虚無海洋 ~Void Ocean~   作:八切武士

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 ついてない“集積地棲姫”こと、“Braid”ちゃん。
 Dojoに拉致軟禁されてからと言うもの、三食おやつ付きで、戦争しなくてもイイ、程よいモラトリアム生活を送っていた彼女だったが……何故か今、Dojoの闘技場で、Tennoと対峙していた。

 正直、戦う前から涙目の彼女だが、果たして生きのこり、怠惰な生活を守る事ができるのだろうか?


Mission 2:~コンクレーブ テクノサイトと深海棲艦~

 

 

~Side Braid:Dojo内闘技場~

 

 

 四方を太い円柱で囲まれた内部は、低めの段差がつけられ、更にその中央部分は円形に盛り上がり、少し、相撲の土俵を彷彿とさせる造りとなっていた。

 円の内部には複雑な紋様が描かれ、それはうっすらと白っぽい水色で発光している。

 祭具でも置けば宗教の聖堂にでも見えそうな静謐な空間で、二つの影が対峙していた。

 

『い、いくゾ?』

 

 片方は些かへっぴり腰で大きな三つ編みを揺らしているBraidこと、元“集積地棲姫”。

 長い白髪の三つ編みを首に巻いているのはいつも通りだが、その背後には黒光りする深海棲艦の艤装で出来た四角いコンテナが幾つもふわふわと浮いて付き従っている。

 その向かい側で軽く足を開いた自然体で立ち、大型のショットガンを肩に担いでいるのは、屈強な重Warframe、Rhino。

 フットボールの様な紡錘形のヘルメットを乗せた首は余りに太く、発達し過ぎた僧帽筋で撫で肩となったシルエットの下には分厚い胸板が続いている。

 そしてきゅっ、と締まった腹部にがっちりした腰がはまり、そこからはぱっつぱつの太股に引き締まったふくらはぎが続く。

 対峙するものに“筋肉”で圧をかけてくる様なその威容。

 

 完全に呑まれているBraidに、Rhinoは開いている手を差しだし、くいっ、くいっ、と指先をしゃくる。

 

『イヤダナァ』

 

 Braidは愚痴をこぼすと、背後のコンテナからにゅっと“5inch沿岸設置砲”の砲身を伸ばし、即座に砲撃を加える。

 微動だにしないRhinoの胸板で5inch砲弾が炸裂し、何か、キラキラした鱗の様なものが飛散するが、特に痛痒を感じた様子もなく、黒字に銀の装飾的なデザインをしたTenno製ポンプショットガン……“CORINTH”を素早くポンピングしながら撃ちまくる。

 

『イタイ!イタイイィ!』

 

 Braidの表皮で散弾がビシ、ビシィッ、と景気よく弾け飛び、金属粉を飛散させながら、彼女はコンテナを体の前に回し、身代わりにする。

 貫通力の無いフランジブル弾(金属粉凝固弾)とは言え、当たれば相応に痛いものらしく、既に涙目だ。

 しかし、手も足も止めずにBraidは闘技場の床を蹴る。

 幾ら痛がっても、ダウンするまで攻撃は止まらないのだ。

 打ち尽くした弾丸を、異常な速度で再装填する僅かな隙をついて、“助けを呼ぶ”。

 闘技場を逃げ回るBraidを追随するコンテナの蓋が跳ね上がり、ぴょこたんと、“砲台小鬼”が次々と飛び出し、闘技場内に五体の珍妙な生き物が展開してゆく。

 左右に真っ赤な目がついた砲塔から二本の足が直接生えた生き物が、素足でひょこひょこと歩き回っているのは少々ホラーだが、そんなものTennoにとってはCorpusのポンコツ二脚ロボ、Moaで十二分に見慣れている。

