Fate/Extra Summon (バカテス*Fate/Extraクロス)   作:新月

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予選期間②

「あーもう!! 本当にどうなってんのさこの世界!」

 

 僕はそうブツブツ呟きながら、二階の廊下を歩いていた。

 ちなみに授業はもうすっぽかした。

 あのままあそこにいたら、ワカメとかタイガーとか突っ込みどころだらけで疲れるし。

 第一、レオや葛木先生が僕の事もマークしているし、あまり関わりあいにならないほうがいいだろうと思ったからだ。

 この世界がどんな場所で、何のために僕がここにいるのかすら分からないけど、Fクラスで培った危機察知能力が警報を鳴らしている以上、警戒するに越した事は無いだろうし。

 

「とにかく、まず姫路さんがいるのかどうか確認しないと」

 

 そう、今日でこの世界にいて三日目。

 その間に姫路さんらしき人影すら見つからなかったけど、やっぱり徹底的に探しといたほうがいいだろうしね。

 

「確か、図書室は……あ、ここだね」

 

 僕はここに来る前に、教室に向かう途中で生徒会に学生名簿の在り処をあらかじめ聞き出していた。

 僕は、一応ここは学校なのだから、全校生徒の名前くらい書かれているものがあるはず何じゃないかな、と思った。

 それに姫路さんの名前が載っているのかどうか調べれば、ここにいるのかどうか分かるんじゃないのかという事に気づいた。

 

 ……ちなみに直接先生とかに姫路さんがいるか聞けばいいんじゃないの? という事には初めから気づいていたけど、タイガーに聞くと、

 

「え~。生徒の名前全員覚えているわけ無いじゃないの~」

 

 と、言っていた。

 まあ、流石に全校生徒は無理だろうとは思ってはいたけど、じゃあ出席簿を見せて下さいと言うと……

 

「あ、ごめ~ん☆ それこないだ無くしちゃったのよねえ~」

 

 ……いい加減にしろよ藤村っ!!。

 とまあ、こんな感じでタイガーは全く頼りにならなかった訳で……

 他の先生って言っても、葛木は論外だし、よく考えてみると他の先生に一度も会ったことがない、という事に気が付いた。

 で、しょうがないから生徒会員に聞いて、今ここにいる、と……

 

「それじゃあ、失礼しまーす……」

 

 そう言いながら図書室に入ったけど、まあ今は授業中だし、当たり前だけど誰もいなかった。

 やけに静か過ぎて、この作り物の世界と感じてるのとあいまって、少し不気味に感じていた。

 

「名簿は……あ、これか」

 

 入ってすぐ近くの本棚に、学生名簿と書かれた本を見つけた。

 けど、普通の本と一緒の棚に入れておくのってどうなの?

 

「まあいっか。えーと姫路さんは(ひ)だから……」

 

 そう呟きながら名簿を開くと……

 

 

 白紙、だった。

 

 他のページも確認してみようとすると

 

 ―――――白紙白紙白紙白紙白紙白紙白紙白紙白紙白紙白紙白紙――――――

 

 ……永遠に白紙が続いていた。

 

 隣の過去の古いほうを覗いてみても、全く同じ。

 

「……これ、もう軽くホラーなんだけど……」

 

 そんな事を考えながら、僕はその全く意味の無い名簿を戻した。

 

「まあ、いまさらこんな事じゃ驚かないけどね……」

 

 はあ、とため息を付きながら、僕はそう呟いた。

 気づいたらへんな世界にいました、って事実だけで十分驚きだったからね……

 けど、これからどうしようか……また振り出しに戻っちゃったし。

 

「あーあ、一発で姫路さんがいるか分かるようなものがあればなあ……」

 

 持ち物を確認してみたけど、腕輪以外全く見覚えの無い学習教材しか持っていなかった。

 携帯で連絡を取り合う、という方法も出来ないし……

 

「とにかく、別の場所をしらみつぶしに探して行こうか」

 

 そう思いながら、僕は図書室の扉をガラッと音を立てて開けた。

 ……その時、明らかに近くを歩いている足音が聞こえてきた。

 

「ん? 足音? ……けど、今は授業中だよね?」

 

 今サボってる僕が言う事ではないかもしれないけど、僕以外に廊下に出ている生徒はいないはず。

 だから廊下はかなり静かで、そのためその謎の足音がかなり響いてきていた。

 一体誰だろう?

