Fate/Extra Summon (バカテス*Fate/Extraクロス)   作:新月

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三週間ぶりの更新。
待たせてしまってごめんなさい。


名無しの森

「「何やってんの奏者/ご主人様アアアアアアアアアアアアアアあああああああッ!!!??」」

 

「ゴメンなさい……」

 

 開幕早々、セイバーとキャスターのダブルツッコミが土下座している僕に降り掛かった。

 ……生徒指導室から解放されて二時間。

 折角言峰神父からの愉悦の混じった注意を受け終わったのに、今度はそのまま二人の説教を受ける事になってしまった……

 

「本当に、一体どこで間違えてしまったんだろう……」

「いや、どこでも何も普通に女子トイレ侵入した部分からですよね?」

 

 現実逃避をしようとしている僕に、事実という言葉のトゲを冷たい目で放つキャスター。

 胸が凄く痛い。

 

「余が……余が、あれほど恐ろしい目にあってまで頑張ったというのに……っ」

「あーうん……何となく想像つくよ、本当にゴメン……」

「想像つくだとおっ!? いや、奏者は絶対分かっておらん!! あの恐怖の権化となった凛は直接見た者にしかっ」

 

 そして涙目で訴える、知らない間にトラウマが追加されていたセイバー。

 一体何をしたというんだ遠坂さん。

 

「ていうか、女子専用の場所調べるんだったら自分で行かずに私達に頼めばいい事じゃないですか!?」

「いやあ、正直振り返ってみると、我ながらあの時浮かれてて冷静じゃなかったような……」

「浮かれる!? 奏者、そなたまさか意気揚々と分かった上で入ったと申すのかぁっ!!?」

「あ、いや、違っ」

「「シャラァップ!!!」」

 

 あ、駄目だ、完全に話を聞いてくれない。

 というかむしろ、何故か話せば話す程変に土つぼに嵌っていってる気がする……

 

「ほ、ホラ、そんな事より集めた鍵を確認しようよ! ちなみに僕は結構集まったんだけど、二人は?」

「くぅっ! 話をはぐらかされた上に、何気に一番集めていらっしゃるのでこれ以上突っ込み出来ない!?」

「むぅー。奏者が探索していた時間は、余やキャスターより短かったというのに、何故こんなに差が付いてしまったのだ……」

 

 あはは……

 まあ殆どレオの貰い物なんだけど、黙っておこう……

 

「はあ、しょうがないですね……とりあえずこの件は保留にしとくとして、とにかく前半見つけた鍵と合わせて、ひーふーみー……」

 

 あれ、やっぱり見逃してくれない……?

 そう冷や汗を流す僕を横に、キャスターは山積みとなった鍵を一本一本数えていく。

 

「けど、改めてこうしてみると、本当に大量だね。もう全部集まっちゃったかな?」

「だと良いのだが……それにしても奏者よ、瑞希と凛は本当に心配しておったぞ。……それはもう、余が恐怖を覚える程に……後で顔を見せに行って来た方が良いのではないか?」

「いや、セイバーの話を聞いて逆に行くに行けなくなっちゃったんだけど……むしろ今行ったら、僕が悲惨な事に……」

 

「あれ……?」

 

 と、セイバーと軽い話をしているうちに、キャスターのそんな声が聞こえて来た。

 

「ん? どうしたのキャスター?」

「いえ、ちょっと……数え間違いかしら? ひーふーみー……」

「まさか、まだかなり残っていると申すのか!?」

「あーいえ、そうじゃないですけど……むしろニアピン賞というか……」

 

 そうしてまた、数え直し始めてしばらく時間が経ち……

 

 

「……やっぱり、“後1本足りません”」

 

「え!?」

 

 苦い表情で言うキャスターのその言葉に、僕達は驚く。

 まさか、最後の一本……

 

「これはまた面倒だ……余が生前に芸術的な作品を集めた時の経験だが、こういうのは後数個といった所で中々それが見つからなくなってな……」

「ええ、そうですね。ここまでくると、もう取り逃しを探す為にまた全部の箇所を片っ端から探し直すハメになったりとか……」

「うわぁ、それゲームで経験あるよ……」

 

 とくにRPGとかで図鑑とか埋める時に、なかなかコンプ率100%いかない時とか……

 あれって、結構のめり込まないとやってられなくなるんだよね……

 

「けど、どうしようか……」

 

 また一から探し直しなのかなー……

 はあ、憂鬱だ……

 

 

 

「すっごーい! お兄ちゃん達、全部見つけちゃったんだ!」

 

 

「へ?」

 

 そんなナーバスな気分になっている時、ふと離れた場所からそんな声が聞こえた。

 っていうかこの声ってもう、

 

「ビックリだね、アリス!」

「ええ、ホントビックリ。まさかこんなに早く見つける何て思わなかったわ」

「あーっ!? さっきのロリッ子ズ!!」

 

 予想通り、ありすとアリスがいた。

 毎度思うけど、本当に神出鬼没だよね……

 

「む? 知り合いなのか?」

「知り合いも何も、私達の三回戦の対戦相手! そして、鍵をバラバラ隠した張本人ですよ!!」

「何!! あの“お持ち帰りしたい程”可愛らしいロリ達がか!?」

 

 ……身内の犯罪者宣言的なものは置いとくとして、

 

「ありす、全部って? 僕達あと一本足りない筈なんだけど……まさか!」

「うん! ホラ!」

 

 そう言ってありすは、疑問に答えるように懐から“最後の鍵”を出す。

 やっぱり……!

