Fate/Extra Summon (バカテス*Fate/Extraクロス) 作:新月
「──明久君達、大丈夫でしょうか?」
私は自分の3回戦を終えた次の日、明久君達を探すために校舎内を歩いていました。
この月の聖杯戦争に巻き込まれてから、私と明久君は常に緊張を強いられる毎日です。
私も、無事三回戦は突破出来ましたが、心の負担が無いとは言えません。
──けれど、明久君と約束したんです。またみんなと勉強会をやるって。
その約束が、私の精神的な大きな支えになっています。
だから、この約束のために私はまだ倒れません。
──例え、明久君と一緒に帰る目処がまだ見つかっていないとしても。
このトーナメントが終わるまでに、一緒に生き残る方法を、必ず。
「……それはそれとして、今少しでも会いたいです」
凛ちゃんに聞いたところ、明久君達も3回戦を終えていると聞きました。
その凛ちゃんはまだ試合が終わっていないようですが……先に私も、明久君達の顔をみたいです。
だから校舎内を隅々まで探している最中なのですが、なかなか見つかりません。あうう……
これはマイルームに閉じこもって、出て来ていないのかなと思っていると……
「……お。姫路か」
「へ? さ、坂本君!?」
そこには、私たちのクラスメイト、坂本君がいました!
私はすごく驚きました! 嘘ですよね!? なんでここに!?
「ほ、本当に坂本君ですか!?」
「ああ。それ以外に何があるんだ、姫路?」
「う、うわあ! 明久君意外に、文月学園のみんなと会えるなんて──」
嬉しいです。と、言おうと思った。
──けれど、ここは聖杯戦争。
この場所にいるということは、この殺し合いに坂本君も巻き込まれて……
「ん? どうした?」
「い、いえ!? なんでもありません! それより、坂本君も来ていたんですね、この月の聖杯戦争に」
「ああ。一回戦の時、明久に出会ってたぞ」
「そうなんですか!? 明久君、教えてくれても良かったのに……」
「他にも島田、秀吉、ムッツリーニもいるな」
「わ、わあ! Fクラスのみんなが勢揃いですね!」
怒涛の情報に、私は大変驚きました!
明久君に既に会っていた事も驚きですが、Fクラスのみんなも来ているなんて!
「もしかして、みんなとも一回戦の時に?」
「ああ、俺は会ってるな」
「そうだったんですね? 最近は……」
「ああ、ついさっき会ってきた。全員いるぜ」
「へー! そうなんですか! それはよかったです!」
私は喜びの言葉を、坂本君に投げかけます。
本当に喜ばしいことだと、私が思っていると伝わるように。
「そんでだが、姫路。お前もみんなに会いに来ねえか? 一緒にご飯でも食べて久々に親睦しようぜ」
「私は……」
そう言って、近づいて来た坂本君に対して。
私は、
「──何やってるの?」
「っお。明久か」
「あ、明久君!」
階段の上から、明久君がやって来ました!
明久君、そこにいたんですね!
「明久君、心配したんですよ! 3回戦終わってから顔見れてませんでしたから!」
「いやー、ごめんね姫路さん! ちょっとラニ達に私用と、頼まれごとがいろいろあったから、それで会うのが遅れちゃった」
「もう、プンプンです!」
私は明久君にそう言います。けれど、内心は少し安心していました。
元気そうで良かったです。……3回戦の相手が、あの小さい女の子達らしかったので、明久君落ち込んでなければいいと思っていたのですが、少なくとも表面上は問題無さそうに振る舞えているので、まだ良かったです。
本当は、明久君はすごく傷ついているんでしょうけど……この聖杯戦争は、そんな気分の事は一切考慮してくれませんから。
「それはそれとして。……二人とも、何やってたの?」
そう言って、明久君は私と坂本君の間に入ってくるように移動して、会話に割り込んで来ました。
あ、あう。明久君近いです……
あ、そうだ。
「明久君、セイバーさん居ますか?」
「ん? いるよ、ほら」
「うむ! 久しいな、瑞樹よ」
「あ、セイバーさん! お久しぶりです!」
私がそう問いかけると、セイバーさんが霊体化を解いて姿を現してくれました!
その姿はいつも綺麗で、赤いドレスがひらひらと舞っています。
はい、以前見かけた通りです! 間違いなく、明久君のセイバーさんです!
