悪事の皮算用に嗤う奴等のすぐ背後へ、更なる闇から生まれ出でた悪夢が迫る。
悪党共に情けは無用、必要なのは駆除と間引きだけ……
それはそうとして、こちらの地球にはあんまり無茶をするのはマズい相手もいる訳で……状況は複雑さを増してゆくのであった。
~Side 天野狩刃&青葉:大本営 憲兵隊第四課オフィス~
「ふぁ……」
天野狩刃は誰かに呼ばれた気がして、うっすらと目を開ける。
目に入るのは照明を絞ったオフィスの天井パネルの白さだけだ。
「……きっつぅ」
寝心地の悪い椅子の上で身じろぎすると、体の下で椅子のキャスターががたがたと音を立てた。
オフィスチェアーを三つ並べても、狩刃の長身だと膝から下がはみ出てしまい、非常に寝心地が悪い。
まぁ、完全に収まった所で寝心地はさして変わらないだろうが。
ちなみに並べ方としては“∩∪∩”の様に背もたれを互い違いに並べるのがお約束である。
「狩刃さ~ん」
「……ふ…ん」
「狩刃さ~ん?」
「ん゛~」
「鳴ってますよ?電話」
「ん゛ん゛!」
椅子から転げ落ちた狩刃は痛みに顔をしかめつつも跳ね起き、机の上の受話器をひったくった。
「はい、四課です!」
「出動だ狩刃、“M”が出た」
寝ぼけ眼だった狩刃の目が、ぐい、と見開かれる。
「屋上のヘリポートにヘリがある、スーツを持って飛び乗れ、すぐに」
「了解、狩刃出動します!」
空栗からの電話を切るのももどかしく、狩刃はオフィスの片隅に置かれた金庫の錠前に指を押しつけ、キーナンバーを叩いてロックを解除する。
中に納められた大型のジュラルミンケースを引っ張り出して扉を叩きつける様に閉じ、オフィスを飛び出す。
「んふふ~♪」
そんな血相を変えた姿をいつもの貼り付けたような笑顔で見ていた青葉はスキップでも出そうな鼻歌を歌いながらぴったりと追いかけるのだった。
「今回の“M”は“どこのひと”なんでしょうねぇ~、んふふふ♪」
~Side ハイジャックメンバー&闖入者:町工場のガレージ~
(ふむ……情報通りだな、丁度良い案配だ)
二人の構成員が立ち去るのを頭上から監視する影があった。
額から伸びる太く短く、頂点が断ち切られた様な角を持ち、屈強な男性型のボディを持つフレーム。
EXCALIBUR。
聖剣の名を持つフレームを纏い、天野は既に対象の施設に潜り込んでいた。
民間警備の警報設備と素人に毛が生えた程度のアルバイト警備員しか居ない民間施設の出入り等、Tennoにとっては素通りしているのと変わらない。
ここに来る前に警備システムについては活線監視を無効化、カメラ監視には自動生成の欺瞞映像を送り込んでいる。
気にする必要があるのは物音と人の目だけだ。
まぁ、“人の目”も、今なくなる所である。
『Tenno、別働隊の施設制圧と情報の回収完了です、あとはそこのゴミだけだゾ……失礼、リサイクル出来ない不要物ですね』
『今回“ゴミ”の処理は私達の仕事ではない、“分別”して“集めて”おけば十分だ』
EXCALIBURから亡霊の様に分離したTennoが音もなく床に降り立つ。
逆手に抜かれた“RUMBLEJACK”が、すっと手前の男の盆の窪へ触れ、電撃を解き放つ。
「あ゛っ!」
暗闇でまぁまぁの発光が見える程の放電を首筋に喰らった男は、即座に白目を向いてダウン。
「な?ってめ……ぐ、あッ……」
悲鳴と放電音に振り返った男の懐へさっと一歩踏み込み、その鳩尾へ、するりと“RUMBLEJACK”が入り込む。
短い放電音と共に男はタブレットを取り落としてうずくまった。
