Fate/Extra Summon (バカテス*Fate/Extraクロス)   作:新月

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久しぶりの更新。
二話同時更新の、後編です。


ランサーのアルバイト(ヒロイン編)

 

 〜50分経過中〜

 

「生地を広げてー、そこから星形や人型にくり抜いてー……」

 

 ★☆★

 

 

「お前等本当に何なの!? 何しに来たんだ本当によぉーっ!!?」

「うん? バイトに決まってるでは無いか」

「そうですよ。何言ってるんですか?」

「どこをどう見てもちゃんと働いてるようには見えねえんだよ!! 思いっきり不義理しかしてねえんだよテメエ等!!」

 

 ああマジで駄目だッ!!

 完全にコイツ等に接客任せたら赤字にしかならねえ!!

 くそう、何でこんな日に限って紅い野郎は来てねえんだよ!?

 

「ああもういい! 俺が接客するから、お前等後ろでちゃんと見てろ!! 手本見せてやっから!」

「ふむ。そこまで言うなら、仕方が無いな」

「ええ。なら見せてもらいましょうか、あなたの実力を」

「何で上から目線で物語ってんの!? こっちが先輩なんだからな一応ッ!?」

「む、早速客が来ているがいいのか?」

 

 チィッ!

 まだ色々言いたい事は山ほどあるが、さすがに客の目の前は自重すべきか……

 とりあえずこの二人には後でミッチリ言い聞かせるとして、今は仕事に取りかかるしかねえか。

 

 

「……ご機嫌よう」

「いらっしゃいませ!! 地獄の沙汰も金次第。月海原学園購買部へようこそ!」

「うわあ……何その営業スマイル。あなたがやると、凄い違和感」

 

 後ろの狐耳の言葉はガン無視する。

 って、この客? 確か、前に凛の嬢ちゃん達と会ってた錬金術師の……

 

「おや。お久しぶりですねキャスター、元気そうで何よりです」

「はい、それはどうも。いつぞやの事は感謝します」

「何だ? お前等知り合いだったのか?」

「ええ、ちょっと色々あって」

 

 ん? この眼鏡の嬢ちゃんが、キャスターのマスター……っていう訳でも無さそうだな、話からすると。

 まあ、参加者同士の同盟関係と言った所か?

 俺のマスターもピンクの嬢ちゃんの世話をしてたりするしな。

 っと、そうだ仕事仕事。

 

「ところで、本日は何がお望みでしょうか?」

「そうですね……とりあえず、カレーパンが一つに、お茶を一つお願いします」

「はい。カレーパンが一つに、お茶を一つで……」

 

 

 

「あと、“替えのパンツ十枚セット”で」

 

 

「はい。替えのパンツ十枚セッておおいッ!!? 何勝手に追加注文させようとしてんだ!? 言ってねーだろ眼鏡の嬢ちゃん一言も!?」

 

 後ろのを向くとキャスターが舌打ちしているのが見えた。

 いやチッじゃねーよ!! 無理矢理買わせようとすんな!!

 

「全くです。そんな一切役に立たない無駄な物、一つも入りません」

「いや、あなたは買うべきでしょーよ。どうせ今も穿いてないんでしょうが下着」

「当然です」

「ええええええええええええッ!!!??」

 

 何、後ろにツッコミ入れてたら前からもツッコミ入れるべき発言出て来たよ!!

 自分から痴女暴露してきやがったよこの嬢ちゃん!?

 

「うるさいぞ、ランサー。ほれ、お主の頼んだ品だ」

「ありがとうございます。それでは」

「え、いや、ちょっ!!?」

 

 こっちが何か言う前に、セイバーから欲しい品を貰った嬢ちゃんはもう用は無いとばかりに立ち去っていった。

 

「ちょっと何やってんですかランサーさん。先輩の見本とやらはどーしたんですかねえ?」

「いや見本とかそれどころじゃ無かっただろ!? え、あの嬢ちゃんそうなの!?」

「うむ……遺憾ながら、以前余も見たからな。あれは本物の痴女だ」

 

 本物って、えー……

 いや、俺も生前何人もの女抱いて来たけど、さすがにオープンスケベはちょい引くぞ……

 くそ、まあ気をとり直して次だ、次。仕事は終わった訳じゃ無いんだから。

 

 ★☆★

 

 〜10分経過中〜

 

「天板にクッキングシート引いてー、その上にクッキー並べてってー……」

 

 ★☆★

 

 

「うむ、次の客が来たぞ。しかも二人……うん?」

「って、片方はさっきの眼鏡の嬢ちゃんじゃねーか?」

 

 さっき帰っていったばっかなのに、また直ぐ戻って来たのか?