「ありがとうございます! ちょっと姿が見えないなと気になってたので」
「そうかそうか! 余にそんな会いたいと思っておったのか。うい奴よ〜。瑞樹、お主のこと前から気にしておったが、気に入ったぞ!」
「あはは……ありがとうございます」
「おーい、俺を無視するなよ」
「あ、雄二いたんだ」
「おいテメエ。さっき直前まで話していただろうが。すぐ忘れたのかよこの鳥頭が」
「むう。奏者よ、では余はまた消えるぞ。またな、瑞樹」
「はい。セイバーさん、ありがとうございます」
そう言って、セイバーさんはまたその場で霊体化いたしました。
これでこの場にいるのは、私と明久君と、坂本君だけになりました。
「で、雄二どうしたのさ?」
「どうしたって。姫路に会ったから久しぶりに秀吉達も含んで、一緒にご飯食べないかって誘ってたんだよ。お前もどうだ、明久?」
「へえー、そうなの! どこで集まる予定?」
「そうだな、教会の目の前の中庭でもどうだ? あそこ結構雰囲気いいし、オススメなんだが……」
「あー、ごめん無理。僕今教会に近づけなくて」
「どんな言い訳だよ!?」
「明久君、一体何があったんですか?」
「いや、ちょっと。ね……」
そう言うと、明久君は後ろめたいように目を逸らし始めました。
本当に一体何があったんですか……?
「っち、そうかよ。じゃあ場所変えてやるから、そっちで……」
「あー、それなんだけどさ雄二。……ちょっと姫路さんと二人っきりになりたいから、今回は見送ってくれない?」コソコソ
「なんでだよ。俺がなんでその希望を叶えなきゃ行けねえんだよ」
「ひどいや雄二! 親友の頼みなんだよ! 同じFクラスとして見守ってくれてもいいじゃないか!」
「むしろFクラスだからこそ、テメエが女子と仲良くしそうな場面は積極的に邪魔するだろうが」
「最悪だこいつ!? わかっていたけど最悪だ!!」
「あはは……」
私は目の前の明久君と坂本君の会話を見て、懐かしさを感じていました。
本当に、懐かしいです……
「それはともかく、この後どうし……」
「──っ!! 隠れて!!」
っ!!
その明久君の真剣な表情に、私はただ事じゃないと分かりました。
咄嗟に私たち3人は、近くの階段に身を潜めます。
すると、廊下の奥……“視聴覚室”から、誰か出てきました。
「……くそっ」
あれは……確か、葛木先生?
息を潜めて待っていると、葛木先生はどこかに去っていきました。
「……ふう。何も無かったか……」
「明久、一体どうしたよ?」
「何か、あの人とあったんですか?」
「3回戦始まる前に、襲われた」
「ええっ?!」
サラッと言われたその言葉に、私は驚きました!
た、対戦相手じゃないのにですか!?
「だから、警戒するに越したことはないと思って隠れてもらったんだけど……何もなくて良かったよ」
「そ、そうですね。危なかったです……」
「なあ? あそこ視聴覚室だろ? あいつあの部屋で何やってたんだろうな?」
私たちが一息ついていると、坂本君がそう聞いてきました。
確かに、一体何しに入ったんでしょうね?
一回戦の時に校舎内を一通り見て回りましたが、あの部屋は特に変わったものも用事もないように思えましたが……
「……なあ? ちょっと調べにいかねえか?」
「ええ!? 本気?」
「いずれ戦う相手になるかもしれないだろ? 情報手に入るんだったら、少しでも探れるもんは探ったほうがいいんじゃないか?」
「……そうですね、一理あります」
私は坂本君の言葉を否定できませんでした。
実際明久君が襲われているなら、危険な相手には変わりありません。
対策手段は、一つでも見つけられるなら探したほうがいいとは思いますが……
「むう……じゃあいいけど、言い出しっぺの雄二が先頭に立って入ってよね」
「ひどいなテメエ。生贄かよ……」
「いいじゃん別に。頼りにしてるよ、クラス代表っ」
「たくっ。都合がいいこって……わーったわーった。俺が先入る」
そう言って、私たちは視聴覚室前に一緒に移動しました。
目の前の扉は、葛木先生が開けたままです。
「それじゃあ、入るぜ」
「うん。姫路さんは、最後に入ってもらう形でいいかな?」
「はい、分かりました」
そう段取りを決めて、坂本君が先に入り、次に明久君が入って、私が最後に部屋に入りました。
……特に何も襲ってきません、ひとまず大丈夫のようです。
「ふう。何もなくて良かったぜ……」
「そうだね……? あれ、なんか光ってる?」
ふと、部屋の中を見ると、映写機が動いていました。
ですが、なんでしょう? 動いているのにスクリーンに何も映ってませんね?