男達の体を探って出てきた拳銃から弾倉を抜き取り、スライドを引いて装弾されていない事を確認してから、それぞれを別方向へ放り捨てる。
「ふむ、こんなものか」
“RUMBLEJACK”は一時期、まともに武器を手に入れる事ができなかった時期にスクラップをちょっとDIYして組み上げたものなのだが、意外な程使い勝手が良かったので、こうして殺さずに敵を確保する忍務では重宝しているのだ。
ちなみに最初に喰らわせた男は涎を垂れ流してぴくぴくしているし、鳩尾にくれてやった男は、茹でエビみたいに丸まって嘔吐しながら、ひたすらうー、うー唸っている。
本来、サイボーグのグリニア兵や、ハイテク戦闘スーツで身を固めたコーパス兵相手に使う代物で、ノーマル出力だと、近距離に居るだけでちょっと感電する程の放電が発生する。
最弱にしておいたが、生身だと、悶絶するだけでは済まないかも知れない。
まぁ、死んでないのでセーフだろう。
落ちる前にキャッチして脇に挟んでおいたタブレットを手に取り、フリスビーの要領で放り投げると、くるくると回転したタブレットは、“建造ドック”のコンソールの上にディスプレイを上にして、ぴたりと着地する。
振り向く瞬間、Tennoの姿がぼうっと霞み、その姿はEXCALIBURに置き換わっていた。
鉄骨の上に分離していたフレームの姿は消えている。
悠々とコンクリ床を歩いて搬入口まで行くと、単純なサムターンロックを内側から解除。
ゆっくりと押し開けると、闇の中から溶け出す様に浮遊プラットフォームが滑り出した。
その上には機材と、胡座をかいた老人が載っていた。
プラットフォームがガレージの中へ滑り込んだ後、EXCALIBURは搬入口を閉鎖する。
プラットフォームは老人のリモコン操作で“建造ドック”の前で停止する。
「さーて、ようやく会えたなかわいこちゃん……やはり、こりゃあ、“混じっとる”わい」
プラットフォームからゆっくりと足を降ろした老人……Stain翁が装置全体を舐め回す様に確認し、感慨深げにうんうん、と頷く。
「すぐにこんなとこから出してやるからなぁ」
呟きながらジャンプスーツのツールベルトからレンチを取り出し、手際よく固定具を緩め始めるのを尻目に、EXCALIBURもプラットフォームから浮揚ジャッキを取り出して手早く装置に配置する。
ロックが全て外れた事を確認し、リモコンでジャッキのスイッチをオンにすると、“建造ドック”全体が音も無くふわりと三十センチ程浮かび上がった。
Stainがリモコンを操作すると、プラットフォームが装置全体の下へするりと潜り込みむ。
高さを微調整してからジャッキのスイッチをオフにすると、概ね移動の準備は完了だ。
Stainは最後に素早く電源を引っこ抜き、プラットフォームに載せていた機材のバッテリーにつなぎ直す。
「さて、あとはコイツを……」
『お客さんだ“チーム2”……“チーム2”、表に4人、裏に4人向かってる、表に止めた車両にも一人居るね』
最後に残った通信ケーブル類にStainが手を付けようとした時、本館制圧組のJemmaから通信が入った。
『“艦娘”は居るか?』
『チーム毎に違う服を着た女の子が二人ずつ居ます、資料でみた“チーム2”の“艦娘”の制服と一致!』
きびきびとした口調で、報告したのはWolfeeだ。
(“艦娘”にテクノサイトが関係しているとなれば、Arloのジーロイド共か……まぁ、最低限でも“スペクター”並とは考えた方が良さそうだな)
