど、多分全く関係ないだろう、うん。

 後、桜さんの背後に黒いウネウネが見えたような気もするけど、これも幻覚とか錯覚だね、うんうん。

 

 さーて、寝るかー。

 

 そう思いながら、僕は耳栓をして元いたベットに潜り込む。

 ちなみにこの耳栓、この間姫路さんに貰った彼女お手製の魔術礼装だったりする。

 以前会話したとき、最近夜がうるさくてよく眠れないんだよねー、と姫路さんに相談した時に、わざわざ僕の為に作って次の日に持って来てくれた物だ。

 その効果は抜群で、耳に入ってくる音をなんと99パーセント大幅カット!! 

 まるで誰もいない静かな山奥にいるような感じを味わえる程の代物だ。

 

 だからそう、今まさに保健室が二人の少女に破壊されていようが、隣でとある男女が愛し合っていようが、その音はいっさい聞こえず、さわやかな気分で眠りにつけるんだ。

 

 というわけで、お休みー。

 

 そう心の中で呟きながら、僕は騒音だらけの保健室の中、ベットでスヤスヤと眠り始めた。

 

 

 ★☆★

 

 

【アイテム入手しました】

 

 ・音波侵入遮断装置:C

 

 姫路瑞希お手製、音による聴覚に対する影響を遮断してくれる最高の装置……ていうか、ぶっちゃけ耳栓。

 同室の方がうるさくて、睡眠不足のでお悩みの貴方にオススメの一品。

 何気にその効果は強力で、聴覚を利用したコードキャストの効果を無効化する事の出来る凄い物だったりする。

 

 

 ★☆★

 

 

「イチイの毒?」

「はい。自然界で抽出された毒にしては、随分凶悪な物……何ですけど……」

 

 ふて寝から約二時間後。

 流石に四日目まで何も成果を上げずダラダラ過ごすわけにはいかなかったから、嫌々ながらも現実に向き直ろうと決めてベットから起き上がっていた。

 そこで、僕が寝る前に見た光景をいっさい無かったかのように話す桜さんから、僕とアーチャーがうけた毒矢についての説明を聞かされていた。

 

「うなぁーっ!! 何で余が保健室の修理などせねばならぬのだ! 悪いのはそこの女狐の方だろう!!」

「うっさいっ!! それはこっちの台詞ですよそこの暴君!! ほら、さっさとその荷物こっちへ運んで下さい!!」

「せ、セーフッ、あれはセーフだった…………ギリ、逃げ切れた…………俺、生き残れたよ、遠坂……っ」

 

 ちなみにその桜さんの背後では、思いっきり暴れた罰としてセイバーとキャスターがボロボロになった保健室を一生懸命片付けている最中だった。

 逆に、いつもならこの状況なら率先して動きそうなアーチャーは、部屋の隅で体育座りでこっちに背を向けてブツブツと何か言っている。

 

 ……うん、見えない、見えないよ僕。

 アーチャーの方を向いて『あともうちょっとだったのになあ』とか呟いてる桜さんなんか、絶対見えないからね。

 

「それで……えっと、あの、本当に大丈夫……なん、ですよね?」

「あ、はい、一応」

 

 さっき二度寝したせいか、体のだるさどころか、腕の痛みすら完全に無くなっていた。

 試しに右腕の包帯をとっても、後は多少残ってはいたけど、完全に傷は塞がっている。

 

「そんな……イチイの毒を受けて、ここまで平然としていられるなんて……普通はあり得ない事なんですけど……」

「あれ? けどアーチャーも同じ毒を受けたのに、そっちも今は普通に動けてますよね?」

 

 まあ、精神的な部分は除いてだけど。

 ていうか、毒と関係ない理由だしね。

 

「ああ、紅茶ならさっきの騒ぎでキャス狐が倒した棚から出て来た【治療薬】を使いまくっておったぞ。流石に一個じゃ足りなくて、複数服用せねば完全には消しきれなかったらしいが」

「そのせいで、私は先輩を食べ損なってしまったんですけどね……」

 