 砲台子鬼達は、歩きながら“40mm二連装機関砲”をバラ撒いたり、足を止めて“5inch沿岸設置砲”を砲撃したり、健気にBraidの生存を支援すべく必死に戦う。

 Rhinoは剥げた“Iron Skin”を追加で発動し、輝く鱗で表皮を覆うと、5inch砲弾の直撃だけを避けつつ、機関拳銃“AZIMA”をクルリと抜いた。

 Braidは慌てて銃口から逃げつつ、コンテナから赤いドラム缶をぽんと産みだして投げつける。

 宙を飛ぶ赤いドラム缶が一瞬互いの視線を遮った。

 

 不意に銃口を下げたRhinoが地面を力強く踏み抜く。

 

 通常はTennoの蛮用に耐える構造材にビシビシとひび割れが走り、それは地面では収まらず、上向き雷の如く宙へ伸び上がりながら空間その物をひび割れさせ、爆発した様に歪んだ時空が、周囲の砲台小鬼達、ついでに赤いドラム缶も軒並み宙に弾き上げる。

 

 “Rhino Stomp”

 

 物理とVoidパワーの暴力に囚われた獲物の前でRhinoは改めて、“AZIMA”のセカンダリトリガーを引くと、銃口下に挟まれているディスクマガジンが高速回転し、ぽん、と飛び出し、バウンド。

 落ち着き先で浮遊したディスクは時計回りに高速回転しながら、フル装填状態で内包されたエネルギーをレーザーとして周囲にバラ撒き始める。

 凍り付いた様に宙にはりつけになった犠牲者達を容赦なく切り裂いたレーザーは、赤いドラム缶も切り裂き、激しい爆発を引き起こす。

 

『ギャアアアア!イダイイダイ!……アッ』

 

 流れレーザーを貰ったBraidは腹部に走ったミミズ腫れを押さえながら、新しく砲台小鬼を喚ぼうとするが、爆発に巻き込まれた上に、レーザーで切り刻まれた小鬼達は既に継戦能力を失っていたが、辛うじてまだ“生きて”いた。

 慌てて、死にかけの小鬼をリリースして、再召喚を試みるBraidの耳を、物理的な圧を持った咆哮が殴りつける。

 

『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!』

 

 Braidは咄嗟に自らの身体の延長、巨大な金属製ガントレットを呼び出し、空手の十字受けっぽく構えた。

 すると、激しい衝撃が左腕に走り、装甲がめこり、と歪む感触が走る。

 後ずさりしたBraidの目の前で、既にRhinoは両の手に握った戦鎚“FRAGOR”を振り抜きから、サイドスイングへスイッチしていた。

 

『グゥゥッ!』

 

 右のガントレットを咄嗟に下げると、辛うじて肘の手前辺りで打撃を受け止める事ができた。

 

『ンア゛ッ!』

 

 左腕を払うが、感触が軽い。

 拳にふわりと押される様に微妙な間合いへ下がったRhinoに、Braidは背後のコンテナから出せるだけの“5inch沿岸設置砲”をにょきにょき生やし、斉射。

 しかし、次の瞬間、Braidの目の前に一杯に拡がったのは、Rhinoの肩に投射された矢羽根の様な“Solalis”のエンブレムだった。

 

 “Rhino Charge”

 

 Voidパワーを纏った巨体が、ほぼ瞬間移動レベルの速度で行うぶちかましの威力は凄まじく、うっかり右腕で受け止めてしまったBraidの右肩から、聞こえてはいけない破滅の音が響く。

 吹き飛ばされこそしなかったものの、右腕がぶらん、と垂れ下がったBraidの眼前に、“CORINTH”の筒先が突きつけられた。

 

『ウワ゛ア゛ア゛ア゛、ヤメロォ!センソウハンタイ!』

 

 Braidがコンテナから白旗をぱこん、と射出すると、Rhinoは一歩下がり、脱力する。

 

「やれやれ、君は本当に戦争には向いていないな」

『サイショカラ、イッテルダロ!』

 

 背後から聞こえる平静な声に、Braidは鼻水と涎を飛ばしながら抗議する。

 艤装を消して肩を触ると、滅茶苦茶痛い。

 

