Fate/Extra Summon (バカテス*Fate/Extraクロス)   作:新月

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託された武器/力

「つおらあああぁぁぁーーーーーーーーッ!!!」

 

 倒れていく建物から地面ギリギリまで十分近づいた時点で、俺は旦那を抱えてそこから地上に飛び降りた!

 俺達が着地した後、後ろの方でさっきまでいた建物が遅れて倒れて来たが、一応は俺達には当たらず、無傷ではいられた。

 一応サーヴァントだからそれほどの衝撃って訳でもないが、十分ヒヤッとしたぞ、こっちは!?

 

「大丈夫っすか旦那!?」

「す、済まんな、アーチャー……」

「あー、まあ……にしても、なんて事しやがんだあの小僧……っ」

 

 後ろを改めて見ると、未だ鈍い衝撃音をあたりに響かせ、瓦礫や砂埃などがそこら編に散乱している。

 当然、その中には俺の宝具である大樹や、仕掛けた罠の残骸も含まれている……

 この惨状を見て、となりにいる旦那もさすがに驚きの表情を隠せないでいるのが、はっきりと感じられた。

 

「しかし、これほどの力を持っていたとは……」

「ああ。ホント、滅茶苦茶やってくれんじゃねーか……」

 

 しかも、建物と一緒に倒れた衝撃で既に宝具は完全に壊れてしまい、その効果を失ってしまっているときた。

 おかげでここら一体に張ってあった毒の霧も、すでに無くなってしまっている。

 あの野郎、拳一発でこっちの仕掛けた策、全部オジャンにしてくれやがった……

 

 つーか、何だよパンチッて!? 格闘専門のサーヴァントならともかく、マスターだぞ!?

 いやそれを言ったらここまで本人が戦ってる時点で突っ込みどころ満載だけどよお!!

 

 

「あっはっは!! どう、驚いたでしょ!」

「ッ!? 小僧……っ!!」

 

 瓦礫の方から視線を戻し、前に向き直ると、この惨状を作り出した張本人が仁王立ちで立っていた!

 

 

 

 

「これが僕の新ス、ゲホッ!! キル、ウォーゴホッ!? ゲホッ!? ルブレイ、ゲホゲホォッ!!? ちょ、埃ッ!! 砂埃多すぎて喋れない、てか喉痛ッゴホゲホォッ!!?」

 

 

 

 ……限りなくカッコ悪い登場の仕方だったが。

 さっきまで改めて考えさせられた相手の強さについての印象が、ものすごい早さでガラガラと俺の中で崩れていくのが実感した。

 隣にいる旦那もさっきまでの緊迫した表情を崩し、多少の呆れと戸惑いの混じった顔となっているのがもの凄く分かった。

 

 そして、挙げ句の果てには『ちょ、ちょっと待って、喋れるまでタイム、タイムで!』なんてあり得ない要求も出してくる始末。

 ……ぶっちゃけ、今この瞬間に攻撃すれば簡単に勝てると思うんだが、どうよ旦那?

 あ、駄目? ちゃんと待ってやらないと可哀想? いや、今更毒バラまいた後に何言ってんのって感じなんすけど? まあ、バラまいたのは俺っすけどね?

 まあ、俺自身が乗り気じゃないってーか、やる気が削がれまくって出来ねーっつか……

 

 

 そんなこんなで、約300秒にも及ぶ、小僧の超隙だらけタイムを見逃した、見逃してしまった後。

 小僧はやっと砂埃が無くなった状態の空気で、スーハースーハーっと大きく深呼吸を繰り返し、その後改めてこっちを向き直る。

 

 

「これが僕の新スキル! ウォールブレイクの力さ!! さすがに予想外だったでしょ!!」

 

 あ、さっきの下り丸々無かった事にしやがったよこの小僧は。

 この五分間の出来事コイツの中で完全に消去してやがるよ。

 

「ああ、驚いたよ。まさか少年に、こんな隠し球があったとは……っ」

 

 そしてこっちも、律儀に乗ってやがるご老人がいやがるよ。

 おーい、旦那ー? 保健室のときからずっと思ってやしたけど、そこまでしてやる義理は無いんですよー?

