Fate/Extra Summon (バカテス*Fate/Extraクロス)   作:新月

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更新が大幅に遅れてしまってごめんなさい!
というのも、現在済んでいる家に、ネット環境がいままで無くて……
これまでスマホのデザリングという機能を使って小説を書いていたのですが、その調子が悪く……
けれどこの間、やっと工事が来てネット環境が整いました!
これからは出来るだけ定期的に更新して行くつもりなので、生暖かい目で見守ってくれると幸いです!




一緒にいるだけで

 

「…………け、結局保健室で一晩過ごしちゃったよ……」

 

 日を跨ぐまで騒ぎ続けてしまった僕達は、さすがに疲れ果ててマイルームに戻る気力も戻っておらず、そのまま保健室のベットやらイスやらで眠り込んでしまった。

 今は……大体、朝の六時くらいって所かな?

 まだ僕以外のみんなは眠ったままで、あちこちから寝息が聞こえて来ている。

 ……って、よく考えたら、今この保健室にいるメンバーって、僕以外全員女の子……っ

 

「おはようマスター。生きてるか?」

「おはよう速攻で僕の事見捨てた紅茶さん」

「とりあえずかなり根に持ってるという事だけは理解した」

 

 僕のささやかな幸福を噛み締めている時に、その時間を壊すようにガラッと音を立てて入って来たアーチャー。

 僕を見捨てて自分だけ逃げた恨み、晴らさでおくべきか……っ!

 って、よく見るとその手には、何か中くらいの箱を持っていた。

 

「アーチャー、それって?」

「ん? ああ、対ロビンフッド用のアイテムを集めていた。ほら」

「へ? ロビンフッド用って……うわっとと」

 

 箱の中から小さな物体を一つ取り出すと、アーチャーはそれを僕の方に片手で放り投げて来た。

 戸惑いながらも何とかそれをキャッチして、その物体を改めてよく見てみると、それは使い捨ての注射器だった。

 

「今のうちに使っておきたまえ。それは……」

「“覚せい剤”?」

「そんなもの渡すかっ!? 解毒剤だ解毒剤!!」

 

 あ、ほんとだ。

 よく見ると、側面の所にラベルが張ってそう書いてある。

 

「全く……まあ今回、あの緑の弓兵に我々はしてやられたからな。決戦場に入ってそうそう、また遠距離から闇討ちされる可能性が十分考えられる。さすがに今度は我々も気をつけてはいるだろうが……それでも、一発も当たらないという保証は無い」

 

 アーチャーはそう言いながら、机の上に下ろした箱の中身を整理していく。

 

「一応、毒物無効:Bのスキルを持っている君なら、一晩眠るだけで完全に解毒は出来るが……決戦場では、そんな悠長な時間などあるまい。当たったとしても、すぐに動けるようにしておかないと意味が無い。その解毒剤と君自身のスキルのコンボで、恐らくほぼ完全に無効化出来る筈だ」

「アーチャー……」

 

 不覚にもその言葉にジーンと来て……

 

 

 

 

 

「“どうせこれもサーヴァント用なんでしょ”」

 

 

 

 先に予想出来ていたオチを言った。

 

 

「安心しろ、“マスター用だ”」

 

 

 ほんとにぃ〜?

 

 僕は疑いの眼差しを隠そうともせずに、アーチャーの方を向く。

 だって、これもの凄いデジャブなんだもの。

 この流れに凄い見覚えがあるんだもの。

 具体的に言うと、一回戦の最初くらいの頃。

 

「全く……君は私が同じ轍を踏むとでも思っているのか? 今度はちゃんと確認してから持って来ている」

「毒も受けていない状態で打ったら、逆に体調悪くなるとかない?」

「マスター、完全に疑り深くなってるな……」

 

 だってもう、今までの経験上からそうなっちゃったんだし。

 この流れだと、何処かに必ずオチが……とんでもないオチが存在している筈……っ

 ……あ、そーだ。

 

「まあ、とにかくありがとう。アーチャー」

「いや、礼には及ばん」

 

 

 

「さすがに僕を見捨てた後じゃすぐには戻りづらかったしねー」

 

「そうそう、一晩待って落ち着いた頃に、手みやげを持って入れば許してくれるかとああっ!!?」

 

 

 

 やっぱり……

 

「い、いや、違うんだマスター!? これはだな、まじめにあの緑の対策をした結果であって、決して昨日君を置いて逃げた事に負い目を感じている訳では無く、むしろそれはどうでもいいというか!!」

