得られた情報の共有と咀嚼が始まる。
正体不明の存在にラベルが貼られ、既知の存在となってゆく。
しかし、テーブルに載った情報は今切り取られたものだけではなかった……
~Side 憲兵四課そして情報部:とある埠頭~
明るい前照灯が闇を切り裂き、限界までパワーを絞り尽くされた50cc/4ストロークエンジンの悲鳴が耳を突き刺す。
法定速度などとっくにぶっちぎり、フレーム剛性の限界に迫る酷使に、不穏な振動が大きくなってゆく。
(いや、むりっしょ!ばあちゃん)
スーツの手足のひっかけ、パンチ、キック、曲乗り領域の体重移動を駆使し、後で絶対にタイヤがつるつるになっている事間違いなしの無茶な角度のコーナーリングをクリアしつつ、狩刃は悪態をつく。
いかにホ○ダ“スーパー○ブ50”が世界に冠たるキングオブタフネスを誇っているとしても、走りでレーサーレプリカに叶うはずもない。
(ちらっと見えたけど、ありゃ、多分400あったぜ)
カ○の後部で出前機がガッタガタに振動している。
おかもちを載せていたら、中身がこぼれる所か、爆発四散しかねない。
同じ4ストでも、50と400では文字通り桁が違う。
一瞬で見えなくなったのを、遠くから聞こえるローター音と、無線の誘導に従ってかっ飛ばすしかない状態。
青息吐息でたどり着いた先の埠頭では、堤防の先で斜めに止まったレーサーレプリカバイクとその傍らに立つシルエット、そして、結構沖合まで出たヘリの光だけが見えた。
(つーか、ぶっけてねぇけど、ふつーに弁償もんだな……)
カ○を止めて後輪を撫でると、抵抗がない、つるっつるだ。
なんか、前照灯がちかちか瞬いてる気もする。
フレームもちょっと歪んだかも知れない。
まぁ、それでも普通に走ることは走ってしまうのが○ブというマシンなのだが。
ため息をつきつつ駆け寄ると、睨む様に沖合へ目をやっていた頭部がこちらを向く。
『遅い』
『いや、バイクにハンデつきすぎでしょ!』
『現場で使えそうな物には常に目を配っておけと教えた筈だよ、ちょっと見ただけで、ソレよりマシな“脚”は二、三あった筈さ』
『俺、これでも公務員なんで、最初から盗み前提の物色はちょっと……』
まぁ、確かに手近で目に入った“脚”にとびついたのはちょっと良くなかったかも知れないが。
(どうせ、俺の給料から弁償する訳じゃねぇし)
ちなみに、弁償は公費だが、無茶すれば当然ながら減棒はある。
言外に“しょうのない子だよ”と言いたげなため息を聞きながら本部と無線連絡をとっていると、青葉から通信が入った。
『ごめんなさ~い、みうしなっちゃいましたぁ♪』
『いや、なんで楽しそうなんだよ……』
『海中に飛び込んでから結構な速度で離れていったので、あらかじめ潜水艇を潜ませてた感じでしたねぇ、あれは』
『なら、遠くまでは行ってねぇんじゃねぇか?』
海上、海中に深海棲艦が潜む外海の海中航行等、潜水艦娘でもない限り、自殺行為である。
そもそも人間サイズの深海棲艦の感知、徹底排除を目的とした本土圏の哨戒網はそんなに薄くはない。
色々あって保安庁辺りへチクる訳にもいかないので、“内海”で追い回したりはしないが、同時に哨戒ラインを越えて“外海”へ出るのはそこまで簡単ではない筈だ。
『甘い期待はするもんじゃあないよ、そんな楽な相手じゃない』
『ですよネ~♪』
『だからおまえはなんでそんなに楽しそうなんだよ』
~Side 憲兵二課&四課そして情報部:大本営会議室~
「成る程、天野平典の存在を彷彿とさせる痕跡に、明らかに人間、艦娘、深海棲艦とは異なる技術力を持った新たな“M案件”の被疑存在、更には課員のスーツ……“N装備”に酷似したものを投入する勢力、あらあら、それは四課さんも情報部さんも“てんやわんや”でしたねぇ」
会議室で湯飲みを片手ににこにこと笑うおばちゃん。
これでビジネススーツでなければ、井戸端会議の主婦のビジュアルなのだが……彼女は古泉咲恵(こいずみさきえ)、憲兵部三課の課長だ。