 むしろ迷惑ばっかかけられてますよー? ゴミの件とか。

 何、これやっぱり俺も乗ってやらないといけない系?

 

「どーせ建物の中もトラップだらけって事は予想ついてたからね。だったら、わざわざ僕がリスクを背負って向かうより、そっちから降りて来てもらおうって作戦だったんだけど」

「……なるほど、そりゃー確かに効果的だわ。おかげでこっちが仕掛けに仕掛けた罠、ぜーんぶ無駄になっちまった」

 

 とりあえず、仕方なしにこの流れに合わせておく俺。

 本当にこれで良かったのだろかと思う心の叫びがガンガン響いてくるが、今は必死に押さえておく。出なくちゃ、多分もうこの空気に戻れないと思うから。

 

 ……とにかく、木を取り直して、あ、間違った。気を取り直して。

 

 

「しっかしまあ、まさか建物の壁その物を殴ってぶっ壊してくるとは……“さっきまでしてなかったその腕輪の効果かありゃあ?”」

 

 俺は小僧の腕についている白金色をした腕輪に目をやりながらそう問いかける。

 確か、さっきサーヴァントと一緒に逃げていた時には、装備していなかった筈……

 という事は、今の今まで隠していた切り札って事だろう。

 正直、マスター単体が何の補助もなしにあれだけの攻撃を出せるとは、にわかに信じがたい。

 さっきの壁を破壊したのが、その腕輪の力によるものだったとしたら、一応納得は出来るんだが……

 

 

 

「え? ………………………………………………………………さあ、どうだろうね」

 

「ああ、よく分かった。お前さんがスゲー嘘下手なのは」

 

 

 あまりにもあからさますぎる誤摩化しかたで、ほんとこっちのやる気がガンガン削られてくる……

 何だよ、今のかなり長い間は。

 あれか? コイツ、ツッコミされたいの? 漫才師になりたいの?

 

 まあ、それはともかく、さっきの攻撃が腕輪の効果じゃなさそうだってことは理解した。

 つーことは、他に装備している礼装の効果か、もしくはコイツ自身の能力って事になる……

 いずれにせよ、わざわざこのタイミングで装備をし直して来たって事は、確実に何らかの強力な効果を持ってるって事は確定だな。

 注意するに越した事は無い、か。

 

 

「何さー、もう。大体、そんな質問ぶつけられて、素直に答える人がいると思ってんの……」ブツブツ

 

 小僧が今のでへそを曲げたのか、何かブツブツ言いだしていた。

 ああ、本当にお前さんの事が分かんなくなってくんなあ……

 そうしみじみ考えていた時、

 

 

 

『マスターッ!! こっちは待機完了だ!!』

 

 

「なっ!? 紅いの!?」

 

 いきなり声が聞こえて来た方を向くと、そこには小僧と一緒にいた紅い野郎が俺達のすぐ近くの建物の屋上から、こちらを覗き込むようにして見下ろしている。

 野郎、あんな所に……ッ!! 

 

「うん! “アーチャー”、よく見えるーッ?」

『ああ、“千里眼”があるからバッチリな!!」

「分かったー!! ……さて、と」

 

 野郎と二、三個と会話をした後、小僧は改めてこっちに向き直る。

 

「……で、どうするのそっちは? 今ここで、僕達と戦う? それとも、ここから逃げてもっかい毒の木とか張り直す? まあ、僕達はそれでもいいけど」

 

 逃げる!? はッ、どんな冗談だよ!! コイツ等俺達にそんな事させる気ゼロのくせに!!

 ここから逃げてまた宝具を張り直したりしたって、また小僧に建物ごとぶち壊されるに決まっている!!

 仮にどっかの建物の室内で、隠れてから宝具を発動しようとしたって、上に紅いアーチャー、しかも千里眼持ちがいる!!