「あっそーなんだ。僕の事はどうでもいい、なんだ」

「あ”、いや間違った!? そうじゃない、そうじゃないんだ!! ただフツーに去って行ったというかなんというかーーーー」

 

 あわてて必死に弁明を続けようとするアーチャーを横目に僕はベットから起き上がり、まだ寝てる皆を起こさないように、決戦の準備を始めて行った……

 

 

 

 ★☆★

 

 

 

「……っ……う〜っ! っと。おはようございます、凛ちゃん、ラニさん、桜さん、明久君!」

「ふぁあ……と、おはよう。結局保健室で全員寝ちゃったわねー」

「そうですね。しかし、昨日……いえ、今日の午前二時頃に寝たとすると、今の時間は朝八時……だいたい六時間、理想的な睡眠時間は取れていると言えますね」

 

 僕が起きて二時間くらい経った頃、姫路さん達も起きて来た。

 それぞれ背伸びしたりあくびをしたりと、そんな動きをする女の子達を見ていると妙に色っぽく感じる。

 まだ眠気が完全に抜けきってはいないようだけど、全員昨日の疲れを引きずっている様子は無さそうだ。

 

「おはよー、みんな。体調は……大丈夫そうだね」

「はい。確認してみましたが、四人ともメンタル、フィジカル、ともに問題無しです。いつでも決戦に行けますよ」

「っていうか、あれだけ騒いで次の日に疲れが殆ど出ないって……瑞希、アンタどんだけ使い勝手のいいコードキャスト作りまくってんのよ……」

 

 そう、僕達の疲れが出ていないのは一晩寝たからという理由もあるけど、大半は姫路さんの作ったコードキャストのおかげだった。

 

「いやー。まさか昨日の試したいって言った奴の中に、回復用の術があったなんて予想外だったよ」

「もう、明久君ったら。さすがに決戦前日に、動けなくなるほどの怪我をさせる筈が無いじゃないですか」

「そうよ。さすがに自重って言葉くらい分かってるわよ」

「あの……それだと、それ以外の日だったらすると言っているような……後、それ以外の術では全身打撲や火傷状態になっていた気が……」

 

 桜さんが何か言っているようだけど、僕達にはよく聞こえ無ーい。

 昨日の出来事の一部は、既に忘却の彼方に飛ばされているのだった。

 そうでなきゃ、とても文月学園生なんてやっていられない。

 とにかく、昨日僕に試した術の内の2〜3個は、主に疲労回復とダメージ回復の効果を持つ物だったんだ!

 しかもちゃんとマスター用の! ちゃんとしたマスター用の!!

 

「しかし、よくこんなコードキャスト作りましたね。サーヴァントに対してではなく、マスター自身に体力の回復の効果があるようにしているというのは少し珍しいですね」

「いえ、ほら私はあまり運動が得意じゃなくて、すぐ息切れとか起こしちゃうんですよ。だから、市販のサーヴァント用とかじゃなくて、マスター自身に効果のあるコードキャストが欲しかったんです」

「本当、便利だよねー。……出来ればそのコードキャスト、教えてくれない?」

 

 市販のアイテムなどとは違い、姫路さんのは歴としたマスター用のコードキャストだ。

 サーヴァントを使わず、直接マスター自身で戦う僕に取っては、正直喉から手が出る程欲しい代物だったりするんだけど……

 

 

 

 

 

「いいですけど、これ一回のMP使用量に、だいたい“100”使いますよ?」

 

 

「うん。また今度で」←(MP73) 

 

 

 

 最近の僕のお気に入りのワード、

 

 “人生はそんなに甘くない”だったりする。

 

 恐らく元の世界に戻った後、国語のテストでこの問題が出たら、僕にしては珍しく一回も外さない自信がある。

 

 

「ところで、そろそろ時間じゃないの? 確か吉井が先で、瑞希が後だったわよね?」

「あ、うん。確か僕は、十時までに行かないといけないんだよね」

「私は十一時ですね」

「お二人とも、礼装の準備は万全ですか? あらかじめ装備をしておいた方が、戦闘時の行動に余裕ができます」

「大丈夫だよ。昨日ラニから貰った強化スパイクは履いたし、遠坂さんから木刀返して貰ったし」

 

 そう言いながら、僕は靴のつま先をトントンと床に立てて、調子のいい事をアピールする。

 うん。サイズもピッタリだし、履き心地いい!

