ハリー・ポッターと灰の魔女   作:アストラマギカ

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※引き続きハリー視点です。


第27章 ~シャル・ウィ・ダンス?~

  

「――イレイナ、ちょっと相談があるんだけど」

 

 

 思い切って、廊下を通りがかったイレイナに声をかけてみることにした。きっと今の僕はけっこう追い詰められた顔をしているんだと思う。

 

「……クリスマス・ダンスパーティーの件ですか?」

「あー、うん」

 

 改めて口に出されて、少しだけ顔が赤くなるのを自覚する。そんな僕を見たイレイナは「またか」みたいなジト目になった。

 

 知り合いの多いイレイナのことだ。きっとセオドール・ノットや僕のように色々と「紹介してくれない?」的なお願いをされまくって、ウンザリしているのだろう。

 

 早めにセドリックとペアを組んだことでダンスの誘いこそ無くなったものの、今度は広い人脈を頼られて仲介役で忙しいというのも、完璧超人には完璧超人なりの苦労があるらしい。

 

 

「こういうのは私じゃなくて、グリフィンドールの監督生にでも相談して欲しいのですが……」

 

 案の定、イレイナは露骨に面倒臭そうな顔をしてきた。

 

「それに、ハリーは有名人で代表選手なんですから、お誘いがゼロということも無いでしょうに」

「いや、まぁ……」

 

 しどろもどろになりながら、昨日に一度も口をきいたことないハッフルパフ3年の子から誘われた話や、僕より12インチも背が高い5年生から誘われて断った話をする。

 

「であれば反射的に断る前に、‟ごめん、もう少し考えさせて”とか‟まずは一緒に食事でもどう?”ぐらいのこと言ってから、キープした候補者をランチ選考にでもかけて、気に入った順に選べばいいのでは?」

 

 発想が完全に企業の採用担当者……。

 

「ある程度の候補者をプールしておけば最悪1人にはなりませんし、他に本命がいても余裕をもってアプローチできると思いますけど」

「……そういうのは誠実じゃないと思うんだ」

「イギリス人は恋愛と戦争で手段は選びません」

 

 なんか格言っぽく言ってから、イレイナは再び口を開いた。

 

「むしろ‟ハリー・ポッターはモテるらしい”って口コミで評判になった方が、元々ハリーに興味なかった女子も興味持つようになるでしょう。そうなればわらしべ長者的に、もっとイケイケな女子に声をかけられる可能性も上がります」 

 

 有名であることはブランド価値ですからね、と続けるイレイナ。

 

「例えばビクトール・クラムさん。めちゃくちゃアプローチされてますけど、あれこそ『世界最高シーカー』のネームバリューですよ」

「それ、ハーマイオニーも言ってたけど、有名人だからチヤホヤされてるだけじゃない?」

 

 僕の場合だってそうだ。果たしてパートナーに申し込んできた女の子たちは、僕が代表選手じゃなかったらパーティーに行きたいと思ったかどうか疑わしい。

 イレイナの話も理屈ではわかるけれど、自分をマーケティングして売り込むというのは、なんとなく乗り気がしないというか。商品扱いされたくないというか。

 

「心情的な抵抗感も理解はできますが……けど、もし有名人だからって理由で申し込んできたのがチョウ・チャン先輩だったら、いちいちそんなこと気にします?」

「いや、それは……――って、なんで君がそのことを!?」

「呪文クラブに顔を出した時、シェーマスから聞きました」

 

 シェーマス、後で覚えとけよ。

 

「というか不誠実とか中身が云々の話をするなら、ハリーだってチョウ先輩のこと大して話したこともないのに顔だけで――」

「でもまぁ、まずは形から入るってのも大事だよね、うん」

 

 心の中で、今まで断ってきた女の子たちに謝る。

 

(上辺だけじゃないの?とか勘ぐってゴメン、恋愛のキッカケなんてそんなもんだよね……)

 

 だって人間だもの。

 

「でも、本当にどうしたらいいか分からないくて。しばらくチョウに声をかけるチャンスを窺ってたんだけど、トイレに行く時まで何人かの女友達と一緒にいてさ」

「あの人は良くも悪くも、一匹狼とは真逆のタイプですからね。一応、私の方から紹介できなくもないんですが――」

「ほんと!?」

 

 つい前のめりになってしまった僕に、イレイナは「落ち着いてください」と待ったをかける。

 

「チョウ先輩の性格的に、やめた方がいいと思いますよ」

「なんで?」

「ロマンチックさに欠けるからです」

 

 ぽかん、とする僕にイレイナはチョウの事を話してくれた。

 

「チョウ先輩とは何度かクィディッチ関係で話をしたことはあるんですけど、あの人どっちかというと恋愛体質というかロマンチストな感じでして」

 

 要約すると「お見合いでとりあえず」とか「友達ノリからなんとなく」みたいな、ドライな感じの恋愛はチョウ的にはあまりポイントが高くないらしい。

 