 桜さんの発言は聞こえないとして、なるほど、サーヴァント用のアイテムか。

 そういえば、マスターである僕には使えなかったから関心が無かったけど、サーヴァントに対しては状態異常回復とか、体力以外にもサポートしてくれるアイテムがあったんだっけ。

 今まではあまり必要としてなかったけど、セイバー達の事を考えると、いくつか用意しておいた方がいいのかもしれない。

 

「まあ、それはともかく……それで、アイテムも使ってないのに、吉井さんまですぐに動けるようになるのはおかしいなって思って……」

「ああ。まあ、鍛えてますからね」

「どんな鍛え方をすれば、凶悪な毒を受けても次の日にはケロッと復活出来るのか、凄く気になるんですけど……」

 

 え? うーん、どんな鍛え方っていっても……

 

 

 

 

 

「クラスメイトから、塩酸やら王水やら入った差し入れのお弁当を食べていたら、まあ自然と」

 

 

『そんな弁当があるかアアアアアアアアアアアアアアアァァァっ!!!??』

 

 

 直後、部屋にいた全員から盛大に突っ込まれた。

 まあ、そうだよねえ……普通はそう思うよね……

 

「何だその化学薬品の入った弁当は!? いくら何でも余でさえそれはヤバいと分かるぞ!?」

「誰だそんな料理を侮辱するようなことをする奴は!! 俺からみっちり料理のさしすせそから鍛え直し得てやろうか!?」

「そのクラスメイト絶対にご主人様を殺しに来てますって!! ていうか、よくそんなの食べて今まで生き残ってこられましたね!?」

 

 と、サーヴァント勢全員が今やっていた事をすっぽかしてこっちに詰め寄って、そう言って来た。

 うん、気持ちは分かる……というか、時々僕もそう思う事あるしね……

 そして

 

「しかも、それで見た目はちゃんとしている、ていうか普通においしそうだから、なおの事厄介なんだよね……ただ味付けを化学的に考えちゃって、酸味を作るのに酸性の薬品入れちゃったりするだけで」

「料理音痴ってレベルじゃないですよ、それ……」

 

 しかも姫路さん自身、それがヤバいって事自覚ないし。

 多分料理の技術そのものはあるんだろうなあ……化学薬品を使うせいで、全てダメにしちゃうってだけで。

 けど、正直今更注意するのも引けるんだよなあ……このままじゃいけないって事は分かってるんだけど……

 ちなみにこの話を聞いて横の方で桜さんが、あれ、料理って何だっけ、え〜……?』と、何か混乱している真っ最中だったりする。

 

「まあそのおかげで、最近だと並大抵の毒物じゃ、受けた瞬間は気絶しちゃう事はあるけど、すぐ意識が戻れるようになっちゃったし。慣れってホント、恐ろしいよね……」

「いや、余も生前に受けた毒の影響を引きずってはおるのだが、慣れる物ではないと思うぞ……」

 

 セイバーがもの凄く冷や汗を掻いた状態で、そう言ってくる。

 まあ、確かに普通の人は三途の川を一生のうちに何度も見る事なんて無いよね……

 

「ていうか、セイバーも毒の影響受けた事あるんだ?」

「あ、いや、まあその……ちょっといろいろあってな、そのせいでずっと【頭痛持ち】という厄介な物を持ってーーーーん?」

 

 話している途中で何故かセイバーの言葉が途切れたと思うと、彼女は自分の頭を押さえて疑問の表情を浮かべていた。

 一体どうしたんだろう?

