Tennoと直接接触した事で、急に“提督”としての異能が開花した健太少年は、憲兵の狩刃と青葉に付き添われ、都内で精密な検査という名の艦娘おねショタASMR試験に挑む羽目に。
そしてそれとは特に関係なく、都会の闇の中でどす黒い犯罪が粛々と実行されつつあった。
~Side “叢雲”&健太:都内某所 赤坂溜池総合病院~
「うへぇ……疲れたぁ」
Tennoの“お茶会”に参加したせいで、東京のでっかい病院まで連れてこられて、まるまる三日間、検査のフルコースを受けさせられた民宿“長三丸”の次男坊、小林健太は、椅子の背もたれにぐったりと体を預ける。
「ついでに受けた人間ドックの結果はどれも健康で問題ないみたいね」
健太の隣に腰掛けた彼の“姉”……吹雪型駆逐艦5番艦“叢雲”は、診断結果の書類を静かに読み込んでいた。
「……で、一般的な検査以外のもあるわよね?」
ざっと、特に健康状態に異常なし、の結果を確認した彼女は、テーブルを挟んで座るスーツ姿の男、“大本営”から警護及び追加の事情聴取を行う為に派遣された、天野狩刃(あまのかりば)と名乗った男に問いかける。
「ああ、“特殊感応能力者”向けの適性検査も受けて貰ったからな……これだ」
叢雲の問いに表情を変える事なくすぐ首肯し、狩刃は足下のアタッシェケースから一束の書類を取り出すと、彼女の前に滑らせる。
一般的に“提督”と一括りにされがちな“特殊感応者”が己の異能を自覚するのは、概ね二つのパターンに分かれる。
“人には見えないお友達”……“妖精さん”の存在を知覚する。
“自分ではない誰かの声”が聞こえてくる。
本来“艦娘”のみが目視し、触る事ができる“妖精”を知覚し、“艦娘”達と精神的な絆“内線”を結べる異能者、それを世間一般では総称として“提督”と呼ぶ。
そして、“艦娘”の艤装や、装備に棲まう“妖精さん”達に対しての知覚能力、及び、コミュニケーション能力に優れていれば、それらの開発、修復、製造を行う、“艦医”や“妖精鍛冶”としての適正が高く、“艦娘”達と結ぶ“内線”の感度と制御に優れれば、彼女達を束ね、補佐する“提督”に向いている。
「……“妖精”に対する感受性、“高”、“内線”も“高”」
“妖精”をはっきり細部まで目視でき、“声”を明瞭に聞き取り、体に触れる事ができる。
“内線”は明瞭な会話が行える精度であり、“艦娘”の“擬体”の五感を借りた遠隔知覚は可能、更に“艤装”に同調して遠隔操作まで可能。
また、複数の“艦娘”との“内線”会議も問題なく可能。
「……ちょっと、これ、昨日と今日で?全部?」
「あ゛ー……うん、なんか、ちょっと、せーしんてきに疲れたなぁ」
適正検査は“内線”の使用経験が少ない者や訓練を受けていない者には少々刺激が強いため、最初は広く浅く適正を確認して、実践を伴う“ディープな”テストは適正がありそうな所を幾つかピックアップするのが普通だ。
「殆ど全部の適性検査やってるじゃない!」
「いやぁ、凄いですねぇ、あんまりにも“何事でもないように”こなしちゃうから、ついつい、予約してなかった分まで手配しちゃいましたぁ」
噛みつく叢雲に、青葉はとんでもない事をてへぺろっ、と表情を作って受け流す。
「えー、全部やんなくてよかったのかよぉ」
「普通は日を開けるわよ、大体、擬体感覚との同調だの、複数艦娘と“内線ハブ”を繋ぐとか、もう、“適性検査”じゃないでしょ、“採用試験”の実技じゃない」
「おい、自販機でなんか買ってきてくれ、俺ブラックの無糖で」
むっとした表情を隠さない叢雲に、変わらずにこにことした笑顔を返す青葉の背中を狩刃がどやしつけ、そのまま廊下へ押し出す。
「はい、は~い、叢雲さん達はお茶でいいですかぁ?」
背中をぐいぐい押されながらのけぞり、青葉は首だけで室内をのぞき込み、笑顔で訪ねる。
画像編集で狩刃を消せば、立派な怪奇画像だ。
「あ、俺何か冷たい炭酸で……」
「……コーヒー、無糖じゃないのがいいわね」
注文を聞いて消える生首を手で追いやり、狩刃は叢雲に頭を下げる。
「すまんな、流石にあそこまでやるとは思わなかったぜ」
「全くよ……はぁ、しょうがないわね」
叢雲としては可愛い弟に勝手に無茶されて思う所はそれなりにあるものの、狩刃の隠しがたい疲労感あふれる顔を見て、後半の言葉が引っ込んでしまった。
まぁ、ここでごねて、帰ってしまうというのも、後々トラブルを招くだけというのが分かっているからと言うのもあるが。
「ちょっと、ぼーっとしてるけど、あんた大丈夫」
「ちょっと眠いだけだよ」
叢雲に抱き寄せられ、額を触られた健太は若干つっけんどんに言って、身を離す。
(反抗期?……疲れてるだけだと思うけど)
あまり自覚は無いが、下の弟を甘やかしがちな叢雲は内心ちょっとショックを受けつつ、平静を装い、健太は健太で、別の意味で平静を装っていた。
(あれって“試験”だったのか???)
