Fate/Extra Summon (バカテス*Fate/Extraクロス)   作:新月

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後半投稿。


キー・パニック(後半)

「よっし! 12本目ぇっ!!」

 

 三階の教室で、僕は思わずそう声を上げた。

 今見つけたのは、掃除用具箱のバケツの裏側に貼付けられていた物。

 これで前半僕が見つけたのと合わせて、35本目。

 探索を再開して数時間、そこそこに順調な出だしだった。

 

「ふう、にしてもほんといろんな場所に隠してるよね……あー、探索系のスキルが欲しいなあ……」

 

 せめて、自分の幸運がEじゃなかったら、もっとスムーズに進めたのかな……

 そんな悲しい事にありえない想像が頭に浮かんで来た。

 

「まあ、とにかく次の場所にさっさと行こうか……」

 

 そう呟きながら、扉をガラガラと音を立てて開き、廊下に出ていった。

 

 

「おや、ここにいましたか吉井さん」

「ん? あ、レオ!」

 

 廊下に出た所で、その近くにレオがいた。

 僕に気づいたとたん、こっちに近づいて話しかけてくる。

 

「お久しぶりです。無事、二回戦突破出来たようで何よりです」

「ん、ありがとう。そういえば、レオは何でここに?」

 

 さっきの口ぶりだと、まるで僕を捜していたような感じだけど……?

 

「ええ。……まずは、謝罪を。この間、“ユリウス”兄さんがそちらにご迷惑をおかけしたそうで、申し訳ありません」

「え? えーっと……? ユリウス兄さん?」

「葛木先生の事ですよ」

「あ、あー……」

 

 そっか、そういえば兄弟だっけ。

 それにしても、ユリウスか……道理で二人の名前がバラバラっぽいなあと思ってたけど、やっぱり偽名だったんだ。

 

「あなたとは、真正面から決戦場で戦いたい。それなのに、彼の行動に釘を刺しておかなかったのは僕の責任です。そのせいで、あなたの左腕を…………改めて、この場でお詫びを」

「あー、いや、まあ……別に、いいよ。気にしてないっていうと、全くそうもいかないけどまあ、うん……」

 

 実際問題こっちは殺されかけた身だし、こんな簡単に許すのもどうかと思うけど、それをレオに当たるのもどうかなーって思うし……

 

「そ、それより、レオとユリウス……さん、ってどういう関係なの? 兄弟なのに、何か兄のユリウス……さんのほうが敬語使ってるのって……?」

 

 いや、敬語自体は別にいい。

 姉さんも僕に敬語は使ってくるし、ただし大抵物理も同時にだけど。

 問題は……なんていうか、二人の距離感だった。

 兄であるユリウスが弟のレオに対して……立場が弱いっていうか、腰が低い感じがした。

 

「ああ、僕はハーウェイ家次期当主で、兄さんは僕の部下ですから、それは当然です。兄弟であっても、それは変わりませんので」

「……へ? それ、おかしく無い?」

「何がですか?」

「え、いや……」

 

 

 だって、それだと兄弟であるという点より、組織の関係の方が重要だって言ってるようなものじゃないか。

 

 

 ……そう思ったけど、何故か言えなかった。

 

 

「……うん、ゴメン。なんでも無いや」

「そうですか。ところでもう一つの用ですが、今小さな鍵を探しているそうですね」

「え? まあそうだけど、何で知ってるの?」

「既に校内でちょっとした噂になってますよ。何でも、変な主従が必死になって校内を探しまわっているとか」

 

「うんちょっと待って? 何で“変な主従”で僕だって思ったの?」

「え? 何かおかしい所が?」

 

 ……え? まさか本気で僕の事変な奴って思ってたの!?

 そこ疑問に思わない位刻み込まれてるのッ!?

 

「まあそれはとにかく、それで僕もいくつかそれらしき物を見つけたので、あなたに差し上げようと思いまして」

「ぜんぜんとにかくじゃないけど、わーありがとう! 助かるよ」

 

 正直聞き捨てならない部分があったけど、まあ今回は単純に鍵を持って来てくれた事だけを喜ぶ事にしよう。

 そう言ってレオは自分のポケットに手を入れて、そこから何か掴むと僕の方にそのまま向けて来た。

 

「ええ、はいどうぞ」

 

 

 

 

 

 ジャラッ←(52本の鍵登場)

 

 

 

 

「………………………………………………………………えーっと…………レオさん?」

 

「どうしました? もしかして、探し物はこれでは無かったのですか?」

 

「いやうん、合ってる……間違いなく、合ってるんだけど………………あれ? 結構本気で探してくれた?」

 