 

「あら? 一緒にいるのって……」

「御機嫌よう。十分ぶりです」

「こんにちは、ランサーさん」

「ああ、ピンクの嬢ちゃんじゃねーか」

 

 一緒にいたのは、凛の嬢ちゃんがいつも世話を焼いている子だった。

 最近よくマイルームに招いているから、俺とも何度か顔合わせはしている。

 そういえば、確か眼鏡の嬢ちゃんとも面識があったんだっけか?

 

「セイバーさんも、こんにちは」

「うむ、久しいな瑞希よ。元気にしておったか?」

「はい! 凛ちゃんのおかげでバッチリです」

 

 って、今度はセイバーとも知り合いだったのか?

 おいおい、世間って狭いなって感じるぜ……

 

「して、何か買うもんあるか? 眼鏡の嬢ちゃんは付き添いだろ?」

「ええ。先ほど上の階でバッタリ出会って、そのまままた一緒に来ました。ミス・瑞希も買う物があるようでしたので」

「はい。今日は礼装が欲しくて……」

 

 お、礼装か……

 確かに、ピンクの嬢ちゃんはうちのマスターが目を見張る程のウィザードとしての才能を持ってはいるが、礼装はあったらあったで便利だからな。

 

「よし、どれが欲しいんだ? 最近入荷した奴だと、純銀のピアスや人魚の羽織りなんかがあるが……」

 

 

 

「はい! “メイド"服が欲しいんです!!」

 

 

 ……は? メイド服?

 

「瑞希よ、メイド服が欲しいのか?」

「ええ、どうしても欲しくなっちゃって……」

「何だ、嬢ちゃんが着たいのか?」

 

 あー、まあそりゃあ聖杯戦争中でも、少しは娯楽とか欲しいのかもしれないが……コズプレが趣味なのか?

 マスターが聞いたら、心の贅肉よ、とか言いそうだけどな。

 

「いえ、着るのは私じゃなくて……」

「ん、そうなのか? あ、じゃあうちのマスターに着せるつもりか?」

 

 確かに似合いそうだな、メイド服。

 そいつはいいな、凛の嬢ちゃんの恥ずかしい顔が目に浮かぶぜ。

 その姿を見てからかってやろう。

 

「え? 違いますよ? 凛ちゃんじゃありません」

「は? じゃあ誰だよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「コレは、明久君…………いえ、“アキちゃん”に着てもらうんです!!」

 

 

 

 

「…………………………………………は?」

 

 

 ……えーと、ちょっと待てー。

 アキちゃんって……誰だ? ていうか、何故直前に“明久君”って言った?

 明久って、確かうちのマスターがピンクの嬢ちゃん以外にやたら気にかける“男”の名前だったような……?

 

「……あの、ミス・瑞希。アキちゃんと言うのは?」

「ええ、明久君の事ですよ。正確には、“女装した明久君”ですが」

「ちょっと待って下さい。じゃあ、そのメイド服って……」

 

 

 

 

「はい! アキちゃんに着てもらって、写真を撮ってネットにアップロードしようと思って!」

 

 

 坊主にげろー。ちょう逃げてー。

 お前の社会的地位が殺されるぞー。ピンクの悪魔のせいでー。

 

 

「な、なんと……ッ!? まさか奏者は、女装すらこなすというのか!! ますます惚れた!! その写真撮影の際、是非余も呼んでくれぬか!!」

「ええ、もちろんです!! 一緒にアキちゃんの可愛らしさを、世界中に広げましょう!!」

「うわ、ちょっと見てみたいかも……アキちゃんメイド服」

「なるほど……すこし興味深いですね」

 

 ……うん、奏者って何だ?