 

「……奏者。済まぬが、そなたの持っている端末を貸してもらえぬか?」

「え? うん、いいけど?」

 

 そう言って、片手を出して来たセイバーに端末を渡すと、彼女はすぐさまカチカチと操作をし始める。

 しばらくすると、その音は止まり、今度は驚きの表情に変わっていった。

 

「えっと……どうしたの?」

「やはり……おかしいと思ったのだ。そう言えば最近、頭が痛くなる事がなかったなと思ったら……」

 

 これを見よ、とセイバーはその端末の画面を、僕達全員に見えるようにして来た。

 

 

 ★☆★

 

 

 ■クラス:セイバー

 

<スキル>

 

 ・頭痛持ち:ー

 

 生前に受けた毒の影響で起きた後遺症。精神スキルを著しく低下させてしまうバッドステータス。

 現在、“とある事情により完全無効化”されている。

 

 

 ★☆★

 

 

「これって……」

「うむ……何故か分からぬが、この後遺症が完全無効化状態にされておる」

 

 セイバーの話した内容に、彼女自身が一番疑問に思っているようだった。

 

「あら、よかったじゃないですか。弱点の一つが無くなったんだから、むしろここは喜ぶ所でしょう?」

「しかし、何故セイバーのこのスキルだけなんだ……? どうせなら、俺の方のスキルも無効にして欲しいんだがなあ……」

 

 キャスターとアーチャーはそんな言葉を漏らす。

 アーチャーの愚痴はともかく、とりあえずキャスターの言う通りだと思うけど……

 

「まあ、今は単純にラッキーって思っておけばいいんじゃない? 無くなって困る訳じゃないんでしょ?」

「それはまあ、そうなのだが……うーん、なんか釈然としない……」

 

 まあ、気持ちは分からなくもない、かな……?

 今までずっと悩みの種だった事が、いきなり何の理由も無しに無くなってしまっていたんだから。

 多少気味が悪いとは思うかもしれないけど……まあ、今の段階じゃ分からないし、気にしない方がいいと思う。

 

 

「とにかく、その話は置いといて、そろそろ情報集めにいかない? ていうか、流石に今日行動しないと、もう丸三日何の成果上げてないから結構ヤバいんだけど……」

 

 強いて言えば、その三日間でおこった事と言えば、戦力強化の為に蒼崎姉妹の所に行って、結局腕輪没収という逆に戦力ダウンしたという結果になった、という出来事位だったりする。

 

「へ? ああ!? そう言えば私たち、トリガーもマトリクスも一つも埋まってませんよね!?」

「な、流石にそれは不味いっ!? なら急いで行動を開始せねばーーーーーー」

 

 

 

 

 

「ーーーー失礼する」

 

 

 

 ……と、そんな一声が僕達に聞こえた後、保健室の扉がガラガラッと開く。

 

 

『ッな!!?』

 

 

 その後、入って来た意外な2人組……片方は、僕には見覚えがあった。

 その人は……

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーー校長先生っ!?」

 

 

「いや、断じて違うが?」

 

 

 あ、やっば。素で間違えた。

 

 

「あ、ゴメン、ごめんなさい。ちょっと待って下さい。もっかい入り直して来てくれませんか?」

「うむ、相分かった」

「はい?」

「戻るぞ、アーチャー」

「え? ちょっ旦那?」

 

 そう言って、その老騎士さんと緑の人は保健室から出て、扉を閉めてくれた。

 僕はゲフンゴホンっと、微妙な空気になった保健室の中で喉の調子を整え直し、改めて構え直す。

 

 

 

「ーーーー失礼する」

 

 

 

 ……と、そんな一声が僕達に聞こえた後、保健室の扉がガラガラッと開く。

 

 

『ッな!!?』

 

 

 その後、入って来た意外な2人組……片方は、僕には見覚えがあった。

 その人は……

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーダン・ブラフっ……いや、ブラッタ……? ブラ、ブ…………ダンさんっ!? 何故こ」

 

 

「いや、結局間違えてんじゃねえかっ!!?」

 

 

 直後、緑の人から盛大なツッコミ。

 うん、ちょっと本気でど忘れしちゃってたよ。

 

 

「あの、すみません。ちょっとフルネームもう一回教えてくれません?」

「ダン・ブラックモア、だ」

「あ、はい。ブラックモアさんですね。じゃあもう一回入り直」

「す訳ねーだろ!? なに何度も同じ場面繰り返そうとしてんだよ!! 旦那も何乗ってんすか!?」

「うむ、元々こちらは謝罪に来た訳だからな。彼の頼みを聞く事が誠意に繋がるかと思ってな」

「いや繋がんねーですから!? バリバリの悪ふざけっすから向こうの!! ただのショートコントになってるだけだから!!」

 

 意外と乗りのよかったダン・ブラックモアさんに、芸人顔負けの突っ込みを披露する緑の人。

 ていうか、この緑の人がダン・ブラックモアさんのサーヴァントなのかな?