 

「言ったでしょ。最後はあたし達と追いかけっこ。あたしを捕まえたら、コレを渡して上げる」

「へえ……そういう事ですか」

「うむ、下手に探す手間が省けたな」

 

 セイバーとキャスターは思わぬ事で早く終わりそうになって、急にヤル気を出す。

 けれど、逆に僕は少し不安があった。

 確か、ありすって……

 

 

「じゃあ、いっくよー! よーい、ドンッ!!」

 

 

 ……そう言った直後、いつかようにありす達は消えた。

 

 

「え、なっ!? 消えただとッ!?」

「くっ!? そういえばあのロリ二人にはコレがあったんでした!!」

「一体どこに……」

「あッ!? 奏者、あそこだ!!」

 

 セイバーが指差した方向で、わざわざ自分たちの居場所を教えるように、ありすとアリスが手を振っていた。

 僕達が見つけたのに気づくと、キャッキャと何処かに走って行った。

 

「やばッ! 完全に見失っちゃう!」

「あの方角って、確かアリーナですよね?」

「舞台変更、という訳か……うむ! 面白い、乗ってやろうではないか!」

 

 そう言いながら、僕達はアリス達を追いかけて行った……

 

 

 

 ★☆★

 

 

「とりあえず、アリーナまで来たはいいけど……」

「むう……あのロリ二人、一体何処に隠れたのだ?」

 

 アリーナの通路は、相変わらずの殺風景で遮蔽物などはエネミー以外、殆ど無い。

 だから、ちょっと見渡すだけですぐ見つかると思ったんだけど……

 既に結構奥まで来たのに、ありす達の姿が欠片も見当たらない。

 

「アリーナの扉を開ける瞬間は見ているので、ここにいるのは間違いない筈です。あの転移がどれくらいの距離を移動出来るのかは分かりませんけど、今までの例を考えるとまだそう遠くへは言っていない筈……」

「うーん……もう少し奥まで行った方がいいのかなあ」

「しかし、それにしてもあの幼女達の転移……何故あのような芸当ができ……ん?」

 

 隣を歩いていたセイバーが、急にその場で立ち止まる。

 

「どうしたの、セイバー?」

「何か、落ちて……? コレは……紙? あの幼女達のか?」

 

 そう言ってセイバーがハイッと渡して来たそれは、何かのメモの切れ端のようだった。

 書かれているのは……英語?

 

「そう言えば、先ほど校舎の方でも私が拾いましたよね? これも、あのロリ達の落とし物でしょうか?」

「多分そうなんじゃないかな? けど、キャスターの拾った奴とは違って、こっちは只の短い英文っぽいけど……」

「ふむ、何てかいてあるのだ?」

 

「えーっと……————What's your name?————だって」

 

 ……えーと、どういう事?

 

「和訳にすると、“あなたのお名前は何ですか?” ですけど……」

「うん? 余の名はネ」

「真名喋んなバカッ!?」

「ハッ!? しまった、つい……まさか、これはあの幼女達の罠か!?」

「うん、違うと思う」

 

 けど、本当にどういう事なんだろう?

 こんなメモわざわざ書く何て、一体何の意味が……

 

 

 

 

 ————ここでは、鳥はただの鳥。

 

 

 

「っ! ありすの声!?」

 

 

 

 ————ここでは、人は只の人。

 

 

 

「ぬう!? 一体どこから……!」

 

 

 

 ——————“ようこそありすのお茶会へ!”——————

 

 

 

 ……その声を聞き終えると同時に、世界が変わっていった……!

 まるで絵を上書きしていくかのように、辺りに木々や草原が広がっていく。

 本来なら暖かみを出す筈のソレ等は、実際には不安、恐怖などしか感じられない、不気味な森……っ!!

 

 

「まさか、“固有結界”と来ましたか……っ!!」

「え、なっ、何それ!?」

「術者の心象風景を現実世界に投影し、世界を変えてしまう結界……最も魔法に近いと言われる大魔術の一つです!!」

「要はもの凄い術なんだね!?」

「ご主人様!? 全然分かってないですねっ!?」

 

 とにかく、キャスターの言うそのとんでもない魔術を、ありす達が使ったって言う事!?