 そのせいですぐに居場所は目で追われて、どのみち小僧にまた壊される! そしたら今度こそ生き埋めだ!

 

 基本的に弓使いってーのは、遠距離攻撃が出来る事が当たり前だが、それは同時に遠くも見渡せる能力も持っているって前提もある!

 そうじゃねえーと、見えないんじゃ相手に当てる事なんて出来ないしな!! まあ、たまに例外もいるらしいが……

 同じアーチャーだからこそ、俺はその視力による情報の重要さが十二分に身に染みている!

 

 それを向こうも分かっていたからこそ、あえて俺達に紅い野郎の位置をアピールしてやがったんだ!

 俺達に自分から行動の制限をさせるために!!

 

 完全に、こっちの詰みだ……

 地上に降ろされた時点で、既に向こうの策に嵌っちまっていたんだ。

 ……だからさっきの砂埃時に倒しときゃよかったんだーって、そんな心の声がもの凄く響いてくるが、それはまあ強引に奥底に封印しておくとして……

 

 もう俺達に、うてる術は無い……

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーー“ここでコイツ等と、真正面から戦う以外は”。

 

 

 

 

 

 

 

「……楽しそうだな、アーチャー」

「……へえ、そっすか?」

 

 旦那に言われるまで気づかなかったが、俺は自然と、何故か顔が笑っていたらしい。

 確かに、自分でも何かおかしな感情になっていると自覚していた。

 こっちの策が全部使えなくなった上に、しかもこれから割に合わない事をせにゃならないっつーのに。

 俺の心は、何故か憂鬱な気分より、高揚がましていた。

 

 ……ああ、初めてだぜ。こんな気持ち。

 

「……アーチャー。ここで言うのもなんだが、勝手ながら、お前は私の“騎士”だと思っている。……見せてくれぬか。今ここで、君の騎士としての力を」

「騎士、ね……」

 

 全く、本当に勝手っすねえ……

 おれはそういうの苦手っつってんでしょーに。

 ……しかしまあ、

 

「……しゃーねえ。柄じゃねーっすけど、一丁やってきますか。……指示を頼むぜ、旦那」

「ああ、無論だ」

 

 

 そうして俺は、初めて敵と真っ向から向き合いに、前に出て行った……

 

 

 

 ★☆★

 

 

 ダンさんといくつか話をした後、とうとう緑茶が前に出て来た。

 完全に向こうはやる気になってくれたみたいだ。

 二人とも完全に臨戦態勢を取っていて、こうして目の前に立っているだけでも、その気迫が十分こっちに伝わってくる。

 ……もう間もなく、“その時”がやってくると、嫌という程実感した。

 

「で、こっちはやる気になったはいいんだが……オタク、“武器はどーすんの”?」

「……っ」

 

 緑茶のそんな素朴な疑問に、僕は一瞬言葉が詰まる。

 そう、さっき木刀を弾き飛ばされた後、僕は急いで建物から離れる事に必死で、自分の武器を回収し損ねていた。

 恐らく、僕の木刀はあの建物の瓦礫の下の何処かに埋まってる真っ最中だろう……

 つまり、今の僕は完全に丸腰だ。

 

「……別に。直接殴れば済む話でしょ?」

「……少年。さすがにそれは無謀過ぎでは無いか? 確かに、先ほどの君の拳は十分強力だった……だが、戦場ではそれだけの要素で勝てるほど、甘いものではない。君ならそれは、十分理解してる筈であろう?」

 

 う、確かに……それは凄く、実感はしてる。

 この二人に余裕を出すなんて、それこそ命取りだってはっきり分かってる、けど……

 

「旦那の言う通りだ小僧。丸腰で狙って下さいって言ってるよーなもんだろそれ。何、オタクってそんなに自信過剰だったっけ? ……それとも、使わねーんじゃなくて、使えねーとか?」

「……ッ!」

「さっき弾いた木刀が唯一の武器で、もう手持ちに無くて使いたくても使えない。もしくは……武器自体を持てないとか? 前者はまだしも、もし後者なら……てめえは戦場を舐め過ぎだぜ、小僧」

 

 彼の最後の呟きは先ほどまでとは違い、僕に向けられた明確な苛立ちが感じられる言葉だった。

 分かってる、そんな事は嫌という程、分かってる……ッ

 今の僕は結局覚悟なんて出来ていない、まるで子供が駄々をこねてる状態で最悪だって事は、分かってるッ!!