 

「え? 礼装はそれだけなのですか? 行動に支障が出ない範囲であれば、もう少し多く装備しておいた方がよろしいかと……」

「あー……いや、その、装備出来る礼装がラニからもらったコレだけしかなくて……黒金の腕輪は没収されてるし」

「はあ? アンタ全然準備出来て無いじゃない! 他に一つくらい持ってないの?」

 

「あるとすれば、この間姫路さんから貰った強化体そ」

 

「なるほど本当に無い訳ねっ!!」

 

 こっちが言い切る前に、遠坂さん叫ぶような声にカットインされてしまった。

 っと、ここで姫路さんは、片手を顔の近くに持って来て疑問の声を上げた。

 

「けど、本当に他に何も無いんですか? アリーナの探索中に拾ったものの中に、一つくらい混ざっているとか」

「って言ってもなあ……今回アリーナに行けたのって本当に数回だけだし、拾った物も殆ど無くて……」

 

 僕は持っている端末のアイテム欄を操作しながらそう呟く。

 確か唯一の成果と言えばトリガーと、後は対戦相手の緑茶さんの落とし物だけだった筈……ラニに全部捨てられちゃったけど。

 後は、早朝にアーチャーから貰ったアイテム位か。

 だから本当に、端末の中に入ってるものなんて殆どーーーー

 

 

 

「ーーーーあ」

 

 

 いや、あった。

 まだ他に……それも、“二つ”も。

 

 片方は、この電脳世界に来た時から、僕が持っていたもの。

 

 そして、もう片方は……

 

 

「……? 明久君?」

 

「へ? ああ、ごめん。ちょっとね」

 

 そう謝りながら、僕は端末の電源を切ってポケットに仕舞う。

 

「あら。その様子だと、何か役立ちそうな物が見つかった?」

「うーん、どうだろ……正直、まだ一回も使った事が無いから、なんとも……」

 

 片方は、元の世界の時に使ってはいたけど、こっちの世界で使った事が無いから、どう作用するのかが分からない。

 そしてもう片方は、今の僕に使えるのかどうか……いや、多分……

 

「礼装は多い方がいいですが、あまり慣れていないものなのであれば、使う事をおすすめはしませんが……」

「そうね、ぶっつけ本番精神はあまり褒められた物じゃないわね。出来るだけ避けた方が良さそうかも」

「うん……僕も出来れば、使わない事を祈るよ」

「っと、吉井さん、そろそろ時間ギリギリですよ」

「あ、ありがとう桜さん」

 

 さってと、そう言いながら僕は一回グーンと背伸びをする。

 

「ーん、っと。それじゃあ、そろそろ僕は行くね」

「はい。頑張って来て下さい!」

「ま、しっかりやって来なさいよ!」

「ええ、また再会する事を祈っています」

「うん。それじゃあ、また!」

 

 僕はそう言って、保健室の扉を開けて部屋を出て行く。

 

 ーーーーそう、決戦の舞台へと……

 

 

 

 ★☆★

 

 

 

「むう、遅いぞ奏者!」

「ごめん! ちょっと長引いちゃった」

 

 先に保健室から出て待っていたセイバー達と合流する。

 三人とも背筋がピンッと張っていて、準備万端なようだ。

 

「ご主人様、体調はよろしいですか?」

「うん。全然問題ないよ、昨日の疲れも出てないし」

「それは良かった……そろそろ時間だ。エレベーターに乗り込もう」

 

 分かった、と返事をして、僕達は言峰神父のいるエレベーターの前まで移動する。

 

「それにしても、エレベーターを待たなくていいって、凄く気持ちいいよねー」

「ほんとですねー。前回の五時間並びなんて、戦う前に疲労困憊状態になりましたからねー」

 

 そんな軽口を言い合いながら、エレベーターの前に立つ。

 

 

「ようこそ、決戦の地へ。身支度は全て整えたかね?」

「ああ、いつでも良いぞ!」

「それは結構。扉はひとつ、再びこの校舎に戻るのも一組。再びこの校舎に戻れることをささやかながら祈ろう」

 

 そして、最後に僕達の方に向き直った後……

 

 

「そして―――――――“存分に殺し合い給え”」

 

 

「……………………っ」

 

 

 ……その言葉に、僕は一瞬体が凍った。

 

 ……実を言うと、僕はまだ一回戦の決着の時のことがまだ頭から離れていなかった。

 姫路さん達や、皆がいる前では努めて軽くなるように振る舞っていたけど……本当は、全然大丈夫じゃない。

 本当は、逃げ出したい……けど……

 

