Fate/Extra Summon (バカテス*Fate/Extraクロス) 作:新月
4回戦開幕、の前に箸休め回です。
「……帰って来れたな。とうとう」
「うむ。端末も新しいのが支給されたしな」
私はマイルームの扉の入り口の前で、そう万感の思いでそう呟いた。
長かった……本当に、長かった……
3回戦が始まってから、直ぐにマスターのメイン端末が破壊されてしまい、マイルームに入れなくなってから一週間。
3回戦が終了したインターバル期間で、ようやく新しい端末が支給されて、再びマイルームに入れるようになったのだ。
これであの保健室暮らしから脱出する事が出来る……!
というか、あの桜から離れる事が出来る! 事あるごとに、隙を見せたらR-18をして来そうだから距離を取りたい、というのが本音だった。
マジで一体何があったんだあのAI桜。絶対自我に目覚めているだろ。
……いやまあ、男として、受ける事自体はやぶさかでは無い、のは本音だが……
高校卒業もしていないマスターの前でやるのは辞めて欲しい、あとセイバーやキャスターに見られるのも。
そんなわけで、マイルームに戻って来れるようになったのは、本当に喜ばしい事だった。
「ふふ……フフフフフ! これで夜を怯えずに、安眠する事が出来る! 本当に良かった……!」
「先入るぞー、紅茶ー」
そう言ってセイバーは端末をかざして、マイルームに先に入っていった。
おっと、私もこうしている場合じゃ無いな。早速入るとしよう。
☆★☆
「むう……戻って来れたのは良いが、めちゃくちゃ荒らされておるな! 一体誰がこんな事を……」
「大半君とキャスターだろうが。2回戦の夜マスターが襲われていた時とか。見ろ、あの時の銅像の破片が散らばっているぞ」
地面に散らばっている、白い大理石の破片を指差してそう指摘する。
いや、本当に汚いな。そういえばあの夜の襲撃の後、二回戦のロビンフットとの決戦まで保健室で寝泊りし、やっとマイルームに戻れると思ったら三回戦直後の葛木先生の襲撃……
よくよく考えると、じっくり掃除する機会が無かったな。
「よし、この際大掃除をしよう。マスターとキャスターは用事で今は外に出ているが、その間に私達で進められる所は進めておこう」
「うむ! ファイトだぞ、アーチャー!」
「私“達”、と言ったよな? 君も頑張りたまえ!」
「えー。なんで余が使用人みたいな事を……」
「荒れた原因の一人だろう。責任を持って片付けたまえ」
「それだったら、キャス狐もそうでは無いか! あやつだけずるいぞ!」
「彼女にも戻って来たらやらせるつもりだから、今できる分だけでも先にやるんだ」
「ぶー」
文句を言っても駄目だ、こればっかりは手伝ってもらうぞ。
確かに私一人でも出来ると言えば出来るが、ちゃんと自分でやったことの責任は取らせないとな。
「むう、しょうがないか。良し、ではゆくぞ! 余は<掃除の達人>である!!」
「いや君それ、【皇帝特権】……まあ良いか、直ぐに戦闘がある訳でもなし。……そう言えば君、それを普段使い出来るようになったんだな」
「うむ! この体の魔力が少ない状況に慣れたのと、あの氷の城の際一度使ったからか、少ない魔力でもある程度また使えるようになったぞ! 練習にも丁度よい!」
「それは結構。では頑張って働いてもらうとしようか」
少しでも、マスターの役に立てそうな能力が戻って来たのは幸いだ。
私も投影を、この状態でも1,2回は出来るようになっていたしな。
体が慣れたのか、もしかしたらマスターがこの戦いを通して成長して、魔力供給効率が上がったのかもしれないが……どちらの理由にしても、良い傾向だ。
「よし、ではセイバー。まずは散らばった石像の破片を片付けよう。大きいやつからで良い」
「うむ! 任されよ!」
そう言って、セイバーは大剣を構え……
いや待て待て待て。
「セイバー、その大剣でどうするつもりだ?」
「こうするのだ! “
セイバーが振りかぶった大剣が、石像に襲いかかり……
ガッ! ←(破片に弾かれて、剣が飛んでいく音)
「お?」
「あっぶな!?」
弾かれた大剣が、私の方に飛んできて危うく斬られる所だった!?