「いえ、別に。ただちょっと軽く探すだけで、面白いくらいに簡単に見つかって行くので。探し始めたのもだいたい30分程くらい前ですし」

 

 

 へーそう。

 こっちが数時間かけて20〜30の所を、たった30分で50まで集めるんだーふーん。

 

 あはははははははははははははははははははははははははははははははははははは

 

 ————これが、リアルラックの差か…………

 

 僕は、世の中の残酷なまでの不公平さに絶望した。

 

 

「ま、まあとにかくありがとう。おかげでかなり捗りそうだよ……」

「それはよかったです。そういえば探し物ですが、一つアドバイスを」

「アドバイス?」

 

 そう聞き返すと、ええ、とレオは言って……

 

 

「誰かが隠した物がどうしても見つからない時は、逆にその隠した人の目線に立って考えると、探し場所の目処はたってきますよ」

 

「隠した人の……目線?」

「ええ。つまり、もし自分がそれを隠すなら、どこに隠すか。今回の場合、その人から見て吉井さんに絶対見つからないようにするにはどうすればいいのか、を考えればいいんです。隠す人の特徴や性格なども分かっていれば、さらに予想が付けやすくなりますね」

「な、なるほど……」

 

 相手の目線に立って考える、ね……

 レオのそのアドバイスに、僕は素直に感心した。

 確かにそれなら効率がいいし、今回は隠す人の特徴も分かっているからやりやすい。

 

 よし、じゃあ早速……

 僕はそう、頭の中を整理して行った……

 

 

 ……まず、今回の隠す人はありす。

 とりあえず思いつく特徴を、適当に箇条書きしていくと、

 

 ・子供

 ・白い

 ・純粋

 ・小さい

 ・女の子

 ・絵本

 ・童話

 ・無垢

 ・ちょっとイタズラ好き

 ・笑顔

 

 っと、パッと思いつくのはコレくらいかな?

 で、今度は僕……正確には、ありすから見た僕のイメージを想像すればいいから……

 

 ・学ラン

 ・木刀

 ・男

 ・先生に似てる

 ・クッキーくれた人

 ・字が読めない

 ・頭が悪い

 ・バカなお兄ちゃん

 ・半分だけ同じ

 

 ……あれ、何かいくつか、涙がでてきた、よ?

 

 僕は何故か湧き出た悲しみを必死に押さえ、ここからレオの言う通りに考えて行く。

 

 この特徴のありすから見て、このイメージの僕に対し、簡単に見つけづらいと思い、なおかる僕がまだ探していない場所……

 

 

 

 

 

「————————あ。分かった、かも」

 

 その考えに至ったとたん、僕は思わずそう呟く。

 

「うん、そうだ、そうだよ、そうなんだ! こんな簡単な事を見逃していた!! あそこなら絶対僕に見つからないし、現に僕は一度も探していない!!」

 

 言葉を吐いていくうちに、自分で立てたその仮説が真実だとますます思えて来た。

 うん、絶対そうだ!

 

「参考になりましたか?」

「うん! すっごくなったよ! ありがとう、早速探してくる!!」

「ええ、頑張って下さい」

 

 そう僕はハイテンションのままレオと分かれ、意気揚々とその仮説の場所に向かって行った……

 

 

 

 ★☆★

 

 

 さらに一時間後……

 

 

「うー……困りましたね……」

 

 手に持っている4本の鍵を見ながら、私はそう呟く。

 これは、後半になってから新たに見つけた物だった。

 明らかに前半に比べて、鍵を見つけるペースが落ちている……

 残りの鍵は半数以上の筈なのに、これじゃあ一向に終わる気配が見つからない。

 

「もしかしたら、あの二人の担当箇所に多めにあるのかもしれませんけど……そう楽観視出来ませんよねえ」

 

 実際はこの時点でご主人様が残っていた半分以上を所持していたりするのだが、当然そんな事に私が気づける筈も無く……

 そのまま悩みを呟きながら、私は廊下を歩いていた。

 

「一応、隅々まで探した筈だし……やっぱり、残りも誰かに拾われちゃってるんでしょうかね?」

 

 となると、また聞き込みしか無い。

 あれから数時間経ってるし、もしかしたらさっき貰ったばかりの人がまた拾っている可能性もある。

 もしそうなら、また片っ端から全員に聞き直しという事になりますねー……

 そう多少鬱になりながらも、まあするしかないかーと気を改めて取りかかろうとして……

 

 

「……おや、キャスターですか?」

「って、ラニさんじゃありませんか?」

 

 いつの間にか、目の前にラニさんが立っていた。

 相変わらずの無表情で平常運転ですねー。

 