「なんだあれ?」
「ちょっと調べてみよっか」
そう言って、明久君達は映写機に近づいていきました。
近づいても、特に変わった様子は……いえ。
ザザッ……ザザッ……
「明久君、それなんらかのコードが使われた後がありますよ?」
「そうなの? 葛木先生……じゃ無かった、ユリウスだった。あの人は何をしてたんだろう?」
そう言いながら、明久君は映写機に手を伸ばし──
「──? 雄二、何か言った?」
「あ? 何も言ってねえぞ?」
「へ? あれー……?」
急に坂本くんの方を振り返り、何か疑問に思っているようでした。
一体どうしたんでしょうか?
何か坂本くんと話しているようですが……それでしたら、今のうちに私の方で調べておきましょう。
そう思って、私が代わりに目の前の映写機に手を伸ばして──
「うーん、確かに聞こえたような気がしたんだけど……」
「一体何がだよ?」
「──なんか、“君は触るな”って言葉が──」
「ああああぁああああああぁああああああああぁあああ────ッッッ??!!!」
痛い痛い痛い苦しい苦しい苦しい辛い辛い辛い
体中の血が沸騰する神経が焼き切れる脳味噌が焦げている
反転する信号が逆流する手足が捻れる天地が逆さまになる
──死、に──
「──じ、さ──」
「──めじ、さ──」
「姫路さんっ!?」
「うっ……あっ……?」
あ……生き、てる……?
私は、自分の手をゆっくり、グー……パー……と動かして、私がまだ生きてることをようやく理解できました。
私の体は、いつの間にか明久くんが支えてくれていたようです。
迂闊でした……多分、触った時に反応する攻撃プログラムだったんでしょうか?
だとしたら、無警戒に触った私のうっかりミスです。凛ちゃんに叱られちゃいますね……
それはそれとして……
「おいおい明久、何木刀なんてこっちに向けてんだよ?」
「…………っ」
──
……私は、ボーッとした頭でその光景を見ています。
「たく、俺はなんもしてねーって。姫路が倒れたのだって、ユリウスって奴が仕掛けた奴なんだろ? じゃあ俺を警戒する意味なんてねーじゃねーか、なあ?」
「…………」
「おいおい、俺が姫路に、友人に手を出すような男に見えるか? いい加減警戒を解けって」
「…………そう、だね。ごめん、姫路さんが倒れたからテンパっちゃった」
そう言って明久くんは坂本くんに謝っていました。
けれど……その目線は、いつもの坂本くんに向けるような普通の目ではなく、最大限に警戒し続けたような……
「とりあえず、一回ここを離れるよ。姫路さんを、保健室に運びたいし」
「よし。それじゃあ、俺も一緒に運んで……」
「雄二は先に出て! ユリウスが戻ってくるかもしれないから、ちょっと見回りして欲しい」
「あ、明久くん、私は大丈夫です……」
「そんなわけにもいかないでしょ!」
「……ん? おい、明久。なんかスクリーンに映り始めたぞ?」
え?
その坂本くんのセリフに、私たちもスクリーンに視界を移します。
そこには、さっきまで映っていなかった映像がありました。
ギィンッ! ガキンッ!!
「これは……決戦場の風景でしょうか? 戦ってるのは……凛ちゃん!?」
私は驚きました。この映像に写っているのは、間違いなく凛ちゃんです。
教えてくれた凛ちゃんのサーヴァント、ランサーさんも一緒です!
まさか、葛木先生はこれを見ていたのでしょうか?
いつの映像なんでしょう? 一回戦、二回戦、三回戦? ……それとも、今?
対戦相手は……嘘。
「明久君! 対戦相手が……!」
「っ!? ラニ!?」
間違いありません。あれはラニさんです!
凛ちゃん同様に、何度か明久君を助けてくれていたラニさんです!
まさか、あの二人が戦っているなんて……!