何をやっているセイバー!?
「いやー。大きい破片のままだと運ぶのに大変そうだと思ったのでな。こう、剣でバラバラに細かく刻むのを、やってみたくて……」
「掃除でやって良いことでは無いだろう!? それにやるにしても、せめてサーヴァントとしてもステータスが十分に戻ってからやりたまえ!!」
「今の余が、結局どこまで戦力が戻ったのか測ってみたかったのだ!!」
「じゃあ試すにしても、もう少し安全な方法にしてくれ!!」
というか、それだったなら【皇帝特権】で選ぶ宣言間違えているんじゃないか?
掃除の達人が、剣で石を切れるイメージは無いだろう。サーヴァントであるという事を除外すれば。
何、“掃除人”をイメージして? それ絶対掃除の意味が違うだろ、対象人だろそれ。
「全く。まずは大きい破片を片付けるだけなのだから、自分の手でやりたまえ」
「はーい。むう、しかしこのサイズのものをいくつか運ぶのは、今の筋力だと疲れるぞ……」
「君が買って来た素材だろうに……」
セイバーはむうっと壊れた石材と睨みながら、そうぼやいていた。
文句を言っても、君が買ったものなのだから責任持って片付けたまえよ。
「もっとこう、パッとこの場から直ぐ消えるような方法があれば良いのだが……」
「地道にやるのが、一番なのだがな」
「……いや、何か思いつきそうな……そうだ!」
そう言って、セイバーは端末を取り出した。
何をする気だ?
「これをこうして……えーい!」
パッ! ← (石材が消えた音)
「む!? 消えた!?」
「ふふふ、思った通り! この状態でもアイテムとして認識されているようなのでな! 端末のストレージに仕舞い込んだのだ!」
セイバーの言った方法に、なるほどと肯く。
確かにそれなら持ち運びもかなり楽だし、簡単に操作出来る。
まあ、後でアイテム欄のストレージを整理する必要は出るだろうが、今この場の掃除で使う分には問題無いだろう。
「うむ、これなら楽ちんだ! どんどんゆくぞ! どうせなら、この部屋にあるもの全て仕舞ってやろう!」
・石材
・石材
・石材
・机
・机
・石材
・鳥居
・椅子
・椅子
・椅子
・机
・赤原礼装
・石材
・机
・石材
・机
・インナー
・椅子
・椅子
・机
・ズボン
・石材
・石材
・石材
・ブーツ
・椅子
・机
・石材
・布
・石材
・石材
・机
・椅子
「おいおいおいコラコラコラ」
「むう? 一体どうし……って、アーチャー!? 何故また“下着姿”に!?」
「君が仕舞ったんだが!?」
私のパンツ一丁の姿を見て、セイバーはようやく自分のしでかした事に気づいていた。
調子に乗って確認せずに片っ端から仕舞っていたな……
何回か私の体に触れていた事にも気づいていなかっただろ!
さらっとキャスターの鳥居も仕舞っているにも関わらず、彼女の黄金のバスタブはそのまま残しているくせに!
とりあえず私はセイバーを叱り、私の服装だけ再度取り出して貰っていた。
全く、昨日の氷の城の際無くしたから、再度全員分の服を縫ったばかりだと言うのに……
「むう、しかし大分綺麗になったな! あともう少し仕舞えばスッキリするぞ!!」
「まあ、そうだな。あれだけゴチャゴチャしていたマイルームが、大分広く感じるな」
来たばかりで、直ぐにセイバーとキャスターが喧嘩していたからな。
あの時のゴチャゴチャからろくに整理していなかったのもあるが、こうしてみるとやはり教室、ある程度の広さはある。
「ようし、あとはその辺の机を仕舞えば……」
そう言ってセイバーはパッと次の机を消し……
直後、パサっと何かの“本”のようなものが落ちて来た。
「む? 何か入っておったぞ」
「それは、本か? そんなの買った履歴あったか?」
強いて言うなら、一回戦の時のライダー、フランシス・ドレイクの真名に繋がる書籍だが、あれは図書館に返した筈だな?