「情報の共有が遅れて申し訳ない、何分、事が事だけに、過去事案の確認と平行して、基本方針を決定した矢先で起きた事でして、うちの“即応戦力”を緊急派遣するのがやっとでした」
四課課長の空栗優理子(そらりゆりこ)が、軽く頭を下げる。
会釈の様なそれを、生保のおばちゃんみたいな営業スマイルで見ていた古泉は、目線を横にずらし、カップを優雅に持ち上げ、品よくコーヒーを嗜む女性を見る。
白い房が幾筋も走った深い焦げ茶の髪を束ねた顔はやや浅黒く、異国的だ。
整った容貌だが、その表情は刃物でそぎ落とした様に鋭い。
「ナディアさん」
古泉が呼びかけると、彼女は目線を上げまっすぐ視線を合わせてくる。
表情はフラットで、その瞳は鏡の様だ。
「実際に“手合わせ”した感想はどうです、平典さんご本人かは兎も角、関係者だと思われますか?」
問いかける古泉の表情も変わらない。
絵面だけは、興味の薄い顧客へ保険商品をセールスする生保のおばちゃんだ。
「そうね、“アレ”はヘイデンではないわ、剣、体裁き、足運び……似ていても違う、それだけならば装えるものなのかも知れない、でも、私は“彼”であれば間違わない、例えクローンを造ったとしても、“存在”自体から出る気配は“似て異なる”ものになるだけよ」
ナディアは一旦言葉を切ると、コーヒーで口を湿して熟考する。
「しかし、“彼”ではなく、“繋がりのある誰か”という事であれば断言はできない、うちの子をあしらってるのを見ただけでも、“アレ”はある程度“彼”の剣筋を知ってるのは分かったしね」
ナディアの言葉に、会議室の隅でげっそりしながらエナドリをキメていた狩刃はぎゅっ、と目を瞑る。
「終始“合わせられてた”って感じっすね、ガキの頃、親父相手に木刀振り回してた時みたいに……踏み込めば下がり、退けば寄る、相手がマジになった瞬間、“殺られる”ってマジ、マジで思いましたわ」
「“その気”があったらね、“アレ”は囮をやりながら、こっちを計(はか)ってたのさ、剣と手裏剣でつっつきまわしてね……多分、“アレ”にとっても狩刃と私の存在は予想外だった、だから“お見合い”になった」
ナディアの言葉を聞きながら、会議室の面々は、モニターに流されている推定“M存在”と狩刃達の戦闘映像をしばし見つめる。
「今回、“M”の目的は恐らく違法建造された艦娘、押収された“証拠”からすれば、陽炎型十三番駆逐艦“浜風”の拐取(かいしゅ)、逃走後の当日中に、海軍病院に被拐取者の海防艦“平戸”については返却され、処置に必要な資料と三課の“窓口”への通報先が添えられていたのは彼らなりの“矜持”なのか」
「それとも、我々とは積極的に対立する気はないというメッセージなのか」
空里の言葉を憲兵部部長、椎田紺蔵(しいたこんぞう)が引き取り、つるつるの頭を撫でる。
「部長、私の所の子達、両腕折られてますのをお忘れなく」
「ああ、ああ、勿論だ……しかしなぁ、向こうの“常識”からすれば、“治せる怪我”程度ならスパーリングの範疇かも知れんぞ、姿形は似ていようとも“M”にヒトの常識は当てはまらんよ」
にこにこ笑いながら圧をかけてくる古泉に、椎田は苦笑しながら顎を撫でる。
擬体の腕位、修復剤をひとっぷろ浴びれば新しいのが生えてくる艦娘と言えども、痛いもんは痛い。
大体、凶悪犯を相手にするとはいえ、本土勤務でそうぽんぽんぽんぽん艦娘の擬体に重篤な損傷を受ける前提なのがおかしいのだ。
「奴は“カタナ”を使ってた、“折る”より“斬る”方が簡単だったろう、手加減してたってのは間違ってないね、“何の為か”は考えた方がいいけどね」
「そうですねぇ~」
ナディアに眼を向けられているのを感じた青葉はノートPCから顔をあげ、少し考える素振りをする。
「過去の“M”の傾向からして、基本的に常識は兎も角、“情緒”はわりかし、ヒトに近い感じですね、そうじゃないのも便宜上“M”のくくりには入れてますけど、そういうのは本来“べつもの”じゃないかとは思いますねぇ……実際“本人”達に訊いても、そう言うのは大体“知らん”か“アレは別の連中”、て返ってきますし」
