虚無海洋 ~Void Ocean~   作:八切武士

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 別の宇宙へやってきた事を受け入れ、活動していく決意を新たにしたTenno達は、次の段階へ活動を進める。
 慣れ親しんだそれとは異なる地球へ降り立つTennoを待っていたのは、やはり、戦場であった。



第1章:接触編
Mission 1:~威力偵察・クロスファイア~


 腰を落として、グリニア製の狙撃銃、VULKERを保持する。

 装弾数6、高倍率で高い打撃力を持つ弾丸を撃ち出すが、その割には反動が軽い。

 ただ、リロードはお世辞にもし易い銃ではないので、ワンショットワンキルを徹底する必要がある。

 私と反対側にある狙撃ポイントには、既に同じ銃を装備したJemmaが位置に着いていた。

 “シンセシススキャナー”で見た限り、波打ち際には足の生えた移動砲台に、極小サイズの丸っこくて小さな手足の生えたユニットがひしめいている。

 

(“砲台小鬼”に“PTボート”)

 

 人型に近い個体も見えるが、呑気な事に大きな日傘の下で飲み物を手に寝そべっている様だ。

 あれらは“艦娘”側が、“姫級”とか、“鬼級”とか呼称している個体だろう。

 

(“空母夏姫”、“集積地棲姫”、“駆逐古鬼”……事前に確認したのと外装が違うな、バリエーションか?)

 

 高台になる場所には、肩から砲を生やし、両腕の先が多数の砲を備えた縦長の箱の様になったユニットが配置されていた。

 

(“戦艦ル級”……)

 

 既に“艦娘”側が編成した攻略部隊と“深海棲艦”の防衛部隊による交戦が大分前に始まっており、今回は”深海棲艦”側が押されている状況だ。

 “艦娘”側はかなりの損害を出しながらも、後続に控えた支援母艦から次々と送り込まれる補充戦力が損傷艦の穴を埋め、防衛艦隊の戦力を着実に削っている。

 時折防空をくぐり抜けた極小サイズの飛行物体が飛来し、極小サイズの爆弾を投下する為、集積された燃料や地上施設にも散発的な被害が出始めていた。

 

(サイズはコーパスのオスプレイとさして変わらない……爆弾は自由落下型か、命中率はたかが知れている、が、破壊力は結構大きい)

 

 この島は小さいが、旧人類が居住する土地に大分近い。

 やっきになって、取り返そうとしているのはその為だろう。

 人口密集地に、今、この島が受けている様な攻撃があれば、凄まじい数の死傷者が出る事は想像に難くない。

 この調子で押されれば、間をおかず、上陸戦が始まる。

 

(流れ弾一発が、あらぬ方向から飛んできても問題ない状況に……)

 

 砲弾が飛び交う中、生きて浅瀬に辿り着いた小型の“艦娘”達が海面で体勢を落とし、つぎつぎに小さな箱形の船を海面に放出してゆく。

 

(エンジニアみたいだな……)

 

 小型の船は自律兵器らしく、置かれたそばから元気よく走り出している。

 放出された船は、浅瀬で極小型の“深海棲艦”の攻撃に晒されながら砂浜に突き進み、無事揚陸したそれらの先端の板がぱたりと倒れると、武装した小人達と車両が勢いよくなだれ出す。

 あれ程ごく小サイズの自立兵器は、コーパス程度の科学力が無くては作成不能だろう。

 収集した情報では、あれらは、“妖精”と呼ばれる存在らしい。

 “普通の”旧人類は、“妖精”が“艦娘”の近くに居て可視化されていないと、姿を目にする事ができない様だ。

 

『……Jemma、砂浜で箱状の船から出撃したものが見えたか?……“妖精”という奴だと思う』

『え……いや、全然見えないわよ?……いや、見えたり見えなかったり……ね』

 