 正直、あの二人の容姿からじゃその凄さがイマイチ実感出来ないけど……

 

「むぅ……あの幼女達、見た目に反しかなりの上級ウィザードと言う訳か……!」

「上級なんてレベルじゃないですよ! アリーナ全体を覆う規模なんて、一体どれだけの魔力を……っ!」

 

 二人の真剣な表情から、僕の予想以上にありす達の使ったものはヤバいものらしい。

 ……考えてみれば、以前二人はジャバウォックとかいう巨人を出した事もあった。

 それなら、この規格外さも当然な事なのかもしれない。

 

「うふふ、おもしろいでしょ。ここではみんな平等なの。いちいち付けた名前なんて、みーんな思い出せなくなっちゃうの」

「それだけじゃないわ。段々自分が誰だか分からなくなっていって、最後にはお兄ちゃんもサーヴァントも無くなっちゃうんだから」

「ありす!?」

 

 僕達が驚いている間に、例の転移でありす達が目の前に現れた。

 いつものように無垢な笑顔で、それ故にさらに危険を感じてしまう表情で……!

 

「“自我といっしょに、存在を削る固有結界”という訳ですか!! クッ、完全に誘い込まれた……!」

「なにそのチート!?」

 

 ありす達の言ってる事が本当なら、ヤバいなんてレベルじゃない!

 このままずっとここにいたら、強制的に僕達全員消えちゃうって事じゃないか!?

 

「あっ、なまえ……名前! 二人とも、名前はっ!?」

 

 横に立っている二人の美女に慌てて確認する。

 

「う、うむ。余はまだ大丈夫だ。なあ、えっと……淫乱狐?」

「え、ええ。私もまだなんとか。ねえ、その……痴女皇帝?」

 

「「……………………」」ガッ←(互いの襟を掴む)

 

「全然大丈夫じゃないっぽいね!?」

 

 二人とも、もう既に影響受けちゃってるし!?

 

「ちょっとぉ!? 今ここで喧嘩しないで、セー……セ?」

 

 あ、あれ? 二人の名前って……?

 せ、セイダー! 何か違う!?

 や、ヤスター! 何ソレ!?

 

「え、あっ、僕も思い出せない!? え、えーっと……っ!?」

 

 駄目だ……!

 考えれば考える程、そこから記憶が抜けていく……!?

 

「お兄ちゃん達、もう自分の名前を忘れちゃった?」

「そうなの? 思ったより早いのね。それじゃあ追いかけっこ出来ないよ?」

 

 二人の小さな女の子が、僕の方を見てそう言った。

 僕の、ぼくの名前……? あれ……? 

 そもそも、ぼくになまえって…………あったっけ……?

 

 

「うふふ。もう忘れちゃったみたい」

「そうね。もう忘れちゃったわね」

「じゃあお兄ちゃん。あたしのなまえももうわからないでしょ」

 

 そう確認するかのように、白いほうの少女が僕の目の前にやってきた。

 

 きみの、なまえ……?

 

 しらない……ぼくはもう、おぼえていな……ぁ……

 

 

 

 

 

 ————あなたは、誰?

 

 

 

「あ、れ……?」

 

 

 

 ————うーん、通りがかりの——かな?

 

 

 

 なんだろう、これ……

 頭に変なイメージが、浮かんでくる……?

 

 

 

 ————そういう君は?

 

 

 いつの間にか……

 

 

 ————あたし? あたしは——

 

 

 

 

 

「ありす……?」

 

 

 

 目の前の少女を、懐かしい、と思っていた。

 

 

 

「え……?」

 

「ん……? あッ!?」

 

 や、ヤバッ!? 意識が朦朧としてた!?

 あれ、どれくらい時間立っちゃった!?

 

「ねえ!! 二人と……」

 

「いくら名が分からないと言っても、他に呼び方はあるであろうがバカギツネーッ!!」

「アナタこそ、それ以外に言い方のボキャブラリー持って無いんですか能天気皇帝ーッ!!」

「まだ喧嘩してたの!?」

 

 この状況でずっと続けられるのはある意味尊敬するけどさあ!?

 

「あーもう! 二人とも、一旦戻るよ!!」

「へ?」

「え?」

 

 とにかく、このままここに居続けるのは不味い!

 そう判断した僕は強引に二人の手を掴み、いそいでここから離れようとした。

 

「あ、待っ……」

「ありす!」

 

 走り出す直前、僕は……

 

 

「……ゴメン、また今度遊ぼう」

 

 

 何故かそう、無意識にありすにそう言った。

 

 何かを言いかけたありすを後ろに、僕達はいそいでアリーナの入り口まで走っていった……

 

 

 

 ★☆★

 

 

「……嘘。だって……」

 

「ありす?」

 

「……確かめなきゃ」

 

「え?」

 

「もっかい会って……確かめなきゃ……」

 

 

 ★☆★

 

 

「ゼー……ッハー……二人とも、大丈夫?」

「ハアッハアッ……う、うむ……」

「ッハー……危うい所でしたね……」

 

 校舎の一階廊下、階段前。

 何とかギリギリ脱出出来た僕達は、ここまで逃げて来れた。

 ありす達は、追っかけてくる様子は無い……今はまだ。

 

「いやー……まさか互いの名前を忘れさせる事で、仲間割れを誘う作戦だったとは……あのロリ二人、中々の策士ですね」

「うむ、見事に嵌ってしまったからな……あの幼女達、侮れぬな」

「ねえ、常日頃から喧嘩してるような気がするのは僕の気のせい?」

 