 ……ていうか、謝罪って?

 

「っあー!!? ご主人様、こいつですよ!! この緑の男がご主人様を狙撃した卑怯者です!!」

「って、ええ!?」

 

 ふと我に返ったキャスターのその言葉に驚く。

 って、考えてみればそうか……同じアリーナに入れるのは対戦者同士の一組だけだから、自然とあの時狙って来たのはダンさん自身か、彼のサーヴァント以外にありえないよね……

 

「ああ、間違いない! 遠くからでも分かる、その芋虫みたいな配色の趣味の悪い格好、余の目には誤摩化せんぞ!!」

「芋虫見たいって、失礼だなそこの赤いドレス女!? てか、趣味の悪いってアンタだけには言われたくねーよ!!」

「おい、話がいきなり脱線しそうだぞ……」

 

 まあ、服のセンスなんてどうでもいいとして……

 とりあえず、このままじゃ戻って来れなさそうだから、ダンさん本人に聞こう。

 

 

「ところで、謝罪って昨日の狙撃の事ですか?」

「ああ。こちらの与え知らぬ事とはいえ、サーヴァントが無礼な真似をした。その詫びをしに来た」

 

 そう言って、ダンさんは彼のサーヴァントの方に向き直る。

 

「アーチャー、彼らにかかっている宝具の効果を解きたまえ」

「はあっ!? 何すか!! 今この赤いロリ痴女に俺の格好良さを思いしめさせてる真っ最中なんで、後にしてもらえます!?」

「誰がロリ痴女かあっ!! この害虫男!!」

 

 ……が、何かかなり話が盛り上がっているらしく、全く聞いてなかったらしい。

 どこぞの小学生かと思うくらいの騒ぎ様で言い争っている二人は、こっちに全く聞く耳持たなさそうで……

 

 すると、ダンさんは右手をスッと上げて、

 

「アーチャーよ! 汝がマスター、ダン・ブラックモアが令呪をもって命ずる! 学園内で敵マスターへの【祈りの弓イー・バウ】を用いた攻撃を、永久に禁ずる!」

 

「だからこの緑は俺のチャームポイントでーーーーへ? な? はあああぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

 

 何か盛り上がっていた緑の人の驚きをよそに、ダンさんの右手から赤い閃光が走り出した。

 近くにいた僕には眩しすぎて、思わず手で目を覆い隠す程の光が放たれた後、彼を除いた室内にいた全員が驚きの表情へと変わった。

 僕自身もかなり驚いている……まさか、こんな所で令呪を使うなんて……!?

 

 令呪とは、聖杯戦争中でたった二回しか使えない、逆転の切り札の要なもの……前に遠坂さんから口が酸っぱくなる程よく注意されたから、その重要性は僕でもよく分かっていた。

 だからこそ、自分のハンデを背負うことになるだけなのにーーーーーー

 

 

 

 

 ーーーーまさか、“話を聞かない若者にイラッっとしただけで使う”とは思わなかった。←(違う)

 

 

 

「正気か、旦那っ!? 負けられない戦いじゃなかったのか!?」

「無論だ。わしは自身に懸けて負けられぬし、当然のように勝つ……その覚悟だ」

 

 ダンさんのその真剣な表情に、緑の人はふー……っと深いため息をつく。

 

「……わーった、分かりましたよ。解けばいいんでしょ、解けば」

 

 そう言って、緑の人が右腕を上にして構え直し、手に付いた弓みたいな物をこっちに見せてくる。

 それを見てハッと我に返った僕は、慌てて聞く。

 

「あの、待って下さい! そこまでしなくても……っ」

 

「いいんだ、少年。これはこちらの身勝手な誠意ーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

「いえ、そんな事しなくても、もう解毒は済んでるから意味が無いんで」

 

 

 

 

「「…………………………………………」」

 

 

 それを言った直後、保健室は無言の空間に閉ざされた。

 というか、主に目の前の二人から声が消えた。

 その顔は完全に無表情で、ある意味今までで一番怖く感じた。

 あれ……僕、何か不味い事言っちゃった?

