裂け目の先は、一見、よく知っている太陽系に見えたのだが……
『オペレータ!』
Ordisの声に目を開けると、部屋は薄暗い非常照明にうっすらと照らされていた。
『状況は?』
『瞬間的に発生した、void嵐……いえ、巨大なvoid亀裂の様な現象に巻き込まれた様です、DOJOのセンサーは生きていますが、展開したドローンからの情報がブラックアウトして、何も見えません!』
床から体を起こし、特に大けがはしていない事を確認する。
少なくとも頭は打たなかった様だ。
『クルーは?』
『負傷者は居ますが、死亡者はありません……ドローンを再展開しましたが、ナンジャコリャ……えーと、Ordisは混乱シテ、メンテナンスが必要カモ……ムムム、セファロンCYと相互で並列チェックしましたが、正常な様デス』
『どうした、Ordis?』
元々、欠けた記憶があったり、秘匿指令を受けていたり、妙な所があるセファロンだが、ここで、おかしくなられても困る。
『オペレータ、取り乱しました……もう、大丈夫です、改めて報告します……検知できる限り、この宇宙には宇宙船も、通信の1つさえも何もありません、“とても静か”です』
『妨害か?』
『だとすれば、Tennoの技術を遙かに凌駕する存在からの攻撃ですが……』
外部との通信が完全に遮断されたとなれば、かなり厄介な事になる。
自力でなんとかするしかない。
まぁ、外部と連絡がとれるにしても、自分のクランは特に友好クランを持たない、独立クランだ。
簡単に助けを求められるものではない。
『DOJOの損傷確認と負傷者の対応は、Ordisが纏めてくれ、私は、Railjackで周囲を直接確認する』
『了解しました、オペレータ……Ordisはよろこ…アア!…えー、これが“嫌な予感”というものなのでしょうか?』
結果から言えば、Ordisの“嫌な予感”は的中していた。
Railjackの主だったクルーが集まったブリッジは静まり返り、口を開く者はない。
眼下には、蒼い星……“地球”がある。
オロキンの遺跡“シータス”に住まう友好的な住民達の元を訪れ、自然を歪めようとするグリニアの尖兵達と幾度もなく事を構えたエイドロンの平原があった筈の星。
ここ数週間かけて、太陽系の各勢力の主要拠点が存在した……筈の場所を隈無く調査し、そして、戻ってきた。
決定的な事実を認められず、先延ばしにしていたのは否めない。
子供じみた対応とそしられるかも知れぬが、クルー達はTennoではないのだ。
「繰り返しになるが……結論を述べれば、ここは我々の居た宇宙ではない」
『そうだ、ここは確かに太陽系だが……我々が来た宇宙より少々若い、星座の位置や恒星の状況からすると、少なくともオロキン文明以前になる』
悠久の時を超えて目覚め、時代の孤児である事を受け容れる。
そんな覚悟を期待する方が酷だ。
(もっとも、今回は時間だけではなく、宇宙すら違うが……)
RailjackのセファロンCYは細かい所を大分端折った。
事実の確認と、結論。
自虐的過ぎるきらいはあるが、CYは有能なセファロンだ。
「そうなると……まぁ、地球の住民の技術レベルは大分低い様ですが、自力で月へ移動するのがやっとの様だし……我々はタイムスリップをしたという事でしょうかね、隊長?」
手を挙げたのは、商人シンジケート“ペリンシークエンス”出身のクルー、Timothyだ。
「そんな簡単な事なら良かったんだが……そう、言いたそうだね、キャプテン?……ま、私としては、グリニアのGの字も無いのは良いけどね」
CYのレポートを確認していたクルー、グリニア帝国の抵抗者達のシンジケート“スティールメリディアン”出身のJemmaが水を向けてくる。
「なんと、美しい……ここは、まだ墓場ではない、たとえ損なわれていても、これだけの緑があれば望みはありましょう……ここがどの宇宙であれ、私の使命は地球にあるのです」
