Fate/Extra Summon (バカテス*Fate/Extraクロス)   作:新月

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お待たせ致しました。(9年ぶり)
……はい、申し訳ありませんでした。
ですが、また戻って来ました!

小説そのものの執筆意欲をオリジナル小説で取り戻しながら、こちらも更新です!


氷の城から大脱出!!

「アーチャー! 私とセイバーで道を開きます! あなたはご主人様を背負って付いてきてください!」

「ああ、了解した!」

「うむ! ゆくぞ、キャスター!」

 

 気絶したご主人様をアーチャーに任せ、私とセイバーが庇うように前に出る。

 そして階段の方に走ろうとすると、例の黒い召喚獣が道をふさいでくる!

 

「下がるがよいッ! 全部余が撃ち落とす!!」

 

 そう言ってセイバーが私より前に出て、あの海賊が使ってたマスケット銃でダダダンッと連射をし、目の前の黒い召喚獣たちをなぎ倒していく!

 

【科学 “Nightmare”クラス ■■ ■■ 0点】

 

【現代社会 “Nightmare”クラス ■■ ■■ 0点】

 

「うわ……凄いですね」

 

 セイバーも初めて使う武器の筈なのに、まるで今まで使い慣れていたような腕前で、目の前の敵をどんどん撃ち倒していった。

 確か、”皇帝特権”でしたっけ? 

 本来持ち得ない筈のスキルを、一時的に習得するスキル……ステータスが下がっていたとはいえ、一応は使えてたんですね。

 とにかく、この状況では頼もしい。私の攻撃より、セイバーによる連射の方が敵を倒していくスピードが恐らく速い。

 あっという間に、セイバーだけで30体ほどの召喚獣を倒していった。けれど……

 

「ははは! うむ、楽しくなってきたぞ!」

「セイバー、調子に乗らない! 確かに一見、私たちの方が有利に見えますが……」

「ああ、ただむやみに倒すだけでは先に進めん。それどころか、そのせいでどんどん道がふさがれていくぞ!!」

 

 そう、弱った私たちの攻撃でもほとんど一撃で目の前の黒い召喚獣たちは倒れていくが、それが逆にやっかいとなってしまっている。

 多少ダメージを受けただけであれらはすぐに形を崩すが、その後にその場に黒い泥が残ってしまう。

 あの黒い泥は誰が見ても、一見して危険だと直ぐ分かるほどのもの。

 直接触れればヤバいという事は、さっきのご主人様の様子からはっきりと分かっている。

 

「くッ! このままだと、完全に泥に囲まれるぞ!」

「しかし、かといって倒さねば向こうから余達に襲い掛かってくるであろう!? 触れられれば、どの道アウトだ! どうしろというのだ!」

「だったら……倒す場所を工夫すればいいんですよ!」

 

 そう言って私は、あのロリっ子の本を構え直す。

 思い返すのは、さっきあのロリっ子達と戦ったときに、向こうが使ってきた戦法!

 

「セイバー、構えておいて下さい! 巻き上げろ、三月兎の狂乱!!

「っ! 風か!?」

 

 あのロリっ子達がやってたように、私は階段から少し外れた位置で竜巻を起こした!

 私たちはギリ耐え切れる風の強さ……けれど、小さな召喚獣達はどうでしょう?

 

『……ッ!?』

 

 そして私の予想通り、目の前にいた殆どの召喚獣達が竜巻に巻き上げられていく!

 ついでに、あたりに飛び散っていた泥も一緒に綺麗になった!

 

「今ですセイバー!! 全部撃ち落としなさい!」

「うむ! ナイスアシスタントというやつだ、キャスター!!」

「それをいうなら、アシストじゃ無いですか!」

 

 そう掛け合いながら、セイバーが竜巻の中に向かって弾を連射する!

 敵を一箇所にまとめて、かつ泥をまき散らさず一掃しやすいようにする。

 これが今思いついた、セイバーと私のコンビネーション!