 情報は概ね正しそうだ。

 Tennoにも“妖精”は見えるらしい。

 やはり、現地調査は得るものが多い……早速一つ、情報がアップデートされた。

 浅瀬で静止した“艦娘”の左肩が爆ぜる。

 ふっとんだ腕が両端を水面に交互に接触させながら縦回転し、少し離れた僚艦に激突。

 血液と海水が混じった何かが、高温になった煙突で湯気を散らす。

 反射的に抉れた肉を掴む娘から視線を動かし、想定した発射地点で動く気配へ銃口を持ち上げ、スコープ一杯に捉らえた砲台の“眼”をめがけて引き金を絞る。

 周囲に轟く轟音に較べてささやか過ぎる射撃音と共に、ぽつっ、と孔が生じ、ごそりと抜けた反対側から中身が噴出する。

 かくん、と草むらの中へ沈んでゆく砲台から眼を離し、次の獲物を探す。

 静止中の“艦娘”を狙って直線コースを取った極小サイズの“深海棲艦”、確か呼称“PTボート”の未来位置を撃つ。

 

(これも問題なし)

 

 胴撃ちになったが短い手足で海面を疾走していた“PTボート”はバランスを崩し、海面をゴロゴロ転がって動かなくなった。

 “妖精”を放出し終わって浅瀬から退避する“艦娘”の背面をポイントし、立て続けに引き金を絞る。 煙突部分にぽつっと孔が空き、背面装甲に……弾かれ、貫通、手持ち火器の上面に浅く角度……貫通、人体部分の肩に命中。

 腕を垂れ下がらせたまま、回避機動に入る“艦娘”から銃口を離し、別のサンプルを物色する。

 

(小型の“艦娘”でも機械部分は硬い、浅く当てるのは駄目だな……中、大型艦のサンプルも欲しいが)

 

 残念ながら、中型以上の“艦娘”達は沖合から砲撃や、航空ユニットの放出を行っている。

 “ダメージ耐久測定サンプル”に加えるのは難しいだろう。

 そこいら中、断続的に爆音が轟いている。

 小火器の銃声など、誰も気にする者はいない。

 高台で支援砲火をしている、“戦艦ル級に向かい、Warframe“IVARA”の能力、“Quiver”で矢を放つ。

 4種ある矢の中から放たれた“影縫いの矢”は狙い通りル級に突き刺さり、傷を与える代わりに、ぼうっとしたオーラを纏わせた。

 余人には見えぬその輝きは、意識の空白を生み出す。

 ル級の体勢の僅かな揺らぎを認めながら、引き金を絞る。

 パワーが切れるまでに全弾を撃ちつくし、もう一つの矢を放つ。

 

(正面のユニット損傷無し、手足は損傷可能だが浅い……)

 

 額から入った弾丸は後頭部に抜けている。

 だが、倒れない。

 VULKERを背中に戻しながら、“飛行の矢”が宙に描いた光のジップラインに跳び乗り、駈ける。

 意識の空白から立ち直りかけるル級に向かい、ブーメラン“GLAIVE”を投擲。

 軽やかな金属音を立てて展開した三枚の刃が激しく回転しながら飛ぶそれを追って、更に跳ぶ。

 IVARAの姿を追って動いたル級の首を“GLAIVE”が通り抜け、意外な程あっけなく頭部が宙を舞った。

 しかし、動きは止まらない。

 機銃の掃射が弾け、フレームの纏ったシールドを揺らめかせる。

 ル級のいる高台へ着地しざま、手を差し伸べ、引く。

 “Navigator”のパワーで戻りの軌道に捻りを加えられた“GLAIVE”がル級の両腕をなぎ払って戻るのをキャッチし、逆の手で引き抜いた“LEX PRIME”を連射する。

 腕を跳ね上げる重いリコイルに逆らわず、下から撃ち上げていくと……1つ、2つ、3つ、4つ……首と肘から先を失ったル級の体に思ったより大きな射入口が空き、糸が切れた様に沈んでいった。

 

(グリニア製とTenno製の銃、どちらも効果がある……損傷の違いは、種類より、やはり兵装と肉体部位の違いか?)

