Fate/Extra Summon (バカテス*Fate/Extraクロス)   作:新月

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また一気に2話同時公開。
こっちは戦闘シーンのみ。


早すぎた邂逅

「ふっ!」

 

 心臓への躊躇の無い拳。

 それを体の左半分を引く事で避け、そのままカウンターで右手に持った木刀を振り下ろす。

 

「はあッ!」

「甘いッ!!」

 

 が、目の前の武人は空いていた左腕で軽々と防ぎ、一切慌てた様子が無い。

 そして防がれたと思った次の瞬間には、既に相手は右回し蹴りを放とうとしていた。

 

「あっぶなッ!?」

 

 それを紙一重の差でその場でしゃがみ込んで躱し、バク転して少しだけ距離を取る。

 そして着地と同時に左手を地面に付けて、クラウチングスタートのような体制を取った後、

 

「たあッ!!」

 

 そこから全力で踏切り、低い体制のまま相手の足を刈り取ろうと薙ぎ払う!!

 

「なってないっ!!」

「イッ!?」

 

 けれど、僕の攻撃に合わせるように武人もその場で蹴りを放って来た。

 僕の木刀と武人の蹴りがぶつかり合い、一瞬鍔迫り合いの状態になる。

 そして……

 

「うわあぁッ!!」

 

 競り負けたのは僕だった。

 武人の蹴りの衝撃を殺し切れず、僕は後ろにボールのように吹っ飛ばされる。

 

「くっ……!」

 

 何とか空中で体制を整え直し、無理矢理着地して倒れるのだけは防ぐ。

 ダメージは何とか食らわなかったけど、何て強さなんだ……ッ!

 僕は片膝を付いた状態で、それでも決して視線は逸らさないと、相手の武人を睨みつける。

 

 

「っははははは!  やるではないか、小僧! 枯れ木のように折れるかと思えば、中々の手応えではないか!」

 

 追撃もせず、その場に立ち止まったままの武人はそう歓喜の声を上げる。

 その顔はまさに愉快といった感じで、この一方的な殺し合いを心底楽しんでいるのが伺えた。

 くそ、完全に僕の方が押されてる……ッ

 相手の情報を一切持っていない以上、マトリクスによるダメージ補正も効かないし、何に特化しているのかが分からない!

 このままじゃ……ッ!!

 

「さあ、もっと足掻け! 久々の骨のある相手、簡単に殺すには惜しい!」

 

 くっ! いかにも余裕ありまくりですみたいな雰囲気だして!

 あーもうッ!! 何でこう毎度毎度、校内で僕が標的にされるのさ!?

 他にもたくさんいるじゃん参加者!! あ、他にも既に襲ってたんだったコイツ。

 

 

「お兄ちゃん!」

「大丈夫! いいからそのまま下がってて!!」

 

 離れた場所にいるありす達に、僕は視線を向けずにそう声を掛ける。

 向こうは完全に油断しているけど、僕に取っては一切の隙も見せられない相手だから。

 

 ……戦闘が開始した瞬間、目の前の武人はありす達二人に一切目もくれずに、真っ先に僕の方を襲って来た。

 多分武人としての誇りで襲わない……という訳じゃなくて、この様子だと単に戦闘を楽しみたいが故に、非力そうな二人は後回しにしているだけなんだろう。

 それは逆に言えば……僕が倒された瞬間に、今度は二人が標的にされるという事。

 

「絶対に、負けられるか……ッ」

 

 巻き込まれただけのありす達の為にも、こんな理不尽認めてたまるもんか!!

 僕はそう決意して、改めてその場で構え直す。

 絶対に、この場所からみんなで生き残る為に……

 

 

 ★☆★

 

「大変よアリス。お兄ちゃんがピンチなの」

「ええ、大変ねありす。お兄ちゃんがピンチだわ」

「お兄ちゃんがいなくなっちゃう。あたし達とまだ遊んでくれてないのに」

「ええ、いなくなっちゃう。あの怖い人に消されてしまうわ」

 

「————助けて上げなきゃ、お兄ちゃんを」

「————ええ、助けましょうか。お兄ちゃんを」

 

 

 ★☆★

 

 

「けど、何か手は……」

 

 そう思いながら、改めて周りを見渡していく。

 二回戦で襲われた時とは違い、ここは校舎では無くアリーナ。

 隠れられる場所など無く、しかもどれだけの時間生き延びればいいのかも分からず、逃げの手も打てれない!

 フィールドには遮蔽物など無く、ただ何も無い空間が広がっており、離れた場所に大きな恐竜の化石のような物が浮かんでいるだけ……

 

「————あれだっ!!」

 

 僕はそれに気づいた瞬間、その場を駆け出して真っ先にソコに向かう!