何やらやたら薄い本だが……
「これは、もしや……俗に言う、お宝本、という奴では無いか!? あれだな、綺麗な美女達の裸体とかが載ってると言う!」
「ああー、まあ……確かに、男のロマンが載っていると言うのは否定しないが……そんな本が、何故ここに? ……もしや、まさかとは思うがマスターか?」
「むう、奏者の私物か? こっそり隠しておったのか、うい奴めー」
まあ、確かに隠している候補といえば、マスター位か?
こんな殺し合いの発生している状況で、そんな事を考えている余裕があったと言うのは、ある意味心のゆとりがあったと喜ぶべきなのか……
「どれどれ、本の内容は…………」
「…………セイバー?」
しゃがみ込んで本を確認し始めたセイバーは、何故かだんだん黙り始めた。
さっきまでワクワクしていた表情だったのが、だんだん無表情になり……
……そして次の瞬間には、私の目の前に赤い大剣がってうおおおッ!?
「何をする、セイバー!?」
「それはこっちのセリフだ、アーチャーぁッ!!」
「なんでさ!?」
急にセイバーが振り返って大剣を振って来たと思ったら、急にキレだし初めていた。
いや、マジでなんでさ!?
「この本のタイトル、見よッ!!」
そう言って、セイバーがバサっと出した薄い本達は……
・保健室の女医と、いけない保健体育♡
・後輩と秘密の放課後特訓、R-18
・通い妻の女の子と、夜の激しいプロレス❤︎
「このラインナップ、どう考えても奏者よりお主の持ち物だろうがっ!!」
「桜あああああっ?!!」
明らかに偏った、と言うかとある人物を連想させる内容の本ばっかだった。
と言うか、どう考えても桜しか指し示さないタイトルだらけだった。
「別に、お主の私物であったのなら素直に認めれば良いのに、下手に誤魔化そうとする魂胆が気に食わぬ!! サラッと奏者のせいにするなど!」
「いや待て、ガチでオレは知らんぞ!?」
そんな本をこの状況で買うわけがなかろう!?
いやまあ、生前シンジとかに押しつけられた本はあったが……それでも今回は、完全に濡れ衣だ!!
「いや待て、新しい端末って確か桜から貰ったよな!? まさか桜がこっちに渡す前に、こっそりマイルームに侵入して置いて行ったのか!?」
脳裏にウフフ……と笑ったような桜の笑みが浮かんだ。
というか、それしか考えられない。絶対。
彼女、さてはオレの私物扱いとして見つけさせようとさせてたな!? 遠回りな堀を埋められている!?
