虚無海洋 ~Void Ocean~   作:八切武士

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彼女は“最古”ではなく。
“最強”ではなく。
“中庸”であった。

だが、その抜けた穴を埋められる者は居なかった。


幕間1:Lotusの憂鬱
Mission 1:~幕間:Lotus Children~


 

 

 Tennoはただ一人ではない。

 

 希望に満ちた……捉え方は様々あれど、未知への探求心を膨らませた若人達の遙かなる旅路。

 それが唐突に地獄に変わったあの日。

 

 地獄に堕ちて還りし悪魔の子等。

 

 利用されるだけ利用され、忌まれ、疎まれ、廃棄されゆく彼等を彼女は愛した。

 

 だから、彼女はLotusとなった。

 

 彼等は最早、彼女の子供達だった故に。

 子殺しを命じる主に“母”と“子等”は牙を剥き、勝利した。

 

 大役を成し遂げた彼等にひとときの眠りを。

 眠りを、その目覚めを見守り、育む。

 Lotusは常に彼等の“母”だった。

 

 それは、今も変わらない。

 

 高く積まれたコンテナの上で、一人の青年がやたらとキレのいい、ダンス?ポージング?をキメていた。

 

『Nef Anyoの手下共!おまえ等の悪行もこれまでだ、またまたLegsのパーツをバラしやがって、今年で何回目だよ!あいつの体はプラモじゃねえんだ!……The Sergentめ、今度こそにがさんぞ!』

 

 最後にびしいっ!と指さして糾弾を締めると、青年は宙へ身を踊らせる。

 

『とぅっ!』

 

 そして、ものの見事にCorpus Crewman達のど真ん中へヒーロー着地を決め、周囲をぐるりとねめまわす。

 いきなり現れたド派手な原色のピチピチスーツ……トランスファレンススーツに頭からつま先まで身を包んだ人物がよく分からん踊りを始めた事に流石に戸惑いを隠せなかったCrewman達も、流石に手にしたDERA(プラズマライフル)を持ち上げ、迎撃体制に入る。

 

『へあっ!とおっ!』

 

 しかし、その僅かな間に、青年は力強いアッパーからの回し蹴り、キレの良い左フック、コンパクトなエルボーと、次々に技を繰り出し、Corpus Crewman達を叩き伸ばしてゆく。

 

『いずぶちっ!いずぶちっぽいえ!』

 

 平べったい長方形のメットが吹っ飛び、ベージュのスーツがくの字に折れ、青色のスーツがコの字ハゲを晒してタラップを転がり落ちる。

 最新の光学兵器で武装し、パワーアシストを備えた全環境対応スーツに身を固め、更に大量の随伴ロボット兵器群を従えたCorpusの守備部隊を、青年はただその五体をもって蹂躙し、圧倒する。

 

 Warframeどこ行った?

 

 見る見るうちに密度を減じてゆく最前線にを支援すべく、朱色のスーツに身を包んだ一回り大柄なCorpus TechがSheild Ospreyを展開。

 追加シールドの青い光に包まれながらSUPRA(レーザーミニガン)による支援射撃をバラまくが、それは陽炎めいてダッシュした青年の影だけを打ち抜き、次の瞬間、全突撃力がのった肘が、シールドとスーツの防御力をあっさり突き破り、心臓の真上の胸骨を粉砕、哀れなCorpus Techは床の上でハートブレイクの苦しみにダンスじみた断末魔を晒して悶死。

 

『こら!逃げんな!』

 

 たまらず、背を向けて全力逃走に移ったThe Sergentに気づいて叫びをあげながら、青年は背後から忍び寄ってきていたProd CrewmanのPROVA(電撃バトン)を、後ろに倒れる様に振り上げられた肘下に肩をねじ込んで無効化しながら、右に体を素早く捻る。

 猫の様に着地を決めた青年の手にいつの間にかPROVAが握られていた。

 すぐさま元の持ち主の脳天に電撃殴打を食らわせてメットを弾き飛ばし、青年は一部のTenno達からは“Tennoしばき棒”と冗談めかして呼ばれているそれをバチバチ言わせながら振りかざし、The Sergentへ追いすがる。

 時折、映像が駒落ちした様に瞬間移動しながら、バチバチ電撃を飛ばすその姿は、正に、諸勢力が“VOIDから這い出た悪鬼羅刹”と恐怖するTennoの一つの貌であった。

 