惑星エリスに巣くうArlo教団員の成れの果て、ジーロイド・リプレイトは感染体には珍しく、一応喋る上に、まぁまぁ戦術的な行動を取ってくる特殊個体だ。
逃げ回るわ、感染体の群れを呼ぶわ、仲間を喰って回復するわで、正直駆除するのは面倒臭い連中である。
スペクターはと言えば、単独忍務中のTennoが“手が足りない”と思った時に展開する自動人形である。
手持ちのWarframeのデータを写し取って作られた“スペクター”はデータ化した時点での、Warframeの性能と装備を完全にコピーしたドッペルゲンガーだ。
しかし、その知性は限定的であり、戦闘以外の行動をする事はできず、柔軟性がない。
とは言え、能力的にはWarframeに準じたものだ。
油断していれば痛い思いをさせられるだろう。
(艦娘達には真っ当な知性と、経験がある……侮ってはいけない、が、“ひとあて”はしてみないとな)
『パターン“チーム2、シナリオC”だ……Ordis、合図を出したら、このブロックの通信を遮断しろ』
『了解、トラブルも想定内デスネ……』
Stainが視界の端で頷いているのを確認し、EXCALIBURはぐっ、としゃがみ跳躍。
鉄骨を経由して、天井のメンテナンスドアから外へ出る。
(“耐久ミッション”か……多少は派手に行く事にしよう)
~Side 憲兵第三課・長月チーム:町工場裏手~
『なんか……静かだね』
『ガサ入れがバレてない様で幸いです』
『だな』
ガサ入れ現場の町工場、その裏手で敷波は体勢を低くし、カメラの範囲外に身を忍ばせていた。
チームメイトの藤島と竹下も近くに伏せている。
敷波はいつものセーラー服にポンチョだが、艦娘ではない他二名は、手にはM4アサルトライフルを持ち、頭部はヘルメットにバラクラバでかため、ダークグレーの野戦服に、胴体には予備マガジンや無線、その他装備がくくりつけられたプレートキャリア、腰のベルトには拳銃とその予備弾倉、閃光手榴弾、ジップタイ(使い捨ての樹脂製手錠)が十本程度、あと伸縮警棒が収まっている。
結構な重装備である。
『無駄口を叩くな、そろそろ表から長良達が踏みこむ頃合いだ、一気に裏口へ取り付くぞ』
『へいへーい、私がぶち破るでいいんだよね?』
私語を窘める長月に、軽口混じりに敷波が確認を取る。
『そうだ、予定通りにやれ』
『憲兵隊よ、あけなさい!』
長月の言葉が終わらない内に、無線にガサ入れ開始を告げる長良の声が響く。
同時に、敷波達が跳ね起きると左右から裏口へと猛然とダッシュする。
「っ!」
そして、思い切りつんのめる。
「って、なにコレぇ!ええ?矢?矢ナンデ?」
敷波が足下に突き刺さった矢に戦慄している内に、更に飛来した矢が今度は長月のチームへ飛び、回避した先の足下へ正確に突き刺さった。
「屋上だ!」
長月チームの金森が叫び、M4にマウントされたフラッシュライトが襲撃者の姿を闇に浮かび上がらせる。
「四課?情報部か?」
小型の和弓を引き絞ったその異様な姿に、長月が呟く。
「これは二課のヤマだ!引っ込んでろ」
その隣でM4を振り上げた松下が叫ぶ。
『あれは何?』
『ホシ?』
表組の無線からも戸惑った様な言葉が入ってきた。
『チッ!敷波行け!こっちで抑える、伊東、裏でもトラブルだ!課長に、連絡しろ!四課か情報部のアレが居る!』
叫ぶ内にも無線がノイズに満たされ、長月は舌打ちする。
その目前に音も無く降り立った影……EXCALIBURがゆっくりと腰から刀を抜き放っていた。