 

「やったか!?」

「それやってないフラグ!? けれど、とりあえず全部は一旦倒せましたかね」

 

 アーチャーの危うい発言に突っ込みつつ、私はゆっくりと竜巻を解除していく。

 いきなり解除すると、せっかく巻き上げた泥が一気に周りに飛び散る可能性がありますからね。

 スキルを完全に解除すると、そこには召喚獣として形を保ったものはおらず、ただ黒い泥が積もっていただけだった。

 

「ふう、とりあえず一旦一安心ですかね」

「しかし、キャスター。よくさっきの方法を思いついたな、なかなかいい作戦だったぞ」

「別に、あなた達が気絶していた間にさっきのロリっ子達が使っていた戦法を真似ただけですよ。正直不本意ですけど、この本のおかげでやりやすかったというのもありますし」

 

 私はロリっ子達の本をセイバー達に見せながらそう言った。

 一応私も、炎・氷・風のスキルは操れる。それこそロリっ子達のスキルより威力自体は上だと自負してる。本当ですよ?

 けれど、私とロリっ子達のスキルでは微妙に性質が違う。

 例えばさっきの風を例に出すと、私が風のスキルを使った場合、カマイタチのような風を使って切り刻むといった主に”攻撃”に重点を置いたスキルになる。おまけに威力がある分、魔力消費量も比較的多い。

 対してロリっ子達のスキルだと、風のスキルを使った場合、さっき見たく風を使って巻き上げたり、追い返したりと、主に物体を動かす”移動”に重点を置いたスキルになっている。しかも攻撃力が低いため、魔力消費量も少ない。

 

 つまり、私が対人といった”仮想敵に対するスキル”であるのに対し、ロリっ子達はその他の物体といった”フィールドに対するスキル”になっていると言える。

 

 ……いや、普通に私も出来ますけどね?

 物体を傷つけず移動とか、実際可能というか、朝飯前ですけどー。

 でもー、なまじ私自身の腕前が高いせいかー、基本的すぎて逆にやりづらいっていうかー。

 スコップで砂のお城を作るか、ショベルカーで同じことするかって感じになりますしー。

 それなら砂のお城作るより、砂の山を作るか崩した方が早いっていうかー、面倒臭いっていうかー。

 

「……とにかく、ここにいる敵は一旦片付いた。急いで脱出を……」

 

「————うん? 待て、何か聞こえて来ぬか?」

 

 アーチャーが言おうとした言葉を遮って、セイバーがそう聞いてきた。

 

「何かって、何が————いや、私も聞こえてきました。何か、流れるような……”水の音”?」

「階段の上の方から聞こえてくるが……まさか!?」

 

 全員が嫌な予感がし、階段の上の方に向き直ると、音がどんどん近づいてくる!

 

 予想通り、そこから————大量の水が流れ込んできた!!

 

「なあっ!? 水だと!?」

「にゃあああ!? さっきずぶ濡れになったばっかりなのにー!! 和服って水含むと重いんですよ!?」

「それはこっちのセリフだ! このスカートも濡れると張り付いて動きづらいのだぞ!」

「しかし、一体どこからこの水が入ってきたというのだ!? いや、そんなことよりどんどん水かさが上がっていく!?」

 

 辺りを見渡してみると、アーチャーの言う通りどんどん水かさが上がっていってる!?

 こう会話している間に、もう膝近くまで————って、早っ!!?

 

「ちょ、待ってください!? 確かに上から水が入ってきてますけど、それでも見た感じ、階段上の通路はせいぜい膝半分ぐらいの深さですよ!? この広場で一気に膝近くまで深くなるっておかしいじゃないですか!?」

「分からん……が、恐らく水が入ってきてるのは一箇所ではないのだろう。もしかしたら、この氷の真下から直接水が湧いているのかもしれん!」

「な!? そういえば、この氷の真下って確かプール的な感じになってたような……まさかどこかと繋がってた!?」

「なんと!? それではこの城は沈むのか!? じゃあ、このままだと全員城の中で人魚になってしまうではないか!!」

「人魚って!? 私狐なんですけど!!」

 

 ヒレなんか生えませんし、冗談じゃありませんよ! 二重の意味で!