 

「ほう、逃げられるとでも思ったか!」

 

 僕の行動に気づいた武人は、一瞬でこの距離を詰めて来た!!

 そして、背を向けた状態の僕に止めを刺そうと拳を放とうとして……

 

「コードキャスト・move speedッ!!」

「ぬうッ!?」

 

 強化スパイクの効果を使って、一気に加速!

 タイミングを外された相手は一瞬行動が遅れた!

 そして僕は強化した脚力を利用して、そのまま大きく飛び上がり……

 

 

「っけえ——————————————ッ!! ウォールブレイクッ!!」

 

 

 この骨を壊してその残骸を落とせば……ッ!

 僕はそれを狙って、アリーナに浮かんでいた大きな骨の化石にスキルを放った!!

 

「————————————————ッ」

 

 直後、ドゴォーンッと大きな衝撃が鳴り響き。

 そして……

 

 

 

 

「————————ッタあああああああああああああああッ!!?」

 

 

 僕の手にもの凄い痛みが響いて来た。

 骨は壊れて、無い。

 

「ちょ……ッ!? これまさか、“破壊不能オブジェクト”!?」

 

 一回戦の決戦場の時に船の扉が開かなかったように、この骨もこの場で固定されて動かない類いの物!?

 しまった!? 二回戦の時は普通に建物破壊出来たからてっきりこれも同じかと勘違いした!!

 僕はそのまま、重力に引かれるまま地面に落ちていき……

 

「ふむ、ここまでか?」

「……ッ!!」

 

 下で待っていた武人が、腕を思いっきり引いて構えているのが見えた。

 や、ば……ッ!

 

「っああッ!?」

 

 相手の拳と自分の体の間にとっさに木刀を入れ、なんとか直撃は避ける。

 が、完全には防ぎ切れず、また僕はそのまま殴り飛ばされる。

 とっさの事だったせいで、その際に僕の木刀は何処かに吹っ飛んでいってしまった。

 

「いっつぅ……どうすれば、いいってのさ……」

 

 フィールドの物は完全に利用出来ない。

 そして僕は、完全に丸腰。

 残っているものと言ったら、端末に入っているアイテムや装備品……

 

 

「————そうだ!?」

 

 ある事を思いついた僕は、ポケットから端末を急いで取り出しカチカチと操作する。

 

「ほう? まだ何かするつもりか?」

 

 相手は完全に油断しているせいか、僕のこの行動を止めようともしてこない。

 つまり、今が状況を好転させる最後のチャンス!

 端末の画面を切り替えて、装備品一覧を表示していき————————あった!!

 

 

「ライダー、アーチャー! 力、借りるよ!!」

 

 そう言って、端末に表示されている二人の武器を選択する。

 一瞬、僕の両手付近が光り……

 次の瞬間には、僕の両手にはライダーの二丁拳銃が、右腕には緑のアーチャーの弓が装備された!

 

「うん……大丈夫! もう問題なく使える!」

 

 二回戦を乗り越えた今、もう僕には武器に対する抵抗は無かった。

 僕は改めて二人の武器を構え直し、遠く離れた武人に向き直る!

 

「ほう! 自らの獲物を変えて来たか!」

 

 相手は無手で戦う完全な武闘家……つまり、接近戦しかしてこない!

 だったら、遠距離攻撃の相手と戦うのは苦手な筈!

 正直、僕じゃ完全に使いこなす事は出来ないと思うけど……それでも、もうやるしか無い!

 

「いくよぉッ!!」

 

 僕は両手を構え、離れた位置にいる武人に嵐のように乱射した!

 っつ! これ、結構反動つよッ!? 

 こんなのライダーとアーチャー使ってたの!?

 

「はッ! 狙いがなっとらん!」

 

 この弾幕の中、まるで脅威を感じないような軽快さで弾丸を避けながら、武人は僕の方に走ってくる!

 彼の言う通り、僕の放った弾丸は一発も掠りもしていない……

 反動が凄すぎて銃身が安定していないせいで、細かい狙いがつけれていないんだ!

 どんどん相手の接近を許してる…………けど、

 

「まだまだぁッ!!」

 

 それでも僕は撃ち続けるのを緩めず、それどころか連射速度を上げていく!!

 はっきり言って、もう標準なんて大雑把にしか付けれていない……けど、これで……ッ!

 

「どうした! やけになったか!?」

 

 そう言った武人は、この厚くなった弾幕にすら直ぐ対応し、軽々と避けていく。

 右に、左に……時には、軽くジャンプをして避けていき…………そして、次は————

 

「そこだぁッ!!」

「ッ何!?」

 

 相手が右に避けようとするのと同時に、僕は弓を付けた右腕を振りかぶる!