 凄いシリアス顔作って話してる二人にそう突っ込む。

 

「まあ、冗談はさておき……実際問題、あの幼女達の対抗策を真面目に考えませんと。鍵の回収はともかく、どのみち三回戦の対戦相手なので最終的に戦う事になりますし」

「けど、確か固有結界だっけ? あれ、どうしたらいいんだろう……」

「むう。しかし、流石に今日は疲れたぞ……鍵も殆ど集まっておるし、一旦保健室に戻らぬか? 余はもう休みたい……」

 

 そう言ったセイバーの顔は、確かに疲労の度合いが感じられた。

 そう言えば、確かに今日はずっと鍵探しで走り回ってたっけ。

 

 

 

「そうだね。それじゃあ、保健室に戻ってから作戦を————殺気ッ!?」

 

 

 話を締めくくろうとした瞬間、背筋に寒気が走る。

 この殺気は……玄関から!? しかも、コレは……っ!

 

 

 

 

「吉井いいいいいぃぃぃぃいぃぃぃぃぃぃぃいぃいぃぃぃぃぃいぃぃぃぃぃぃぃぃッッ!!!」

 

 

「うえっ!? 凛かッ!?」

「ちょっ!? 凛さん!?」

 

 

 うん、正直予想してた。このタイミングで来たかー。

 そうして遠坂さんは高らかに、

 

 

 

「この“ロリコン犯罪者”アアアアアアアアアアッ!!!」

 

 

 

「何でさっ!!?」

 

 訳の分からない事を言いながら超猛スピードで走り込み、スーパーライダーキックをして来た!?

 それを僕はとっさにしゃがみ(これでも見えない……だとっ!?)紙一重の差で躱し、遠坂さんはそのままの勢いで下の階の階段に落ちていった。

 

「ふうー……甘いよ遠坂さん! そうなんどもワンパターンの繰り返しじゃもう当たらな」

 

 

 

 

 

 

「甘いのは明久君ですよ?」

 

 

 

 

「へー……? ゲフゥッ?!!」

 

 完全に躱し切れたと油断していた僕は、鳩尾への打撃に対応出来ずそのまま階段の下へ吹っ飛ばされた。

 まさかの二段構え……っ!?

 

「ゴッ!? うああーっ!!?」

 

 踊り場の壁に頭を強打し、そのまま下の階段を転がり落ちていく。

 あちこち体を痛めながら、最終的に地下の食堂までズシーンと落ちた。

 うう、目回って気持ち悪……

 

「つぅー……あ」

「ヤッホー、吉井く〜ん」

 

 そして目の前を見上げると、グットスマイルな遠坂さんが……

 

「……一応聞くけど、何でそっちは無傷?」

「今時のウィザードは“壁キック”は必須スキルよ」

 

 わーそうなんだー、凄ーい。

 また一つ、賢くなった。……ただそれが生かされる機会は無いだろうけど。

 

 そうして遠坂さんはポキポキと腕を鳴らし……

 

 

 

 ★☆★

 

 

 アーッ!

 

「じゃあセイバーさん、ちょっと明久君借りていきますね。それから、キャスターさんでしたっけ? すいません、お騒がせして」

 

 完全に引いている私達をよそに、そうペコリとお辞儀してから、姫路さんは悲鳴の聞こえた階段の下の方に降りていった……

 

「ちょ、これ、どうしましょうセイバー……セイバー? ちょっと、どうしたんですか!? すっごい震えてるんですけど!?」

「ツインテ怖い……ピンク怖い……ツインテ怖い……ピンク怖い……ツインテ怖い……ピンク怖い……ああー直ぐそこ、直ぐそこまでうああああ」

 

 

 

 ★☆★

 

 

「……で、遺言は?」

「体中あちこち痛いとか何故あの体制ですら中が見えないとか色々言いたい事があるけどとりあえずロリコン犯罪者って何って聞きたい」

 

 完全に全身ボロボロで、無傷な箇所を探すのが難しい程悲惨な状態になった僕は、そのまま遠坂さんに食堂の床で正座させられた。とても冷たい。

 ていうか、セイバーに聞いた時は購買の奴は除くと僕の罪状は2つって聞いたんだけど、何か増えてない!?

 この短い間に何があったっていうのさ!

 

 

「約三十分前に“幼女二人を追いかけ回す間抜け面なマスターがいた”って噂が立っているのだけど、心当たりは?」

 

 さっきのあれかーっ!?

 頭を抱えた僕を見て、それ見たことかという表情をする遠坂さん。

 え、ていうか間抜け面で僕って断定したの?