独り、地球に向けて祈りを捧げていたのは、崩壊前の純粋地球人類を崇拝する、宗教色の強いシンジケート、ニューロカ出身のChiaraだ。
地球と旧人類を崇拝してきた彼女にしてみれば、実際に生きている純粋な旧人類が存在するこの宇宙にやってきた事に、何か導きの様なものを感じているのだろう。
「地球にはかなりの数の旧人類が存在している、78億に少し足りない位だな……問題は、日常的にある種のVoidパワーが使われている痕跡があるという事だ」
「Voidって、キャプテンがどばーってだして、ぶわーって敵を吹っ飛ばしたりしてるアレかい?」
Jemmaの表現は、まぁ、割とおおざっぱだ。
「表現は兎も角、類似した力ではあるね」
「こんな太古から、Tennoは居たって事ですか?」
Tennoは古代オロキンと共にあった事は、一部の者しか知らぬ事だ。
「……Tennoの間には、僅かながらオロキン以前の旧地球に関する記録が残っている、神話と言っても良いかも知れないがな、ある意味、Tennoの始祖とも言える男の話だ、彼……ヘイデンは、Voidエネルギーを操る術は持っていなかった筈だ」
モニターには、Railjackのスキャンが捉えた、海上の映像が映っている。
何らかの機械を背負った人間が、生物的な機械に見えるものと戦闘している映像だ。
片方はどうやら制服らしきものを纏っていた。
何らかの軍事的組織なのだろう。
『構造的に見れば原始的な内燃機関の様だ、しかし、あの機械でどの様に水上を推進する動力を生み出しているのか、原理は不明だ……人を海に浮かせて移動する程度、“我々”の宇宙であるのならば、コーパス辺りの科学力でも可能だが、敢えて内燃機関を装う意味は不明だな』
スキャンされた、“彼女達”のホログラムが投影される。
箱に煙突と大砲をくっつけた様な金属の箱を背負った若い女性。
『……双方の勢力が使用している火器は極小サイズの“大砲”だ、極めて原始的な燃焼薬を用いて質量弾頭を発射している様にみうけられる……弾頭はせいぜい音の2倍少々の速度なのに、破壊力は不自然に大きい』
互いに打ち合う砲弾はそこまで命中精度は高そうに見えない。
大きな放物線を描いてのんびり飛ぶ無誘導弾を、遅いとは言え、動き回る目標へ命中させるのは極めて困難だろう。
普通に考えれば。
「ここまで火薬の臭いがしそうだねぇ、親しみが湧いてきた、ずっしりくる武器は嫌いじゃないわね」
「では、地上で観測された技術レベルでは不可能な事を“彼女達”は、隊長と同じ様なVoidのパワーで実現しているという事でしょうか?」
私はTimothyに首肯する。
「そうだな、調査の必要はあるが、私の感覚ではそう感じている……しかし、何にせよ、もっと情報が必要だ」
「キャプテン、どこから始める?」
Jemmaは“取りあえず降りてみない?”とでも言いたげに愛用のARGONAK(アサルトライフル)を磨いているが、まだ、好きに撃ちまくれる程、ここの把握は出来ていない。
誰かを撃ち殺してから質問するグリニア式外交術を使うのはまずい。
少なくとも、“今日の所はどっちに向けて撃つか”位は決めたい所だ。
「そうだな」
私は、Timothyに目をやった。
「僕の出番かな?」
「ああ、ちょっと盗み聞きさせて貰おう……商売するにも、地元の取引慣習を調べる必要があるだろう?」
「ああ、全くだ、その通り……隊長、早速かかるとするよ」
To Be Countinued...
という訳で、やってきました。
艦これの世界へ。
とは言え、まだ、艦娘も提督も出てきてませんけどね。
Railjackのクルーは、実際のゲームで一応友好関係にあるシンジケートから、ちょっと性格設定を確認して決定しました。
リアルのプレイ中はレッドベールのシジルつけてるので、アービターズ・オブ・ヘクシスとセファロン・スーダからは滅茶苦茶付け狙われてます。
昔はペリン・シークエンスだったので、ニュー・ロカともまぁまぁ仲は良いです。