「ふむ、外れているな……」

『アギャ!』

 

 悲惨な事になっている右肩にそっと触れていたTennoの手が不意に手刀になり、とん、とチョップをかますと、ごりっ、という感触と共に何かが填まる感触がした。

 激痛が酷い疼痛に変わり、腕が動く様になったが、痛い。

 

『ウウウ……ヒドイ、サンショク、オヤツ、ゲームツキデ、ヌクヌククラセルッテキイタノニ』

「いや、そんな事は言った記憶は無いが……しかし、向き不向きはあるだろうが、最低限の自衛は出来る様にしておいて貰わないと困るぞ、Tennoの郎党で居る以上、前線でなくとも攻撃を受ける可能性はあるのだからな」

 

 めそめそ泣いている元深海棲艦を呆れた様に見ていたTennoはため息をつくと、軽やかにとん、と跳び上がると、風の様にBraidの体を吹き抜けた。

 暖かい何かが体に染み渡り、痛みが引いてゆく。

 

「もう痛くはないだろう?」

『ア?……ナオッタ』

 

 Tenno道が一つ、“Vazarin道”。

 極めし者が虚空を歩めば、その力は揺るぎなきせせらぎとなり、身を浸す者を護り癒す波動となる。

 

“Protective Dash”

 

「“何処にも痛む所は無い”のか?」

『ン?ナイゾ』

 

 念押しされたBraidは、不思議そうな顔で頷く。

 

「普段から、“激痛にさいなまれている”という事も無いんだな?」

『エ……ナンだソレ、コワい……ナイ』

 

 今度こそ、本気でどん引きして涙が引っ込んだらしいBraidはコンテナから取り出したティッシュで鼻をかんで、別のコンテナから生やしたゴミ箱へ捨てている。

 

「便利だな……しかし、うすうすは思っていたが、言われてみると似ている……」

 

 Tenno……“アイヴァラ・天野”は、闘技場に散乱していた“砲台小鬼”の残骸を拾ってみる。

 欠けた装甲の断面は金属でありながらキチン質の甲殻の様でもあり、それはTennoにとって割と馴染み深いもの。

 テクノサイトウィルスのミュータリスト株に侵された、Corpusの自動機械が行き着くなれの果て。

 銀河を蝕む馴染み深い災厄、“感染体”……その機械系ルーツの個体群が纏う生体金属装甲だ。

 

(しかし、“深海棲艦”の姿は、感染体に比べると大分“すっきり”とした姿をしているが……何か、“美学”の様なものすら感じる、この違いの意味する所は何か)

 

 基本的にどの“感染体”も酷く歪で、その表皮は、融鉄を雑にぶちまけ、固まるまで出鱈目に掻き回した様にぐちゃぐちゃになっている。

 確認した限りでは、“深海棲艦”なり、“艦娘”のデザインは“秩序立ち過ぎている”。

 

(まるでWarframeの様に……)

 

「これは、艦娘の“勧誘”を急がねばならんな」

 

 

~Side オペレータ:Do-jo 会議室~

 

「“感染体”だって!折角あの土砂降りクソ雨の腐れバイキン共とは縁が切れたと思ったのに、ちくしょう!」

 

 会議室にZanaの景気のいい怒声が響く。

 Braidとの軽いレクリエーションの後、情報共有と新たなMissionのプランを練る為、Dojoの会議室に主要メンバーを召集したのだが、現状のちょっとした予想……テクノサイトウィルスの類似品がどうやらこちらの地球にも存在するらしい、と軽く共有した所、この始末である。

 ちなみに、Timothyは“商談”で地球に降りているので欠席である。

 

 “感染体”には、どの勢力も多大な迷惑を被っている。

 地球のシータスも当然それに漏れず、宇宙漂流の果てに重力に引かれて落下、真空や大気圏突入の熱で死滅しなかったブツが、隕石の様に降り注ぎ、まぁまぁデカい巣を地表に作り出す事が偶にあった。