 と、俺は浮かんで来た疑問の中で、一番どうでもいいのを考えて現実逃避していた。

 

 

 ★☆★

 

 〜25分経過中〜

 

「オーブンに入れてー、そのまま焼き上がるまで待ってー……」

 

 ★☆★

 

 

「ーーーーこんにちは。皆さんお揃いで、どうしたんですか?」

「あれ? 桜さん?」

 

 ピンクの嬢ちゃん達がアキちゃん撮影会の計画なるものを立てている際に、今度は白衣を着た紫色の髪の嬢ちゃんが来た。

 って、保健室のAIじゃねーか? おいおい、持ち場を離れていいのかよ?

 

「桜ですか? そちらこそ、どうしてここに? 保健室の担当はどうなされたのですか?」

「はい。今日は一日、保健室はお休みになってるんです。だから、少し私用で買い物をしに来たんです」

 

 私用って……NPCがか?

 まあ、参加者以外に売っちゃいけないなんてルールはねえが……何を買いに来たんだ?

 普通に考えると、怪我人が来たとき用に回復アイテムを用意するって事くらいしか予想付かないが、私用って言ってるしな……なんだ?

 

「それで、何が欲しいのだ?」

 

 

 

 

 

 

「はい。“首輪”を一つ下さい!」

 

 

 

 

 

 

「…………………………………………………………………………………………………

 ………………………………………………………………………はい?」

 

 

 首輪?

 くびわ?

 KUBIWA?

 

 ……保険医が、首輪?

 

 

「……あのー、桜さん? 一応聞きますけど、首輪って……何に、お使いするつもりですか?」

「え? それはもちろん、アーチャーさんへのしつ……きゃっ、私ったら♥」

 

 いや、きゃっじゃねーし。

 今躾けって言おうとしたよな?

 しかもアーチャーって言った!?

 まさか紅い野郎のアーチャーじゃねえよなあッ!!?

 

「わぁー…………桜さんって、大胆……尊敬します」

「なるほど。飼い主の言う事を聞かせる為に、視覚的にも物理的にも縛られるという事を自覚させるのに首輪ですか。中々利にかなっていると思います」

 

 いや、尊敬しちゃ駄目だし、納得しちゃ駄目だから、そこの天然少女ズ。

 

 つーか、こいつ本当にAI?

 普通にどっかバグってんじゃねーの!?

 普通に感情持ってんじゃねーの歪んだ奴!?

 

 

「……なあ、キャスターよ。まさか保健室が休みというのは……」ヒソヒソッ

「ええ。十中八九、紅茶と一緒にいる為に……まさに、人生の桜の木の下に行ったという事ですね」ヒソヒソッ

「うん? どういう意味だ?」ヒソヒソッ

「知ってます? 桜の木の下って、死体が埋まってるって迷信」ヒソヒソッ

「あー。桜の木の下=墓場、で“人生の墓場”か。うまいな」ヒソヒソッ

 

 いやうまくねーよ。

 おいまさかそれで今日シフト入ってなかったのか?

 あれ、紅い野郎死んだ?

 唯一常識的な紅い野郎死んだァ——————————ッ!!?

 

 ★☆★

 

 〜20分経過中〜

 

「焼き上がったらー、自然に冷えるまでまってー……」

 

 ★☆★

 

 

「…………あー、疲れた……」

 

 嬢ちゃんズは、何かあのままガールズトークとなっていき、少し離れたテーブルでちょっとしたお茶会を開いていた。

 その中には思いっきりセイバーとキャスターもいたりするが、正直今は俺の心の安寧が先なので、気にしない事にする。

 サボりなんて俺は見ていない。

 つか、マジで疲れた……主に精神的に。

 ていうか、まさかアレをいつも紅い野郎と坊主は相手してんのか? おいおい、すこし同情するぜ……

 

「……って、ため息なんか吐いてんのよアンタ。バイト中でしょ」

「ん、あー。凛の嬢ちゃんか」

 

 ここに来て、うちのマスターが登場。

 ああ、やっぱり嬢ちゃんが一番まともだなあ……

 多少ツンデレの気質があるが、そこを覗いたら普通に常識人だからなあ……俺の心のオアシスだなうん。

 

「あー……嬢ちゃんが俺のマスターで、本当に良かったなぁ……」

「な、何よいきなり改まっちゃって。そんなの当然でしょ。てか、頭撫でるなーッ!!」

 

 思わず無意識的にヨシヨシとしていて、そのちょっとした怒り具合に心が爽やかになっていく。

 あー、落ち着く。

 