 せっかく勝ち残ったっていうのに、このまま溺れ死ぬなんてまっぴらごめんです!

 

「幸い、上から入ってくる水はなんとか逆らって歩いていける量だ! 急いで上まで戻るぞ!」

「はい!」

「うむ!」

 

 そう言って私たちは、階段を上っていき来た通路を急いで戻っていった……

 

 

 ★☆★

 

 

【音楽 “Nightmare”クラス ■■ ■■ 219点】

 

【物理 “Nightmare”クラス ■■ ■■ 261点】

 

【国語 “Nightmare”クラス ■■ ■■ 148点】

 

 

「むう! まだ湧いてくるのか!! 余はもう飽きた!!」

「頑張りなさい! 今はあなたの攻撃が効率がいいんですから!」

 

 2〜3階ほど階層を上ったところ、通路に流れ込んでくる水の量が段々増えてきた。

 同時に、また新たな黒い召喚獣も湧いてきて、まだ私達を襲おうと向かってくる!

 

「まずいな……流れてくる水の量が予想より早く多くなってきている。このままでは、上に辿り着く前にここが沈みきってしまうかもしれん」

「だというのに、あやつらは性懲りも無くドンドン湧いてくる! 正直芸がないぞあやつら! つまらなさすぎる上、邪魔でしかない! その上この水のせいで、余の服のドレス部分がビチョビチョだ! これでは走りづらいではないか!!」

「だから前に他の服着ろっていったでしょーが! でも、水が流れているおかげでいちいち泥掃除する必要がないのがある意味幸いですね」

 

 そう、水の流れが強くなってきているせいか、サイズの小さい召喚獣たちの多くは流されかけている状態だった。

 横を走り抜ければ戦わずに先に行くことができるし、飛びかかろうとするものだけをセイバーが撃ち落とせれば、黒い泥に戻ったとしても勝手に流してくれる。

 多少私達に運が向いてきた感じがしてきたといえるでしょう。

 

「それに、所々床の氷が溶けているのも幸いだったな。もし全面流水の下が氷のままだったら、私達は走ることすらままならなかった」

「むう。しかし、なぜこんなにも虫食い状態で溶けておるのだ? 水で溶けてたんだとしても、あまりにも差がありすぎるような気が……」

 

 セイバーが走りながら、そう疑問の声を上げる。

 けれど……

 

「……そりゃあそうでしょうよ。だってそれ、あのロリっ子達が放った炎で溶けた後ですもん」

「なんと! こんな狭い通路から既に戦闘開始していたのか!?」

「ええ。……まるで死んだ後まで、私達の事を助けてくれるよう……」

 

 さっきの竜巻の戦法にしてもそうだった。

 彼女達の戦いがあったからこそ、私はあの戦法を思いついたのだ。

 ほんっと……むかつくロリっ子達ですねえ、まったく……

 そんな感想が、苦笑と共に出てきた。

 

「とにかく、急ぎますよ。モタモタしてたら、この階層もすぐ沈んで……」

「ッ待て!! 向こうに何かいるぞ!?」

 

 後ろを走っていたアーチャーから、そんな声が聞こえてきた。

 みると、通路の奥に二体の黒い召喚獣が立っている。

 

「ふふん。そんなの他と同じように、余が蹴散らせば……」

「いいえ、セイバー! あの二体、なんか他のと様子が違います!」

 

 よく見るとその二体、色が赤黒いだけでなく、何か嫌な魔力のオーラを纏っていた。

 明らかに他のと違い、何かしらの力が働いているに違いなかった。

 

『『————ッ!!』』

 

 その二対の召喚獣が吠え、周りの魔力のオーラが覆っていくと、プレッシャーがどんどん大きくなってくる!!