駆逐艦娘を姉に持ち、兄が“提督”をやっている、実家が実質鎮守府みたいなものである健太にとって、ほかの一般市民よりは艦娘は身近な存在だ。
ただ、それは“身内”、姉とか親戚みたいな距離感で親しくしているだけで、“すんごい美人のお姉さんに膝枕で甘やかされる”なんて羽目に陥った事はない。
青葉により、急遽テストの為に召集された“ボランティア”……たまたま来院していた某鎮守府の火力支援艦隊は、被献体が“都会のこまっしゃくれたクソ餓鬼ではなく、今時見ない、田舎の純朴で素直なショタ”だった為、つい、日頃のストレス解消とばかりに、“合法的なショタおさわり”を堪能してしまったのである。
“もっと奥まで入ってもいいのよ”、“ぁ……そうそう、上手よ……とっても”、“もう少し早く動いてみようか”、“もうちょっとがんばってみましょうね”……と、最早、“内線”がショタ甘やかしおねえさんASMR化していた。
詳しい内容は健太少年の名誉の為秘す……が、“ふわふわでしっとりとしてる”、“いい匂い”、“膝枕されて、顔が見えなくなる事ってあるんだな”、という感想を持ったとだけ書いておく。
「まぁ、おかげと言って良いか分からんが、予定していた検査は全部完了だな、あとはホテルで休んで貰うってとこだが……飯にもまだ早いし、ちょっと、どこか見てくか?あんま遠くには行けねぇが」
「お、さぼりですか?青葉つきあっちゃいますよ♪」
申し訳なさそうな顔で提案する狩刃の言葉を、コンビニ袋をぶら下げて戻ってきた青葉がにこにこ顔で拾う。
「サボりじゃねぇ、ティータイム!ティータイムだからな……まぁ、近いとこで面白い箱物は、議事堂、迎賓館、六本木ヒルズ、観光地なら、東京スカイツリーとか、浅草もまぁまぁ近いな」
狩刃の上げた無難な候補に健太はまだぼーぅっとしながらうんうんと頷く。
田舎住まいの健太でも、名前と絵面位は知っているが、実際見たことはない有名スポット。
無難と言えば無難だが、よいチョイスである。
しかし、それに納得できないのが青葉であった。
「なんか、修学旅行みたいなチョイスですねぇ、折角だから、市ヶ谷とか、横須賀とかもっと面白い場所あるじゃないですか」
「鎮守府の研修施設に、基地の町って、思いっきり関連施設に連れ込む気満々じゃない」
陸自の駐屯地(と“艦娘”の研修施設等)がある市ヶ谷は兎も角、赤坂から横須賀までは、移動に一時間半以上かかる。
都内の感覚で言えば、流石にちょっと遊びに行く程近場ではない。
結局、国会議事堂を軽く眺めて記念写真を撮り、その後、東京スカイツリーに登り、ソラマチで青葉お勧めのスイーツ店をがっつりはしごした為、結局、健太達が滞在先のホテルへチェックインしたのは夕方になってからとなった。
ちなみに、スイーツ代は流石に経費で落ちない為、狩刃のポケットマネーから捻出される事となった。
「あ~、人のお財布で食べる甘味は最高ですねぇ♪」
「おまえに言われるとなんか腹立つな……」
体型が崩れるとか糖尿病とは無縁な艦娘である青葉は、そりゃもう、がっつりと甘味を補給していた。
「私たちの分は別に払わなくても良かったのよ?」
「いや、君たちの分は“迷惑料”だからな、俺は俺で、最近ちょっとやけ食いの一つ位したい事もあったし……そうそう深酒する訳にもいかねないから、ああ、甘いもんぐらいドカ喰いしたい気分だったんだよ」
青葉に比べれば控えめではあるが、食い放題メニューで遠慮してもしょうがないので、叢雲もまぁまぁ甘味を堪能していた。
健太も甘い物は嫌いではない為、胃の許す限り堪能させて貰ったが、今の腹具合は……流石に夕飯は少々遅くするべきかも知れない。