 けど、僕には……それにどのみち、この場に武器なんてーーーー

 

 

 

 

 

『ーーーーマスターッ!!』

 

 

 

「……え? うわッ!?」

 

 いきなり聞こえて来た呼び声につられ、視線を上に見上げるとーーーー何か鋭いものが“二つ”降ってくる!

 とっさの事で僕は一瞬怯み、目を瞑ってしまい後ろに少し仰け反ってしまった。

 それらは回転しながら地面に向かって落ちて来て、僕の目の前にザンッと音を立てて突き刺さったのが分かった。

 

 

「い、一体何、…………えっ?」

 

 

 閉じた目を開け、その落ちて来た何かをよく見ると。

 

 白と黒をメインの彩色とした、二振りの中国刀。

 二対揃って、初めてその真価を発揮する夫婦

めおと

剣。

 

 

 ーーーーそれは忘れもしない。初めて僕がみんなと出会った時、彼が使っていたーーーー

 

 

 

「ーーーーっ! アーチャーッ、これってッ!?」

 

『それを使えっ!! 君なら使いこなせる筈だッ!!』

 

 疑問に答えるように、上空から彼の言葉が降ってくる。

 それは、まぎれも無くアーチャーからの贈り物。

 彼は自分の主人に、文字通り自らの剣を預けたのだ。

 

「ッ!! でもッ」

 

『甘えるなッ!!』

 

「ッ!?」

 

 弱音を吐こうとした僕に被せるように、彼からの叱咤の声。

 例えその身が弱体化していたとしても、その声は歴戦の戦士からの強い響き。

 

『君の気持ちは分かる!! だが、君は戦うと決めたのだろうッ!? 自分からその誓いを破る気かッ!?』

 

 その言葉にハッとなり、僕の心は大きく揺さぶられる。

 

『目の前の“ソレ”から目を背けるなッ!! 自分で決めた事なら、最後まで貫き通せ!! 君はそういう男だろう!?』

 

 彼からの激励を聞きながら、目の前の“武器”を見つめ、思い返す。

 ……そうだ。確かに僕は、そう決めた。

 

 それに……約束も、した。

 姫路さんと、また勉強会をやろう、って。

 セイバーとキャスターに、一緒に帰ろう、って。

 

 そうだ、どれも自分から言いだした事じゃないか……

 ……それが結局、僕自身を奮い立たせるための“こじつけの理由”だったとしても。

 それを果たそうとしないなんて、そんなの無責任すぎる。

 

 

 自分から決めた事なのに、それを勝手に放り投げるなんて、そんなの許されるもんかーーーーっ!!

 

 

「ーーーーツアァッ!!」

 

 彼から託された双剣に、手を伸ばす!!

 左手に黒い剣、“干将”を。

 右手に白い剣、“莫耶”を。

 重量感がズッシリと感じるソレらをしっかりと握りしめーーーー地面から力強く引き抜き抜く!!

 その双剣は、とても重く……そして、何故か少しだけ、手に馴染んでいた。

 

「そうだよ……僕は、戦うんだ!!」

 

 手に取ったその双剣で、そのままその場でブンッと薙ぎ払う動作を行う。

 それは、さっきまでの自分との決別と……そして、明確に戦いに赴く、覚悟の証明。

 彼が使っていたときのように、構えの動作を取った後、“目の前の敵”に向き直る!