 古のOrokinタワー保護下にある居住区は安全だが、外部の狩場や畑に感染が広がれば被害は甚大だ。

 故に、シータスの民は空から降ってくる“感染体”を“疫病の星”と呼び恐れ、忌避している。

 

 純な旧人類への回帰と地球の繁栄こそが平和への道筋だと信奉するニュー・ロカ出身のChiaraは普通に青ざめている、というか、顔色が白くなってきた……大丈夫だろうか。

 ついでに、Zanaの対面に座っていたBraidが“ガビーン!”とか擬音がつきそうな勢いで顔を引きつらせて膝を抱えてしまった。

 

「ドシャブリクソアメ、クサレバイキン……」

 

 “(´・ω・`) ”みたいな顔になったBraidは椅子の上で膝を抱えたままブツブツ呟き、両手で三十センチ位はある細長い堅焼き揚げパンを掴んで、先端からぽりぽりとちょっとずつ齧っている。

 塩とルナー・ピッチャー(えのきみたいなキノコ)の乾燥粉末で風味付けした中毒性の高いスナックだ。

 

「あぁ、“アンタ達”だけど、“アンタ”の事じゃないよ……ああ、取り敢えず喰いな!」

 

 すっかり餌付けされて、畑仕事や在庫管理、一部のクルー向けの給食調理(古き良き手作業)に勤しむ彼女の後を付いて歩く様になった“妹分”のガチヘコみに、ちょっと慌てたZanaは、本日の持ち込みオヤツのバスケットを持ち上げ、Braidの前にどすん、と置いた。

 

「ン……タベル」

 

 動物か子供相手の誤魔化しであるが、こうかはばつぐん、の様でBraidは左は甘いクッキー、右はスパイシーな塩味堅揚げパンの二刀流で“往復食べ”を始める。

 さっきから、そんな様子をちょっとはらはらしながら見ていたWolfeeは苦笑し、お茶を注いでやった。

 

「“深海棲艦”と“艦娘”が“アレ”の一種じゃないかって話は分かったよ、でも、なんでアタシ達はまだ“アレ”になってないんだい?」

 

 我関せずと言った顔でサイバーアイをちかちかと光らせつつ、お茶をちびちびと飲んでいたJemmaが口を開く。

 

「フム、それはワシが答えよう」

 

 まだまだ香ばしく美味しそうな焼き菓子で一杯のおやつバスケットに未練たらたらな目線を向けながら、Stain爺さんが回答を引き受ける。

 

「確かに、ワシ等の知っとる“テクノサイト”は、暴露したもの全てを直ちに“変異”、“同化”、“融合”させる厄介な代物じゃ、だが、今回見つけた“同類”はちょっと、いや、大分違う……というか、性質だけ見れば“同類”と一括りにはできんな、っと」

 

 テーブルに思いっきり身を乗り出して、油脂分たっぷりの“ほろほろ指焼き”を確保して一口がぶりとやった。

 さくさくほろほろに焼けた油脂分たっぷりの生地から、甘く香ばしい香りが口一杯に拡がり、鼻腔から抜けてゆく。

 

「うむ!……結論から言えば、無害そのものじゃな、食中毒だの、風邪の原因になるウイルスの方がもっと危険な位じゃ、手を洗えば簡単に除去されるし、75℃で1分以上加熱するか、アルコールや次亜塩素酸ナトリウムによる薬品消毒も効き目が強い、ついでに言えば、汚染された飲食物で暴露しても体内には残留せずにそのまま排泄物と一緒に出てきてしまうな、今の所、“普通の人間には”影響皆無じゃ」

「“アレ”の同類にしちゃ、随分と“やわ”じゃないか?」

 

 Stainの説明に、Jemmaはかえって鼻に皺を寄せ、顰めっ面になった。

 

 ウマい話にはウラがある

 