 そう思って足音の聞こえる階段の方を見ると、野生的な風貌の赤髪を逆立てた……

 

「……へ?」

 

 その後ろ姿には見覚えがあった。

 そう、見間違えようがない、僕の悪友の――――

 

「雄二!?」

 

 そう叫んだ僕の声に気づかなかったのか、雄二は廊下を曲がって階段の方に行って見えなくなった。

 

「あ、ちょっと!?」

 

 僕は予想外だった悪友の遭遇に驚いたが、見失わないよう直ぐにその後を追って行った。

 

 

 

 ★☆★

 

 

「はあっはあっはあ……どこにいっちゃったんだろう……」

 

 雄二を追って校庭まで追って来たけど、そこには誰もいなかった。

 結局見失っちゃったらしい。

 けど、あの後姿は間違いなく雄二だったはず……

 

「どう言う事さ……僕と姫路さんだけじゃなかったの?」

 

 僕はてっきり、この世界にいるのはあのババア長の実験に直接巻き込まれた僕と姫路さん(ババア長は意図的に除外)だけかと思っていた。

 けれど、もしさっきの人が本当に雄二なら、あの場にいなかった人もこの場所に来ている事になる。

 ……確か雄二は、暑いし巻き込まれたくないからと言って、Fクラスの教室で待っていたはずだよね。

 と言う事はあの実験で巻き込まれたのは、あの時学園長室にいた人だけでなく、少なくてもFクラスを含む文月学園全体にいた人達も可能性が高いって事!?

 

「けど、だったら他にも会ってそうだけどなあ……」

 

 もし僕の予想が正しいなら、あの時点で文月学園にいたのは、補修組みと夏期講習参加組みと先生達だった。

 いくら普段より人数少ないからと言っても、Fクラスはほぼ全員参加だったし、少なくても学校には百人くらいはいたはずだ。

 もし全員が巻き込まれたなら、この三日間で他にも文月学園関係者に会っていてもおかしくないと思うんだけど……

 

「……あーもうっ! どうなってんのさ!!」

 

 僕は訳が分からなくなり、その場で両手を頭に抱えてぐしゃぐしゃと髪を掻いた。

 とりあえず片っ端から探すしか無いのかなあ……

 そう思いながら唸っていると……

 

 

「……ねえ」

 

「え?」

 

 僕の後ろから、くぐもった声が聞こえてきた。

 振り返ってみると、そこには体全体を包んだ真っ黒いコートを着た人が人がいた。

 その顔は、深くフードをかぶっていてよく見えない。

 そのため、くぐもった声と相まって、男か女かどうかの判断もつかなかった。

 ……ただ、この人から何故かピリピリとした変な感覚がくる。

 殺気とか、嫌な予感とかもくるけど、それだけじゃなくてもっと別な……

 

「……あなたは、一体誰?」

「え? 僕?」

 

 そんな漠然とした事を考えていると、目の前の人からそんな質問が来た。

 いや、誰って言われても……

 

「えっと、吉井明久、だけど……」

 

 とまあ、こんな感じの答えしか出せなかった。

 他に何を答えればいいのさ?

 

「……そ……筈は……」

「へ?」

「そんな、筈はっ!!」

「っ!?」

 

 急に俯いたかと思うと、その人はそんな言葉をまるで叫ぶように出し、顔は見えないけど、こちらを睨み付けたように感じられた。

 そこからは、さっきまで感じられなかったはっきりとした殺意までが感じられた。

 

「あなたが、吉井明久であるはずないっ!!」

「え、ええっ!?」

 

 何か良く分からないけど、いきなり見知らぬ他人に、僕が僕自身であることを否定された。

 何なのさ一体、訳分かんないよ!?

 

「あなたは、一体……っ!!」

 

 目の前の人は最後にそう言って、その場から一刻も早く離れたいように、踵を返して行ってしまった。

 その最後の声には、何故か憎しみとか……悲しみが感じられた。

 

「本当に……一体何なのさ……」

 

 僕はその場で、そう呟くことしか出来なかった。

 

 

 

 ★☆★

 

 

「あー、本当にどうしよう……」

 

 図書室に行ったら軽いホラーに遭い、予想外の悪友を見つけたと思ったら見失い、その後見知らぬコートの人に吉井明久を否定され……

 

「もう、何が何だか分からないよ……」

 

 そう考えながらトボトボ歩いていたら、あっという間に放課後になってしまい、既に廊下にも下校中の生徒達が出てきた。

 一応、歩いている最中一人一人の顔を確認はして行ったけど、姫路さんや雄二どころか、文月学園関係者の人は全く見つけられなかった。

 

「この世界にはいないか、もしくは既に下校したと考えたほうがいいだろうね……」

 

 そう考えながら僕は歩いていたけど、実際ここの生徒はかなりの人数がいる筈だし、見逃してもおかしくない――-―――

 