「むう、往生際が悪い、と言いたいが……まあ、あの保健室の女医ならある意味それをやっててもおかしくは無い、か。……まあ良い、それについては後で本人に確認すれば良い事だし」
「私は大分冷や汗ものだったぞ……」
「全く、とんだものが見つかったな……それはそれとして、後で余が中身を確認するが、よいな?」
「いや君、それただ君が見たいだけだろ」
散々人を責めて置いて、自分はちゃっかり中身を見ようとするセイバーだった。
貴様、良い性格しているな……
「そんなことより、さっさと片付けを進めるべきだ。あともう少しだろう?」
「むう、そうだな。この際奏者達が戻ってくる前に、ピッカピカにして驚かしてやろう! ……そう言えば確か、奏者達はあの錬金術師の女に会いに行ったのだったな?」
「ああ。確か、“例の腕輪”の複製品を取りにいっていたな」
そう会話しながら、私達はマイルームの掃除を続けて行った……
☆★☆
──一方その頃、校舎内
「……はい、吉井さん。約束の“黒金の腕輪”の複製品です」
「ありがとう、ラニ! 本当に助かるよ!」
「今度はもう無くさないでくださいね、本当に」
「いやー、まあ……今回無くしたのも、不可抗力って言うか……」
「い、い、で、す、ね、?」
「はい……」
「ご主人様、怒られちゃいましたねー」
ワタクシ達はラニさんに会いにゆき、例の腕輪を早速受け取っておりました。
ラニさんの機嫌が少し悪そうですが、まあ気にしないで良いでしょう。
「それにしても、腕輪新しいの貰えて良かったですねー。やっぱそれあると、安心感が違いますね」
「そうだね。一回戦の時に活躍しただけだけど、あの防御が出来るのは凄くありがたいよね」
「次無くされたらもう直ぐには用意出来ませんので、本当に注意してくださいね」
はーい、とラニさんの言葉にワタクシとご主人様は返事をする。
とりあえずこれで、ラニさんに対する用事は済みましたね。後は確か、桜さんに呼ばれていたような……
「…………明久」
「ん?」
そう思っていると、背後から誰かがご主人様に声を掛けて来ました。
振り返ってみると……ワタクシは見知らぬ男子でしたが、ご主人様は大層驚き。
「ムッツリーニ!?」
「久しぶりだな、明久」
そう声を上げていた。あら、ご主人様の知り合いですか?
……ところで、ムッツリーニって名前なんですか? とても変に思えるんですけど……
「やっぱり、ムッツリーニもこっちに来てたんだね!」
「…………ああ、気づいたらここに。雄二と秀吉と、島田もいた筈」
「うん、その3人とも僕は既に会ってるよ」
「吉井さん、お知り合いですか?」
「うん。土屋康太こと、ムッツリーニ。僕の友達なんだ」
あ、やっぱりムッツリーニって本名じゃなかったんですね。
それにしても、そのあだ名ってどうなんです? それ。
おっと、それはともかく、ワタクシも挨拶いたしましょうかね。
「初めまして、土屋康太様。ワタクシはご主人様のサーヴァント、キャスターです。以後、お見知り置きを」
「…………ああ、よろしく頼む」
ワタクシが頭を下げると、土屋様もそう淡々と返事をしてくれた。
ふーむ、寡黙な方なんですかね?
「ところでムッツリーニ。キャスターを見て思うところ、ない?」
「…………思う所?」
そうご主人様に質問されて、土屋様は改めてワタクシの姿をジロジロと見始めていく。
あちこち見た後、ワタクシの頭あたりを見て……
「…………狐?」
「うん、そうだね。狐だね」
「それが聞きたい事か? 明久」
「うん、まあそうだね」
「…………? よく分からないが、こんな特徴的なサーヴァント、あまり人前で見せない方がいい。簡単に真名バレするぞ」
「それに関しては、私も同感です。吉井さんは、少し警戒心が無さすぎます」
「あはは、ごめんごめん」
そう言ってご主人様は軽くお二人に誤っておりました。
むう、それでしたらワタクシも霊体化して消えておりますか。
そう思って、ワタクシはその場で姿を消して様子を見る事にしました。
「…………ところで明久、この後暇か? 久しぶりに会った事だし、ご飯でも食べ無いか? 今日は俺が奢ってやるぞ」
「いやー、ごめんね。この後ちょっと保険医の桜さんに頼まれごとがあって。他にも用事があるから、今日は遠慮しておくね」
「…………そっか、残念だ。じゃあ、またな」