 ……僕はそう、心の中で静かに呟きながらエレベーターに乗り込んで行った。

 

 

 

 ★☆★

 

 

 

 僕達が乗り込んだ瞬間、ガコンッとエレベーターは動き出した。

 ここから先は、決着が着くまで戻れない、一方通行……

 

「……この時を待っていた、少年」

 

「よう。やっときたかオタク等、待ちくたびれたぜ」

 

「ダンさんッ、緑茶……ッ」

 

「よし、何時の間にか俺にも付けられてるそのあだ名の件について、小一時間程話そうか」

 

 一回戦と同様、ガラスの壁の直ぐ向こう側に、対戦者であるダンさんと緑茶がいた。

 ダンさんの方は相変わらず、いや、戦闘直前だからなおさら、こうして目の前に立っているだけでその威厳さがビリビリ感じてくる。

 緑茶の方はいかにも楽な姿勢で立っているようだけど、その目は真っすぐに僕達の方を捉えていた。

 どちらにせよ、二人とも戦闘の準備は万全のようだった。

 

「一昨日は大変だったな。あの黒いランサーに襲われるとは、災難であったな」

「あー、はい。あの時はお世話になりました」

「いや、わし等は何もしておらんよ。殆どあの少女が頑張ったおかげだ」

「そーいえば、何故そちらはあの時間にマイルームから出ていたんですか? 結構な深夜で、殆どの参加者やNPCは既に校舎内にはいなかった筈ですけど」

「あ、確かに。姫路さんは確か、魂の改竄で教会に行ってたって言ってたけど……」

 

 姫路さん曰く、例の姉妹がもの凄くギスギスしていたらしく、そのせいで改竄が遅れてしまって終わったのがあの時間だったらしい。

 教会の内装もボロボロのままだったらしいし、やっぱりまだ僕達は行かない方が良さそう……

 

「あーそうそう。その件で、オタク等にちょいと聞きたい事があったんだけどよ……」

「む? 聞きたい事とな?」

 

 一体なんなんだろう? 緑茶さんが僕達に聞きたい事って。

 その件って言っても正直、なんの心あたりも無いから、どんな質問がくるのか全く予想がつかな

 

 

 

 

 

「ーーーーこの割れた緑の湯呑みに、何か見覚えは?」

 

 

「いえ全く」サラリッ

 

 

 緑のアーチャーが出して来た、達筆で緑茶と書かれている割れた湯呑みを見たとき、さらりと僕の口からそんな台詞が出て来た。

 

「いやホント全然無いです。そんな割れた湯呑みなんて初めて見ました。きっと誰かがアリーナから持って行って割っちゃったんじゃないですか」

 

 我ながら見事な饒舌と思える程の言葉をスラスラと言っていく。

 うん、完璧な言い訳だ。付け入る隙も全くない!

 

「ほー……そうかい、そうかい。オタクは、まったく心当たりが無いと」

「はい、そうです」

「そうかそうか……ところでオタク、ついでに聞いていいか?」

「何ですか?」

 

 

 

 

「ーーーー何で“アリーナから持って行かれた”って知ってるんだ?」

 

 

「………………………………」

 

 

 ……だらだらと背中に嫌な汗が出て来たのが分かった。

 ついでに心臓もバクバクだったり。

 

「後ついでに言うと……アリーナってーのは、一つの場所には対戦者同士、つまり“決められた二組の参加者しか入れない”決まりっつーのがあるんだよねえ……」

 

 そう言ってくる緑茶の目は、明らかに僕達……ていうか、僕の方をロックオンしている。

 

 

 

「…………………………………………さっさと吐けやコラ」

 

「すいまっせんでしたアアアァァーーーーーーーーーーーーッ!!」

 

 

 とうとう耐えきれなくなった僕は、流れるような動きで素早く土下座の姿勢をその場で取る。

 

「マスター……君は本当に、嘘が下手だなあ……」

「うーん、なんていいますか……ばー、いえ、アホ、あ!? いやっ、素直っていうか!」

「キャスター、本音だだ漏れだぞ」

 

 あ、ちょっとキャスターの言葉がチクリと来た。

 そんな感じでいたたまれない気持ちになっている僕を前にして、緑茶さんはあー……と、頭をガシガシ掻きながら話を続ける。

 

「まあようは結局、一昨日の夜、お茶でも飲もうかと思った時に、いろいろアリーナに忘れて行ったのを思い出してな。それで面倒だけどあれお気に入りだしなーって事で、取りに行こうとして外に出た訳なんだが……」

