Fate/Extra Summon (バカテス*Fate/Extraクロス) 作:新月
「ていうか、姫路さん!? 今まで何処行ってたのさ!?」
改めて僕は、ここに来てから誰よりも会いたかった人……姫路さんと向かい合った。
本当に、良かった……姫路さんが無事だと言う事を知って、何よりも安心した。
……まあ、一緒に明確な死と隣りあわせで来たときは、正直複雑だったけど……
ちなみにあのオムライスは、姫路さんが目を話した隙に、たまたま近くにいたワカメの栄養分にしておいた。
おかげでワカメも栄養が取れて、すくすく育っていくだろう、まさに一石二鳥。
ちなみに昨日の今日で行動がおかしくない? と思っているのは多分気のせいだ。
「え? 何処にって、普通に授業を受けていたんですけど……」
「いや、授業って……あんな突っ込みだらけの空間にいたら、体が持たなくなるよ」
ワカメにトラに王子に冷徹に、一クラスだけでこんなに突っ込み待ち満載だらけなんだよ。
正直、ある意味Fクラスより濃い面子で集まってるんだけど……
「けど、授業をサボるのは良くないと思いますよ。私たちは学生なんですし……」
「いや、姫路さん。サボる以前に、この学校はおかしいじゃないか。いろいろ訳が分からないし」
ほんと、訳が分かんないよこの世界は。
いくら現実味が無い世界だからといって、これは流石に……
そう僕は思っていたんだけど……
「……? 何がおかしいんですか?」
「……へ?」
考えてみたら、僕と姫路さんの会話は微妙に合っていなかったんだ。
「あ、明久君。そういえば私はこの後、新聞部の方で取材に行かなくては行けないので、そろそろ行かないと」
姫路さんは、この“いつもどうり”の学校生活を続けている。
「ほら、其処の掲示板に貼ってあるじゃないですか。それ、新聞部で作った奴なんですよ」
そう、彼女は今まで気づいていなかったんだ。
「それじゃあ、私は弓道場の方に見に行かないと。明久君も授業をサボってはいけませんよ。私たちは――――――
――――“月海原学園の生徒ですから”
この偽りの世界に、いつの間にかいた事に―――――っ!!
「姫路さんっ!!」
「ふぇっ!?」
僕は姫路さんの両肩を掴み引きとめた。
君は何故か気づいていなかったんだ!
僕達がこの知らない学校の生徒にされていたことに!!
「あ、あの。明久君、顔が近いです……」
何か姫路さんが場違いな事を言ってるけど、今はそれどころじゃない。
「姫路さん、よく聞いて。僕達の通っていた高校って何処?」
「え? 何を言ってるんですか……? この月海原学園ですよね……?」
やっぱり姫路さんも記憶を無くしている。
思えば、慎二とか他の人達も、何故か僕の事を前からの友達のように話しかけて来ていた。
何人かの人が、そうおかしな事を実際の事と思い込まされていた――――
「違うよ、姫路さん! 僕達は文月学園だ!! この月海原じゃない!」
「文……月……?」
文月学園という名を聞くと、姫路さんは何かが引っかかったように、少しボーっとした様子になった。
「そうだよ……雄二に美波、秀吉やムッツリーニ! Fクラスで皆と一緒に通っていたじゃないか!」
「みん、な……うぁっ!?」
「姫路さん!?」
そう呟くと、姫路さんは急に頭を抱えてその場にしゃがみ込んでしまった。
「う、ア……視界が、まるでノイズで埋められて……頭が……」
「姫路さん、落ち着いて! 思い出すんだ、本当の僕達の居た所を!!」
その視界のノイズには覚えがある。
僕もこの学園に来たばかりの頃、この世界に現実味が無いという事に気づく前に、同じ症状になっていた。
多分、これは記憶が戻る前兆に―――――
「――――――あ。思い、だした……」
「姫路さん!」
「そうです……私は……
“私には、アキちゃんを№1ネットアイドルにプロデュースするという、使命が”――――――」
「姫路さん、落ち着いて!? 忘れるんだ、今考えた事を!!」
「明久君、さっきといってる事が変わってませんか?」
「どうでもいいからそんな事!?」
それから姫路さんを正気に戻すのに、小一時間ほどかかってしまったんだ……
★☆★
「あ、はい。ちゃんと思い出せました」
「本当に? 姫路さん本当だよね? 本当に本当だよね??」
「は、はい。本当に大丈夫ですから……」
はあ~よかった……
危うく姫路さんが、別の偽りの記憶を真実だと思い込むところだったよ。
というか、さっきのは一生忘れたままにして欲しい。
「改めて考えてみますと、この学園って一体……」
「正直、僕にも分からないよ。現実感がまるで無いっていうくらいしか……」
正気に戻った姫路さんと、この学園について互いの意見を交換してみる。
けど、さっき記憶が戻ったばかりの姫路さんじゃ、やはりたいした情報も持っていないみたい。
それに……姫路さんは、まだ人が死んでいたという事に気が付いていないみたいだ……
やっぱり、伝えたほうがいいよね……
「あ! そういえば、さっき言った掲示板に何かあるかも知れませんね」
掲示板?