ご主人様は土屋様の誘いを断り、それを受けて土屋様はそう言って去って行きました。
『よろしいのですか? ご主人様』
「うん、桜さんの用事が先約だしね。あー、そうだキャスター、後でみんなと相談があるんだけどいいかな?」
『ワタクシは構いませんよ?』
「(みんな?)……とりあえず、腕輪は渡したのでもうよろしいでしょうか?」
「あ、うん。ラニもありがとうね。それじゃ、また」
「はい。……また、ですね」
そう言って、ラニさんと別れましたが……
うーむ、あのラニさんの最後の言葉……なーんか含むものがありましたね。
大方、次の対戦相手が一筋縄じゃいかない相手なんでしょうが……まあ、こればかりは考えても仕方ありません。
この聖杯戦争の都合上、残酷ですが、どうしようもない事ですから……
「それじゃあキャスター、桜さんの話を聞きに行こうか?」
『はーい、了解です♪』
そうして、ワタクシ達は保健室に向かって行きました……
☆★☆
──一方その頃、マイルーム
「……うむ! すっかり綺麗になったな!」
「そうだな。あれだけあった机や椅子ごと全て仕舞ったから、だだっ広くなったな」
私達はマイルームの片付けを、ひとまずひと段落させた。
置き物を全部端末にしまった後、掃除用具箱の箒と塵取りで、細かいゴミを回収し終わった。
後は再度、端末から必要なものだけ取り出して設置していくだけだ。
「うむ! では早速必要なものを取り出して……んー……」
「セイバー?」
「…………余計な項目が多い!! どれが何処にあるか分からぬ!!」
「君が仕舞ったんだろうが!!」
予想できた事だが、やっぱりアイテム欄を圧迫してリストがめちゃくちゃになっていたらしい。
全く、楽をしようとしたからだ……
「むう、検索機能とかないのか? 不便だな……」
「面倒なら、貸した前。私が取り出す」
「いや、良い。余が今最優先で出したいのは……お、あったぞ!」
そう言って、セイバーは片手を何もない空間に差し向けながら、もう片方の手で端末を操作する。
そう言って取り出したのは……
「うむ! ベットだな!! やはり机なんかより、ちゃんとしたベットで寝た方が良いからな! アーチャーもそうであろう!」
「そうだな。そのベットが“保健室のベット”でなければ言う事なかったな。本当に」
……おい。
「セイバー、君はまさか……」
「うむ! しかしやはり、この端末は便利だな! 到底扉をくぐり抜けられそうもないこのような家具も、簡単に持ち運べて設置出来るのだから! うむ、便利だ!」
「そうだな。ところで、そのベットの出所なのだが……」
「ふわーあ……何だかもういろいろがんばったせいか、疲れたぞ。早速このベットで一休みするとしよう。うむ、おやすみー」
「──そのベットの出所なんだがなあああっ!!」
「うわあぁっ?!」
何も言わずに寝付けようとするセイバーに対して、逃さないように大声でツッコミを入れる。
いや、これは本当に無視できんぞ!?
「セイバー!! その保健室のベットだが、君まさか!?」
「んー? うむ、“保健室から持って来た”だけだが?」
「やっぱりかあ!?」
彼女、俺達がつい昨日まで寝泊りしていた保健室から、ベットを端末にしまって持って来ていた!?
本当に何をやってくれてるんだ、君は?!
「なんで持って来た!? すぐに返してこい!!」
「いや、アーチャーよ……これには深いわけがな」
「ほう、言ってみたまえ……」
「単純に、机の上で座ったまま眠るのはキツいのだ」
「それは分かる」
まあ、言いたいことはよく分かる事だった。否定はしない。
まあ、気持ちは凄く分かるが……
「そこに来て、ここ一週間の保健室のベットで寝てたであろう? あれも最高とは言えぬが、比較的柔らかいマットレスに、掛け布団もある環境……手放したくなくなるのも分かるであろう?」
「まあ分かるっちゃ分かるが……今保健室、ベット無いって事だよな、それ」
「大丈夫であろう。きっと備品があって、二つくらい。余と奏者の分で十分だし」
「さらっと自分とマスターの分としているな? そして二つって、確か保健室のベット下から2つしかなかっただろ」
おい、これベット全部持って来た事になるんだが。
これ絶対桜困ってるだろ。
いや、困ってるだけならまだマシだ。怒ってオレに対して何やってくるか分からん!!