「ああ、もう!アレマジでやる気じゃん!」
敷波が背中からエントリーツール……“ARPAX ハンド・アックス”をするりと取り出して構える。
「ここ一帯の通信封鎖までするとは……やるしかないようだな、後ろに下がっていろ、アレは私達じゃないと相手ができん」
長月も背中に担いでいた巨大な釘抜きと鳶口が一体化した様な鉄棒……ハリガンツールをするりと抜き、構えた。
~Side 憲兵第三課・長良チーム:町工場表~
長月達がEXCALIBURと対峙していた頃、事務所棟の表口からガサ入れをしようとしていた長良達は、工場の上階で窓がするりと開いたのを見て、後じさる。
「ありゃなんだ?」
「人?……簀巻きか」
するすると簀巻きにされた人間がポイッと投げ出され、重力に引かれて地面に落下……する前に、繋がれたロープがピンと張って壁にどすっとバウンドする。
簀巻きそれぞれに何かが書かれた白布か、大きな短冊の様な者が首からぶら下げられていた。
「……“この者極悪誘拐犯人!”?」
フラッシュライトに照らされた短冊には、明確な糾弾の言葉が綴られていた。
「何の真似だ!」
「愉快犯?……四課じゃない?」
混乱した声を出す金森と松下を後目に、“軽巡”長良は深呼吸を一つ。
「突入準備!予定通り制圧するよっ!」
空気が物理的に震える程の声量に、浮き足立っていた表組の動揺がぴたり、と収まった。
金属がちぎれとぶ破壊音を立て、“駆逐艦”霰が表玄関に下ろされていたパイプシャッターをこじ開ける。
「取っ手、“抜きます”」
いつも通りの涼しい顔でドアの横に張り付いていた霰が、ブリーチングハンマーを振り上げた。
我に返った隊員達も左右にばらけ、即座に位置に着く。
「やって!」
腰にマウントしていたエントリーツール“ビークル・レーキ”を抜きながら号令すると、霰が滑らかな動作でブリーチングハンマーを振り下ろし、ドアの取っ手と錠前部分が内壁の基部ごと、ごっそりと吹っ飛んだ。
間髪入れずに長良が振り下ろしたビークル・レーキの切っ先がガラスを粉砕し、鋼板をアルミホイルの様に突き破る。
鶴嘴(つるはし)の切っ先に、収穫鎌の内刃が合体した様なそれの、内刃の部分には鋸刃めいたかえし刃がついており、何かを引っかけるのに最適な構造をしていた。
それを艦娘の腕力で引けば、並の扉など、蝶番毎外れて吹っ飛ぶ。
そして、そのまま、霰が右へ飛び込み、長良も左へ飛び込む。
さほど広くない玄関ホールには、内線電話が載った電話台がぽつんとおかれているだけだ。
得物を持ち替えた彼女達の手には逆手に持ったフラッシュライトと、黄色い段ボール用ホチキスにも見える拳銃が握られている。
非致死性武器の“テイザーガン”だ。
向かって右手には上がり階段とトイレのドア、その手前には事務所へのドアが一つ。
無言で玄関ホールの左右をクリアした一行は、取りあえず、一階のクリアリングに入る。
ハンドサインで、霰チームに階段上とトイレを警戒させ、長良チームがドアの先へ進む。
正面からドアを開ける長良の後に続いて金森が突入、事務所が無人である事を確認。
「荒らされてるな」
事務所内部は幾つかの端末の電源が入っている他、書類棚は開け放たれ、机の上にはファイルが何らかの基準に従って積み上げられていた。
明らかに何らかの情報を求めた家捜しだが、整然と、落ち着きすら感じさせられる現場はひたすら異様だった。
(プロならプロで、痕跡を残すなら、多分、敢えて現場は荒らしてる……隠す気が無いか、見せつけてる?)