 

「明久君……まさかロリコンなのかとは思っていましたけど、まさか犯罪に手を出すなんて……」

「ちょっと待って。え? 姫路さん僕の事なんだと思ってたの?」

 

 いつの間にか階段の上から降りて来ていた姫路さん。

 彼女の言葉に、僕は本気で彼女の中の僕のイメージを確認したくなった。

 

「ていうか、あんたどんだけ私達を振り回せば気が済むわけ!? ユリウスに襲われて大怪我したって聞いてこっちが心配してたら、当の本人は女子トイレに侵入したり幼女追いかけてたって、心配して損したわよ!! 罰金よ罰金!! 迷惑料よこしなさいコンチクショーッ!!」

「端末壊れてるので1PPTも持ってません」

 

 ていうか、むしろ遠坂さん達のオシオキによるダメージの方が大きかったりする。

 逆に治療費を請求したい位なんだけど。

 

「もう、明久君は本当に……まあ、正直もっとお説教する必要があると思いますけど、まあ反省しているようですし、私達からのオシオキは無しにしておきますね」

「え? むしろ今までのはオシオキじゃ無かったの?」

「甘いわ瑞希。ここでちゃんと躾けておかないと、絶対また何かやらかすわよコイツ。下手な馬鹿犬より厄介よ」

 

 ねえ? 本当に二人の中の僕の評価ってどうなってるの?

 最低でもペット以下の扱いに正直涙が出そうになった。

 

 

「まあ、その、心配したのは事実ですし……正直いつも通りの明久君を見れて、安心しましたから……」

 

 

 姫路さん……

 

 

 ——“いつも通り”って何だろう。

 

 僕は本気でホロリと泣いた。

 

「……そう、ね。ここじゃあ、いつ二度と会えなくなってもおかしく無いから。まあ、ちょっとはうるさいのはいないと、つまんないって言うか……べ、別にあんたの事を言ってる訳じゃっ!?」

「うんうん。二人ともありがとうね」

 

 ツンデレのマシンガントークを受けながら、僕はゆっくり立ち上がる。

 まあ、考えてみたら三回戦に入ってから二人にはまだ会ってなかったっけ。

 ましてや襲われたと聞いていたら、そりゃあ心配するのも当然か。僕ならすぐ会いにいくし。

 

「あ、明久君! まだ動かない方が……左腕も折れているようですし、それ以外にも酷い大怪我ですから!「そうよ、瑞希にコードキャストで治して貰いなさい」

「いや、怪我の方は二人のせいだよね? ……まあでも、別にいいよ。“もう直ってるし”」

「え?」

「は?」

 

 僕はそう言って、さっきの騒動で切れた包帯をほどきながら、“折れていない左腕”を二人に見せた。

 

「嘘……本当に折れてません!」

「どういう事? まさか、元から折れてなかった?」

「ううん、普通に一回折れたよ。まあ、包帯巻いてもらって一晩寝たら、直ってたけど」

「一晩寝たらって、いくらなんでも早すぎないですか!?」

 

 うん、僕もビックリ。

 包帯も今までほどけなかったせいで、逆に邪魔になってたからなー。

 

「最近気づいたんだけどさ、なんかここに来てからこういう自然治癒? 的なものが強くなってる気がするんだよねー。まあ正直、マスター用の回復アイテムなんて無いから、凄い助かってるんだけど」

「……………………」

「凛ちゃん?」

 

 実際本当に役立ってる。

 決戦が終了した後なんか、もの凄いダメージや疲労困憊で動けない位なんだけど、次の日には嘘のようにケロッと元気になるし。

 原因はよく分からないけど、これが無かったら僕はここまで勝ち残れていなかっただろう。

 

「……ねえ。あんたそれ、自分では何もしてないのよね?」

「うん。強いて言うなら、保健室で桜さんに応急処置してもらったくらいで、それ以外に本当に何もしてないし。この怪我に限った事でもないしね」

「一体どうしたんですか? 何か深刻そうな表情してますけど」

 

 姫路さんの言う通り、遠坂さんは片手を口元に当てて何かを考えていた。

 かなり真面目に考えているようで、声をかけるのがちょっと憚れる程だった。

 

「……そういえば、以前コイツを壁に叩き付けた時も、いつの間にか直ぐ回復してた。何のコードキャストも使わず、マスター自身に強力な自然治癒……? ありえない、パッと見コイツは平気そうだけど絶対何かそれ相応の代償がある筈……」

 

 ブツブツとずっと何かを呟いていくその状態は、端から見たらちょっと怖く感じる。

 

「遠坂サーン? おーい?」

「……あ。ゴメンなさい、ちょっと熟考してたわ。……それより吉井、あんたのその自然治癒って本当に心当たりが無いのね?」

「そうだよ。さっきからそう言ってるけど」

「そう……それ、出来れば多様しない方がいいわ。原因が分からない状態で、それを頼るなんて危険だと思うの。極力自分に当たるダメージも、これからは避けるべきだわ」

「危険? まあ、分かった」

 

 元から進んで怪我したいなんて思わないし。怪我が少ないに越した事は無いしね。

 そう僕の言葉を聞いた遠坂さんは、それでもまだ不安を拭い切れていないような表情だった……

 

 

 ★☆★

 

 

【ステータスが更新されました】

 

 ■マスター:吉井明久

 

<スキル>

 

 ・クイックリカバリー:B

 

 いつの間にか吉井明久に付いていた自然治癒能力。致命傷一歩手前のダメージを全身に負っても、一晩経てば完全に回復する程の強力なスキル。

 元々吉井明久は、元の世界でも割と怪我の治りは早い方だったが、月に来てからはさらに異常な程の回復速度となっている。その原因は……?