 Lotusは仮面をちょっとズラして眉間をもんでから、別の視点へ切り替える。

 

 Grineerの基地の奥深く、捕虜が捕らえられている監獄エリア。

 視点はゆっくりと、そこを睥睨する様に移動してゆく。

 高い視界とその中に写っている長大なGORGON(ライトマシンガン)の銃身。

 そして、黄色く塗られた擬体の手足。

 視点は看守であるGrineer Wardenのものだろう。

 同僚と言葉少なに挨拶を交わして交代した彼女は、ゆっくりと区画を一回りした後、ごく当たり前の様に監獄区画へのロックを解除し、中へ入ってゆく。

 二階層に分かれ、更に左右に複数の独房があるそこは、空っぽの部屋や、感染体が放り込まれた“ハズレ”部屋混じりの筈だが、迷う事無く二階右奥の部屋へ歩み寄り、監獄の錠前を解錠する。

 

『な、なんだ……また、尋問でもするのか?』

 

 突然やってきた看守に戸惑う捕虜……“The Perrin Sequence”シンジケートの連絡員へ、彼女はどこかから取り出した、CESTRA(フルオートエネルギー弾ピストル)とバッテリを押しつけ、捕虜のスーツのダウンさせられていた防御機能を復旧させると……

 

『大丈夫、ここから脱出するから着いてきて』

『キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!! 』

 

 流石に驚き過ぎである。

 確かに、大抵のGrineerの兄弟姉妹達は会話するにしても、精々唸るぞ、叫ぶぞ、手が出るぞというのが関の山だから、急に流暢に話しかけられたら驚くのも当然と言えば当然ではある。

 しかも、その声が図体に見合わず妙に甲高くて子供っぽいのだから、違和感が凄い。

 

『ぐらんむ!』

 

 捕虜の奇声を聞き咎められたのか、エリアの扉が開く音と共に、どたどたという足音が近づいてくる。

 階段を駆け上がって姿を現したLancerが顔を覗かせるのと同時に、素早く階上まで移動した“彼女”が振り下ろしたGORGONの銃床が仮面ごと、彼の頭蓋を叩き潰す。

 

『追加の武器が手に入ったわ、慰謝料ね』

『あ、ああ……どうも』

 

 一瞬で持ち主と一緒に地面に転がったGRAKATA(アサルトライフル)を拾い上げて捕虜へ投げ渡し、予備弾薬とプラズマグレネードを剥ぎ取って渡す。

 けたたましい警報が鳴り響き、基地が息を吹き返した様に喧噪が満ちる。

 

『バレた!』

『みたいね、帰りましょう』

 

 慌てる捕虜に、妙に可愛らしく小首を傾げるデカ女フルボーグ。

 緊張感無く、すたすたと牢屋が並んだ区画を抜け、牢獄の監視エリアへ出てゆく。

 大扉を通った所で銃撃の歓迎を受けた捕虜と彼女は反撃、スピンアップ音を立てながらGORGONがバラ撒く重弾頭が、Lancerを二、三体蜂の巣に変えるが、道のあちこちに設置されたGrineer名物の四角い防弾風船“Blunt”に身を隠しながら、残りの兵達は粘り強く弾幕を張ってくる。

 

『くっ!』

 

 Grineer Wardenの擬体は重装擬体をベースに急所を中心に軟装甲を増設したもので、ノーマルのHeavy Gunnerみたいに、正面から銃弾の雨に身を晒し続ける事を想定していない。

 発射速度1,200/分という馬鹿げた発射速度を誇るGRAKATAが数挺束になれば、それはもう、銃弾の豪雨である。

 全身が火花を散らし、装甲から緩衝材が千切れとび、仮面に抉れ傷を刻み、見る間に全身が傷だらけになってゆく。

 

『ちくしょう!これでも……』

 

 捕虜がプラズマグレネードを用意した時、銃撃音が倍加した。

 思わず身を竦めて壁の裏にぴっちり背を預けて縮こまる。

 だが、銃撃は一瞬高まっただけで止んでしまい、恐る恐る壁の向こうを捕虜が覗くと、そこでは、もう見慣れたGrineerのLancerに、Elite Lancer、Trooper、Seeker達が、床に蜂の巣になって転がっているご同輩から剥ぎ取った装備をGrineer Wardenが広げた袋へごとごと放り込んでいた。

 

 オマエの忍務は火事場泥棒じゃなくて、捕虜救出だ!