考えつつも金森へ頷き、更に奥にあるドアの横を示して金森を移動させ、長良がドアを開けて侵入。
レースカバーのかかった革張りのソファーセットに、自然木の様相を残したままの一枚板にニス塗りをしたローテーブル。
充分に凶器として通用しそうなサイズのガラス灰皿が上に載っている。
ごく普通の応接室に、人影はない。
奥側にパーテーションが立ててある。
長良が確認すると、そこは小さな冷蔵庫に流し、コンロが備え付けられた給湯設備で、人は居ない。
行き止まりだ。
「クリア」
玄関ホールへ戻り、今度は長良と金森が階段上を警戒し、霰と松下に階段脇のトイレをクリアリングさせる。
「クリア」
特に何事もなく、戻ってくる。
事務所棟の一階はクリアだ。
(二階から物音はしない……)
長良はチームへサインと目配せを送ってから階段へ先行し、三段目で足を止め、後続をハンドサインで止める。
四段目に、細い、ワイヤーが張られていた。
元を辿ると、壁を這い、天井から複数の塊が吊り下げられている。
(グレネードブーケ!)
緊急退避のハンドサインを出した瞬間、小さな爆発音と共にワイヤーが切れ、カシャン、ころん、ころんと階段をピンが抜けたグレネードが転がり落ちてきた。
~Side ハイジャックメンバー&闖入者:町工場の裏手~
「!」
くぐもった爆発音に場の空気が揺らいだ瞬間、軽くしかける。
軽くステップを踏むだけで、EXCALIBURは“敷波”の間合いへ踏みこむ。
10mを少々あった間合いを一気に詰められた彼女はそれでも反射的に手斧を持ち上げ、防御態勢を取っている。
良い反応だ。
だが、Tennoと切り結ぶには少々足りない。
神速の上段一閃に連続して放たれる中段の回し蹴り。
仰け反った敷波の頭上をDRAGON NIKANAが通り抜け、腹部に中段回し蹴りが炸裂。 景気よく吹っ飛んで転がる。
(浅い、良いな……)
本来、両断した敵を間合いから放り出す為のコンビネーションだが、今回、初撃はブラフ。
膝蹴りの方がメインだ。
見切ってダメージを軽減したのであれば、良い勘をしている。
そんな事を考えつつサイドステップを連続し、支援射撃を避けて牽制にKUNAIを投げ、足をためて跳ぶ。
こちらへ向かってこようとしていた“長月”をバレットジャンプで強襲し、カウンターで振り下ろされる鉄棒(ハリガンツール)の持ち手をDRAGON NIKANAの柄で跳ね上げ、左膝を胴へ打ち込む。
これはまともに入り、小柄な影が数歩たたらを踏んで、堪える。
フルオートの制圧射撃。
ローリングで避け、KUNAIを投擲。
射撃をしていた人間の胴体の弾帯にぐさりと突き刺さり、抑えた苦鳴が上がる。
『藤島、下がれ!』
(肌までは抜けていないと思うが……)
引きずられる様に下がって行く、藤島(?)をカバーする様に、復帰した“敷波”が横から殴りかかってくるのをDRAGON NIKANAの刀身で巻き取り、つんのめらせ、後頭部へ肘を落とすが、強引に体を捻った“敷波”は肩で打撃を受け、猫の様に前転して間合いを逃れた。
同時に踏みこんでいた、“長月”の突きを半身になってシールドの表面で滑らせ、右肘をカウンター気味に胸の中央に打ち込むと、激しい衝撃と骨が軋む感触がする。
痛みを顧みず、打ち下ろす様なローキックを放つ“長月”を体当たりで跳ね飛ばし、跳び込もうとしていた“敷波”をDRAGON NIKANAの大振りで牽制。
(刃物を持ってきたのはちと失敗だったかも知れないな)
比較的平和な内地でも、艦娘達の戦意と覚悟は、本物だ。
打撃武器の方が、もう少々手加減がやり易かっただろう。
そろそろ、手足の一本、二本切断しなくては、陽動の意味が無くなりそうだ。
『ボス、ランディングクラフトが来てる、今から爺さんを出す』
『よし』
頃合いの様だ。
「あー、もう!“遊ばれてる”じゃん!」
「遊びで骨を折られてはたまらん……」