 それはOrigin太陽系だろうが、旧地球の太陽系だろうが変わる所は無い筈だろう。

 Jemmaの様子に、残りの菓子を咀嚼していたStainがもごもごしながら頷く。

 

「ウム、で、特異性なんじゃが……こいつを見てくれ」

 

 Stainがタブレットを操作すると、壁が瞬き、一面がスクリーンに変化、そこで動画が再生される。

 

 隔離実験室の中にはサンプルケースが幾つも置かれ、その中には、それぞれ合金板、フェライト、ナノ胞子、サルベージ、プラスチド、ルビドー、オキシウム、カーバイド、モーフィクス等の素材が収められている。

 カメラの視点からすると、隔離実験室を外から見られる、監視室内から撮影している様だ。

 

『ではテストを始めるぞ』

『エート、コレヲツクレバイイノカ?』

 

 そして、カメラが動き、監視室の中でモニターに表示された設計図を食い入る様に見つめているBraidを映す。

 

『ウム、出来そうか?』

『ソウダナ……』

 

 Braidは設計図と置かれた素材の間を何度も視線を行ったり来たりさせてから、仕切りに手のひらを当てる。

 

『ン゛~』

 

 人の声帯が出せるとは思えないハム音を出しながら、Braidが眼を見開くと、もぞり、と素材の形が崩れ始めた。

 崩れて粉状になった素材がサンプルケースから溢れ出し、真ん中に置かれた台の上に集まり、順番に混ざり始める。

 やがて、素材が細長く弧を描いた形に纏まり、からん、と音を立てて台の上に落ちると、Braidは長いため息を吐いて目を閉じた。

 

『サワンナイト、ヤリヅライナァ』

 

 台の上には、Tennoにとって一番見慣れたと言っても過言ではない片手刀剣装備……“skana”が転がっていた。

 

「で、出来上がったのがこれじゃあ!」

 

 Stainはいそいそと立って、壁際に配達されていた大きめのコンテナを開封し、幾つかのアイテムをテーブルに置く。

 

 金属板一枚から歪なカタナの形に叩き上げた様な片手剣“skana”。

 グリップに附属したメリケンサックじみたハンドガードと、銃身下に附属したポンプ式ショットガンのフォアエンドじみた重厚な握りが特徴的な半自動拳銃“LATO”。

 無骨な長方形の上に、スコープ付の巨大なキャリングハンドルを載せ、下方には直角にグリップを生やして、トリガーガード無しに引き金を取り付けた、何となく急造感が漂う未来銃器、自動小銃“BRATON”。

 

 いずれも、TennoがNewbieの初期も初期から手に取った記憶がある“懐かし”の装備だ。

 厳しい戦場に持ち込むには些か物足りないが、素直な操作性から訓練で幅広く愛用される。

 Tenno達にしてみれば余りにも“枯れた”技術故に、Newbieがしくじって敵勢力に奪われてもさほど痛くはないという事情もあって、最初に支給されるもの。

 

「しかし、面白い色になったな……」

 

 三つの武器はどれも、青黒さと青白さが混じり合った、不思議な色合いの合金になっていた。

 似た様な色合いで、voidのエネルギーの結晶であるプリズマクリスタルと融合した、“プリズマ武器”があるが、あちらはキラキラしたグラデーションが特徴で、こういう重厚で妖しい雰囲気はない。

 感心した様子で席を立った天野が“skana”を手に取ると刀身を撫で、軽く指で弾いて、ふむり、と頷く。

 机から少し離れて構えを取り、ゆっくりと舞う様にゆるりと一通り型をとり、机へ“skana”を戻す。

 

「バランスは悪くないが、使ってる内に折れそうだな……見よう見まねでここまでやるのは大した物だ」

『ンフー、ワタシハホカノヤツノブキモツクッテタカラナ、フツーノシンカイセイカンハデキナイゾ!』

 

 褒められて満更でもないのか、Braidはちょっと早口になっている。

 ドヤ顔で新しい堅揚げパンを囓る所は実に子供っぽい。

 