 

『片付いた』

 

 もう、GORGONはどっかにやって、略奪品でぱんぱんになったずだ袋をサンタクロースみたいに担いだGrineer Wardenは顔が見えない癖に妙にどや顔をしてそうな気がする。

 

『いや、そっちは……』

『あ……うん、ナカーマ、なかま、大丈夫』

 

 新手の変なGrineer兵達の方を恐る恐る指さすと、彼女はこめかみ辺りを指でかりかりと掻き、とってつけた様に流す。

 変なGrineer兵達が急に、捕虜に手を振ってフレンドリーさをアピールしてくる。

 ごっつい装甲マシマシ、仮面厚めオプションのGrineerコンバットフルボーグが女の子っぽく可愛く手を振ってくるのは不気味以外の何物でも無い。

 多分仮面の下は、ボディビルダーのアピールタイムみたいな満面のマッスルスマイルになってる気がする。

 

『んん……わかった……』

 

 触らぬ神に祟り無し。

 捕虜は大人しく、変なGrineer兵達に護衛(連行?)されるのであった。

 道中、たまに抵抗するGrineer兵も居たが、隣の同僚にいきなりKRAKEN(バーストピストル)で頭をぶち抜かれたり、背後からCLEAVER(電磁中華包丁)でたたっ切られたり、見ていて実に嫌な死に様を晒して片付けられてゆく。

 そして、片付けた同僚から装備を回収したGrineer兵は、“よぉ”とばかりに軽く手を挙げると、当たり前の様に一行に加わるのであった。

 

 響き渡る警報の中、正に無人の野を征くが如し。

 それはいいが、Warframeはどこに置いて来ちゃったの?

 

 回収地点……基地の発着ポートでは、普通に沢山の人影が忙しそうに働いていた。

 GrineerのTusk Bolkor(ガンシップ)が数機と、それを鹵獲してTennoがランディングクラフトとして改修したSkautモデル。

 そこに積み上げられためぼしい資材類、そしてぐったり伸びたGeineer兵達をやたらと手際よく、後部ハッチから艇内へ放り込んでゆく。

 明るい色合いをしたGrineer兵達はSteel Meridianシンジケートの構成員だろう、Grineer兵とCorpus Crewman達が入り交じってるのはKahl's Garrisonの隊員達、頭頂部が盛り上がった銀色のスーツを着ているのはThe Perrin Sequenceのシンジケート員だろう。

 まるで、シータスの市場か、Tennoリレーの取引所じみた活気である。

 

 基地内で未だにアラートが鳴り響いていなければだけども。

 

 そして、それらに混じって楽しそうに床に伸びたGrineer兵達を物色しているのは、白を基調にし、金の差し色が入ったボディに、透明なゼリーの様なヴェール、腰には同様に透明ゼリーでできたふりっふりのフリルと触手っぽいリボン。

 全体的に見れば、ちょっとウェディングドレスっぽく見えなくは無いフレーム。

 狩りの女神、Wraframe“Ivara Prime”であった。

 彼女は、捕虜を救い出したGrineer兵達を従え、転がされているGrineer兵を検分しては運ばせている。

 

 何故、前線に“そっち”を出さないのか!

 

 いや、別に“Ivara Prime”が戦っていなかった訳では無い。

 Grineer帝国からの亡命希望者の脱出を幇助する傍らで、基地のGrineer兵を物色しては“欲しいの”へ“影縫いの矢”をぶち込んで生け捕りにし、更にめぼしい物資を“協力者”達の所まで“自分の手足(Specter)”達を操って運びさせる略奪活動に精を出していただけである。

 そこまで大きな基地でも無いので、資材はほぼ空っぽになるに違いない。

 彼女に狙われた基地こそ憐れなものであった。

 

 今回はThe Perrin Sequenceシンジケートからの構成員救出の依頼でそれを果たしてはいる訳だが……

 

(やり過ぎです)

 

 救出、潜入、脱出、確保、掃滅、ミッションを兼ね過ぎであった。

 辺境の小さな監獄基地一つを壊滅させただけ、とは言え、何故か、シンジケートの工作員とGrineerの支配体制に批判的な兄弟姉妹達が収監されていたり、それら収監者から情報を引き出す為に悪名高いGrineerの拷問特技官がたまたま派遣されていたり、更にたまたまGrineerが捕らえた犠牲者達から聞き出した情報に犠牲者の収監場所が基地のローカルデータベースにダウンロードされていたり……そして、警報は鳴っても、外部への緊急通信は途中のリレーが全て同時に“不幸にも故障”し、救援要請は届かない。