 これが僕の狙い! 二回戦の時に、緑のアーチャーが建物の上からやって来たのと同じ……

 弾幕を張って逃げ場を限定して誘い込み、そこで本命の一撃を放つ!!

 

「っけえッ!! 【矢尻の毒】ッ!!」

 

 振りかぶった右腕の弓矢に魔力を込め、全力で彼の使っていたスキルを放つ!!

 その狙いは正確で、今度は相手に吸い込まれるように向かっていく!!

 ライダーの拳銃は連射性と威力はあり、代わりに反動で狙いが付けにくい……

 対して緑のアーチャーの弓矢は連射性は低いけど、正確な狙いが付けやすく、おまけに毒の付加付き!

 状況によって武器を使い分けていき、最善の結果を出していく! これが僕の新しい戦い方!

 

 そしてそれはうまくいき、僕の放った矢は武人に命中しそうになり……

 

 

 

 

 

 

 

「ふんッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 それを彼は————————————“真正面から、殴りつけた”

 

 

 

 

 

 

 

 

「……えっ?」

 

 

 当たった……確かに、当たった。

 生身の拳に……毒の付いた矢じりが、刺さるのに。

 

 その筈なのに……刺さる筈の矢は、粉々になった。

 

 

「っわあッ!!?」

 

 一瞬呆然とした僕に、バラバラになった矢の残骸が飛んで来た!?

 それを反射的にギリギリで避けて躱し、た……

 

 

「魔術師にしては、中々の芸当だった……が、惜しいな」

「……ッッ!!?」

 

 ……が、気づいた時にはもう、しゃがんだ僕の目の前に、彼の膝蹴りが————ッ!!

 

「ッウ、あああああああああぁぁぁ————————————————ッ!!!!!」

 

 両腕を目の前で交差させ、何とか攻撃をガードしようとしたけど。

 それすらも破り、ゴキッと生々しい音が響く。

 鳩尾に彼の攻撃がめり込む程の威力で蹴り飛ばされ、僕は先ほど以上に後方に吹っ飛ばされた。

 今度は体制を整える事も出来ず、そのまま背中から地面に落ち強打する。

 

「っゲホッ!! ゲホッ!!」

 

 や、ば……これ、左腕いっちゃってる……

 折れた部分から響く鈍い痛みに、苦悶の表情が浮かぶ。

 そう悶えている内に、ザッザッとゆっくりと足音が聞こえて来た。

 

「終わりだ」

「ッ!!」

 

 とっさに動く事が出来ない状態の僕に、そう武人は言う。

 何の抵抗も出来ないまま、その拳は握られ、無慈悲な一撃が————

 

 

 

 

 

 

 

 

「“こんがりおいしくしてあげるね!” 【火吹きトカゲのフライパン】ッ!!」

 

 

 

 

 

 ————そう、幼い声が辺りに響いたと思った次の瞬間、急に大きな炎が現れた。

 

 

「ぬうッ!!?」

「えッ!?」

 

 武人の立っていた場所が、その炎に包まれていく。

 それをギリギリの所で相手は躱していたが、その後直ぐに炎は消えていき、倒れている僕には一切の火傷は無かった。

 

「今のって……?」

 

「お兄ちゃん、大丈夫!?」

 

 倒れている僕の近くに、離れていた筈のありす達が駆け寄って来た。

 そのありすの手には、例の古ぼけた本がページが開かれた状態で握られている。

 

「今の、まさかありす達が……?」

「うん、そうだよ」

「ええ、ギリギリだったわね」

 

 えへへ、と小さく笑うありす。

 その微笑ましい様子に少しだけ心が癒される。

 

 痛みに堪えながら折れていない方の手を付いて、何とか僕はその場で立ち上がる。

 

 

「つぅ〜ッと……とにかく助かったよ。ありがとう」

「えへへ、どういたしまして!」

 

「……ほう、小娘。中々面白い術を使うな」

 

 っ!!

 声のした方向を振り向くと、さっきの武人がありす達の方を向いてそう呟いていた。

 ヤバい……ッ、今のでアイツの標的がありす達の方にも移った!?

 さっきまでは僕一人だけだったからまだしも、二人まで狙われたら……ッ!

 

「ありす、アリス!! 二人とも、急いで離、れ——————?」

 

 せめて、二人だけでも逃がさないと……ッ!

 そう思い、二人にそう言おうとして後ろを振り返ると……誰もいない。

 あれ、既に逃げてくれた……? そう一瞬思ったけど、

 

 

「って、何で二人とも僕の前にッ!!?」

 

 いつの間にか二人は逃げていたのではなく、何故か僕の前に並んで立っていた!