 

「な、なんだ!? 一体何が起こるというのだ!?」

「分かりませんけど、何か形が変わっていって……!?」

 

 魔力のオーラが収まり、視界が良くなると、そこには召喚獣なんてものはいなかった。

 二対の召喚獣がいた場所には、体長3メートルは越えるほどの、大きな馬と牛が槍や斧を持って立っていた。

 って、まさかこれって……!?

 

【物理 “Nightmare・occult”クラス ■■ ■■ 423点】

 

【数学 “Nightmare・occult”クラス ■■ ■■ 389点】

 

 

「馬頭、牛頭……ッ!? 日本のメジャーな妖怪じゃないですか!?」

「なあ!? 変身したというのか、じゃあ!? 何故召喚獣が妖怪なんかに変身するのだ!? あれか、私はまだ変身を二回残している、とかいうアレか!?」

「確か、前にマスターに教えてもらった事がある! 召喚獣のシステムがおかしくなって、オカルトの側面が強く出た事があると……もしかしたら、あれがそうなのかもしれん!」

「オカルト……あれが召喚獣が持つ、もう一つの側面って事ですか!」

 

 とにかく、サイズがさっきまでと違いすぎる!

 ただでさえ狭い通路なのに、あんなのがいたんじゃ通れる道なんて殆どないじゃないですか!

 無理に通ろうと思えば通れるんでしょうけど、そんなの絶対見逃すはず無いですし!

 

「く! そこを退くがよい!!」

「燃えなさい! 火吹きトカゲのフライパン!!」

 

 セイバーが連射し、私が炎を出して同時に攻撃する!!

 図体が大きくなったおかげで、逆にこっちの攻撃が全部綺麗に命中した!

 炎が晴れると……

 

「なっ……!?」

「殆ど無傷ですって……!?」

 

 いくらステータスが下がっているからと言っても、他の召喚獣には問題なくダメージが通っていたのに、変身しただけで全くダメージが通らなくなるなんて……!?

 その二体は全く堪えた様子もなく、どんどん私達の方に近づいてくる!!

 

「じゃあ、ダメージが効かないんなら……!」

 

 狙いは、奴らの足元の流水!!

 

「氷なさい! 冬の野の白き時!!」

 

 それを唱えた瞬間、奴らの足元に冷気が放たれる!

 足元の水に当たった瞬間、奴らの足首ごとカチンコチンに凍らせ、そこからどんどん二匹の体を氷漬け初めて行った。

 

「おお! うまいぞキャスター!」

「これなら、倒せなくても動きを封じれば……」

 

『『■■■■■――!!』』

 

 そう思ったのに。

 その二体は、まるで砂のお城を壊すかのように、氷のそこから抜け出した。

 

「嘘でしょ……!?」

 

 やっぱりパワー不足!?

 これなら、今だけ自分の呪符を使った方がよかった!?

 

「■■■■■――!!」

 

「やばい、避けられ――っ!?」

 

 持っていた斧を振りかぶり、今まさに私達に振り下ろそうと————

 

 

 

 

「————なら、”毒”ならどうだ」

 

 

 その言葉と共に、私達の後ろから矢が二本飛んでいく。

 それぞれが二体の妖怪の心臓あたりに突き刺さった!!

 

『『■■■■■――!!』』

 

 

「かの魔弾の射手製の毒の矢だ。効くかどうかは怪しかったが、これでしばらくは動けないだろう」

 

「アーチャー!!」

 

 後ろを振り返ると、アーチャーがご主人様を背負った状態のまま、片手を前に振り切っていた。

 あの一瞬で急所を狙って……!