 

『キャプテン』

『どうした?』

 

 速やかにその場を離れながら、Jemmaに応答する。

 元気に支援砲火していた戦艦が急に沈黙したら、流石に気づくだろう。

 

『こっちは駄目っぽいよ、幾ら撃っても痛そうな顔一つしやしない……キャプテンの考え、当たってるかもね』

『両方で?』

『勿論、持ち込んだのは全弾ぶち込んでみたわよ……あと、試すならもっと“大物”かしらね、“OPTICOR”とか“OGRIS”とか』

 

 確かに、大出力光学砲や、グレネードランチャーの効果は確認してみたい所だ。

 

『今度、正面からの襲撃任務で試してみよう……取りあえず無理せず撤退してくれ、後はランディングクラフトでOrdisとバックアップだ』

『分かったわ』

 

 Jemmaとの通信を切り、ル級の遺骸から外装と人体部分のサンプルを回収する。

 機械部分を丸ごと回収したいが、ランディングギアをここまで持ってくるのは流石にリスクが高い。

 

(まだ、目撃されても困る)

 

 収集した情報からすると、このレベルの交戦はそれなりに規模が大きい方に入る筈だ。

 Tennoからすれば本来稼ぎ時な状況だが、残念ながらまだ、情報収集しているフェイズであちらの宇宙でやっていた様な活動をするにはまだ時期尚早。

 

(今回の実地調査で、ある程度、“艦娘”と“深海棲艦”との交戦についての目処はつく……できれば、適当なサンプルを持ち帰れれば、有り難いが)

 

 今までとは少し毛色の違う、連続した爆音が轟いた。

 急いで高台へ移動し、シンセシススキャナーを展開する。

 “集積地棲姫”が燃えていた。

 

『オペレーター、どうやら、原始的なロケット兵器のようです、まるで花火ですが……Ordisはもっとエレガントな“砲”が好みですね!……オペレーター、このしゃれはいかがでしょう?』

 人体部分を伸張する機械ユニット……“艤装”と呼ばれるそれが粉砕された“集積地棲姫”は炎にまかれ、砂浜をのたうち回っている。

 Ordisは花火と言ったが、一斉発射で面攻撃に使われたそれは審美的価値は今ひとつでも、“深海棲艦”に与える効果は甚大らしい。

 

(……いける)

 

 他の“深海棲艦”達は、上陸して肉薄攻撃に移った“艦娘”達への応戦の為、やや前へ出ている。

 背後を気にしている個体は居ない。

 “Quiver”を発動し、“飛行の矢”を放つ。

 高台から伸びる光のジップラインを滑りながら、更に“隠れ蓑の矢”を放って跳ぶ。

 透明化のバブルの中に降り立ち、まだ、蠢いている“集積地棲姫”に手をかざすと、くすぶっている体が光の粒子に分解され、フレームの中へ吸い込まれてゆく。

 

(……?)

 

 ふと、視線を感じて下に目をやると、小さな人影が不思議そうな顔をして見上げていた。

 “妖精”だ。

 揃いの服に極小サイズの銃器を持っているので、兵隊を模しているのだろう。

 急に空から降ってきた、どちらの陣営とも知れない何かに戸惑っている気配。

 

(銃は使えない……なぎ払うか?)

 

 “艦娘”と“深海棲艦”が近過ぎる。

 ここで、銃声を響かせるわけにはいかない。

 “GLAIVE”に手を伸ばそうとして、止める。

 

(まぁ、いい)

 

 きびすを返して、ジップラインへ跳ぶ。

 そろそろ潮時だろう。

 

『Ordis、撤退する』

『分かりました、回収ポイントでお待ちしてます……オペレーター、Tennoとしての戦いの技はちゃんと覚えていらっしゃいますね』

 

 初戦の成果としては十分だ。

 島の端まで密やかに移動し、下からせり上がってきたランディングギアめがけて跳ぶ。

 どんでん返し式になったエアロックに貼り付くと、再度透明化したランディングギアが場を離れてゆくに従い、爆音と喧噪がみるみる遠ざかっていった。

 

(しかし、“稼ぐ”のであれば、少々考える必要があるな……)

 

To Be Countinued...

 




 こちらの太陽系で、Tennoの初陣となりました。
 「クロスファイア+隠密+確保」みたいなミッションになりました。

 色々な情報を取得する事に成功したTenno陣営ですが、次回、どの様に分析されるのか……乞うご期待。
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