そういえば確かに、新聞部が記事を作って貼ってたって、言ってたっけ。
もしかしたら、僕達以外にこの学園の異常に気づいた人が、何か書いてあるかもしれない。
「確か、その新聞って……ん?」
掲示板でその新聞を捜そうとしたら、何故か僕は端っこの方に貼ってあった紙の方に目が行った。
それは白い紙に、赤い色の文字で書かれていて少し不気味に思えた。
「あ! それです、それが新聞部で書いていた新聞のはずで……?」
姫路さんの説明を聞きながら、僕はその紙を読み進めていくと……
【月海原学園新聞 最終号】
“怪奇 視界を覆うノイズ”
学園内に残った全ての生徒にお知らせデス。
予選期間は、もうすぐ終わります。
早く真実を見つけ出して、
きちんとお家に帰りましょう。
さもないと――――――
“一生、何処にも帰れません”
「――――――っっ!?」
これを見た瞬間、僕はすぐ悟ったんだ。
これは悪戯でも、脅しでもない。
急がないと、本当に取り返しがつかなくなるんだってことに――――っ!!
「あの、これって……?」
「姫路さん急いでっ!!」
「へっ!? あ、明久君!?」
状況を説明する時間も惜しい。
僕は自体を把握仕切れていない姫路さんの手を握り、急いでその場から走り出した。
「明久君! 何処に行くんですか!?」
「とにかく、じっとは出来ないんだ!! このままここにいたら……!!」
くそっ! 急がないといけないっていう事は分かってるのに!
まるで暗闇の中を手探りで歩いているかのようで、具体的に何をするべきなのかが思いつかない……!!
多分真実って言うのは、この現実味の無い世界の事で間違いない。
だったらそれを知って、何をすればいい?
お家に帰ろうって言うのは、多分この世界からの脱出ってこと。
なら、この世界から出るためには何をしたらいい?
ここまでは考えれたのに、その手がかりが……!!
「―---っ!! そうだ、レオ!?」
「レオ……?」
レオだったら、もしかしたら具体的なやる事を知ってるかもしれない!
正直会いに行くのは危険だと思うけど、この際そんな事言ってられない!
とにかく近くにいる人に、レオの居場所を……
「あれ~☆吉井君どうしたの、そんなに急いで? 何かあったなら先生に相d」
「あっ! ちょっと其処の男子生徒!!」
「こらあーーー!! 先生を無視すんなーーーー!!」
★☆★
「階段から降りて、一階に行ったって……」
途中廊下ですれ違った男子生徒にレオの居場所を聞いて、一階に来たけど……
「もう帰っちゃったんじゃないでしょうか……もう、遅い時間ですし」
「確かに、そうだよね……」
普通、ここに居続ける事が危険だって気づいたなら、そのまま留まる人なんて居ないだろう。
もうとっくにこの世界から脱出しててもおかしくない。
そう考えていたけど……
「ああ。まだ残っていたんですか」
「レオ!?」
どうやら僕の心配事は、杞憂だったようだ。
わざわざ向こうから会いに来てくれて、探す手間が省けた!
「そちらの方は?」
「あ、えっと……姫路瑞希といいます」
「姫路さんですか。僕は、レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイ。レオと呼んで下さい」
「あ、はい」
そう言って、レオは僕の方に向き直った。
その顔は変わらず、見た者全てを魅了するような笑顔だった。
……今まさにFFF団を呼びたいとずれた感想をもったが、とりあえず置いておこう。
「なるほど……彼女を助けるために、既に脱却を果たしていたにも関わらず、校内に残っていたというわけですか」
「まあね……」
実際は半分だけ正解。
姫路さんを探したのは本当だけど、校内から出る方法は分からなかったからね。
「予選期間ぎりぎりまであなたが探すほどの人とは……彼女とは付き合っているのですか?」
「は、はい!?」
隣で姫路さんがものすごく驚いているのが分かった。
な、なんてことを言うんだこのイケメンは!?
姫路さんが僕と付き合っていると勘違いされて困ってるじゃないか!
僕としては正直嬉しいけどね!