 

「ゴメン、ちょっと待たせた。……これ、使わせてもらってもいいよね?」

「ッたく、やっとかよ。ああ、いいぜ。慣れない武器で、戦えるもんならな」

 

 そう言いながら、緑茶は呆れたように……けれど何処か、楽しそうな表情をする。

 

「迷いを捨てたか、少年。……ああ、感嘆の声に尽きる。君の目はこの戦いの中で見る度、さらに鋭く、輝きをましているーーッ」

「ああ、そうだな。旦那の言う通りだ、コイツはどんどん強くなっていってる。……ああ、過去最高の気分だ」

 

 そうして緑茶は右腕に弓を、そして懐に手を入れ、そこからダガーナイフを取り出すと、そっちも両手に装備して改めて構え直す。

 

「いくぜ旦那ッ!! コイツと、決着を付ける!!」

「ああ! 行け、緑衣の騎士よッ!!」

 

 そのかけ声とともに、緑茶は一気に前に出た!

 

「絶対、勝つッ!!」

 

 僕も負けじと、前に飛び出す!

 

 今ここに、真の二回戦の決戦が開始された……

 

 

 

 

 ★☆★

 

 

「そらよッ!」

「はあッ!!」

 

 すれ違い様、同時に一閃。

 互いの一撃が衝突し合った瞬間、キィンッと甲高い音が遅れて鳴り響く。

 だが、その音が鳴り終えないうちに僕達は次の手を打ち始めていた。

 この一瞬の攻防で、僕達は互いにある程度の相手の力量を感じられた。

 やっぱり、腕力そのものは僕の方が少し高い!

 

「たあッ!」

 

 初撃で前に出した右手の莫耶をそのままにその場で右回転し、遠心力の力を足して振り返り様斬り付けようとする!

 が、それを読んでいたのか緑茶は顔をこちらに動かさずに、その場にしゃがんで躱した!

 

「甘ぇよッ!!」

 

 そしてお返しとばかりに、その体制のまま左腕を後ろに薙ぎ払うように回し、僕の足下を刈りにきたッ!!

 その握られたダガーが足に当たる瞬間ジャンプして躱し、空中で立てに一回転!

 

「くらえっ!!」

「やなこったッ!」

 

 回転の勢いをそのまま乗せて、全体重を加えた双剣の振り下ろし攻撃をするが、その直前に緑茶は前に飛び込むように前転一回転。

 紙一重で躱された双剣はむなしく地面にあたり、甲高い音を日々鳴らすだけに終わってしまった。

 〜〜っ!! 結構腕が痺れた……っ!

 

「お返しだ!!」

 

 こっちの動きが一瞬止まった時、向こうは立ち上がり様に右腕をこちらに向け、付けていた弓から矢を三本連続で放った!!

 僕はそれを、体全体をコマのように左回転し、初撃を右手で、次を左で、最後をまた右で……

 計1回転半して、全てを切り落とすとその勢いのまま、さらに半回転をし、

 

「っけえーーーーッ!!」

 

 緑茶の方に向き直る瞬間に、左手の干将を大きく地面に擦り付けるようにして、そこに転がっていた瓦礫の破片の一部を弾き飛ばす!!

 

「つおぉッ!!?」

 

 予想外のカウンターの仕方だったからか、飛んで来た飛来物を手に持ったダガーで思わず防いでしまった緑茶。

 けれど無理に叩き落としてしまったせいで、多少体制を崩してしまっている!! その隙を逃す訳は無い!!

 僕は一気に距離を詰め、双剣をX字になるように交差して構えて、そのまま両腕で押し切るように切り払う!!

 

「調子に、乗ってんじゃねーぞ!!」

「くっ!!」

 

 が、向こうはやはりサーヴァントといったところか、予想以上に素早く体制を立て直し、両手のダガーで僕の攻撃を受け止めた!!