……この戦いで負けた方は、死ぬ。
分かっていたことでしたが、いざ知り合いが目の前で争っているのを見ると、心が締め付けられました。
私たちは、どうしたら……
「……ん? おい、なんか褐色の方の女が何か様子がおかしくねえか?」
「え? ラニが?」
「……っ!? 明久君、あれ!!」
『■■■■■■■■■〜ッ!!』
『申し訳ありません、師よ。あなたにいただいた
『魔術回路の臨海収束……! 捨て身にもほどがある、そんなのただの自爆じゃない……!』
『ヒュウ、カミカゼってやつか? さてどうするかねお嬢ちゃん? 確かアンタらの専売特許だろ、ありゃあ?』
「嘘でしょ!? ラニが自爆!?」
「あわわわわ!? そんな、それじゃあ二人とも死んじゃいます!?」
そんな……!? ひとり死ぬだけでもすごく悲しいのに、このままじゃ共倒れです!?
なんとか……なんとか出来ないんですか!?
私たちはそう焦り──
──完全に坂本君から視線を外してしまいました。
「────」ニヤァ
気づいた時には、坂本君の手が明久君の体に──
「奏者ぁッ!!」
「っ!? だらっしゃああぁあぁぁぁああああ!! 」
「グゴおおおおおおッ?!!」
直後、実体化した赤セイバーさんの呼びかけに反応し、明久君は“全力で木刀を振るっていました”。
躊躇の無いその攻撃は、坂本君の動体を捉え、スクリーン側に大きく殴り飛ばしていました。
飛ばされた坂本君は、スクリーンの映っている壁にぶつかり、そのままずり落ちます。
「……あ、明久テメエ、一体何を……」
「いい加減にしろっ!! “誰だお前は!!”」
明久君はそう、目の前の坂本君……いえ、“坂本君では無い誰か”に向かってそう言いました。
……やっぱり、そう言うこと、なんですよね? 明久君……
……私も、さっき会った時から警戒していました。
もしかしたら、参加者の誰かが私の記憶を読み取って作った変装なんじゃ無いかって。
凛ちゃんが、魔術師ならそんなことやってきてもおかしく無いって。だから警戒していました。
この様子だと、多分明久君も気づいていたんだと思います。おそらく、私よりも先に……
「“お前だけじゃ無い!! ” 美波も、秀吉も、ムッツリーニも!! “全員が別人だ!! ” お前たちは誰だよ!!」
「──へえ? 気づいていたのかよ。吉井明久、馬鹿という記録の割には、勘がいいじゃねえか」
そう言いながら、坂本君はその場で立ち上がりながら、不適な笑みをこっちに向けてきました。
……ですがその笑みは、“記憶の中の坂本君と一致しません”。
だから、彼は坂本雄二君では無い、です。
「あなたは、誰なんですか? 参加者のうちの一人ですか!?」
「まあ、一応そうだな。俺にも参加券はあるっちゃある」
「っ!! 何のために、こんなことを! なんで僕たちを襲った!! 他の参加者を倒すためか!?」
「──“腕輪”だよ」
「「腕輪っ?」」
その言葉に、明久君の腕につけている“白金の腕輪”と“黒金の腕輪”を見つめます。
明久君も連想したのかチラッと見ていましたが……
「そっちじゃ無い。“召喚獣”の方さ」
「召喚獣?」
「ただまあ、“今はそっちはいい”。今のはついでに手に入ればいいと思って襲っただけだし、もっと便利そうなものが“目の前に湧いてきたからな”」
そう言って、坂本君の偽物はスクリーンに手を触れ……“赤黒い泥”がその手から溢れ出してきました。
「な、なんですかあれ!?」
「っ!? 三回戦の時の、氷の城で見た!?」
「あばよ!! 吉井明久、姫路瑞樹さんよお!!」
「っ!? 待てえッ!!!」
そう言って明久君は全力で木刀を振り下ろしに行きますが……“体全てを赤黒い泥”に変えた偽物さんは、そのまままるでスクリーンに吸い込まれたように消えていきました……
☆★☆
「ラニの心臓、あれ本物の
「──チ、しゃあねえなあ。嬢ちゃん、あっちの嬢ちゃんの心臓、貫くぞ」
「出来るの、ランサー!?」
「五分五分だな。あのでかいヤツの妨害があるだろうが、他に手はなさそうだ」
「■■■■■■■■■──ッ!!」
「聖杯の入手が叶わぬ場合月と共に自壊せよ──。これにより最後の命令を実行します」
「仕方ないわね──宝具の開帳! それで中心を穿ち切って!」