 普通なら決して重なるはずの無い偶然。

 それは、“こちらへ手を出せば生かしてはおかぬ”という分かり易い主張。

 

(……そこまで、考えてくれていれば良いのですが)

 

 Lotusは突如生じてしまった空白地帯にCorpusがどれ位で気がつくか、更に、“放棄された”基地を“収容”する為にいつ、どの程度の部隊が派遣されるか想定し、Grineerの奪還部隊に“助太刀”させる為に手頃なTennoの予定をおさえておく。

 

 この二人も、普段は“ここまで”やらかす方では無い……無かった筈だ。

 Lotusは、一人のTennoの事を思い浮かべる。

 

 彼女は、最古ではなかった。

 最強でもなく。

 多くの同胞を率いた事も無く。

 中庸で。

 同胞の中では埋没する様に馴染み。

 だが、彼女は調和を希求し、不屈で不退転の矜持を持ち、ひたすらにTennoであった。

 

 彼女がDojoごと姿を消した事を知り、Lotusは即座に捜索を行わせ、どの勢力が関わっているのか徹底的に調査させた。

 他のどのTennoが同じ様な失踪をしても、Lotusは同様に対処しただろう。

 しかし、“あの子”はLotusにとって、特別な一人であった事は否めない。

 過去に囚われたLotusがTennoに背を向け、Lotusを止めた時。

 指標を無くし打ちのめされ、自らの存在すら定かではなくなりながらも、異界へ挑み、不倶戴天の敵からすら協力を引き出し、這いずり、血を吐きながら追い続け、“あの子”は辿り着いた。

 他のTennoもそれぞれ動いてはいただろう。

 だが、“辿り着いた”のは“あの子”だ。

 Orokinの亡霊を打ち払い、過去から決別させてくれた。

 救った子が、今度は彼女を救ったのだ。

 

 結局、捜索は功を奏さず、“あの子”とDojoは破片一つ見つける事は出来なかった。

 Lotusは強い喪失感を感じながら、捜索態勢は縮小せざるを得なかったが、先に活動を確認していた二人。

 Zarmanで、“あの子”の同期であり、クラスメートで共に生きのこった二人。

 彼と彼女も喪失感に苦しんでいるのだろう。

 Tennoとしての鍛錬と矜持が表に出す事を阻んだとしても、いや、言葉として表に出せないからこそ、僅かなりとも行動に表れる。

 無論、最優先される事は忍務である事は二人とも理解し、そう行動しているだろう。

 が、Tennoとて感情はある。

 Lotusも“我が子達”が感情を無くしてなど欲しくない。

 “八つ当たり”気味な行動に出ている二人をフォローする必要があるだろう。

 

(……これは?)

 

 Lotusは大量に流れる情報の中に一通、直接自分に宛てられたメッセージを見つける。

 工作員からでも、“子供達”からでもない。

 警戒を強めながら、こう言った危険なメッセージを開封する際のセキュリティ手順として、スタンドアロンで通信機能のない端末へ移し、そこでデコード……Tenno達の使っている暗号コードの一つが使われている。

 そして、データへのしかけ、メッセージの光学、音声、電磁波の変調等々、間接的な仕掛けもない事を確認した後に、ようやく目を通し、もう一度、更にもう一度読み返す。

 

「……あの子達を呼びましょう」

 

 Lotusは椅子に背を預けて数秒間沈黙した後、問題児二人のスケジュールをおさえる為にメッセージを作成するのだった。

 

To Be Countinued...

 




 その頃、Origin太陽系では?……です。

 今回出てきた問題児二人は、ちょっと、他のTennoと違う特技を持っている子達です。

 ちなみに最初に出てきた青年は、色々叫んでますが、機密保持の関係上、外には聞こえてないので、CorpusCrewman君達からすれば、戦隊ヒーロームーブする謎のピチピチスーツマンが殴り込んできた感じです。
 下手すると、Tennoだって分かって無い……

 多分Tennoシバキ棒を持った彼に追われてたThe Sergent君は、トマホーク持ったゲッタードラゴンが追っかけてくる様な恐怖を味わっていたと思います。

 一応、もう一人の問題児ちゃんは、Warframe含めて複数体スペクターを操る事ができます。
 敵のスペクター作って搦め手で攻める方が彼女にとっては楽なので、あんまりWarframeで戦ってない感じです。
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