「それに、桜から何か注意があったとしても、紅茶を差し出せば多分十分であろう」
「俺を生贄にする気満々か!? そんなの許せるか、さっさと起きたまえ!! そしてすみやかに返しに行きたまえ!!」
「いーやーだー! アーチャーこそ、氷の城で自己犠牲しようとしていたではないか! だからお望みどおり、自己犠牲のタイミングこっちで新しく作っておいたのだぞ!」
「ああそうか、ありがとな畜生!! でもこんな自己犠牲はごめんこうむる!!」
セイバーを無理やりベットから引き剥がそうとするが、こいつシーツをがっしり掴んで離さない!
くっそう、ステータス互いに落ちてるばっかりに!!
こうなれば、端末だけ奪ってベットを仕舞い直して……
「……何やってるのさ、アーチャー」
「ま、マスター!?」
「紅茶が、セイバーさんを襲ってますね……」
「うむ、襲われておる。奏者ー、助けてくれー」
「誤解だ! いやマジで誤解だ!! 断固として違うと言い張る!」
いつの間にか戻って来ていたマスターとキャスターに、冷たい目で見られてしまっている!?
なんでよりによって変なタイミングで帰ってくるんだ!? 幸運Jだからか!?
セイバーも悪乗りするな!?
ただでさえ最近桜関連で洒落になってない状態なんだからな!!
……とりあえず、マスター達に一から説明してことなきを得た頃。
「まあ、やっぱりこっちの勘違いだって事は分かったよ……それは置いておいて、桜さんからの伝言があるから伝えていいかな?」
「伝言?」
「二つあって、まず一つは“消えたベットの行方について”の相談だったんだけど……だったんだけど……ここに、何故かあるよね?」
「うむ、そうだな奏者よ。解決だな?」
「原因が何言ってやがりますかこのバカ皇帝」
気づかなかったという点で言えば、連帯責任になるんだろうな……
後で桜に謝りに行こう……
「──で、二つ目なんだけど」
「ふむ」
「僕達のマイルームが、“何者かに進入された形跡”があるらしくて」
「ふむ?」
「要は、マイルームがセキュリティ上不信な状態になってるんだって」
「はあ?」
「それで、桜さんから暫くマイルームを使うより、“引き続き保健室を拠点にした方が安全ですよ”って。僕達専用にセキュリティ権限引き上げてくれるらしいから」
「は?」
……オレはその言葉を、暫く理解する事が出来なかった。
「……い、いや待て!? なんでそんな事になってるんだ!? いや、そもそも保健室をこれ以上使い続ける事自体不味いだろう!? 今まで端末が壊れていた事情だったからともかく、新しいのが支給されたなら使い続けるのは駄目だろう!?」
「あー、そこ聞いたんですけど、なんでも3回戦終了まで来るとわざわざ保健室を使うような参加者が居ないようですねえ。私達みたいなのを除いて。だから保健室を実質私物化しても、特に問題ないと桜さんがおっしゃっておりました」
「なんと。それならわざわざベットを運び込む必要も無かったな。むう、戻すの手間だな」
「ちゃんと責任持って返して来てくださいね。そして桜さんに怒られてください。ほらアーチャーさんも、いつまでショック受けてるんですかー」
「な、何故そんな事に……いや待て、何者かに侵入? ……っは!?」
……そこでオレは思い出した。
マイルームにいつの間にか置かれていた、お宝本の存在を。
あれがあるという事は、誰かがわざわざマイルームに入って置いて行ったという訳で。
そしてそれは我々の誰にも該当しないという事は、別の誰かがやったという事で。
……そして、そのラインナップを用意する理由がある存在が、一人いる事を。
──ウフフフフ
……つまり、
「っちょ!? アーチャーどうしたの、急に崩れ落ちたりして!?」
「気にしなくていいですよ、ご主人様」
「うむ、早速また保健室に向かおうではないか! ちょうど荷物も全部端末に入れてたしな、持っていくのもラクチンだ!」
「保健室を石像まみれにしないでくださいねー」