「それでワシ等がアリーナに行こうとした時に、校舎の停電にあったという訳だ」

「あー……なるほど。何か助けてくれようとしたとに、本当にすみません……」

 

 それにも関わらず、速攻で恩を仇で返すような真似をしちゃってるから、本当申し訳なさでいっぱいだった。

 

「いやさ、俺も持ってかれるのは仕方ないと思ってるよ? 元々俺の忘れ物だし、対戦相手の情報を探るための手がかりにされる事くらい十分に分かってっから」

「それじゃあ……」

「た、だ……」

 

 そう言って、十分にタメを作ったあと、こっちを真っすぐ見つめて来て……

 

 

 

 

「他の忘れ物を、校舎の外に捨てて放置とはどういう了見だコラァアッ!!?」

 

 

「スイマセェーッ!?」

 

 

 言われて僕は、ああそうだったと思い出す。

 そういえば、ラニが何故かいきなり窓から捨てた後、回収してなかったなー……

 

「そういえば、マスターが見つけた品は四つだったな。湯呑みに加え、確か……饅頭とビニールシートと……後はカタログか?」

「いや、オタク何やっちゃってくれてんの!? おかげで昨日俺と旦那は運営側に呼び出されて、ゴミの放置で賠償金払う事になっちゃってんだけどさあっ!!」

「うむ、そういえば確か、普通にゴミを出すにも金が掛かると前に余は聞いたな」

「つえっ!? お金取るのッ!?」

「当たり前だマスター。このご時世、エコ精神が重要になって来て、ゴミにも税金が掛けられるようになってるんだぞ。そうじゃなかったら、とっくにマイルームのガラクタは全て片付いている」

 

 いや、税金って……

 ここ、一応学校って設定なのに……少なくても文月にいたとき、学校で出したゴミに自分たちが払う事は無かったんだけど……

 それにしても、なるほどね……道理でキレイ好きのアーチャーが、自分のスペースの机の残骸やらを片付けなかった訳だ。

 あれ、捨てなかったんじゃなくて、捨てれなかったんだね。あの量だと、かなりの額が必要になりそうだし。

 

「そうなんですよねー……あれ、結構地味に痛い出費なんですよね。それに引き換え、そちらはいいですよねー。タダ同然ですし」

「は? 何言ってんのアンタ?」

 

 緑茶さんの言葉に、僕も凄く同感。

 え? 何でダンさん達はタダになるの?

 

 

 

 

 

「だってそうでしょう? “顔の無い王”を使ったら、それでゴミを見えなくして適当に放置で済むんですから」

 

 

 

「何言っちゃってくれてんのそこの狐女っ!!?」

「アーチャー、まさかやっているのか?」

「しませんから旦那!? 自分の宝具をそんな使い方されたらたまんねーですってっ!?」

「顔の無い王って……」

 

 端末を取り出し、緑茶さんのマトリクスの欄を表示させる。

 あ、あった。えーと……

『ケルトの習慣であるベルティーン祭を受け継いだ五月祭

メーデー

に現れる、透明の王。森の人。

 彼は緑色の異象に茶色のアクセントをつけた、姿の見えない自然の化身とされた』か……

 効果は、マントで纏った物の姿を透過……

 

「便利ですよねー、それ。ぶっちゃけ、祈りの弓よりそっちの宝具の方が使い勝手いいんじゃないですか? 姿を隠して闇討ちするもよし、ゴミに被せて放置するもよし。うわー、緑茶サイテー。コレだから今時の都会ッ子は。環境破壊はんたーい、ロビンフッドの名がなくぞー」

「何人の事ゲスやろうに仕立て上げようとしてくれちゃってんの!? 前者はともかく、後者はした事ねえよ!! 後俺の故郷森だから! ロビンフッド舐めんなッ!!!」

 

 キャスターの煽りに、ハイテンションで叫んで突っ込んでく緑茶あらためロビンさん

 さっきからずっと声を張り上げ続けていたせいか、その息づかいはゼイゼイッと荒くなっていた。

 

「あーもういやだ、こいつらの相手したくねー……」

 

 体がダラーんと前のめりになった姿勢で、恐らく心の底からの心情を吐いているその姿は、なんかもの凄く哀愁を感じる。

 

「しかし、アーチャーの真名にたどり着いたか、少年」

「あ、はい。まあ、結局殆ど教えてもらっただけ何ですけどね」

「そうか。まあこちらは、一つも埋まってない訳だが……」

 