 

 

 ★☆★

 

 

「————自我といっしょに存在を削る固有結界、ですか……?」

「これはまた、とんでもない対戦相手と当たったわねアンタ……」

 

 姫路さん達に今まで何があったのか詳しい事情を話すと、二人ともうーん……と、難しい表情になっていった。

 

「私はまだ勉強中なので、詳しくは知らないんですけど……確か固有結界って、かなりの魔力を必要とする大魔術なんですよね?」

「ええ。しかも、アリーナ全体を覆う固有結界って……仮に私のサーヴァントが術自体を持っていたとしても、いくら私でもそれだけの規模の展開する魔力なんて持ってないわよ。何かチート行為してるんじゃないの、そのありすって子?」

 

 遠坂さんがそう言う位だから、ありすがやった事はやはり規格外の事らしい。

 にしても、キャスターとかも言ってたけど、ありすって本当に凄いんだね……

 

「うん、それで何とかあの結界の対抗策を考えたいんだけど……何かいい案、思いつかない?」

「簡単に言ってくれるわね……」

「うーん……そう言えば、何かメモを拾ったんですよね?」

「ああ、うん」

 

 そう言って僕はポケットから二枚のメモを取り出して、二人に見せた。

 

「はい。こっちが校舎で拾った方で、もう一枚がアリーナで拾った方」

「これって……なるほど。そういう事」

 

 アリーナで拾った方を見せた瞬間、遠坂さんの表情が明らかに変わった。

 何か気づいたんだろうか?

 

「ええ、きっとこれが攻略法よ。つまり、自分の名前を答えるって事ね」

「どういう事?」

「これがその固有結界を解除する方法なのよ。あんたは遊びに参加してあげてるんでしょ? 遊びにはルールが付き物。きっとこのメモを残す事が固有結界を維持するのに必要な要素なのね」

「つまり、あの結界の中で自分の名前を言えばいいって事?」

「そう言う事」

 

 なるほど、思ったより単純な事だったんだね。

 でもなあ……

 

「けど、それって簡単そうに聞こえるけど、あの結界の中じゃ自分の名前は忘れちゃうんだよ? どうやって言えばいいのさ」

 

 例え、忘れる前に言おうとしても、結界が発動した瞬間すぐ忘れてしまったら意味が無いし。

 うーん、どうしたら……

 

「あら? そんなの“名前を書いておけばいいだけ”じゃない」

「へ? 書いておく?」

「子供だましには子供騙しってね。手のひらかなんかに自分の名前を書いておいて、それを読み上げる事さえ覚えておけば、簡単じゃない」

「あー、そっか」

 

 なんだ、思った以上に解決方法は簡単だった。

 難しく考える必要は無かったんだね。

 

「それじゃあ、早速それやってみよう。書く場所は……まあ、この木刀でいっか。手のひらだとすぐ消えそうだし、最近この木刀よくどっか吹っ飛んでいくからちょうどいいし。何かペンか何か……姫路さん!」

「うーん、こっちの校舎の方のメモって…………へ? あ、はい! 何ですか?」

 

 もう一枚のメモの方を調べていた姫路さんに声を掛けると、慌てた様子でこっちを振り返った。

 

「木刀に名前書く必要があるから、ペン貸してくれない? 確か持ってたよね、前借りた奴」

「分かりました。あ、それなら私が書いておきましょうか?」

「本当? じゃあ、お願いしようかな」

 

 僕が書くより、姫路さんの方が字が奇麗そうだし。

 どうせ書くなら、そっちの方がいいよね。

 

「はい! ……あ、そうだ。明久君、“さっきほどいた包帯”もくれませんか?」

「へ? 包帯?」

 

 いや、別にいいけど……何に使うんだろう?

 名前書くのに必要ないよね?

 

「実はその、今ちょうど油性ペンを切らしていて、水性しか無くて……そのままだと、すぐ消えてしまうかもしれないので、書いた上から覆って結べばいいかなーって思って」

「なるほどね。まあ、いいんじゃない? そのありすって子達に気づかれたら消されてしまうかもしれないし、隠すのにもちょうどいいかもね」

「はー」

 

 なるほど。

 こういうちょっとした気遣いを二人はしてくれて、それに心の底から感心する。

 

「ありがとう。それじゃあ、はい。木刀と包帯」

「はい! それじゃあ、あっちのテーブルでちょっと書いて来ますね」

 

 そう言って姫路さんはタタタッと小走りで近くの食堂のテーブルに向かっていった。

 

「さて……とりあえず、こっちのほうのメモはこれで解けたわね」

「けど、もう一つの方がさっぱりなんだよね……」

 

 そう言って、僕は改めてキャスターから貰った方のメモを見直していく。

 相変わらず意味不明なコードの羅列で訳が分からなかった。

 