「お久しぶりです。……といっても、つい最近購買で会ったばかりですが」

「そうですね。そういえば結構楽しかったですねーあの女子会。正直またやりたいですねー♪」

 

 なにより、“タダで飲み放題”って言うのがいい(青タイツのバイト代だけど)。

 たまには何も考えず、息抜きも大事ですからねー。

 

「そういえば、腕輪のコピーの作成の件なのですが……」

「ああ、材料が足りなくてすぐには渡せないーってアレですね。もう全部集まったんですか?」

「いえ、全体の約7割程と言った所ですね。ですが、このペースなら全て集まるのは最低でも決戦日直前には渡せると思います。何の問題も無ければ、ですが」

「いえ、それで大丈夫です。ありがとうございます、あの腕輪結構便利ですからねー」

 

 まあそのせいで、RPG系のお約束のごとく序盤から没収扱いされたんですけど。

 

「ところで珍しいですね、一階にいるなんて? いつもは大抵三階でお会いしますのに」

「つい先ほど食堂で食事を済ませ、たった今戻ろうとしていたので」

「あら? でももう結構遅い時間じゃありません? 忙しかったんですか?」

「いえ、特に用事があった訳では無いんですが…………“食堂に鬼が出た”との噂があったので」

「鬼?」

 

 鬼ってあの、日本の妖怪の類いの一つの?

 まあ、私も一応その一つなんですけど。

 

「ええ。なんでも、その姿はまさしく鬼神の様、その咆哮は雷鳴の如く……とにかく、碌な噂じゃありません。それで、出来るだけ関わり合いにならないようわざわざ時間をずらして、食事をとっていた訳なのですが……」

「ん〜、でもそれって多分、サーヴァントかなにかですよね? そんなに分かりやすいなら、一目見て情報を取って来ても良かったんじゃ……」

 

 多少の危険は伴うかもしれませんが、ラニさんほどのウィザードならそう簡単にはやられたりしないでしょうし。

 もしそれが本当に鬼と呼ばれるものなら、それを確かめられればメジャーな存在な分、有効な対抗策などいくらでも打てるようになりますからね。

 

「……まあ、実際は恐らく……」

「はい?」

「……いえ、何でもありません。同じ日本のことわざに、触らぬ神に祟りなしともいいますし」

 

 ……? 一体なんでしょうか?

 ラニさんは、既にその鬼の正体に気づいている?

 

「ところでキャスター。先ほど、何やら悩んでいる雰囲気でしたが、そちらこそどうしたのですか? 何と言うか……あなたらしくありませんでした」

「あー、実はちょっと探し物してるんですけど、それの経過が芳しく無いっていうか……」

「探し物……もしかして、その手に持っている小さな鍵の事ですか?」

「ええ、そうです」

 

 ほんと、このままじゃヤバいですよね……

 もしあまり成果を上げられなかったとしたら……うわっセイバーのドヤ顔がはっきりと想像出来るんですけど!?

 

「それなら、それと同一の存在と言える物を私も所持していますが……」

「っへ? マジですか!?」

 

 そう言ってラニさんは端末を操作していき、しばらくすると、彼女の開いている手のひらにいくつか小さな鍵が現れた!

 

「はい。つい先ほど計11本の鍵を拾っていたのですが、良ければお渡しします」

「本当ですか!? うわ、本当に助かります!」

 

 ラニさん太っ腹〜! スッゲー感謝です!

 これでセイバーのドヤ顔を見なくて済みます!

 

「いや、ほんとラッキー♪ とりあえずこれで、ご主人様に顔向けは出来そうですねー」

「……そういえば、その吉井さんなのですが……キャスターはどう思っているのですか?」

 

 へ? どうって?

 いきなり変な質問ですねー?

 う〜ん……もしかしてこれは、私とご主人様の仲の事を聞いて来てる!?

 

「そうですねー。ご主人様は見た目ちょーっと頭が軽そうな人に見えますけどー、ここぞというときにはすっごく頼りになりますしー、もうあの魂のイケメン度は何百年、何千年ものレア物と言いますか〜」

「いえ、あの、そう言う事では無く……」

「むー、じゃあ何ですか?」

 

 一体何を聞きたいんですか?