「……あれ?」

 

 ここで僕は、また別の違和感に気づいた。

 

「人数……減ってない?」

 

 最初、僕がいつの間にかここにいたばかりの時は、放課後はかなりの生徒で埋まっていて、廊下を通るのに少しばかり苦労していた。

 けど……今は前と同じくらいの時間なのに、初日に比べて生徒の数が明らかに減ってる。

 

「うわー、また変な状況に気づいちゃったよ……」

 

 ともあれ、消えた生徒が何処に行ったのか……それが分かれば、もしかしたらそこに姫路さんや雄二とかもいるかもしれない。

 そう思って、僕は近くにいる生徒に片っ端から話を聞いていった……

 

 

 ★☆★

 

 

「この先、だね……」

 

 話を聞いていった結果、最近居なくなっている生徒は、休みになったとか、通り魔にあったとか、神隠しにあったとか、そんな話ばっかりでてきた。

 その中に、この月海原学園の中にある教会の近くでその神隠しがあったと噂があり、その事を調べるために中庭に行く扉の前まで来ていた。

 

「ていうか、学校に教会って……普通ある?」

 

 まあとにかく、他に手がかりも無いし調べてみようと思い、扉の取っ手を握った。

 ギイッと音を立てて、扉を開いて中庭に入っていくと――――――

 

 

 

 そこにはこの学校の生徒達が倒れていた

 

 

「――――――っ!?」

 

 その光景は異様だった。

 倒れている生徒は僕から見える位置だけでも十数人にも及び、その人達から生気というものが感じられなくなっていた。

 そして、その異様な光景の中で、ただ一人だけが立っていた。

 

「へえ、なかなか面白い世界じゃないか。電子の中の世界でありながら、人の魂を元に体を作って侵入してるなんて」

 

 そいつは、倒れている人達を見ながらそんな事を呟いていた。

 見覚えの無い奴だけど、明らかに男だと分かった。

 けど、重要なのは其処じゃない……

 僕が一番驚いたのは……

 

 

「【文月学園の制服】……!?」

 

 そう、そいつが着ていたのは、僕が一番見慣れていた文月学園の制服だった。

 僕がこの世界で気づいたときには、既にこの月海原学園の制服を着ていた。

 その際、腕輪以外僕の手持ちはいつの間にか消えてしまっていたんだ。

 なのに、目の前の男は僕のいた学校の制服をなんで着ているの!?

 

「しかも【聖杯戦争】とか、面白そうな事が起こってるらしいし。うん、予定とは違ってるけど、この世界で変わったデータも集められそうだ」

 

 そいつはそんな事を、子供が新しい玩具を与えられた時の様な、気味の悪い笑顔で呟いていた。

 そいつからは、さっきから嫌な予感がビンビンくる。

 けれど、黙って見ていられる訳がない!

 

「ねえっ!!」

「ん?」

 

 僕がそいつに大声を出して呼ぶと、そいつはやっとこっちに気が付いたようで、僕の方を見た。

 その顔は、やはり僕は見覚えがない。

 ぱっと見、あまり特徴が無い顔で、廊下ですれ違っても印象に残らなさそうな感じだった。

 

「これは、君がやったのっ!!」

 

 僕はその男の近くで倒れている生徒達を指しながら、目の前の男に叫ぶように言った。

 けれど、その男は僕の言った事など、どこ吹く風なようで、僕の方を観察するように見てきた。

 

「お前は……ああ、吉井明久だったか」

「っ!?」

 

 何で、僕の名前を知ってるの!?

 僕はそんなに有名じゃn…………文月学園観察処分者で有名だったねそうだねっ!!

 

「そういや、お前の召喚獣だけはデータの回収が出来なかったな……」

「データの、回収……?」

 

 この男は何を言ってるんだろう、召喚獣のデータの回収って……待てよ?

 そういえば、この世界に来る前に、学園長が召喚獣のシステムにウイルスが侵入してたって……まさか!?

 

「文月学園のシステムに、ウイルスを仕掛けたのは君だったのっ!?」

「ん? あー、ちょっと違うかな。まあ関係はあるっちゃあ、大有りだけど……」

 

 そう言いながら、その男は僕の方に向かってゆっくりと歩いて近づいてきた。

 この男はやばい。そう体中から警報が鳴り響いている。

 僕は急いでその場から離れようとした、けど……

 

「【コードキャスト・hack】」

「なっ!?」

 

 ピシィッっと高い音が一瞬すると、まるで雷に打たれたように、何故か全身が麻痺をして一歩も動けなかった。

 今のは、一体……

 

「なぜお前がここに居るのか分からないが、ちょうどいい。ここで回収し損ねたお前の召喚獣も吸収していこう」

 

 そいつはそう言って、動けない僕の胸の辺りに掌をかざし、其処から奇妙な魔方陣のようなものがボウっと浮かんできた。

 その陣は、見覚えがある。召喚獣を出すときに、一緒に浮かんでくるあの模様に酷似していた。

 

「【データ・ドレイン】開始」

 

 そう男が言うと、その魔方陣は赤黒く光り、同時に僕の体からも変な光が出始めていた。

 自分の体からでた光が、目の前の陣に吸い込まれていく……っ!!