「そうねー……けど、うーん……どこかで見たような気がするのよねー」

「見たような気がするって、やっぱりこれもコードキャストの一種なの?」

「いえ、それとは何か違う気が……あら? もしかして……」

 

 そう呟きながら、遠坂さんは僕からメモを受け取り、それをマジマジと見ていった。

 

「これって……やっぱりそうね。これ、よく見たら逆に書かれてる」

「え? 逆? 下から読んでいけばいいの?」

「そうじゃなくて、“文字その物が反転してる”のよ。確か、鏡文字って言うんだっけ? 鏡に反射して移して、初めて読めるようになるって奴」

「あー! 何か昔そういうのやったような気がする!」

 

 これも遊びの一種だったんだ。

 ありすのやる事って殆ど何かしらの遊びに関連してるんだなあ。

 

「鏡かあ、けど僕の手持ちには持ってないし……あ、そうだ! 確かトイレに行けば鏡が」

 

「次侵入したら迷い無くそのふざけた脳天撃ち抜くわよ」チャキッ

 

「遠坂さん怖い!? ハイライト消えた目で眉間に人差し指向けないで!! 何か指先に魔力集まってるからッ!?」

 

「お待たせしましたーっ」

 

 ガンド発射約3秒前に、姫路さんのその声が聞こえて遠坂さんはチッと指を下ろした。

 姫路さんナイスタイミング!!

 

「はい、明久君。手元の部分に書いて置きましたから、見る時はここの結び目を解いて下さい」

「ありがとう姫路さん、よっと」

 

 僕は姫路さんから木刀を受け取り、ズボンのベルトに挿した。

 ……受け取る時に、不良が使いそうな感じになったなあと若干思っちゃったり。

 

 

「それじゃあ、そろそろ行くよ。大分話し長くなっちゃったから、結構待たせちゃってると思うし」

「はい! それじゃあ、また!」

「ええ、頑張んなさいよ」

「うん! じゃあ!」

 

 そう別れの言葉を言って、僕は階段を上がっていった……

 

 

 

「……明久君、大丈夫でしょうか?」

「さあ? けど、何事も無ければいいんだけどね……」

 

 

 

 ★☆★

 

 

「ただいま〜。二人とも、もう戻ってる?」

「あ、吉井さんお帰りなさい」

「そ、奏者! 大丈夫であったか!?」

 

 保健室に戻ったとたん、いきなり僕に気づいたセイバーが凄く心配そうな表情で詰め寄って来た。

 ど、どうしたの? 心無しか、多少顔色が悪いような……?

 

「あ、おかえりなさいませご主人様! お怪我は御座いませんか?」

「いや、まあそれは大丈夫……とは言いがたいけど、それはともかく、一体どうしたのセイバーは?」

「あー……実は、あの凛さん達を見てからさっきまでセイバーが真っ青で完全に震えていまして……さすがに放っておけるレベルじゃなかったので、先に保健室に戻らせてもらいました」

「そ、そうなんだ……」

 

 本当に、一体どんなトラウマを植え付けたというんだ遠坂さん……

 

「そ、奏者!? 大変だ、ここから血が出ておる!! 桜ーっ、早く応急手当を!」

「あ、はーい! 分かりましたー!」

「ん、あれ? そう言えばアーチャーは?」

 

 そういえば、保健室に入ってから一切あのジャラジャラ音を聞いていない。

 勝手に何処かに出かけた?

 

「あー、紅茶ならそこです」

「え、どこ?」

「だから、そこです」

 

 そう言って、キャスターが指を指したのは————“ベットの下”?

 上のシーツがグチャグチャに乱れていて、床に付きそうな程に端から垂れてしまっている。

 それをめくって覗き込むと……

 

 

 

 

 ガタガタガタガタッ←(鎖付きアーチャー登場)

 

 

 

 大の男が、みっともなくブルブル震えて隠れてた。

 ……何やってんの、アーチャー?

 

 

「……ん、おお!? 戻ったか、マスター!! で、鍵はッ!?」ジャラッ

「うん、うるさいから動かないでね。ていうか、本当に何やってんのさ? なに、かくれんぼ?」

「聞くな……桜から身を守る為には、ここに篭城するしかなかったんだ……」

 

 篭城って……全然防ぎきれる気がしないし。

 まるで幽霊を見た小学生みたいにしか見えなかったんだけど……

 

「ホラ、とりあえず出て来てよ。鍵は殆ど集めて来たから」

「何!! それは本当か!?」

「ええ、まあ残り一本はまだですけど」

「ほんっっっっっとうに、こっちは大変だったのだぞ!! しっかりと感謝するが良い!!」

 

 テーブルの上には、僕達がこれまで集めた小さな鍵が171本。

 それを見たアーチャーはおお……と感動していた。

 

「はあ、もうこの姿のアーチャーさんとはお別れなんですね……なんだか残念です」

「冗談じゃない! もうこの鎖だらけの格好は懲り懲りだ! というか元はといえば、君がオレに首輪を繋げたりしなければここまで面倒くさい事にはならなかったんじゃないか!?」