「おう! らしくもなく大盤振る舞いか。いいね、いよいよ決着だ」
決戦場の、凛とラニ達は互いの対戦相手に集中していた。
次の瞬間には、もろとも爆発か、それともランサー達が生き残れるかの瀬戸際だった。
「ゲイ──ッ!!」
「■■──ッ!!」
だからこそ、他の要素に気づかない────まさか、この場所に侵入者が現れるとは
「良いね、その心臓。俺にくれよ」
「っか、は……ッ?!」
ラニの背後から、彼女の心臓が……“誰かの手で、貫かれていた”。
「っ!? なんだぁ!?」
「っは? 何!?」
「■■──ッ!?」
「
「が、あぁッ?!」
貫かれた腕が、ラニから無理やり引っこ抜かれる。
そこにいたのは、坂本雄二……いや、その偽物だった。
その手には……ラニの心臓にあったもの。
「爆発するのか、そうはさせねえなあ……」
そう言って、偽物の手から“赤黒い泥”が湧き出て、心臓にあった“宝石”を泥で染め上げる。
宝石が、泥の色に混じるように染まり──爆縮が治まっていく。
「……っクックック、はぁーはっはっはぁッ!! これは予想外の掘り出し物を見つけたぜえ!!」
「何何!? 誰、誰なのよアンタ!? なんでここにいるの!?」
「テメエ……ろくなヤツじゃなさそうだな」
「■■■■■■■■■■──ッ!!!」
高笑いを上げている偽物に対して、バーサーカー……ラニのサーヴァントが彼に襲い掛かる。
理性を失い、令呪を使って任務遂行を強化されていたとしても……主人の危害に対して、反撃しようと。
「おっとお!? あぶねえ、あぶねえ」
そう言って、偽物はひらりと躱し、人間では考えられない跳躍でその場を離れる。
そして、決戦場にあったオブジェクトの一つに乗っかり、ランサーとバーサーカー達を見下ろしていた。
「よう、初めましてだな。……いやあ、何度か“別の顔”で会ったか」
「は!? 何言ってるの、いやそんなことより、あんたなんでこの場所にいるのよ!? 私たち以外入れない筈よ!」
「はっはっはぁ! 俺は出自が“特別性”なんでな。それはそうと、そうだなあ。──……最近だと、こっちの顔の方が、そっちには分かるか」
そう言って、偽物雄二は顔を手で一瞬隠し……次の瞬間には、ムッツリーニの顔になっていた。
「っ!? あなたは……昨日会った、吉井さんの友人!?」
「はあ!? あのバカの友達!? なんでそんなのが、ここにいるのよ!?」
「…………この顔だと、喋るの不便だ。──ツーワケで、こっちに戻すぜ。こっちの方が便利なんでな」
「また顔が変わった……!! あんたは一体何なのよ!! あのバカの友達なら、何でこんなことすんのよ!」
「別に、“俺は”友達でも何でもねえしなあ。……そんなことより、せっかく楽しい楽しいオモチャを見つけられたんだ。ちょっとテメエらで早速試運転とさせてもらおうか」
「ッ!?」
そう言って、偽物雄二の手に握られた、ラニの心臓だった宝石がドス黒い光を放ち始めた。
それに呼応して、あたりに赤黒い泥が湧き出てくる!!
「さあ、せっかくだ……“お前らも頂いて行こうか”!!」
そう言って、赤黒い泥から複数の“召喚獣”が湧き出ていった……
☆★☆
「凛ちゃん!! ラニさんっ!?」
「あいつ、どうやって!? くそ、これただのスクリーンでしょ!?」
映像の中で、坂本君の偽物が赤黒い泥を出して、凛ちゃん達を襲い出し始めたのが見えました。
それを見て明久君が、坂本君の偽物が消えていったスクリーンをバンバン叩いて、何かないかと探していましたが、何も見つかりません。
「あやつめ! こんな芸当を隠し持っていたとは……奏者の友人の姿を取っていたとは、何事だ?」
「セイバーさん!」
先程明久君に呼びかけをしてくれた時から、実体化したままのセイバーさんがそう言いました。
まさか、こんなことになるなんて……
「ご主人様!! 危なかったですね!」
「マスター!! 昨日相談を受けてはいたが、こんなに早く懸念が実現するとはな!」
「っ!? 他のサーヴァント!!」
私は、セイバーさん以外のサーヴァントがこの部屋に急に現れたことで、咄嗟に警戒をします。
って、あなたたちは購買のアルバイトさん(キャスター)と、食堂の人(アーチャー)!?