「そうですよぉ、男が女の子に奢るって言うんですから、気持ちよく奢って貰うのは女の子の器量ってもんです、健太君も将来は、お財布の中身なんか気にせず女の子に奢れる位偉い人になって下さいよ」
「え?……まぁ、はい」
急にスポットされた健太は、ひきつった笑顔を浮かべるのが精一杯だった。
「健太、女にたかられる男になっちゃダメよ」
「うん」
そして、肩に置かれた姉の指が肉に食い込むのを感じ、顔の引きつりが大きくなる。
そして、何故か、彼の脳裏には、兄の保(たもつ)に、何か備品を強請る度に、耳元で……
『なぁ?いいだろ?』
と、ハスキーボイスで囁いて承認印をおさせている天龍の姿が目に浮かんでくるのであった。
(ああ、“提督”ってなんか、大変なんだなぁ……)
健太少年にとって、女の恐ろしさと、仕事の厳しさの一端を体感する一日となったのである。
~Side 狩刃&青葉:大本営 憲兵部~
「……さて、お仕事の時間だぜ」
「今日は遊びましたからねぇ」
嫌そうな狩刃の呟きを、満足げな青葉の言葉が塗りつぶす。
「馬鹿、声がでけぇよ、ってか、楽しそうだなお前……再聴取のまとめと、診断結果に軽くコメントつけるだけだぞ?」
そう、狩刃達は、昼間豪遊した代償に、そのまま夜戦(“意味深”ではない)に突入すべく、鎮守府へとやってきていたのだ。
ちなみに、終わったらそのまま仮眠室で一休みして、昼戦継続だ。
余裕があれば、仕事前にシャワーくらいは一浴びできるかも知れないが。
「あれ?狩刃君じゃん、夜勤?」
「情報部も一緒か」
「あ、ども……捕り物ですか?」
狩刃は目線を下げ、廊下でばったり出会った少女達に目礼する。
「ああ、内定していた案件で動きがあってな」
「そうそう、で、夜勤ってわけ」
少女二人のうち、落ち着いた口調で話す緑色の髪をした方……睦月型駆逐艦“長月”が、狩刃の疑問に答える。
首の後ろで腕を組み、頷いているのは綾波型駆逐艦“敷波”。
敷波は制服の上に黒っぽい色のポンチョを被っているが、今は前を開けて布を全部肩から後ろへ流しているので、まるでマントに見える。
「三課も大変っすねぇ」
「全くだよねぇ、表沙汰にできない事多過ぎじゃない?」
「まぁ、そっすね」
欠伸をしながらこぼしてくる敷波に、狩刃は曖昧な笑いを返す。
三課の扱う機微案件は、摘発後、ものによっては公表されるものもあるが、狩刃の四課や、情報部の扱う機密案件は、誰かが暴き立てない限り永久に闇に伏される定めのものが多く、“いつか公開される事もあるだろう”、というものでも最低数十年はちまたに公開される事はない情報ばかりだ。
「秘密と謎は人生の楽しみじゃないですか」
「それが仕事でなければな」
いつも通り得体の知れない笑いを浮かべる青葉に肩を竦める長月。
「はぁ、それでもお仕事はしなくちゃいけないんだよねぇ~、いこっか?」
「ああ」
それとなく会話を打ち切ってくる敷波合わせて、狩刃も頭を下げる。
「それじゃまた、ご安全に」
「うむ」
「じゃーね」
工場勤務者みたいな狩刃の挨拶に頷き、長月と敷波は去っていった。
「しかし、三課のガサ入れですか、ちょーっと気になりますねぇ」
「いいぞー、行ってこいよ、なんか面白い事あるかも知れねぇし……俺はよその仕事気にしてる余裕ねぇからコーヒーでも一杯やってるわ」
去ってゆく背中をじっと見ている青葉に、軽く声をかけ、狩刃は背中越しに手をひらひら振ってやる。
足は当然早歩きだ。
とりあえず早く書類仕事を終わらせてさっさと仮眠がとりたい。