 

「ナイスだ、アーチャーよ!!」

「今のうちに走り抜けるぞ! 長くは持たん!」

「はい!」

 

 そうして、私達は動けなくなった二体の妖怪の間をすり抜けながら、通路の先を走って行った……

 

 

 ★☆★

 

 

「うむ、だいぶ上がったな! 確かもうすぐ頂上付近だな!!」

「ああ! 記憶通りなら、確かこの階に私達が降りてきた螺旋階段がある筈だ! それを登れば、外に脱出できる!!」

 

 セイバーとアーチャーの言う通り、私もこの通路に微妙に見覚えがあった。

 それでも、はっきりと覚えていた訳じゃありませんけど……でもセイバー達、よく階数を覚えていましたね? 

 私は全然覚えて……って、あーそういえば私酔ってましたね。下の階に降り続けていく間、ご主人様に担がれて。

 

「けど、この階まで来ると、もう水もそれほど流れていませんね」

「うむ。足場の氷も殆ど張っておらぬな、もう。キャスター、もうここからあのロリっ子達に襲われてたのか?」

「いえ、もう少し下の階からでしたけど。でもここまで溶けてるなんて変ですね」

 

「……というか、なんか”気温が高くなってないか”?」

 

 言われてみれば……?

 逃げるのに走り続けていたせいで気づきませんでしたけど、確かに城の中の気温が高くなってます。

 この温度なら、張っていた表面の氷も全て溶けてしまっているのも納得です。

 

「むう……氷がすでに溶けているのは確かに余達にとって嬉しいことだが……」

「なんか嫌な予感がするな……っと、あそこだ! あの通路の奥が螺旋階段の入り口だ!!」

 

 とにかく、この気温の事は後回しです。

 アーチャーの言う通り、あそこが私とご主人様が落ちてきた場所の筈です!

 そう思い、私たちがその螺旋階段のある空間に入ると……

 

 

 

 

【保険体育 “Nightmare”クラス ■■ ■■ 673点】

 

【国語 “Nightmare”クラス ■■ ■■ 298点】

 

【現代社会 “Nightmare”クラス ■■ ■■ 413点】

 

【数学 “Nightmare”クラス ■■ ■■ 143点】

 

【音楽 “Nightmare”クラス ■■ ■■ 57点】

 

【科学 “Nightmare”クラス ■■ ■■ 354点】

 

【物理 “Nightmare”クラス ■■ ■■ 185点】

 

【現代社会 “Nightmare”クラス ■■ ■■ 213点】

 

【国語 “Nightmare”クラス ■■ ■■ 88点】

 

【数学 “Nightmare”クラス ■■ ■■ 543点】

 

【音楽 “Nightmare”クラス ■■ ■■ 257点】

 

 ・

 ・

 ・

 

 

「うわあー……ははは。螺旋階段上で待ち伏せとか……」

 

 もう乾いた笑いが出てくるくらい大量に待っていた。

 1匹いるなら30匹位を飛ばして、3桁位いるんじゃね? っていうくらいの量で。

 色的にもあれです。どっかのGですかこいつら!!

 

「ハッ!! 何匹いようと関係ない! 全て余がこの銃で撃ち落として……」

「いや、よせ!! さっきまでと状況が違う! もう殆ど水が流れていないし、あの狭い螺旋階段だ! 撃ち落とした瞬間、泥になって完全に通る場所を埋め尽くすぞ!!」

 

 確かにアーチャーの言う通り、もう階段を絨毯みたいに埋め尽くすレベルでいる以上、全部倒したら完全に通り道が無くなるのは目に見えてます。

 というかあれ、もはや詰まってません? って感じですし。

 

 

「じゃあどうするというのだ!! む、そうだ! さっきみたくキャスターの竜巻で全て回収して……」

「いえ、無理ですね。一部分を集中的に吹き飛ばすならともかく、この螺旋階段、真ん中の吹き抜けの部分に落ち無いよう、ちゃんと内側に手すりが付いてます。あれに掴まれて、大半が竜巻に吸い込まれずに済んでしまうでしょう。階段の通路ごとに一部づつ連続で飛ばしていたら、すぐ魔力切れ起こしてしまいますし」