「ほほえましい限りです。予選期間も、もう残り時間はあとわずか。恐らく、僕とあなた達が最後の本戦出場者になるでしょう」
本戦? 気になる言葉が出てきたが、レオはそう言うと踵を返して僕達に背を向けた。
「では、先に行きますね。あなた達に幸運を」
そう言ってレオは、一階の廊下の奥に進んで行った。
僕達は、その場からすぐには動けなかった。
「明久君……」
隣で姫路さんが不安そうな顔で僕の方を見ていた。
多分姫路さんは、この先何が起こるのか嫌な予感がしているんだろう。
でも……
「進もう、姫路さん」
ここまで来たら、もう後戻りは出来そうに無い。
ただ一つ。懸念材料があるとすれば、雄二らしき人物がどうなったかが分からない、という事だ。
レオの言った事が本当なら、恐らくこれ以上校内に残り、探す事も出来そうも無い。
まだ校内に居るのか、それとも……あの男に消されてしまったのか。
考えれば考えるほど、マイナスな方向に思考が行く。
それでも……
「進むしかない」
雄二ならきっと大丈夫だろう。
もう既に脱出している……そう、信じるしかない。
「……! はいっ!」
そう言って、姫路さんと僕はレオが向かった方向に走って行った。
★☆★
「ここ……って行き止まり、ですよね……?」
廊下の突き当たりに着いて、姫路さんがそう呟いた。
確かに一見、何の変哲も無い壁しかない空間だけど……
「いや、違うよ……」
僕はそう言って、目の前の壁に片手で触ってみた。
確固とした違和感を自覚しながら。
「っ!? 扉が……!?」
僕が触った瞬間、其処にはっきりと今まで無かった扉が現れた。
いや、違う……僕達が見えてなかっただけだったんだ。
「姫路さん……準備はいい?」
僕は扉に手をつけたまま、そう確認する。
姫路さんは決心した顔で、こくりと頷いた。
「じゃあ、いくよ!!」
僕は扉の取っ手を掴んで、思いっきり扉を押して――――――
ガチャガチャっ
開かなかった。
「……明久君。それって、もしかして引いて開けるんじゃ……」
何で最後締まらないかな!?
★☆★
「ここは……物置、かな?」
扉を開けた先は、物置き場のような場所だった。
奥の方の壁が、まるで異世界に通じているようにぽっかりと開いていた。
けど、それ以前に気になったのは……
「この大きな人形は何でしょうか?」
僕達の目の前に、大きなのっぺらぼうのような人形が二体立っていた。
赤い線で模様が入ってるだけで、表情も何も無く不気味に見えた。
「っ!? 動いた!?」
そう思っていたら、その二体の人形は動き出し、僕達の背後に回った。
何かしてくるのかと思ったけど、予想に反し何もしてこなくて、まるで僕達に従っているようだった。
「連れて行け……という事でしょうか?」
「多分そう……かな」
この人形達に、どんな意味があるのかは分からない。
けど、どの道進むしかないのは変わりない。
「さあ、行こう!」
僕達は、そう決心して目の前の開いている壁の中に入っていった。
★☆★
「ここ……は……?」
壁の穴を潜り抜けると、変な空間にでた。
透明な四角の面を床と壁に敷き詰めて出来たような場所で、まるで深海の中の世界にいるようだった。
壁の向こうを覗いてみると、何かの化石のようなものや、底の方に沢山の剣が刺さっているのが見えた。
「これじゃあ、まるで墓場じゃないか……」
そう呼ぶに相応しいと思った。
僕以外に生命のいる気配の無い空間だったから。
……僕以外?
「あれ!? 姫路さんは!?」
気が付いたら、確かに隣にいたはずの姫路さんが居なくなってる!?
何でまた!? 今度は特に実験の時みたいな状況にはなっていなかったのに!
『ようこそ、新たなマスター候補よ』
「っ!? だれ!?」
僕がうろたえていると、突然謎の声が響いてきた。
僕の周りには、人形以外には誰も居ない……空から声が降ってきているようだった。
『君が答えを知りたいなら、まずはゴールを目指すがいい。』
「いきなり何いってんのさ!! それより、姫路さんは何処にいったの!!」
この声の正体は分からない。
けどこのタイミングで話しかけてきたなら、恐らくこの世界について何か知ってる関係者のはず。
なら、僕と姫路さんがまた別れた原因をしってるかもしれない!
『残念ながら、この最後の試験は一人ずつ挑戦してもらうものでね。彼女とは分断させてもらったよ』
何勝手な事してんのさこの野郎!
もし目の前にいたなら絶対殴ってたのに!!
『彼女と再会したいのなら、この試験を抜ければいい。さあ、足を進めたまえ』
「くっ……!」
正直この声の言う事を聞くのは癪だけど、今は言うとおりにするしかない、か。
そう思いながら、僕はその空間を進んで行った。
そして僕はこのあと、運命の出会いを果たしたんだ。
いよいよ次回、明久のサーヴァントが登場です!