(そういや、昼はしこたま甘いもん喰ったから……なんか、しょっぱいもん喰いたいな、確かこの間、徳用おかきの詰め合わせ買ったのがまだあったか、コーヒーやめてお茶にすっか)
青葉の事などすっかり頭から追い出してオフィスへ急ぐ狩刃の耳に、軽い足跡が聞こえてくる。
最接近するタイミングでスッ、と身をかわすと、元の位置で、明らかに裸締めの構えで腕を出した青葉が上体を泳がせていた。
「鎮守府で暗殺とか、情報部さんでもどうかと思うぜ?」
「やだなぁ、ちょっとしたスキンシップじゃないですか?」
にこにこ笑いながら、何故か両手をわきわきとする青葉と、じりじり間合いを取りながら狩刃は渋面を作る。
「俺は片手で熊の首をへし折れる生き物とじゃれ合う趣味はねぇよ」
「もう、そんなんじゃモテませんよ?」
青葉は割とあっさりと手を下ろし、首を斜めに傾げてみせる。
「お前は作り笑い止めた方がもっとマシになりそうだがな」
「いやぁ、職業病でして」
別に純粋な嫌みで言った訳ではないのだが、一瞬、傾けた青葉の顔から微笑が消え、手が軽く撫でると、再び復活した。
普通にホラーである。
「あー、仕事仕事、だりぃなぁ」
狩刃は背筋に怖気を走らせながら、オフィスへ足早に向かう。
今は、早く暖かいお茶でも腹に入れたい。
~Side 密建造グループ構成員A&B:町工場のガレージ~
灯りが消された工場の中を、懐中電灯片手に工員が見回っている。
この区画に窓はない。
真夜中に明かりを点けていようが外から気取られる事はないが、油断は禁物。
ここでは、世界的に禁忌とされる重犯罪……艦娘の密建造が行われているのだから。
「建造完了ですね……駆逐艦か、できれば軽巡が良かったんですが」
“建造ドック”という名の割には、金属シリンダーの棺桶にしか見えない機械のモニターを、灰色の作業着を着た男が覗き込んでいる。
残念そうな声を遮り、もう一人の男が“棺桶”のレバーロックハンドルを操作して、シリンダーの片面を覆っている金属カバーをゆっくりと押し上げた。
その後に横のボタンを押すと、内部でライトがうっすらと点灯し、内容物を青白く照らし出す。
シリンダーガラスの中に満たされた液体の中、まるで水死体の様に静かに浮いている少女。
肩口位までの直毛、色は銀髪、白い丈長のセーラーワンピースに短めのフレアスカートを身につけていた。
スカートからのびた足は黒いタイツに覆われている。
その姿を確認しつつ、男は手元に取り出したタブレットで、駆逐艦娘の艦種プロファイルをフリックして次々に変えては照合。
やがて、目当ての情報に行き当たったのか、頷く。
「……陽炎型、種別は“浜風”か、これでも規則通りのパラメータでやる建造だと、観測された事のない個体だぞ、まぁまぁ希少な個体だ、悪くない」
陽炎型駆逐艦、十三番艦“浜風”は、儀式的な“ドック建造”では産み出されないとされている艦娘だ。
邂逅事例は、深海棲艦との海戦があった海域に限られる。
何故その様に一定の希少性がある艦娘が建造されたのか、それは……“建造ドック”に備えられたもう一つのシリンダーに仕掛けがあった。
「“触媒”のコンディションは?」
タブレットを持った男が目を向けると、ボヤいていた男が、“建造ドック”のコンソールを操作し、顔をしかめた。
「よくねぇな、“擬体”の安定率が大分下がっちまった」
男が“触媒”側のシリンダーのレバーロックハンドルを動かし、金属製の蓋を開けると、シリンダーの中に、小柄な少女が封入されているのが分かる。
ぱちりと、スイッチを入れると青白い光がシリンダーの中を柔らかに照らす。