「根本の原因は、紅茶が薬品盗んだからじゃないですか?」

「もうどっちでもよい……それより、その格好は周りに害しか与えぬからな。さっさと外すが良い」

「うん、そうだね」

 

 面倒くさそうに言ったセイバーの言葉に、僕達は賛成した。

 とりあえず今ある分だけでも外しておけば、もううるさく無くなるだろうし。

 

 

「それじゃあ、ちゃっちゃと終わらそっか。早速一本ずつ鍵をあけ……て……………………」

 

 

 

 ……そう言いながら大量の鍵山から一本鍵を手に取った瞬間、とある事に気づいた。

 

 いや、気づいてしまった。

 

 

「……あのー、桜さん?」

「はい、何でしょう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この鍵に対応する錠って……………………どれ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………」

 

「「「「……………………」」」」

 

 

「…………………………………………ルーチンワークって、慣れれば楽ですよね」

 

 

 片っ端から試していけということですね、分かります。

 

 

 

 

 

 

 ☆1時間経過☆

 

 

「な、七本目、終了……」

 

 震える手で鍵を回し、ガチャリと音が鳴り響いて足下に錠の一つが落ちる。

 それに伴い鎖の数も一本減ったが、まるで減っていく感じがしない……

 

「くっ……既に60分が経ったというのに、開いた鍵がまだ二桁にも到達していないとは……」

「というか、一つの鍵で片っ端かた試していって、“必ず開くのが最後の錠になったときしかない”って……どんだけ運ないんですか、私達……」

「桜よ……ふと思ったのだが、お主の幸運のステータス、ランクは何だ?」

「あ、その……元となった人物のデータからだと、あえて表すなら“E"ランクでしょうか……」

 

 つまり、この部屋には最低ラック値以上の人物は一切いないと。

 で、アーチャーに至ってはJ……あはは、笑うしかない。

 

「いったい、何時間この作業を続ければ終わるんだろう……」

 

「えーとですね……ざっと計算してみたんですけど、今の状態で171本の鍵一つずつに対し172個の錠を試していくように考えていくと、最高で14878パターンを繰り返す事になり、そして一つの錠に対して約3秒かかるとして、分かりやすく時間に直すと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 “約12時間以上”は掛かる計算に……」

 

 

 

 

 

 

「みんなー。ご飯食べに行こうかー」

「「賛成ー」」

「うおおぉおぉぉぉぉおぉおいっ!!?」

 

 

 

 ★……で、次の日の朝★

 

 

「最後、の……いっぽぉーんッ!!」

「お、おお!? 外れた、外れたぞマスタァーッ!!」

 

 あれから一晩中、アーチャーを除いて(手元が見えないから)僕達四人が交代制で鍵を外していき、たった今最後一つ以外の錠を外し終えた所だった。

 既に窓から光りが差し込み、チュンチュンと小鳥のさえずりさえ聞こえてきそうな朝だった。

 止めどころが見失い、結局完徹作業だったけど……けど、終わったんだッ!

 もうあのジャラジャラ音に悩まされなくてすむ……!

 

「や、やっと終わり、ですか……?」

「な、なんだか達成感が感じられますね!」

「いや、正直睡魔しか感じられぬ……も、もう寝てよいか?」

 

 セイバー達はかなり限界近くらしく、まさに疲労困憊といった様子だった。

 まあ、無理も無いか……正直、僕もかなり疲れた……

 

「皆さんの健康チェックをしましたが、主にメンタル面が大幅に減少しています。睡眠不足による疲労回復不完全も問題ですね……」

「うわー、完全にコンディション最悪だ……」

「これもう完全に休んだ方がいいですね……」

 

 キャスターの言う通り、今日はもう一日中休む事にした方がいいだろう。

 僕ももう眠たいし……

 

「それじゃあ、マトリクスやトリガー探しは明日に回して、今日はもうゆっくり……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、あたしと遊んでくれる?」

 

 

 

 

 

 

 

 ——その時の僕は、疲れていたせいか完全に反応が遅れてしまった。

 

 

「迎えに来たよ、お兄ちゃん」

 

「ッ!? あ——」

 

「ついでに、こっちの鎖の人も持っていきましょう」

 

「え、なぁッ!!?」

 

 気づいた時には既に遅く、

 僕とアーチャーはそれぞれありすとアリスに服の裾をつかまれ、

 

 次の瞬間には————

 

 

 

 ★☆★

 

 

 ……最初何が起こったのか分からなかった。

 

「……え、あ……?」

 

 あの白と黒のロリが現れたと思ったら、何かがあった。

 ……疲れていたせいか、直ぐに頭が回らない。

 完全に私は、その一瞬惚けていた。

 

「そ、奏者は……? 奏者とアーチャーは!?」

「ほ、保健室から吉井さんとアーチャーさんの反応完全にロストッ!? マイルーム並みのセキュリティを越えて、二人が強制転移されました!?」

 

 二人の声が聞こえて、ようやく正気に戻る。

 今目の前で起こった事実……

 

 

 

 

 

 

「ご主人様達が、攫われた……ッ!?」

 

 

 

 




次回、キャスター視点。
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