 ダンさん達も、一回戦の慎二達同様、僕達のマトリクスは埋まってないみたいだ。

 まあ単純に考えて、同時にサーヴァント三人分の情報なんて、普通埋められないよね。

 

「しっかし、今更だがサーヴァント三体って……オタク、どれだけ大所帯なのよ」

「うむ! しかし余が一番のサーヴァントだがな!!」

「ちょっと何いってんですかセイバー! そこは私でしょう!?」

「おい、ここに来てまで騒ぎだすな」

 

 横の方で、まーた恒例の喧嘩に発展しそうな二人が……

 

 

 

 

「はあ、俺にはどっちもどっちに見えんだがなあ。というか、アンタ等たいして役立ってないだろ」

『っ!!?』

 

 ……緑茶のその言葉に、ビクッと肩が震えていた。

 

「つーかアンタ等、全然戦える状態じゃないだろ。理由は詳しくは分からねーが、全く本来のポテンシャルを出せていない。サーヴァントが三人いようが、マトリクスが埋まってなかろーが、大してこっちは問題ねーんだよ。」

 

 ズラズラと言葉を並べて行き、こっちの現状を突いてくる。

 その言葉に、僕達は苦虫を潰したような表情になっていく。

 

「確かに、俺の毒を完全に解毒出来てたし、あの黒いランサーにマスター単身襲われて、助けが来るまでやり過ごせたのは素直に凄い。が、あくまで耐え切れただけだし、あのままだったら確実に死んでいた。サーヴァントも戦えない、完全にアンタ等は戦闘の火力不足なんだよ。……ぶっちゃけた話、そんな状態で俺等に勝てると思ってる?」

 

 ……緑茶の言った事は全部本当の事だった。

 何から何まで、こっちの不利。

 一回戦を勝ち抜けたのだって、相手が油断してくれていたからのが大きい。

 僕自身が戦うからと言って、この戦力差を埋めるには遥かに大きい。

 

 ……けど、

 

 

「ーーーーそれでも、戦う」

 

 

 たとえ、殺し合いの恐怖が抜け切っていなくても……

 相手との差がどんなに大きくても……

 

 それでも、約束のために、戦うと決めたから……

 

 

「……そうかい」

「……いい目をしているな、少年。あの時より、さらに」

 

 その二人が呟いた後、エレベーターが大きくガコンッと揺れた。

 どうやら、決戦場に着いたようだ。

 

「……んじゃま、覚悟しとけよ小僧」

「ワシ等は先に行く。この先でまっている」

 

 そう言って、対戦相手の二人は威風堂々とした佇まいでエレベーターを降りて行く。

 

「……奏者」

「あの……ご主人様……」

「ん……?」

 

 後ろを振り返ると、うつむいた表情でセイバーとキャスターが立っていた。

 

「その……済まぬ、大して余は役に立ってなくて……」

「私も……その、ここまで何にも出来ていないっていうか……」

「………………………………」

 

 さっき緑茶に言われた事を気にしているのか、言いづらそうにして誤ってくる。

 二人の後ろではアーチャーが無言で立っているけど、彼の表情も少し沈んでいる風に見えた。

 

 ……何だ、そんな事。

 

 

 

「……一緒にいてくれるだけでいい」

 

「え……?」

 

「後ろに、皆がいてくれるから、僕は戦える」

 

 これは心からの本音だった。

 もし皆がいなくて、本当に僕一人だけだったら、一回戦の時から僕は戦う事すら放棄していただろう。

 

 

 だから、そばにいてくれるだけでいい。

 

 

「……それにほら、話し相手とかいないと寂しいし! 結構賑やかでしょ、僕達!」

「奏者……」

「ご主人様……」

「そうか……そうだな」

 

 何か少し恥ずかしくなって、最後を無理矢理テンション上げて言う感じになっちゃったけど。

 けど三人とも、既にさっきまでの沈んだ表情じゃ無くなっている。

 

「よしっ! それじゃあ行こうか!!」

「うむ! ゆくぞっ!!」

「はい! 参ります!」

「ああ、承知!!」

 

 

 こうして、僕達は揃って二回戦の決戦場に足を踏み入れて行った……

 




工事が来るまでCCCの二週目キャスタールートをやりました〜
キャスターエンドとCCCエンド、両方迎えました!
ネタバレになるのであまり言いませんが、とにかく凄く面白く、感動しました!


P.S.
以前この小説でシャレで書いたとあるスキルが、CCCでマジで追加スキルになっていてビビったw
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