「こいつは、ちょっとチャージ用のハンドルにガタつきがあるね……トリガーはいい、マガジンは、まぁ、落ちてはこないね」

「姐さん、LATOはトリガープルが一寸硬い位で、他は問題無いっす」

 

 銃器の方は、JemmaとWolfeeが早速検分していた様だ。

 

「あの実験では、あらかじめ培養しておいたテクノサイトウイルス……“アビス株”とでも呼ぶかの、を素材にぶっかけておいたのよ、ちなみに、ぶっかけてない素材じゃと、“製造”は無理じゃったな」

「テクノサイト“アビス株”は無害な常在菌の様に存在する、そして、彼女の様な“深海棲艦”がなんらかの力を意識的に行使する事により、本来のテクノサイトの比でない程に精妙な影響を与える事ができる性質があるという事ですか」

「うむ!然り、ついでに言えば、“アビス株”のテクノサイトは先も言った様に脆弱じゃが、Braid君の体内では、安定して存在できるというか、“備蓄”と“増産”が可能じゃな……これはもう、“共生”と言って良かろうよ、元の“テクノサイト”ウイルスは感染者を“喰らい尽くす”が、“アビス株”は感染者の意を汲み、“共生”するんじゃ」

 

 察しの良い生徒の様なChiaraのまとめに興が乗ったのか、Stain老までクッキーを握りしめて早口になってきた。

 

「そうそう、この間持ってきてくれた“高速修復材”というものじゃがな、あれ、どうもなぁ、ワシ等が知ってるものに例えると、“医療用バイオプラズマ”に近い成分をしとった、“コルチクロム”っぽい成分も漏れなく混じっておる」

「ふむ……“医療用バイオプラズマ”、“コルチクロム”、いずれもWarframeの修復に用いられる成分だな、実に興味深い」

 

 天野はテーブルに座り直すと、一旦お茶で喉を潤して指を組み、にっこりと笑う。

 

「さて、と言う訳で、早速Newbie“艦娘”の“勧誘”を実行しようと思う」

「“勧誘”ねぇ……“艦娘”は海のどっかに“湧く”か、拠点で“建造”、あとは、“深海棲艦”をぶち殺すと“何故か湧く”んだったね」

「うむ」

 

 指折り数えて、収集した情報をおさらいするJemmaに天野は首肯する。

 

「うーん、一応、海も常時監視はしてますけど、条件に当てはまる人間大のものを見っけるのは、範囲とか絞んないとキツいですね、見つけてから現場まで“確保”しにいくのも、向こうの“鎮守府”と競争ですよね」

 

 Wolfeeは腕を組んで渋い顔をする。

 

「拠点で“建造”されている所を狙うのであれば、“ハイジャック”タイプのミッションになりましょうか?……しかし、実行すれば、“鎮守府”、その上位組織“大本営”への敵対メッセージと受け取られる可能性が高いかと」

「“確保”で浚ってきたら、検体が実験に非協力的になってしまいそうじゃのう」

 

 Chiaraは兎も角、Stainは欲望が漏れすぎである。

 

「まぁ、後腐れが一番無いのが、てきとーな、“深海棲艦”のハイブにカチこんで、根絶やしにする感じかねぇ」

「姐さんはド派手だなぁ……パトロール部隊をちょっとずつ間引く方が目立たなくないっすか?」

「出撃回数を増やす方が、目撃される数が増えるだろ?」

 

 物騒な事を提案するJemmaにドン引きする様子を見せながら、結局頭Tennoな暴力的解決法を提案するWolfee。

 英才教育の賜物である。

 

「実は、既にターゲットは選定済だ」

 

 メンバーが順番に意見を出すのを黙って聞いていた天野だが、適当な所で指を鳴らし、壁のモニター表示を切り替えた。

 モニターに表示されたのは、何らかの地上施設。

 