「オイオイ、言われたからって、簡単に信じていいのかよ?」
目頭を揉みながらボヤく様にいう狩刃に、青葉は口角をつり上げて笑顔を向けた。
「そこは“全体傾向”ですねぇ、“彼ら”一部を除いて割と素直ですから、“身内”の事だと“知ってる”、“名前位は”とか、黙秘する時も結構、“それに関しては言えない”とか、分かり易く口ごもってたりするんで、勿論、それすら“演技かも知れない”程度は想定してますよ?……あと、今回の接触の目的ですが、まぁ“アイサツ”でしょうかねぇ、アイサツは大事ですよぉ、古事記にもそうかいてあるらしいので」
「なんか、おまえの読んでる古事記とがっこで習った奴大分違う気がすんだけど……“アイサツ”ねぇ」
青葉は一旦言葉を切り、セブンイ○ブンからバラエティボックス風に仕入れてきたドーナツからオールドファッションをチョイスし、小さく齧る。
狩刃も釣られて、あらかじめパクっておいた、チョコク○ーラーもどきをばくりとやって、コーヒーをチェイサーする。
寝不足の脳に、カフェインと糖分が駆けめぐるが、覚醒効果というより多幸感が出てきた。
(ヤバい、意識飛びそうだわ)
「ふぁ……で、俺と婆ちゃんが想定外だって事は、艦娘の他には三課がターゲットだったって事か?」
「ですね、三課のみなさんが到着するのを“待って”たり、証拠資料と、容疑者っていう“お土産”を用意してたり、明らかに“接待”の準備をしてましたよねぇ、平戸ちゃんもすぐ返してくれましたし……まぁ、青葉としては、今回の“M案件”のポイントは、明らかに組織だって人員を展開してる事だと思いますよ」
「そうだな、今まで観測されている“M”は基本的に単独行動だ、背後に何らかの“団体”や“組織”を臭わせるものはあっても、集団として投入された事例はない……だったね?」
椎田の補足に青葉は頷く。
「そうなんですよ、今回の“M”は狩刃さん達の相手をした個体と、その“バックアップチーム”の様な三人……武器を持った戦闘員二名と、武器を持っていない特殊技能者らしき者が一名、それが“チーム”の全てなのか、それとも、“もっと巨大な組織”の一部でしかないのか……」
「と言う事はだ、今、我々の国は、艦娘と狩刃君達を手玉に取り、準軍事組織の警戒地域へヒト一人背負って易々と潜入してのける実力を持った目的不明の“組織”が暗躍しているという事だね」
濃く煎れた煎茶を啜っていた、情報部部長、保早九印(ほばやくいん)がため息をつく。
茶の渋さ由来ではない渋面を、間宮羊羹の甘さで和らげながら何やら思案する。
「“M”は彼ら独自の“目的”を持ち、それを達成するまでは活動を続ける……何とかして、彼らの“目的”を知らねばならんな」
「しかし、こいつはどう見ても狩刃の“N装備”とそっくり、つーか、もっと“出来が良さそう”に見えるんだが、その辺どうよ?技術部としちゃ?」
それまでずっと、動画と資料を食い入るように見ていた丸刈りの巨漢、情報部内事課課長、火羽礼良(ひばれいろ)が口を開く。
他のメンバーがスーツ姿なのに対して、彼はボーダー柄のシャツに、紺色の作業ズボン姿だ。
シャツを盛り上げる筋肉はどう見てもデスクワーカーと言うタイプではない。
「ちゃんとした数値が出せる程の情報は出揃っていないわ……けど、狩刃君の装備してる“聖剣”型の“N装備”に比べると、確実に基礎能力は上回っているわね、まだ着装者の“練度”で説明が付く範囲だとは思うけど」
「そうだね、まだ、この子は“聖剣”の能力を扱いきれてない、ヘイデンならあれ位はできたさ」
「いや、それ少なくとも“アレ”はじっちゃん並にやるって事っすよね?」
意見を求められたエレノアは、ちらりと手元のタブレットを見てからコメントし、ナディアもそれに応える。
大本営技術部 部長、天野エレノア(あまのえれのあ)。
所々に黒メッシュが入ったアッシュグレーの髪をポニーテールに結わえ、シンプルなセーターにスキニージーンズの上に白衣を引っかけた彼女の顔は、どことなくナディアの面影を宿している。