 そのまま互いに鍔迫り合い状態に陥り、ガチガチッといった嫌な金属音が鳴り響き続ける。

 

「っ……おいおい、どーゆー事だ小僧。オタク、本当にその双剣の素人? 普通に、四流……いや、“五流”は名乗っていいんじゃねって位の実力じゃねーの!」

「って、随分低い評価だねそれ!?」

「ったりめーだ!! 英霊から見たら、まだまだ荒削りなんだよ!! サーヴァント様舐めんな!!」

 

 そんな口論をしながら、けれど互いに力を弱めず、この鍔迫り合いは続いていく。

 しかし、それも徐々に僕の方が押し切ろうとする形となって、均衡が崩れていった。

 

「っけど、その五流に押され気味のサーヴァントってのも、どうかと思うんだけど!! そのへんはどうなのさ!!」

「はっ! 弓兵に接近戦を求める事自体が間違ってんだっつーの!! それに小僧、確かに今は俺の方が押され気味だが、ちょいと誰かの事をお忘れでないかい?」

 

 えっ、と僕が聞き返す前に、緑茶の言った問いの答えが聞こえて来た。

 

「アーチャー! 【コードキャスト・gain_str(16)】ッ!!」

「なっ!?」

「サンキュー、旦那!!」

 

 離れた所からダンさんの声が聞こえた瞬間、同時に押され気味だった緑茶がいきなり押し返して来た!?

 これ、まさか腕力強化のコードキャスト!? 明らかにさっきよりも緑茶の力アップしてるしっ!!

 うわっ……ッ逆に押し切られ……ッ!?

 

「マスターとサーヴァントは共に戦ってこそ、その真価を発揮する! シングルのアンタにゃ、端から勝機なんてねえんだ、よッ!!」

「つああぁッ!!?」

 

 完全に競り負けた僕は後方に吹っ飛ばされ、尻餅をついてしまった!!

 ヤバッ!? 

 

「貰ったあッ!!」

 

 完全に無防備となった僕に、止めの一撃を放とうと右手をこっちに向けて構えくる!!

 このままじゃ、完全に防ぎきれない!! 終わる……っ!

 そんな僕に対し、無慈悲にその弓から矢が放たれようとーーーー

 

 

 

「ーーーー下がれアーチャーッ!!」

 

「ハイッ!!?」

 

 

 その行動はダンさんのかけ声によって中断され、緑茶は上ずった返事をしながらも、既にその場から後方に飛んでいた。

 

 

 

 

 

 ーーーーその直後、パァンッと“銃声”が三回響き渡り、彼のいた場所に弾丸が真上から走っていった。

 

 

 

 

「な……っ!?」

 

 

 絶句する緑茶達をよそに、僕はその光景を見て思わずニヤリと笑う。

 

 

 

「ああ、ナイスタイミングだよ、アーチャー……」

 

 

 

 ★☆★

 

 

「……おい、こりゃあ……」

 

 俺は今見た光景を見て、驚きを隠せないでいた。

 旦那の指示に、それの意味を理解する前にとっさに行動していなかったら、今頃俺はあの銃弾の餌食と鳴っていただろう……

 あの弾丸が降って来たのは、上の方から。つまり、これの原因は上にいる誰か……

 ってーと、今上にいるのって……っ

 

 俺は“奴”のいた建物の屋上に、バッと視線を向ける!

 

 

『フッ…………』

 

 

 そこには予想通り、ニヒルな笑みを浮かべたムカつく紅い野郎が、屋上の縁ギリギリに立って俺達を見下ろしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 そしてーーーーーーーーーーーーーーその両手には、“クラシックな二丁拳銃"

 

 

 

 

 

 

「野郎……! アーチャーはアーチャー(狙撃兵)でも、“銃使い”のアーチャーだったのかよ……っ!?」

 

 完全に、これはこちらの情報不足だった。

 勝手に役立たずと決めつけ、ろくな対策をしてこなかった結果がこれだ!

 一人だと思っていた相手は、ちゃんと二人いたのだ。

 

 

「はっ、そうかい。やっぱ、そう簡単には勝たせちゃくれねーか……」

 

 

 しかし、これでようやく二対二。互いに同じ条件になっただけだ。

 やはりこの勝負は、一筋縄ではいかない。

 

 

 真の二回戦決戦は、まだ始まったばかりーーーーーー

 

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