 

「ぐ、ああぁぁっぁぁぁっぁあぁっぁぁぁあぁぁぁぁっぁっぁぁぁあxっ!!」

 

 体全身に激痛が走る。

 まるで体の内側にくっついてあるものを無理やり引き剥がすような痛みに、僕は声を抑えられなかった。

 

「こいつは……なるほど、フィードバック・システムで体と強くリンクしてやがる。簡単には剥がれないって訳か。ん? しかもこれは、バグの影響のせいか……?」

「ッッ!?」

 

 目の前でブツブツと何かを言っているけど、僕には全く聞ける余裕が無かった。

 けれど、体に激痛が走り始めてから、全身に伝わっていた麻痺の感覚が無くなってる……っ!?

 

「だあらっしゃあああああっ!!!」

「ッ!? うおっ!?」

 

 僕はその男に回し蹴りを食らわせようとすると、そいつは後ろに飛んで避けた。

 けど、おかげで全身を覆っていた激痛も無くなった!!

 

「あ!? てめえ!!」

 

 僕はその場から脱兎の如く、嫌な現実から目をそらせる様に逃げ出した。

 僕には……あの場では、何も出来なかった。

 

「あーあ、まあいいか。あいつの召喚獣、明らかにシステムが異常な状態になっていた。暫く泳がせておくのもいいかもな……面白くなってきた」

 

 僕が其処から逃げ出した後、その男は傍から見ると嫌な笑みを浮かべてそう呟いていた……

 

 

 

 ★☆★

 

 

「はあっはあっはあっ……」

 

 校舎の中に逃げ込んだ僕は、階段の手前で荒くなった呼吸を整えていた。

 けど、時間が経っても一向に治まる気配がない。

 さっき見た光景が、頭から全く離れない。

 

「さっきの……人達は……」

 

 Fクラスで僕は散々臨死体験とか経験したり、見たりしてきたけど……本当に実際の死にはあった事は無かった。

 それでも、遠くから見ただけで、考える前に答えをだされたように分かった……

 

 

 

彼等はもう、“死んでいた”という事に。

 

 

 

「く、あっ!? 」

 

 吐き気が止まらない。

 今更突きつけられた現実に、体中から血の気が引いていくようだった。

 僕は初めて、本当の死を目の当たりにした。

 今、僕の頭の中は恐怖、恐れといった感情で一杯だった。

 死んだ彼等は、自分もああなってしまうのか。

 そして何より……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 姫路さん達も既にああなってしまっているのか

 

 

 

 

 

「――――――っ!?」

 

 その恐ろしい考えに至ったとたん、僕はもう限界だった。

 僕はそのまま糸の切れた人形のように力無く倒れ、気を失った……

 

 

 

 

 ★☆★

 

 

 

「おはよう! 今朝も気持ちのいい……」

 

 うるさい

 

 僕は一成の言っている事を無視し、その横を走り去るように通り抜けて行った。

 

 そうだよ、これは夢なんだ

 

 僕はその日、一日中学校を走り回った。

 この現実味の無い世界の中を。

 

 初めから現実感がなかったじゃないか、この世界は

 

 昨日自分が目の当たりにした出来事から逃げ去るように。

 

 だから、あの光景も嘘の出来事だったんだ

 

 そうやって、頭から離れないイメージから逃げようとしても、あれは真実だと心が理解してしまっている。

 

 そうだ、皆を探さないと

 

 誰かに会わないと、僕の大切な人達に会えないと……

 

 

 

 

 

 

 

「あ! 明久君!?」

 

――――あ

 

見つけた

 

僕の大切な人が――――

 

 

「明久君見てください! ここ酸化クロムやD-グリセリン酸とか珍しい薬品が揃っていて、さっき家庭科の授業でオムライスを作ったんですけど……」

 

 

――――目を背けたい現実と一緒にいた……




今回は、バカテス陣営とオリキャラ陣営によるシリアスで投稿しました。最後にギャグが来るのはまあバカテスなので。
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