 ちょおッ!? 何やってんの!?

 

「ほう。いい度胸だ小娘」

 

 完全に、武人の標的は僕じゃなくアリス達に移ってしまったみたいだ!

 ヤバい、これ本当にヤバい!!

 

「アリス、あの人怖いね」

「そうね、ありす。本当に怖い人ね」

「しかも、お兄ちゃんをいじめるし」

「ええ、いじめていたわね」

 

「二人とも呑気そうに言ってないで早く離れてッ!!?」

 

 駄目だ!? この二人なんて言うか天然っていうかトロイ!?

 くそうッ!! こうなったら破れかぶれで僕がウォールブレイクで注意を引きつけて……っ

 

 

 

 

「————————じゃあ、オシオキしなきゃね」

「————————ええ、オシオキしましょう」

 

 

 ……っ!?

 二人がそう言った後、僕でも感じ取れる程の魔力が二人から溢れて来て……

 

 

 

 

 

 

 

 

「「さあ、来て! ジャバウォック!!」」

 

 

 

 

 

 

 そう唱えた瞬間————————大きな何かが、落ちて来た。

 

 

 

 

 

「■■■■■■■——!!」

 

 

「————ッ!?」

 

 圧倒的な威圧感と、殺意を放つソレ。

 全長は3〜4メートルはあり、赤銅の色をした筋骨隆々な存在。

 ソレから出てくる凶暴な咆哮は……まるでいつかの、白い金髪の女性に近い。

 

 まるで絵本に出てくる怪物が、現実に飛び出て来たような。

 一目見て感じた、これはバーサーカーと呼ばれる物だって————ッ!!

 

「ぬうッ!?」

 

 さすがにこれには予想外だったのか、武人が驚きの声を漏らす。

 目の前のソレは僕達とは違い、紛うこと無き怪物と呼べるものだったから!

 

「やっちゃえ、ジャバウォック!!」

「■■■■■■■——!!」

 

 黒い方のアリスがそう指示をだす。

 それに答えるように、怪物はその大きな腕を振りかぶり、目の前を叩き殴った!!

 

「ぬぐおぉッ!!?」

「うわあッ!?」

 

 武人は軽々と直撃を避けてはいた、が。

 その怪物が振るった豪腕は、同時に暴風をも生み出していた!!

 特殊な術や装備じゃない、単純に馬鹿げた腕力その物が生み出した産物……それだけで、大きな衝撃となって辺りに襲いかかる!!

 後ろにいる僕達にも、その余波が届いていた!

 

 

「呵々ッ!! いやまさか、これほどの悪鬼を小娘どもが従えていたとは思いもせんかった!! ますます血湧き肉躍る!!」

 

 これほどの怪物を見せられて、なお怯むのでは無く戦いの歓喜の表情を上げる武人。

 

「頑張れー、ジャバウォックーッ!!」

「アハハ、楽しいーっ!!」

 

 そして無邪気に怪物を応援するありすと、笑っているアリス。

 三人のそんな風に出来るその精神に、僕は多少の戦慄と、どちらも三回戦まで勝ち残った組なのだと改めて感じさせられた。

 

「ハアッ!!」

「■■■■ッ!?」

 

 武人は先ほどの攻撃を避けた後、今度は仕返しとばかりに怪物の土手っ腹にその拳を叩き込む!!

 鈍い音が辺りに響いた後、その拳は怪物の胴体を貫通していた!

 

「やられたッ!?」

 

 誰がどう見ても致命傷。

 そんなダメージを受けて、怪物もあっけなく終わった……そう、僕は思った。

 

「無駄よ」

 

「■■■■■■■——!!」

「むッ!?」

 

 けれど、次の瞬間怪物は咆哮を上げ、武人を無理矢理引きはがそうとする。

 その直前に貫通していた腕を引き抜いて、武人は後ろに飛んで避けていた。

 

 そして————怪物の体の貫通した穴が徐々に再生していく!?

 

「嘘ッ!?」

 

 あの致命傷のダメージを、一瞬で塞いだ!?

 回復能力!? それとも不死身!?

 どれだけ馬鹿げた存在なのあの怪物!!

 

「ッははははは!! そうか、其奴はそういう“規定か”! なるほど確かに今の儂では骨が折れる!」

「規定……?」

 

 何だろう……?

 アイツの言った言葉、何か引っかかる……

 規定って、確かルールとも言うんだっけ……?

 

「うむ、もうしばしこの戦いを味わっていたかったが……残念ながら、時間か」

「時間……ッ!?」

 

 時間ってどういう事?

 そう聞く前に、僕の視界がノイズに包まれていくのが感じた……

 

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