「民間の今は“艦娘”関係の消耗品を供給している小規模工場だが、元々、“艦娘”の建造施設をここは備えていて、今は稼働はさせていないが、国からの緊急建造要請に応じる為、稼働可能な状態に保たれている……そう言った事を義務づける法律があるらしいが、それは表の話だな」

 

 天野が指を鳴らすとモニターの表示が更に変わり、稼働状態で、どう見ても中に何か入ってる“艦娘建造ドック”の映像が表示される。

 

「実際は、今でも普通に稼働中だ……“闇建造”という奴だな、当然建造後の引取先もまともな組織ではない」

「これはこれは」

 

 すまし顔の天野の言葉に、Jemmaが獰猛な笑みを浮かべる。

 

「新人のスカウトついでに、“人助け”なんて粋じゃないか!」

「流石Tenno!」

 

 人助けと聞いて、Wolfeeも嬉しそうだ。

 いい子であるが、それはそれとして、Origin太陽系で生きていけるのか心配になってしまう。

 まぁ、帰れるかと言えば甚だ怪しいものなのだが。

 

「よし!“ハイジャックミッション”といこうか」

 

To Be Countinued...

 

 




 という訳で、主人公サイドの更新です。
 毎度不定期で申し訳なし。

 Tennocon 2025最高でしたね!
 コンサート本当に良かった。
 古の同盟も楽しみだ……

 と言うか、Wispのプロトフレーム、凄い美人シスターだった。
 スキン買っちゃいそう。

 Yareli Primeのパーツも、残りはシステムのみ。
 がんばろう。

 そろそろ、人増えてきてるし、何処かに登場人物リストとか置いておいた方がいいですかね?(コイツ誰だ?っていうのも居るだろうし)


以下、オマケ……Braidさんの設定とか、パワーとか>

・“集積地棲姫”
 ⇒島嶼攻防戦でダメージコンテストの標的にされて燃えた後、介入していたTennoにサンプルとして回収される。
  正直もう戦いたくナイので、DOJOに残る事にした。
  名前が呼びにくいので、三つ編みの英名、Braidと名付けられた。
  人間の食べ物は結構好き。
  風呂に入るという発想が無い。

パッシブ:Mottainai!
 →集積地棲姫の艤装であるコンテナは、周囲の有用な物資を自動回収する。

スタック:集積スタックという独自のゲージを有し、自分、味方が補給アイテムを拾う毎にスタックを得る。

固有武器:ガントレット
選択武器>
 →プライマリ
5inch沿岸設置砲
深海14inch海峡連装砲
4inch連装両用砲+CIC
 →セカンダリ
深海対空レーダーMark.III+FCS
深海待伏魚雷
深海烏賊魚雷

1番:ベンリナヤツ
 →巨大な腕の様な金属ガントレットを召還する。
  重機にも使えるし、危ないヤツを殴るのにも使えて便利。
2番:ドラムーチェ!
 →爆発性物質が詰まった赤いドラム缶を出現させる。
   投げてよし、仕掛けて爆発させるもよし。
   NPCの暗殺にも使える。
3番:ダレカタスケテ!
 →直衛部隊を召還して代わりにコワいのと戦わせる。
  トグルスキルで、複数種類切り替えて呼べる。
  海>PTボート、沿岸突撃半水中魚雷艇、
  陸>砲台小鬼
    5inch沿岸設置砲
    5inch沿岸設置砲
    40mm二連装機関砲
沿岸設置レーダー
  空>深海解放陸爆、夜猫深海艦戦II、夜復讐深海艦攻II
4番:イッパイアツメタヤツ
 →自分の周囲を舗装し、即席の補給基地とする。
  敷地内の時分を含めた味方のENと弾薬を常時回復させ、HPも少しずつ回復させる。
  補給基地の敷地内からは陸上型のPTボートが出現し、わらわらと、周囲の物資を拾ったり、敵から素材を囓り盗ったりして、物資を掻き集めてくる。
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