グリニア帝国の基地を占拠した感染体、その特殊個体の抹殺依頼。
銀河のバランスを調整する捕食者、Tennoの日常。
その日常が終わりを告げようとしている事を、まだ、“彼女”は知らない。
Mission 0:~Tenno 悪夢から来たりて、地獄を征く者~
『ターゲットはここにいます、居場所を見つけ出し、抹殺して下さい』
『はい、Lotus』
視界の端で揺らめくホログラムに思念で回答し、視界を上げる。
(やはり落ち着くな……)
叫びとも、おめきともとれない、無数の声が膚を打つ中でTennoへ平穏を感じていた。
虚像ではなく、有るべきものがそこにある事。
死力を尽くして取り戻した僅かな平穏。
殺到する熟しきった赤と黄色、濁った碧色の群れに平穏のままに、静謐をもって引き金を引くと、腕の中でQUELLORが軽快な射撃音を立て、元の姿も分からぬ感染者達がバラバラに吹き飛んでゆく。
『この基地は感染体で溢れかえっています、しかしそれらより一層凶悪な個体が奥に潜んでいるようです』
倒しても倒しても、ぶちまけられた腐汁とはらわたを蹴散らしながら殺到する感染者共を相手にして立ち止まっている暇などない。
『この個体は異形の獣にしては異常なほど俊敏です、押しつぶされないよう、足を止めぬように』
『はい、Lotus』
既に掃滅作戦を先行して開始しているグリニアの兵士達も、そこかしこで戦っているが、多勢に無勢。
ランサー達はチャージャーに押し倒され、這いずる肉塊から放たれる電撃で止めを刺される。
クリーパーを手に斬りかかったブッチャーは、エンシェントのワイヤーに引きずり回された挙げ句、引き裂かれた。
踏みとどまってGOLGONを乱射し続けるヘビーガンナーは、感染したオスプレイがまき散らす毒ガスで窒息して息絶えてゆく。
周り中、死と変異した感染体で埋まる。
テクノサイトウイルスが作り出した地獄。
生物も無機物も関係無しに広がる汚穢。
『我ラノ「器」ハ不死身ダ、同化シロ……』
脳裏に割り込んでくるざらりとした思念を振り払い、地獄のただ中を駆け抜け、行く手を遮る者どもに向け脚を叩き付ける。
叩き付けた脚から溢れた真菌が瞬時に増殖し、金属を引き裂きながら通路にみっしり詰まった感染体を喰らい尽くす。
啜った命の残滓を踏みにじって部屋へ飛び込みざま、手中にした感染種のポッドを投じる。
感染体のただ中へ投じられたポッドは、彼らが反応する前に触手塊に膨張し、周り全ての物を捕らえて圧縮、巨大な球を形成した。
床を思い切り踏み抜き、圧縮された球ごと、感染体共を真菌で喰らい尽くす。
喰らった命が五体に染み渡り、際限の無い感染変異を繰り返す続ける体をみしみしと変容させてゆく。
全身にかかるプレッシャーにNidusの体が軋んでいる。
変容の痛みとは違う、共振による怖気。
“同類”の敵が近いのだ。
グリニア特有の円形扉を跳び込む様にくぐり抜けると、広大に掘り抜かれた空間が姿を現した。
採掘跡を利用した基地には、大体似た様な空間がある。
そして、こういった十分な広さのある空間には、大体大物が巣くっているものだ。
目の前に巨大な四足歩行のクリーチャーが降って湧いた様に出現した。
四つん這いのままで3mを超す体高で、大した跳躍力だ。
(貧弱ナ肉体ヲ捨テテ、我ラノ仲間ニナレ)
『あの恐ろしい咆哮は非常に強力です、危険を感じたら身を隠すように』
Lotusのホロが囁くのと同時に、暗殺対象の個体、“Phorid”を中心に世界が歪んだ。
体中に釣り針を引っかけ、皮膚を引き剥がされてゆく様な激痛。
実際に超音波域の音圧により、表皮が泡立ち、裂けた薄片が飛散する。
だが、Lotusの言葉と痛みに逆らい、一歩を踏み込む。
Phoridが咆哮の余韻から立ち直る前に振るった拳が、ざっくりと、分厚い表皮を切り裂いた。
溢れた体液が固まり、見る見るうちに肉芽を形成するのが見えるが、構わず振り下ろされる前足を躱し、体の回転に合わせた蹴りを放つ。
拳よりも深々と突き刺さった、軟骨とは名ばかりの鉤爪“Hirudo”を足がかりにしてPhoridの背中へ駆け上がる。
躍り上がるPhoridの背中に素早く左の鉤爪を背中へ深々と突き立て、振り落とされそうになる反動で、両脚の鉤爪を叩き付けた。
肉に食い込ませた鉤爪で一体化した体に、Phridの連続した跳躍の衝撃がもろに入り、バラバラになりそうな激痛が走るが、体が離れないのであれば問題ない。
咆哮で集まった感染体共が踏み潰されるのを視界の端で感じながら、何度も、何度も、右腕を抉り込む。
腕が届く限り深い所へ、腕が届く限り、広い場所を抉り抜く。
『ターゲットの撃破を確認、回収地点へ向かってください』
Lotusの囁きに我に返り、もう動かなくなったPhoridから腕を引き抜いた。
重力に身を任せて転がり落ち、勝手に元の場所に戻る関節の痛みを感じながら地面を蹴りとばし、ボスの遺骸に群がる感染体の群れから身を離す。
痛みはすぐに消えてゆく。
契約は暗殺ターゲットの排除だ。
後は、グリニア兵に任せればいい。
脚を止めずに回収地点までのルートを確認する。
『オペレータ、ランディングクラフトは所定の場所で待機中です』
『了解』
行きも地獄、帰るも地獄。
死と破壊。
Tennoにとっては、それこそが日常だ。
今日も、一つ、地獄を通っただけ。
いつもの日常に過ぎなかった。
To Be Countinued...
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
前々から、ネタだけは頭にあったんですよ。
Tennoが艦これの世界に居たらっていうのは。
Tennoから見れば艦これの世界は、古代オロキン文明より遙か以前の存在であり、提督達も神話存在である古代人類になります。
そして、人間であると装って接触してくるTennoは艦娘からしてみれば、得体の知れない異能を持った勢力になります。
その辺の視点の違いが面白く書ければいいな、と。
別シリーズがまだ終わっていないんですが、このままだと、文章の書き方を忘れてしまう気がしたので……ちょっとアウトプットしてみました。
※現状、取りあえず艦これ世界の地球へ行った所までは書いてあります。