 

「じゃあ、アーチャーの毒矢で全部麻痺らせるか!!」

「無茶いうな!! あれ全部に射つ毒矢を作り続けるほど魔力は残っていない、その上麻痺らせたとしてもその横を通るスペースも無いだろう!」

 

「じゃあどうすればいいのだ!! 打つ手なしか!!」

 

 

 今まで私たちが使ってきた方法じゃ、この場所を突破でき無い。

 もう私達が通れそうな道は無い……

 

 

 

 ――――――(あはは! 残念だったわねお兄ちゃん! どう、お兄ちゃんの言った発想力で、この台風を起こしたの! ねえ、凄いでしょ? このままお兄ちゃんはこの中にずっと閉じ込められて、なす術も無く溺れて終わるの! お兄ちゃん達の負けで、この遊びは終わり! あはははは!)

 

 

 ガボボ! がぼがぼがガボボ! がぼ、ががーぼぼがぼおぼが、がぼぼがぼが! がぼ、がぼぼあ? がぼぼぼぼあぼおぼっぼあああおぼあ、がぼぼぼがぼぼぼあぼぼがぼ! がぼぼぼががぼ、ががぼぼぼあ! がぼぼぼぼ!――――――

 

 

 ――――――(何言ってんの!? 君も呑み込まれてんじゃん!?)

 がぼっぼがあ!? ががぼががぼぼがぼぼんが!?――――――

 

 ――――――(嘘ぉッ!?)がぼあッ!!?――――――

 

 

 

 ……なぜかさっきのロリっ子達との戦闘の一部が脳裏に蘇る。そして思いついてしまった。

 

 ……いや、よく見たらありますね、道。

 ええ、一応。本当、一応。でもなー、コレ……

 

 

『『■■■■■――!!』』

 

 

「っマズイ!! さっきの馬頭、牛頭がもうそこまで迫ってきている!!」

「どうするのだ!! ええい、この際道を泥で埋め尽くされても構わん!! 一か八かダメージ覚悟で突っ切って……」

「待って下さいセイバー。私に考えがあります、ええ一応」

 

 迷っている暇はない、か……

 そう思い、覚悟を決めた表情でセイバー達に向き直る。

 

「おお! さすがキャスターだな!! で、その方法は!」

「ええ。まず、私達全員が互いをしっかり掴んで固まります」

「む? こうか?」

「ええ、はい。一番体格がしっかりしてる、アーチャーを前に。で、気絶してるご主人様が間に挟まるように。そうそう」

 

 ご主人様を背負っているアーチャーの腕に、私とセイバーがそれぞれ片腕を通して絡ませる。

 イメージ的には、騎馬戦をやってる感じに近いですね。あんな感じに配置して固まってます。

 

「そして、私がスキルを! 三月兎の狂乱!!」

 

 右腕で絵本を構え、私がスキルを唱えると、目の前に大きな竜巻が発生していきます!

 この螺旋階段の空間の中心に、この塔の部分の頂上まで届く位の!

 

「なんだ、やっぱり敵を巻き上げるのではないか。単純に威力をアップするつもりなのか?」

「いいえ、半分不正解です。確かに威力はアップしていますが、敵を吹き飛ばすつもりはありません。案の定、やはり手すりに掴まって耐えられてますし」

 

 これでは、殆ど巻き込む事はありませんね。

 ……いえ、これから私がやろうとしている事なら、むしろ好都合になりますけど。

 

 

「じゃあ、この後どうするのだ?」

「”飛びます”」

 

「「――――うん?」」

 

「正確には、”私たちが吹っ飛ばされます”。頂上まで」

 

 

 そう言うと、セイバーとアーチャーの顔が固まった。

 なんか信じられ無いようなこと聞いたように、引きつった笑顔で。

 

「いや、キャスター!? お主まさか!?」

「さあしっかり掴まって!! 体制崩しますよ!!」

「マジか!? マジでやる気か!?」

「マジです!! さあ、さらに出力アァーッップ!!」

 

 さらに竜巻の出力を上げ、その後私は喚くセイバーの腕とも絡んで固定する!