「ったく。……ところで、とうとう購買部の店員の仕事を任されるまでになったのね」

「ん、まあな。そういや何か買うものあるか?」

「んー、そうねー……」

 

 そう口では迷うような言葉を言いながらも、その指は目の前のタッチパネルを迷い無く操作していき、スッとある画面を表示していた。

 

「この“天然ルビー”って?」

「ん? ああ、何か購買部に手違いで入荷された奴らしくてな。五百万PPTもする宝石を“数十個も入荷”したせいで、大赤字だとか言ってたぜ? それで、だれも買わないっつーのに、駄目元でこうしてリストに載っけてるらしい」

 

 全く、こんなの普通買う奴いねーよな。

 これだったら普通にアイテムや礼装勝った方が得だし、買う奴いるなら見てみたいぜ。

 

「そう。じゃあーーーー」

 

 そう言って、嬢ちゃんは指をさして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このリストにハッキングして、速やかにありったけの天然ルビーを私の端末に転送しなさい」

 

 

 

 

 

 

 

「………………………………………………………………………………………………………………

 ………………………………………………………………………………………………………………

 ………………………………………………………………………………………………………………

 ………………………………………………………………………………………………………………」

 

 

 ーーーーさよなら、心のオアシス。こんにちは、頭の痛み。

 

「ちょっ、何頭抱え込んでるのよ! ほら急ぐ! こんな所誰かに見られたらっ」

 

「見られたら何ですか?」

 

「って、ラニッ!!? それに瑞希も桜まで!?」

 

 

 嬢ちゃんが来たのに気づいたのか、お茶会してたメンバーが全員戻って来ていた。

 それを見たマスターは、かなり冷や汗をかいている。

 

「ちょいとそこの槍兵さん? お宅のマスターさんが一番不義理を働いている件について、何か弁明は?」

「………………………………………………………………………………………………………………いっそ殺せ」

 

 もうその一言しか出なかった。

 

「あの、凛ちゃん……さすがにそれは、いけないというか……恥ずかしく無いですか? その、優雅たれの家訓に反するんじゃ……」

「フッ…………瑞希、覚えておきなさい。優雅って言うのはね、一人で出来るものじゃないの。誰かにそう認識されて、初めて実現出来るのよ」

「それは逆に言えば、誰かに見られていないなら、何やっても気にしないという事ではないか?」

「まさか、凛さんが一回戦からランサーさんをアルバイトに出していたのって、店員側からハッキングする為に……? そうすれば、セキュリティレベルは一気に低くなり、リストの品を好きなだけタダで取り出せるようになるから……」

 

 あーなるほど、よーやく謎が分かったわー。

 エネミー倒した方が明らかに金稼ぐのに効率いいのに、わざわざアルバイトに行けっていったのは、それが理由かー。

 

 ハハハはハッハハハッハハはハハハハハハハハハハはハハハハハハハハハハは歯八ははははははははははっははっはは

 

 

「うがあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!」

 

「ぬあぁっ!!? ランサーが壊れたぁッ!!?」

 

「何なんだよちくしょおおおおおッ!!? 碌な女がいねえじゃねえかこの聖杯戦争はよおおおおおおおおおッ!!! 全員色物枠じゃねーかああああああああああッ!!!!!」

 

「ちょッ!!? 色物って、アンタ失礼すぎない!?」

「ええ。ミス・遠坂はともかく、私は違うと反論します」

「って、ラニ、アンタねえッ!!」

 

「あわわ……ッ! えと、これ、どうしたら……っ」

「まあ、しばらく放っときましょう。それよりジュースでも飲んで、私達は落ち着きましょうよ」

「む? キャスター、そのジュースはどうしたのだ? 見るからに高そうなラベルが張ってあるが、そんなの持っておったか?」

「ああ。これはそこの購買部のリストから取り出して来ました。大丈夫です、ちゃんとお金は払っておきましたから。ランサーのバイト代の入った端末で」

「あの、それはいいんでしょうか……? 勝手に使ったりして……」

「いいんですよ。こないだ勝手に酒代に使われた仕返しですー。じゃ、カンパーイ」

『カンパーイッ』

 

 

 ★☆★

 

 〜20分経過中〜

 

「……完成ーッ!!」

 

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