 正直あの質問だと、そういう事を聞いているようにしか思えないんですけど。

 

「……やはり、聞いていないのですか?」

「何がですか?」

 

 その時のラニさんの目が、何故か微妙にハイライトが無かった。

 

「実は、つい先ほど……」

 

 

 ★☆★

 

 

 ほぼ同時刻。

 

「ッ……ハアッ……ハアッ……ッ! なん……だ、アレは……ッ!?」

 

 グランド横の、小さな倉庫の中。 そこに余はいた。

 いや……正確には、隠れていた。

 

 “アレ”から逃れる為に

 

「あんな、の……っ余は、知らぬッ!」

 

 なんだアレは/いつかのアレだ

 あんなの知らない/余は知っている

 知っている筈が無い/知らない筈が無い

 

 頭の中で、いくつもの言葉が浮かんでは消えていく。

 自分の息が、時が経つに連れ、落ち着くどころか、さらに乱れていっているのが分かる。

 それほどまでに、アレを見つけた時、余は驚愕していた。

 

 狭い室内の中、チャリッと音が鳴り響く。

 心臓が一瞬止まりかけながら、その音の発生場所に恐る恐る目を向けた。

 そこには、小さな鍵が5本落ちていた。余が、自分で探して見つけた物だ。

 そうだ、余は思ったより探索が進まず、成果を得ようと先走り……ソコで見つけたのが、アレだった。

 

「何故だ……何故、こうなって……」

 

 余はただ、もっともっと鍵を見つけ、もっともっと奏者に褒めてもらおうと頑張ろうとして……

 ただ、それだけだったのに……

 

 なのに、どうして……

 

 

 

 

 

『バンッ!!!』

 

 

 

 

「キャアッ!!?」

 

 突如、扉に大きな衝撃が起こった。

 それに驚き、余はまるで小さな生娘のような悲鳴を上げてしまった。

 いや、まるでじゃない……“実際、今はそうだった”

 

「く、来るな……来ないでくれぇ……っ」

 

 小さな子が泣きじゃくるように、

 ただその場で喚いているだけのように、

 余はその場から一歩も動く事も出来なかった。

 

 本来の自分なら、こんな事にはならなかった筈だ。

 本当の自分なら、意気揚々と扉の向こうのアレに立ち向かっていった筈だ。

 

 けど、今の余じゃ出来ない……

 本来の力を出せず、文字通りそこらの生娘とほぼ変わらない力しか持っていない今じゃ、到底扉の向こうのアレには敵わない。

 今の余は、無力だ。

 

 

『バンッ! バンッ!!』

 

 

 さらに衝撃が続く。今度は二回連続。

 もはやこの扉が破られるのは時間の問題だった。

 

「奏者ぁ……キャスター…………助けて、くれ……」

 

 迫り来る恐怖の前に呟いたのは、心から親しかった友。

 大切な、大切だった友達。

 最早、会う事も敵わないのか。

 否定したくても、扉の向こうの存在がそれを許さない。

 

 

 

 そして到頭、その時が来た。

 

 

 ————ョ…………ィ……———————

 

「あ……あ……ッ」

 

 ギイ、ィ……と重い音を立てながら、開かれていく扉。

 最早もう、アレを阻む障害は無くなってしまった。

 開かれていく扉の隙間から、アレの容姿の一部が目に入ってくる。

 

 ソレは妖怪だった。

 ソレは鬼神だった。

 ソレは魔王だった。

 

 ソレは恐れだった。

 ソレは恐怖だった。

 ソレは絶望だった。

 

 最早、認識が出来ない。

 目が、頭が、それを理解する事を放棄している。

 信じられなかった。信じたく無かった。

 かつてのアレが、こうなってしまったなど、分かる筈が無い……ッ

 

 

「あ……————————っ」

 

 

 そしてソレは、扉を全力で開く————————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヨオオオオオオオオオオォォォォォォォォォオォォォォォォォォォォォシイイイイイイィィィィィィィイィィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッィィィィイィィィィィィィィイィィィィィィッッッ!!!!!!!!」

 

「うあああああああああああぁあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁあッッッ!!!??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ————————赤いアクマ……………バーサーカー化した『遠坂凛』が登場した

 

 

 

 

 

 

 

 

 ★☆★

 

 

 

「よ、よしよーし…………もう大丈夫ですからね〜」

「うっ……うう…………グスッ…………」

 

 

 校舎玄関前。

 あれから余は、凛と瑞希に連れられここに移動されて来た。

 その後、瑞希の胸の中でしばらく泣いていたのは言うまでもない。

 

「もう、凛ちゃん! 完全に泣いちゃってるじゃないですか! 少しは反省して下さい!」

「し、仕方ないじゃない! だって、こっちの姿を見たと思ったら一目散に逃げて行ったのよ!? どう見ても吉井かと思うじゃない!」

「あの姿を見たら、吉井君じゃなくても誰でも逃げると思うんですけど……」

 