「正確に計れない基本性能は兎も角、見た目で分かり易いのは、太股脇に貼り付いた手裏剣ホルダー以外には装具の類が一切ついていない事かしら……背中の弓も、腰の刀も、“何も無い所”に固定されている様にしか見えないわ」
プロジェクタの入力を切り替えたエレノアが資料を映すと、切り取られた画像の中で、“聖剣”型のスーツを纏った“M”の背中と腰が拡大表示された。
よくよく見ると、弓も刀も密着している訳ではなく、少しだけ“浮いた”状態で保持されているのが分かる。
「ついでに言えば、逃走時に囮として放ったあのピカピカ光るボールだけど、アレもどこからともなく出てきてるわよ」
「そうだね、次からもどんな隠し玉が出てくるか分かったもんじゃない」
「大体、アレ、スーパーボール位しかなかったのに、バランスボール位に膨れてるじゃねぇか、風船かと思ったら手応えは鉄球だったし」
動画の中でポンポン跳ねているゲーミング鉄球……ローラースペクターを見て狩刃は顔をしかめる。
「遺留品はひとまず取り纏めと解析を技研課の荒戸くんに任せてるわ」
「あ~、あいつかぁ」
火羽は無精髭一つ無く剃り上げられた顎をさすりながら微妙な顔をする。
荒戸五郎(あらどごろう)、大本営技術部美術研究課課長の肩書きを持つ男だ。
火羽も、課員達がお仕事で拾った“風変わりな遺留品”を持ち込む事はあるし、専門的な見解を聞いたりする事も割とある。
特徴的なM字ハゲと、慢性的な眼の下の隈、ついでにメガネがトレードマークの小柄なおっさん。
あと、寒がりなのか、いつも襟巻きを巻いていたりする。
外見的な所は兎も角、優秀な“妖精鍛冶”であり、艦娘と深海棲艦に関する深い見識から、幾つもの重要技術の研究と開発に携わってきた本物の天才だ。
狩刃達が纏う“N装備”についても、彼の解析からフィードバックされ施された改良も多い。
未知の技術解析において、大本営では第一人者と言って良いだろう。
ただ、技術研鑽に没頭する余り、少々、いや、かなりエキセントリックな行動を取りがちなのが、天才あるあるなのだが。
奇行の一つを挙げるとすれば、“荒戸式キラーパス”だろう。
何かを研究していて手が放せない時、何か他に心底を奪われる研究素材を手にしてしまった場合どうするのか。
答えは……
今持ってる研究を誰かに投げつけ、新しい素材で研究(あそび)をおっぱじめる。
普通なら今やってる研究(あそび)が終わるまで寝かせるか、新しい研究(あそび)を誰かに任せるものだが、荒戸は欲望の赴くままに、今までやっていた研究の引き継ぎ資料を超速で作り上げ、相応しいと判断した研究者へ送りつけてしまうのだ。
昔は生のデータをまんま投げていたらしいのだが、投げた先で生のデータ解析から始まり、遅々として研究が進まないという話を聞き、流石に最低限の引継する位は大人になったらしい。
たまにそんな事をしているせいで、特に意図するでもなく、一部で勝手に荒戸派閥的なものが出来上がったりしているようだ。
「今回の“M案件”の遺留品については、随分興味が惹かれてる様だから、何か結果を出してくれると思うわ」
「楽しみですねぇ♪」
エレノアの見解については、一同異論は無く、それぞれ首肯する。
「まぁ、“M”の目的については今後の調査と、接触の機会を待たざるを得ないだろうよ、専属は今まで通り狩刃君と青葉君に任せるとして、技術部には引き続き遺留品の解析を、情報部、特に内事課には“M”が絡んでいる思われる案件の共有、そして、今後は三課にも内事課と同様にこの“M案件”に噛んで貰おう……今後、この“M案件”をコード“オリジン”、“M”を“テンノ”と呼称する」
「“テンノ”……ねぇ、松雲町で“M”が名乗った組織名?でしたっけ、“オリジン”は良く分かんねぇけど」
椎田が“M案件”のコードを発表すると、狩刃が首を捻るが、保早は発表を追認し、火羽へ頷いてみせる。
「火羽君、宜しく頼むよ」
「わかったぜ……まだ情報がすくねぇが」
「技術部としては問題ないわ、遺留品が出たらすぐに回してちょうだい」
