DOJOの会議室に集まる一同。
調査はした、準備も十分だ。
決断し、動くときだ。
それから暫くは、割と忙しかった。
いや、正確に言えば、クルーとDOJOのスタッフ達はそれなりに忙しくなる様に仕向けていた。
DOJOをただ維持する程度なら、中の人間は兎も角、施設だけなら放っておいても数千年程度なら問題ないし、Railjackも艦隊戦をしない航行だけなら似た様なものだ。
最初に見て回った時、太陽系内に元の銀河で流通していた資源がそのまま埋蔵されている事は、ざっとだが確認している。
異なる世界の銀河とは言っても、環境的には“勝手知ったる太陽系”であり、今日明日の生き死にをかけて、資源をかき集めたりする必要はないのだが、やはり、暇すぎると、人間というのは余計な事を考えてしまう。
クルーとスタッフ達には、何か前向きな手仕事を与える必要があったのだ。
セファロンOrdisとCYに作業リストを作成させ、手が空いているスタッフには逐一割り当てさせる様にして、Jemma達と私で程よい緊張感が維持されているか確認する。
課題進捗と成果の運用を任されたOrdisはいつもの様に愚痴をこぼしまくっていたが、この方法は今の所うまく回っていた。
「悪いね、遅れた、Cryotic掘ってたら、止まらなくってね」
「姉御、おかえり!」
「ああ、ただいま」
手を振って出迎えたWolfee……DOJOの警備班長に、Jemmaは笑顔で手をあげた。
スティール・メリディアン出身の二人は仲が良い。
もっとも、産まれた時からスティール・メリディアンとTennoの庇護下で育ったWolfeeは、昨今希な好青年に育っている為、クルーとスタッフ皆から好かれる存在だ。
「では始めようか」
DOJOの会議室には、Jemmaより先に、Timothy、ChiaraのRailjackクルーと、DOJOスタッフの班長達が集まっている。
DOJOの施設整備班長、Stain……大分前髪が後退したテックマニア、元コーバスとは思えない程に商売が不得手だが、コーパス、グリニア、orokin、幅広い技術に明るい人材だ。
物資管理班長、Zana……シータスの商家出身の女性、シータス風の新鮮な食材が入った食事がたまに出るのは、彼女が管理するプラント、というか、畑とか、水槽とか、畜舎のお陰である。
あとは、先ほどの警備班長Wolfeeだ。
「ここしばらく、手分けをして、この太陽系について調査を進めて貰った訳だが……大まかな所は、事前配布した資料を読んで貰ったと思う」
ちらりと見回すと、おのおの頷きが返ってきたが、Jemmaは微妙に目を逸らしている。
まぁ、いいだろう。
「初動で集めるべき資料は集まり、準備は整った……そろそろ次の段階に進む頃合いだ、“地球”に降りて、直接の調査を実施しようと思う」
ホロに“艦娘”と“深海棲艦”を映す。
「“地球”は“国”という単位で勢力が分布していて、更に“国”同士は利害と主張が合致するもので同盟を組んでいる様だ……その辺は、シンジケートの様なものだが、更に、旧人類について戦う“艦娘”という種族と、それと敵対する“深海棲艦”という連中に分かれている」
「旧人類は、“深海棲艦”とやらと、何度も交渉しようとした模様ですが、意思疎通すら困難だった様ですね……恐らくは、我々にとっての感染体の様な存在に近いです」
「ふーん、話ができないんじゃあねぇ、キャプテン、旧人類の方に肩入れした方が儲かるんじゃない?……ちょっとは気分も良いだろうし」
Timothyの補足に顔を顰めたJemmaが混ぜっ返したが、Chiaraの視線に気がつくと、思い出した様に言葉を付け足した。
「私としては、旧地球人類が脅かされているのであれば、助力をすべきと考えますが……決めるのはTenno、貴方のお心次第です、ただ、テクノウイルスを持ち込む事だけは、どうかお止め下さい」
「ああ、あれが広まればどうなるかはよく知っている、私も始末に追われたくはない」
私はChiaraを安心させる様に頷くと、改めて口を開く。
「我々は、旧人類に介入せず、元の世界へ戻る方法を探して宇宙を旅する事もできるし、いつか、もう一度、Void亀裂が生じて元の世界へ戻れる事を信じて眠りにつく事もできる」
皆、黙って聴いている。
まだ続きがある事を察しているのだ。
「だが、私はTennoだ、悪夢から生まれ、殺戮と破壊の道を踏破し調和を求める者、乱れた世がTennoを求めるのであれば、どこであろうとも戦う……どの世界でもだ」
一瞬、静かになった場で、ぱっと手を挙げたのはないWolfeeだった。
「オレ、難しい事はよくわかんねぇケド、キャプテンはなんか良いことできるなら、やりたいって事っすよね?……だったら、オレは賛成っす」
にっこりと微笑みながら宣言する彼の様子に、場が和らぐのを感じる。
クローンではなく、人工授精で生まれた彼は黒い髪に灰色の瞳を持ち、中々端正な顔をしており、パッと見た目ではグリニア系には見えない。
DNA修復薬の定期摂取は必要だが、サイボーグ化に頼らずにシータスの民と同じ位は生存可能だろうと診断されている。
「ま、腹を括らなきゃね、ここに来た時から実家は捨てたようなもんなんだ、地球の土の上に又、足を下ろせるかも知れないってだけで御の字さね」
Zenaは枝毛を弄っていた三つ編みをポイッと背後に投げ捨て、肩を竦める。
気っぷのよい娘だ。
DOJOの仕事へ誘った時も即断即決だった記憶がある。
「ふむむ……では儂は失礼させて貰う」
Stainはがたがたと席を立ち、会議室を出て行ってしまった。
「長居するのであれば、素材の培養に、代替素材の開発……ウイルスの完全な隔離と検疫も必要じゃな、やる事は山積みだぞぉ!」
開けっ放しの廊下からそんな声が聞こえてくる。
マイペースだが、やる事は心得ている男だ。
問題ない。
『さて、方向性がまとまった所で、キャプテン、何から手をつけようか?』
うずうずした様な顔をしているJemmaに、私はわざとらしく首を捻ってみせる。
「そうだね……威力偵察かな」
To Be Countinued...
今回も会議になってしまいましたが、これにて導入の銀河編の章は終了。
次は接触編の章が始まります。