よく見るあなたたちが、何でこんな場所にいるんですか!?
「だあーっ!? 待って待って、姫路さんその二人違う! 僕の仲間だから大丈夫!!」
「はい! 私たちもご主人様、もとい吉井明久さんのサーヴァントです!」
「え、ええ!?」
また新しい驚くことがありました!
え、嘘ですよね!? 明久君、サーヴァント複数人いるんですか!?
「マスター、そんなことよりどうする? “アレ”を放っておくか?」
「放っておくも何も、どうやってあそこに行けるのさ!? あの偽物雄二もどうやって行ったのかわからないのに!!」
「奏者よ、令呪を使え!! それなら行けるかもしれぬ!」
「令呪!? 氷の城の時みたいに?」
「はい! 今はそのスクリーンを通して、凛さんたちのいる決戦場まで繋がっています! 令呪で命令をくれれば、弱体化している私たちでもご主人様を連れて、あそこまで行けるかも知れません!!」
「そっか、よし……」
「待て待て! 本当に行くのか!? マスターの令呪は残り2画! 令呪が切れたら聖杯戦争の参加券を失うから、実質片道切符!! それにマスター、君はわざわざあの危険地帯に首を突っ込むのか? その必要があるのか、よく考えた上で……」
「うん、行く!!」
「うむ!」
「ですよね!!」
「はあ、だろうな!!」
私が混乱している間に、明久君たちはアレよアレよと話がまとまっていきます。
えっと、つまり、明久君たちは凛ちゃん達を助けに行く……!?
「っま、待って! わ、私も行きます!!」
私は、咄嗟にそんな大声を出しました。いつもの私の声量からは考えられないほどに。
明久君が振り向いて、こっちを驚いたように見てきます。
「姫路さん!? 危険だよ、姫路さんはここにいた方が……」
「私だって! 凛ちゃんの友達です!! 明久君たちが行こうとしているなら、私も行きます!!」
「無茶言っちゃダメだよ!? さっき倒れたばっかりでしょ!? ダメージ残ってるだろうし!」
「もう平気です!! それにこの程度、凛ちゃんたちの危機に比べたら全然へっちゃらです!!」
「でも……」
「私も!! 聖杯戦争参加者で、三回戦まで生き残ってます!! 明久君と同じです!! 置いていく必要は、ありません!!!」
明久君の言葉を遮るように、私の過去一番の大声でそう説得します。
その答えに、明久君は一瞬迷うように……
「姫路さん……」
「……奏者を連れて行けるのは、余たちが繋がっているからだ。瑞樹よ、そなたも来ると言うのであれば、瑞樹自身の令呪の消費が必要になるぞ?」
「構いません。躊躇なく、この場で切らせてもらいます」
「……分かった。一緒に行こう!!」
「っ!! はい!!」
明久君は、とうとう納得してくれたように、力強くうなづいてくれました。
これで、一緒に……凛ちゃんを、友達を助けに行けます!!
「キャスター! 黒金の腕輪、パス!! あっち行ったら、遠坂さんとラニの救出頼んだ!! セイバーとアーチャーも、そのサポート!!」
「もう! しょうがないですねえ、了解です!」
「うむ! 分かった!」
「ああ、承知した!!」
明久君がキャスターと呼んだ女性に、黒金の腕輪を渡していました。
私も、端末からすぐに使うだろうアイテムや礼装を整え終えます。
これで準備は整いました!!
「準備はいいか、二人とも!!」
「うん!」
「はい!」
「よし、唱えろ!!」
「「令呪を持って命ずる!! 僕達/私達を、
──その命令とともに、私の体が引っ張られていく感覚がするのを感じ取ります。
こうして、私は明久君達と一緒に、凛ちゃんたちのいる場所に向かうのでした……
ここから先、暫くオリジナル展開が続きます。
4回戦は、ある意味この小説の独自要素が多くなりそうです。