ふわふわの白髪にリムレスの眼鏡、大きな黒リボンがついた白いベレー帽。
そして、白いセーラー噴くに青いスカーフ。
択捉型海防艦、九番艦、“平戸”。
海防艦娘らしく丸く可愛らしかった頬はこけ、目の下には深い隈が刻まれ、瞼は何か苦痛に耐えている様に痙攣していた。
「ちっ!溶けてきてやがる」
「充填液を濾過しとかないといけねぇな……予備も安くはねぇ、どうせもう長くはもたねぇんだ、次で使いつぶすか」
“平戸”が浮かんでいるシリンダーに充填された液体には、まるで、水に墨を薄く落とした様な何かがひらひらと漂い、汚している。
じっくりと見れば、その“墨”は“平戸”の鼻孔や、口元からゆっくりと筋を引いているのが見て取れただろう。
艦娘の“建造”は“触媒”側の艦娘の深層記憶をセンシングし、そこから掬い取られた“かつての記憶の欠片”を元に錬成される。
精神の深層をかき回される異物感は当然ながら結構な負担を“触媒”の艦娘に与える為、装置にはセンシングの“深度”を制限するフェイルセーフが設定されているのだが、法を破っている犯罪者がそんな安全基準を気にする訳も無く、解除されていた。
深い層まで到達すればする程、“触媒”の艦娘が持つ筈がない“かつての記憶の欠片”が得られる可能性が増える……とされている。
本来“建造”では得られない希少艦娘、更には、まだ現存が確認されていない、新種の艦娘が得られる可能性すらあるのだ。
博打に勝てば、どれ程の利益を産むか、分からない。
「でも、海防艦娘の中じゃ“平戸”ってまぁまぁ珍しい方だろ、潰すんならカネにかえられねぇのか?」
ガラスを覗き込んでいた男がそう漏らすと、“浜風”の建造状況を確認していた男はタブレットから目を上げて、呆れた様な視線を向ける。
「ああ、珍しいぜ、結構なカネになるかもな」
「なんかマズいのか?」
まだ不思議そうな顔をしている男に、タブレット男は目頭を揉みながらため息をつく。
「コイツは建造艦でもなけりゃ、海域で拾った野良艦娘でもねぇ、大破漂流してたMIA艦をちょろまかしてぶち込んであるんだ……コイツには人間様としての戸籍もあれば、大本営の艦籍DBにも記録がある、れっきとした日本国民だぜ」
「あ~、コイツには“人権”があるってことか?」
艦娘は日本国の憲法、法律に照らして、“人間”であり、基本的に日本国の“国民”として国籍を付与され、保護を受ける対象である。
「うんにゃ、そもそも、艦娘は法律的にゃ俺等と変わらねぇ人間扱いだ、“人権”は元々ある事になってるさ、問題はそうじゃねぇ、引取先にもよるがよ、“万一”……って程確立低かぁねぇが、引き取り先が下手こいたら、パツイチでアシがつくだけじゃねぇ、所属元の鎮守府から大本営に捜索が陳情でもされたら、憲兵共がメンツにかけて俺たちを吊るしに来るぞ」
口をつぐんだ相方の顔色が見る見る内に真っ青になるのを見て、男はにやっ、と人の悪い笑みを浮かべて肩を叩く。
「おいおい、今更びびる様な事かぁ?艦娘の密建造だけで最低五年から、最悪無期懲役だぜ、“引取先”が国外だった場合、天井が死刑になるけどな、バレたらしめぇなのは元からかわんねぇんだよ」
タブレットのカメラで“浜風”の写真を撮り、男は金属の蓋を閉じてロックする。
「さて、コイツは幾らに化けるかな」
To Becountinued...
今回はTennoがぜんぜん出てこない、艦これ回になってますね。(狩刃くんは出てるけど)
そういえば、Warframeは明日辺りにキノコアップデート来そうですね。
艦これは艦これでハロウィーンアップデートが来そうですが。
次は冒頭からTennoサイドになります。