──こうしてオレは、安住の地となる場所を失ったのだった……
☆★☆
……アーチャーの予想は、半分当たっていた。
あの保険医が、こっそりマイルームに侵入した事は正解ではある。
だがしかし、それは吉井明久達に支給される端末を利用して入り、しかも事前にキャス狐が同伴だった為、特に問題のない行為だった。
(つまり、キャス狐は逆にお宝本の設置については事情を把握していた)
「…………」
……今回明久達のマイルームに不法侵入の形跡があったのは、別の参加者からの不法アクセスが原因であった。
実際に侵入は成功はしていなかったが、後もう少し時間をかければなんらかのトラップ等は仕掛ける事ができただろう。中まではいかずとも、例えば、入る直前の入り口で作動するものならば。
これを察知した保健室の桜は、セキュリティレベルを保険医の権限で可能な限り最大まで上昇。
本来負傷した参加者を安全に隔離するために使う、マイルーム以上の複雑なセキュリティを作動させた。
これで保健室を利用し続ける限り、今回みたいな不正アクセスによる被害から吉井明久達は守られる事になった。
「…………そう簡単には、いかないか」
マイルームのあった入り口から、フードの人物がそう呟いて、そこから去っていった……
<没ネタ>
「全く。ちゃんと掃除用具を使いたまえよ」
「はーい……」
そうしてセイバーはマイルームの隅の掃除用具箱に向かう。
そうそう、それで良いんだ。
まあ、とは言っても最初は大きめの石像の破片を片付けるだけだから、掃除用具の出番は無いかもしれんが。
どちらかというと、細かい破片を取るために塵取りと箒位か?
まあ、先に準備しておくのも悪くないか。
「アーチャーぁ。なんか掃除機っぽいのが入っておるぞー」
「掃除機? 学校の教室モチーフなのに、そんなのも入っていたのか?」
いやまあ、場所によっては不思議では無いか?
まあ、あるならありがたく使わせて貰おう。
「よし、ではセイバー。それを使ってくれ。そうなるとあれだな、しょうがない。私が大きい破片を運び出すから、セイバーは細かい破片とかを掃除機で吸い取ってくれるか? 最も、それほどの吸引力があるかどうかは分からんが」
「うむ、承知した」
そうしてセイバーはプラグを部屋のコンセントに差し込んだ。
よし、これで準備完了だな。
「それじゃあ、この大きめの奴を私は運んで……」
「いっけー!! 吸引力“強”!! 最大火力!!」カチッ!
ビュゴウッ!? ←(凄まじい吸引力発生)
ズポッ!! ←(大きめの大理石の破片がノズルに引っ掛かった音)
「…………は?」
「むう、引っ掛かってしまっておる。逆噴射ー!!」
ゴウッ!! ←(破片が射出される音)
「あっぶねええええええッ?!!」
発射された破片が、ドゴンッ!!? と教室の壁にぶち当たった。
衝撃で粉々に砕けている! いやマジで危ないなこれ!? 当たったら即死だったぞ!?
「セイバーッ!? なんだその掃除機はぁ!?」
「い、いや!! 余も知らんぞ!? だって最初からこの中に入っておっただけだし……!」
☆★☆
「……あー。そう言えばあの掃除機、買ったまま用具箱に閉まったままでしたっけ」
「キャスター、何の話?」
「いえ、マイルーム戻るなら掃除しないとなーと思って、ふと思い返したんです。最初の頃、無駄遣いを繰り返してた時期に、良妻賢母としてお掃除もしっかりしなきゃなーっと思って買っていた掃除機が」
「あー、あの時の無駄遣い。でもまあ、じゃあ大した話じゃないんだね」
「いえ、あの掃除機思ったより吸引力が強力で、ヤバかったから閉まってたんですよね。確か“幽霊も吸い込める!! オバ■ューム!!”とかなんとか。なんかそのキャッチコピーが気になって、買っちゃったんですよねー」
「そのキャッチコピーいろんな意味で大丈夫!? どんな掃除機さそれ!?」
「それで、アーチャーさん達先にマイルーム戻ってるなら、掃除でそれ間違って使っちゃわないかなと。あれ、思ったより強力で取扱注意なので……」