「三課も“M”が関わっていそうなら狩刃君達へ連絡すればいいのかしら?」
エレノアが頷く向かいで、古泉が首を傾げる。
「ああ、あくまで情報提供で構わない、“世間話”できるならして貰えるとありがたいが、剣呑な雰囲気なら退いてくれ、そう言うのは狩刃君達に任せてくれていい」
「わかったわ、その時はお願いね、狩刃君」
「おまかせください♪」
「アッハイ……つーか、主にやり合うの俺だろ?」
にっこり微笑むおばちゃんに、一瞬“マジっすか!”という顔になっていた狩刃も取り敢えず頭をさげる。
青葉は微笑を浮かべているだけだ。
「ナディアさん、いつも通り特定案件の嘱託になりますが、狩刃の事をお願いします」
「ああ、アレはまだこの子だけじゃ荷が重い、手を貸すよ……あの人との関わりも気になるしね」
空栗が水を向けると、ナディアは快く首肯した。
半ば引退状態だったのに電話一本で助太刀に来てくれた辺り、彼女なりに失踪した夫である天野平典に関わる情報には、未だアンテナを立てているのだろう。
“孫”の狩刃の事を気にかけているのも確かであろうけども。
「さて、体制はひとまずいいな……今回の“テンノ”が用いる技術だが……天野平典、そして、彼によってもたらされた“N装備”の技術と強い関連性を感じずにはいられない」
今度は情報部の保早がやや居住まいを正して口を開き、他の参加者達もその様子に口をつぐみ、彼に注目する。
「オペレーション“ダークセクター”……完全に“育った”陸上型深海棲姫の勢力下となった東欧の街ラスリアへの偵察任務、攻撃目標の特定と破壊工作目標を目的としていた筈が、人類が初めて艦娘の力を借りずに、領土を奪還する事となった作戦、だったよな……“N装備”はその作戦の時に、祖父さんがドサクサで鹵獲して使った深海由来の技術品てね」
「想定外な上に、色々問題もあったんで、公表では普通に徹底的な空爆と艦砲射撃で焼け野原にした事になってますけどね~」
狩刃と青葉のやりとりに、空栗と古泉も頷く。
“N装備”に関わる事がある関係者達を対象とした“関係者外秘”の事実情報だとそういう事になっている。
“天野平典”とそのバックアップにあたっていたナディアが、鹵獲した“N装備”を着装し、陸上基地内の深海棲艦を排除しながら、最終的にコアとなっていた“陸上型深海棲姫”を破壊したのだ。
“人間”が深海棲艦を撃破し、占領地を解放したと公表できれば、当時どん底だった厭戦機運をもっと晴らせただろうが……
「継続運用可能か、複製できるのか、そして、使える奴は他にいるのか……希望にすがるにしても当時“N装備”には問題が多かったからな、大体、“N装備”でも海じゃ奴等と戦えん」
「だよなぁ、息はなんかへーきだけどよ、身動きできねぇわ」
火羽の説明に、狩刃は頷く。
さしもの“N装備”も、海上海中の機動力は無に等しい。
「ついでに言えば、“N装備”は“艦娘を殺すための道具”だからさ……“妖精”付の武器でも、艦娘は傷つけられる、だが、武器も傷つくし下手すりゃ壊れる、が“N装備”なら確実に“殺れる”」
ナディアは誰しもが口をつぐんだ会議室を見回し、肩を竦める。
「“大本営は艦娘の為にある”……そんなところが“艦娘を殺す為の武器”を許容できる訳がない、という事だね?」
何か含みを持たせたナディアの言葉に狩刃と空栗が若干眉をひそめる中、保早は重々しく頷いた。
「そうだ、“N装備”は人類にとっての鬼札(ジョーカー)だ、“大本営”の理念に反する存在だが、だからこそ管理下に置かねば安心できん……そして、他にも、よその組織には明かせぬ“理由”がある」
「お、言っちゃいます?」
やたらと嬉しそうな青葉の言葉を咳払い一つで払いのけ、口を開く。
「“M案件”コード“テンノ”関係者に対して、関連案件コード“アルブレヒト”の秘匿情報を開示・共有する……“N装備”は“深海棲艦からの鹵獲品ではない”」
「マジ……?」
保早の爆弾発言に、狩刃は普通に驚愕するが、周囲で驚いているのがほぼ自分だけなのに気がつき真顔になる。
(知らなかったの俺だけだったり?)