 私たちの方に、だんだん竜巻が近づいて来て、浮遊感が感じてくる……!!

 そして……ッ!!

 

 

「ヌアアアアアアアアアアッ――――――――??!!!」

「うおおおおおおおおおおッ――――――――??!!!」

「きゃあああああああああッ――――――――??!!!」

 

 私たち全員が、竜巻に飲み込まれた!!

 完全に足が床から離れ、どんどん上に巻き上げられていく……!!

 轟々っと辺りに音が鳴り響き、視界も上下左右にと反転し続け、意識が飛ばされそう……!

 けど、それでも途中で術は絶対解きません!! 頂上付近に着くまでは……!!

 

 

「――――――――ッ!! 今!!」

 

 視界が乱れる中、辛うじて天井付近に近づいた事を感じた私は、スキルを強制解除する。

 引き寄せられる力を受けなくなった私たちは、そのまま外側に弾き飛ばされる!!

 

 

 

「「「うおおおおおああああああぁぁぁ——————————っ!!!??」」」

 

 私たちは壁に向かって飛んでいき……!

 

「ゴハアアァッ?!!」

 

 そのままアーチャーを下敷き……というか、壁敷き? にして、私たちは壁に衝突しました。

 そしてそのまま少しずり落ちて、無事螺旋階段上に着地しました。ええ、全員無事に。

 

「っふうう——————……っべー、マジで上手くいった。流石私、我ながらスゲエ……」

「キャ、キャスタああああああ!!! 何が考えがあります、だ?! 危うく三度、落陽を迎える所だったではないかあッ!!? というか今、一回目越えたかもだ!!」

「いやー……ほら。あくまで考え、ですし。”いい”考えとは言ってませんしー」

 

 確かに我ながらとんでもないアイデアとは思いましたけど……あ、”吹っ飛んでる”のに"とんでもない”とは、これいかに。なんちゃって。

 

「ぐ、う、おおおぉおぉぅぉおぉぉーーーーーー……」

「ああ、見よこの紅茶の顔を!! 今日1日で二度顔面からぶつかったせいで、もはやニチアサのパンの正義の味方となってしまったではないか!! もう愛と勇気しか友達にならなくなったのだぞ!?」

「でも紅茶の英霊譚って、割とある意味あってません? ぶっちゃけ理想追い続けたせいで裏切られて、最後らへん録に友達とかいなかった筈ですし」

「む、それもそうだな。つまり、あの国民的ヒーローと同じという事か。うむ、喜ぶが良い紅茶。お主の望み、既に叶えられておったようだぞ」

「ああ、ありがとうと言っておこうかちくしょう!! というか、君達ちゃっかりノーダメージか!?」

 

「うむ、皇帝特権というやつだな!! 受け身ばっちしだ!」

「まー狐的にはー。尻尾もふもふですしー、自慢のクッションです♪」

「嘘つけ俺を下敷きにしただろうがあ!!」

 

「そんな事より敵は!? この付近にいますか!」

「くうう!! 盛大に話を逸らされたがまあいい、ああ今はいない!! 塔の頂上の入り口は見えているし、ここから上はもういない!」

 

 という事は、やはり下にいた大量の召喚獣、完全に一箇所に固まった結果の敷き詰め状態だったんですね。

 階段に入らせなければ、そこで私達は止まると踏んだんでしょう。

 まあ、あの黒い召喚獣にそのような知性があるとは思えませんが……ただ階段を降りようとして偶然詰まったのか、あるいは誰かの指示か……

 ……何れにせよ、今は脱出優先ですね。

 

「っキャスター! もう何体か下にいた黒い召喚獣達が迫ってきておるぞ!?」

「くっ! ここで追いつかれるわけにはいきません!」

 

 

 何か敵を足止めできる、丁度いい手は……そうだ!