 ただ親切心で、それしなくても大丈夫ですよーって言いたかっただけなんだけど……慌てちゃって、なにか間違えた?

 

 ……その後、暫く無言だった二人のうち、ダンさんが緑の人に向き直り、

 

「ーーーーこの戦場は公正なルールが敷かれている。それを破ることは人としての誇りを貶めることだ」

 

「なんかあの老人、いきなり語り始めましたけど」ヒソヒソ

「しっ!? 黙っていろキャスター! それが優しさというものぞ」ヒソヒソ

 

 内容だだ漏れなんだけどそこの美女二人。

 そしてそれが聞こえなかったかのように話し続けるダンさん。

 凄い、あの人のメンタル並みじゃねえ。

 

「これは国と国との戦いではない、人と人との戦いだ。畜生に落ちる必要は、もうないのだ、アーチャー」

「……はあ、そっすか。ていうかまあ、畜生っていうより、“道化”って感じなんですけどね、今の心境は」

 

 構えを解きながら、頭をポリポリと掻いてそう言う緑の人。

 その顔は何故か少し哀愁が漂っている感じがするのは、多分気のせいじゃないだろう。

 

「済まなかった。どうか先ほどのことは許してほしい」

 

 今一瞬、先ほどの事ってさっきの空気を作った事? って聞こうとしちゃったけど、危ない危ない……

 

「君とは決闘場で雌雄を決するつもりだ。 では失礼する」

「つーか、マジでちゃんとしてくれよ。俺が言うのもなんだが、ここまで普通の流れの戦闘をしたいと思ったのは初めてかもしれねえ……」

 

 そう言って、対戦者である二人は保健室から去っていった。

 

 

「……何ていうか、凄いね。いろんな意味で……」

「ええ、そうですね……」

 

 残った僕達は、そんな微妙な空気に包まれていた。

 何て言うか……凄く生真面目なんだけど、それがたまに、空回りしちゃうって感じ? に思えて……

 

「だが、あの芯を貫く精神。どのみち並の相手ではない。むしろ想像以上の強敵だぞ、あのマスターは」

「そうだね……」

 

 それに緑の人の本領も、まだ見ていない。

 多分、僕達を不意打ちで狙撃する意外にも、何か強みを持っていると思う。

 何にしても、こっちの情報が圧倒的に少なすぎる。

 

「うむ! なら早速、改めて情報収集と行こうではないか!」

「うん!」

「そうですね!」

「承知した!」

 

 僕達はそうセイバーに返事して、全員が一体なって保健室を出て行

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーその前に、まだ片付けが終わってませんよ?」

 

 

『さらばだっ!!』

 

「あっ!? コラ、待ちなさーいっ!!」

 

 

 数分後、何故かあっけなく捕まった僕達は、保健室の修理が済む夕方まで作業させられた。

 

 

★☆★

 

【ステータスが更新されました】

 

■マスター:吉井明久

 

〈スキル〉

 

・毒物無効:B

 

 

毒物関係の物が効かなくなるスキル。

ランクBなら、たとえ強力な化学薬品だろうが、自然界の毒だろうが、受けた瞬間は効果はあっても、時間をかければ全く後遺症無く無効化出来る上、即死刑の毒ですら止めには至らない。

 

普段から毒物を口に含んでいたおかげか、自然と鍛えられたスキル。

実は、食べ慣れるだけでBまで上げるのは普通の人にはほぼ不可能だったりする。

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