「……落ち着け狩刃、私もこれについては共有を受けるのは初めてだ」
「っス」
空栗に肩をド突かれ、狩刃が気を取り直したのを確認したのか、保早は先を続ける。
「オペレーション“ダークセクター”の時に“N装備”が“発見”された事自体は事実だ、だが、それは“鹵獲”されたのではなく、現地で“提供”されたのだよ、“N装備”の製法、着装者に必要な“資質”、そして、いつか現れる同じ装備を纏う“オリジン”の“M”、“テンノ”の存在を示唆する情報……他ならぬ“M”存在、“アルブレヒト”によってね」
「元々、艦娘達の“最初の一隻”を手引きしたのは案件“引き揚げ屋”の“M”達である事を考えれば、深海棲艦側の手引きをする“M”が居ても、不思議な事ではない、その程度は元より想定内だ……しかし、問題は存在を示唆されていたという、“テンノ”の情報」
「ああ、俺も“N装備”が“アルブレヒト”って奴由来だって事は聞いてたが、“テンノ”とかいう“M”の情報まであったってのは初めて聞いたぜ」
空栗は割と冷静に受け止めている様子だが、火羽は若干眉をひそめている。
(婆ちゃんは兎も角、叔母さんも知ってたんかよ……)
狩刃が視線を向けても、エレノアは素知らぬ顔で紅茶を飲んでいる。
元々ポーカーフェースな叔母だが、今回もその表情は分からない。
「“アルブレヒト”は“N装備”の事をこの世界にとっては“保険”だが、自分にとっての“試金石”だと言った……そして“オリジン”世界の“剪定者”である“テンノ”がやがて、この世界へ訪れる事となるだろうとな」
「剪定……世界に害になる者をバッサリ殺るってか、物騒だな」
「火羽さん、ギリ殺られてねぇっすよ、まぁ、死にかけでしたけど、しっかし……確かに、今回のヤマも“剪定”か、的(まと)は社会のダニだったし」
公務員としては一寸アレな狩刃の発言を咎める者は誰もいない。
表向きの態度はどうあれ、大本営に勤める者にとって、艦娘に危害を加える存在に人権はないというのは共通認識である。
「さて、松雲町の事件で民間人の少年と接触があった“テンノ”個体だが、自ら“かつてオロキンを打ち倒し者、圧制者の悪夢”と名乗った様だ、“オロキン”が何か分からんが、その言葉を信じるのであれば、“圧制者の悪夢”と言う以上……“テンノ”は最低限、圧政を敷く事ができる国家レベルの体勢を打倒している」
「“大本営”は“テンノ”を国家の脅威となる未知の戦力集団として見ているのかしら?」
「材料が足らん……まだそこまでじゃないな」
古泉の疑問に椎田は首を振る。
「だが、今までの“M”の実力を考えれば、矛先が人類、いや、国家に向いた時、国体が残るかすら怪しいだろうね」
「いやあ、専従班の責任重大ですねぇ~」
「う゛~、胃がいてぇ……」
保早の補足にからから笑う青葉を横目に、狩刃は腹を押さえて悶絶する。
「まぁまぁ、最初から悲観する事はないだろう、話してみれば、以外と話せる連中かも知れんじゃないか?……君達に案件情報の閲覧権限を付与しておいたから、後で資料は確認しておけよ!」
顔を蒼くしたまま背中をド突かれる狩刃を見て、ナディアとエレノアは同時にため息をついたのであった。
To Be Countinued...
ちなみに、狩刃君が使ってるEXCALIBURは“聖剣”ですが、ナディアさんが使ってるNYXは“朧”がコードネームです。
艦これの冬イベは全て丙で義務は果たしました……サンマ漁同時展開とか無理ィ!
Warframeは古き同盟はクリアして、豪遊の明石……じゃなくて、剛勇の証をちまちま集めて、いままで持ってなかったアルケインについて回収しました。
後は週一でKuvaと前のイベントで完全強化済のアルケインをガチャ用に回収しとく感じかなぁ。
Soulframeは最大額のファウンダーになってるんですが今一遊べてないなぁ。
マップ開拓するのは楽しいですけども。
次は、Tenno達のその後かな。