 

 

「アーチャー、セイバー、ここで”服脱いでください”!!」

 

「分かっ……ハッ?!」

 

 私のいった言葉に、二人とも本気で何言ってるんだコイツ、的な表情を私に向けてきた。

 いやまあいきなり言われたらそうでしょうけど。

 

「キャスター!? 君は一体何をするつもりだ!? いや本気で意味が分からんぞ!!」

「あーもう!! いいから早く下さい、特にその赤いヒラヒラした部分とか! というかなんですかそれ、ヒーロのマント的な感じでつけてるんですか! ぶっちゃけカッコ付けにしては微妙なんで意味あるんですか!?」

「おおい?! これは赤原礼装といって”外界から守る”という概念武装で、私のイメージカラーとしても重要な要素をだな……」

「うっさい! 状態異常とHP全回復機能備えてから出直してきなさい!!」

「というか、余のこの服新品なのだぞ!! こないだ無くしたばっかだというのに!!」

「またアーチャーに縫ってもらいなさい!! あーもう!! とにかく脱げぇッ!!」

 

 焦れったくなった私は、や、やめ、桜ヤメロおおおとか、なんかトラウマ発生してるアーチャーの服の赤い部分を無理やり剥ぎ取る。

 その横でセイバーもチェーっと渋々と脱いでいた。

 

「なあに、下の方々にちょっとしたプレゼントですよ!! 冬の野の白き時!!」

 

 私の服も脱いで、それを3人分纏めたボールに対して氷を放つ。

 何も無いところだったら今の魔力で氷の塊を作るのは難しい、けれど既にビショビショの布で纏まっている物があるなら、それを中心として……

 

 残りの使える魔力を全部注ぎ込んで、巨大な雪玉の完成です!!

 

「ふふふ、ピンが一杯ですねえ!! おらあ、ボーリングじゃあーい!!」

 

 巨大雪玉を、螺旋階段の上から転がり落とす!!

 最早ボーリング玉というか、大玉転がしですけど些細な違いは気にしません!

 

『『『————ッ!!』』』

 

「おお! 効いてる、効いておるぞ!!」

「あの召喚獣達も張り付いて、どんどん巨大化している!! これなら……」

 

『『■■■■■――!?』』

 

「ストラーイクッ!! っは、ざまあ見やがれってんです!!」

 

 下の方で、あの厄介な馬頭、牛頭に当たったのが上から見えました。

 流石に倒せはしませんでしたが、そのまま雪玉に巻き添えになって階段下まで一直線!!

 あれなら暫く追っては来れないでしょう。

 

「時間は稼げました! さっさと脱出致しましょう!!」

「ああ、もう塔の頂上だ!! 入ってきた時の窓から脱出するぞ!」

「うむ! もう少しだな!!」

 

 後ちょっと。そう希望を持って私たちは階段を上がりきる。

 最初に入って来た時の何も無い部屋にようやく到着しました。

 ご主人様はまだ気絶したままですが、もう少しすれば安全圏!

 

 これで、後は窓から脱出出来ればーー!!

 

 

 

 

「ーーーーこれは、っ」

「……アーチャーさん。そういえば何故試合が終わった後、城に大量の水が流れ込んで来たのか分かっておりませんでしたね」

 

 

 

 

「雪が……外の雪が全部無い!! エレベーターまでの道が無くなっておる!?

 

 

 

 そう。この巨大な城を覆っていた雪が全て溶けており、その外観が全て見通せる様になっていた。

 

 同時に、私達が入って来たエレベーターが”空中の真ん中”に浮かんでいる所も……

 

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