 瑞希の言葉に、凄く共感する。

 英霊の余でさえあの恐怖だったのだ、マスター側からすればそれはもう威脅の塊にしか見えなかっただろう。

 それが知ってる知人だったとしたら、余のように尚更。

 

「だ、大体、そんなに泣く事無いじゃない! あなたサーヴァントなんでしょ!?」

「サーヴァントでもあれは恐怖しかなかったぞ!? そっちこそマスターの癖に何だあの怖さ!!」

 

 実際、それほどのレベルの恐怖だった。

 もうそこらのサーヴァントじゃ比較にならない程に。

 というか、ウィザードにも関わらずアレ程の威脅を感じさせるとは、実は人間止めておるのかと疑う。

 凛を涙目でう〜っと睨みながら、瑞希がヨシヨシとあやし続けてくれていた。

 

「ほ、ほら。もう本当に大丈夫ですから、ね? ……そう言えば、さっき倉庫に落ちていたこの鍵ってセイバーさんのですか?」

「あ、うむ、そうだ……それを探しておったのだ」

 

 瑞希が渡して来てくれたそれを受け取りながら、余は礼の言葉を言った。

 うう……本当に何故余がこんな目に……

 ……というか、元はと言えば、紅茶達のせいではないか? 

 むう〜、そう考えると段々腹が立って来たぞ……

 

「それなら、それと同じ物を私達も拾っていたんですけど……」

「何、真か!?」

「はい。そうですよね、凛ちゃん」

「え、ええ。私が9本で、瑞希が7本だったっけ? 何の鍵かは分からなくて、一応取っておいたのだけど……何、コレが必要なの?」

 

 その言葉に、余はコクコクとうなずく。

 

「そう……じゃあ、これあげるわ。まあ、結構怖がらせちゃったみたいだし、お詫びといっちゃ何だけど……」

「私も持っている分差し上げます。私達が持っていても、あまり意味が無さそうですし」

「す、済まぬ……! 礼を言うぞ、二人とも!」

 

 二人から差し出されたそれを、余は受け取る。

 コレで余の持っていた分と会わせて22本! 一気に集まった!

 余は喜びながら、それを大切に仕舞う。

 

「ふう……それにしても凛、そなたは何故あれほど怒っておったのだ? どう見ても、尋常じゃない怒りようだったぞ……」

「べ、別にそんなに怒ってた訳じゃ……」

「アレで怒って無いと申すなら、この世全ての人類は聖人君子しかおらぬわっ!?」

「あー……まあ、いろいろ重なっちゃってましたからね……」

 

 正直に話さない凛の代わりに、瑞希がそう切り出して来た。

 重なる?

 

「えと……ほら、まずこの間の購買の件で」

「あー……アレか」

「な、何よ! 文句ある!?」

 

 あるも何も、アレは駄目であろう……余ですらそう思うのだぞ。

 そう言えば結局、うやむやになったまま失敗に終わったのであったか?

 

「次に、その時に別の場所で明久君が襲われた件……」

「ああー……いつものツンデレか」

「だからツンデレ言うなッ!!」

 

 余も後で聞いた時、取り乱した奴か……

 結局また、奏者のピンチに何の役にも立てなかった……

 それにしても、相変わらず奏者の心配してくれていたのだな。流石と言うべきだな。

 

 

「で……三つ目、何ですけど……ッ」

「み、瑞希……?」

 

 何故か最後の三つ目を言おうとしたとき、瑞希の様子が少しおかしくなった。

 なんと言うか……爆発しそうなものを、無理矢理押さえ込んでるみたいな?

 

「ていうか、私ばっか怒ってるって言ってたけど、実際は瑞希も一緒になって怒り狂いそうになっていたじゃない」

「ぅえっ!!?」

 

 凛のその言葉を聞き、余は瑞希から距離をとっさに取る。

 み、瑞希……? そなたも、なのか……!?

 

「違います! これは、その……流石に二人とも暴走するのは不味いかなーって自重してただけで……」

「自重って!?」

 

 それはもう完全に瑞希も怒ってたって事ではないか!?

 あれ、もしかしてここ安全圏一切無いのか!?

 そんな事になるなんて、一体二人に何があったというのだ!?

 

「あー……実は三つ目は、さっき聞いて事なんですけど……」

「う、む……っ」

「その、吉井君が————————」

 

 

 

 

 

 

 

 ★☆★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「————で、“女子トイレに侵入した件”についてだが」

 

「ただの探索だったんです……」

 

 

 

 

 ——生徒指導室。

 

 吉井明久、ただ今神父から説教中。

 

 

 

 

 

 

 

【集めた鍵の本数 171/172】

 

 

 

 

 

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