それぞれ、首と胸を押さえながら構えを取る二人。
「遊びじゃすまないよね、もう!」
警戒しながら防御態勢を取る一同の前で、EXCALIBURは不意にDRAGON NIKANAを鞘へ収め、拳法の型を取った。
「何だ?」
滑らかな、中華拳法の様であり、空手の如き打撃拳法の様でもある演武は、Tennoが暫く会っていなかった知人に対して、磨いた技を示し、挨拶とするアクアリッド・アクション。
戦術的に意味のある行動では無いが、今必要な、一瞬の注目を集める事については、充分な効果を発揮した。
そして、瞬間、真昼の光が闇を駆逐する。
RADIAL BLIND
EXCALIBURの二番目の力。
強い閃光を放ち、狭い範囲の敵全員の眼をくらませ、致命的な数秒間を作り出す能力だ。
六度、鈍い打撃音が響き、苦鳴が零れる。
「貴様等、誘拐に加担するのか!」
砕かれた両腕を垂らしながらも、“長月”の眼が燃えていた。
“敷波”も同様に腕を垂らして、歯を食いしばり睨み付けている。
彼女達の視線の先には、ガレージの扉から滑り出てきた建造ドックが映っていた。
建造ドックを載せたプラットフォームは、Stainが操り、JemmaとWolfeeが前後を挟んで位置を調整している。
『オペレータ、作戦区域へ飛行物体が接近中……回転羽根で空を飛ぶなんて、トテモキケンダゾ』
『どうやら“漏れてる”な、撤収急ぐ様に』
『了解、ボス』
プラットフォームの上に降りてきた、“ライセット”タイプのランディングクラフトがクローキングを解くと、一瞬、空気が止まった。
ホームベースに丸みをつけた様な頭から、二本の直線的な尻尾が生えた様なデザインのソレは、到底地球上の技術で作られたとは思えない異様な雰囲気を放っている。
底面から、牽引力場……所謂、“トラクタービーム”を発生させて三人毎プラットフォームを引き揚げ終わったそれを、強い光が照らした。
五月蠅いエンジン音が近づいてくる。
『おかわりがきましたね、オペレータ、モウッカイアソベルドン!』
もう、Ordisの地球文化汚染は止めようが無さそうだ。
事務所棟の窓から、空とこちらを見比べて頭を引っ込める人影が見える。
Jemma達の仕掛けた足止めもそろそろ限界らしい。
頭上まで来たヘリから何かが飛び降り、軽やかに地面に着地した。
『Arthur?』
サーチライトの中で立ち上がったのは、ヘックスのリーダー“BROADSWORD”こと、“Arthur Nightingale”が纏っているEXCALIBURの“PROTOFRAME”に酷似したボディの人影。
ただ、ワイルドで彫り深い隻眼フェイスは、太く短い角と眼の様なライトを持ったPENDRAGONヘルメットに隠されていた。
ただ、どこかTennoが知るそれよりは、随分とメカニカルに寄ったデザインだった。
To Be Countinued...
ああ、戦闘シーン、やっぱり苦手だなぁ。
特に、今回はTennoができれば部位欠損をさせない程度に抑えようとして戦っているので、彼女余計に面倒だったり。
もうちょい手加減し易い武器を持ち込めば良かったという話もありますが、所詮、Tennoの武器なので、致死性のない武器なんて無いんですよね。
セカンダリのEPITAPHなら、吹っ飛んで凍えるだけでそうそう死にゃしない気もしますけどね。
※今回、艦娘側が割と完封されてますが、長良さん達は足止め特化のブービートラップ責めされたのと、屋内であんまり無茶な事が出来なかったので動きが阻害されてしまいました。
長月さん達は、正直、相手が悪すぎます。(海の上で戦ってない時点で、能力縛ってる訳だし)
Tennoなんて、息を吸う様に無限に鍛錬と戦闘を繰り返し続け、一度の忍務で最低50人以上を殺戮し、どいつもこいつも“殺した数?もう数えてない”という異常集団なので。(お付きのセファロンはちゃんと数えてる)