「なので私が紹介して事務的に進めたり、合コン的な感じで空気を操って流れで進めるよりも、ハリーが1人で男らしく勇気を出して突撃した方が、‟やだ、私のためにここまでするなんて素敵……♡”ってなると思います」

「なるほど……!」

 

 ジョージも「グリフィンドールなら勇気を出せ」って言ってたし、結局のところ正攻法が一番なのかもしれない。

 

 

「それにしても、イレイナって何でも分かるんだね」

 

 ここ数日で異性の誘い方ひとつにも色々なアプローチがあるんだなと学んだけど、さらに相手の性格まで考えてカスタマイズするなんて芸当は僕だけじゃ絶対に出来なかったと思う。

 

「ハリーが難しく考え過ぎなだけですよ。あれこれ考えたり思い切るのも大事ですけど、大抵は事前に情報さえあれば答えは自ずと出てくるものです」

「まず事前の情報がそう簡単に出てこないと思うんだけど……」

「それは日頃の行いと言いますか」

 

 イレイナは軽く笑みを浮かべながらも、少しだけ遠い目になる。

 

「社会を生き抜くには愛嬌を振りまき、他者に媚びへつらい、常に情報を得られるようにして先手を打ち、トラブルを未然に防ぐことも必要なのですよ……容姿端麗で文武両道の人気者というのも、かえって疎まれたりするものです……」

 

 深くは聞けなかったけど、多分これはイレイナの暗部なのだろう。マイペースに生きてるように見えるトラブルメーカーの彼女にも、それなりに色々な苦労はあるらしい。

 

 

「というわけで、いいですかハリー。チョウ先輩は可愛くて人気ですし、自分から誘うより誘われたいタイプだと思うので、他にとられないよう早めに誘うのをオススメしますよ」

「わかった、頑張ってみる。ありがとね」 

 

 

 そのまま駆け出そうとすると、イレイナにローブの首根っこを掴まれた。

 

「あの……まさかとは思いますけど、今から何の準備もしないで突撃するつもりですか?」

「え? ついでに紅茶とクッキーでも差し入れた方がいい?」

 

 イレイナは僕の返事を軽くスルーし、冷ややかな眼差しを向けてくる。

 

「……やっぱり、誘う前に世間話の一回ぐらいはした方がいいかな?」

「いいかな?じゃなくてマストです」

 

 念のため確認したら、案の定「なに言ってんだこのバカ」みたいな反応をされてしまう。

 

「でも、なんか話したらチョウが好きなこと一発でバレそうだし……」

「むしろ好意匂わせないでどうするんですか」

「だって、付き合っても無いのに好きな気持ちがバレたら引かれない?」

「途中から急に好意を剥き出しにされる方が動揺して引きますし、なんなら下心を隠して平静さを装って近づかれる方が、正直もっと引きますけど」

「………」

 

 イレイナ、刃物と正論はむやみやたらと振り回すもんじゃないんだ。

 

 

「ハリー、とりあえず1クヌートの得にもならないプライドは捨てましょう。素直にベタ惚れなの認めましょう」

「べ、ベタ惚れとかじゃない。普通だよ、ふつう……うん、普通に好きなだけで……」

 

 必死に最後の抵抗を試みるも、言っている途中から段々と声音が小さくなっていき、最後の方はゴーストの囁き声のようになって消えていった。

 

 だって、好きな女の子ができたせいで自分の感情をコントロールできないぐらい舞い上がっている……なんてのが周囲にバレたら、自分がみっともない生き物みたいに思われそうで恥ずかしいじゃないか――などと思っていると。

 

 

「ハリー、あなた惚れたら負けとか思ってるんですか。思春期の男子ですか」

「勝手に心を読まないで!?」

 

 煽られてつい逆ギレ気味に返事しちゃったけど、イレイナの言う「惚れたら負け」という感覚は的を得ているのかもしれない。自分が誰かに恋して浮かれているのを認めるというのは、謎の敗北感を伴う。

 

 

 けれどイレイナは小さな溜息を吐いて、容赦なく現実を突き付けてくる。

 

「はぁ……自分の羞恥心に劣るレベルの好意なら、諦めた方が良いと思いますよ。チョウ先輩だって、その程度の気持ちで誘われたくはないでしょうし、他の相手とペアを組んだ方が良いかも知れませんね」

 

(なっ――!?)

 

 考えたくもなかった。チョウが楽しそうに、他の男とダンスしている姿なんて――。

 

「それは……嫌だ」

「なら、認めましょう。ハリー・ポッターは世界で一番、チョウ・チャンが好きな男だと」

「よ、よし……僕は、チョウの事が世界で一番好きだ」

「声が小さいですよ、ハリー」

「ぼっ、僕はチョウの事が世界で一番好きだーっ!」

 

 もうどうにでもなれ、と思いながら、あらん限りの声で叫ぶ。

 

「他の誰よりも惚れていますか?」

「すっごく惚れてる! 変な拗らせ方してごめん!」

「よろしい。では、改めてハリーの決意のほどを見せてください」

「僕はチョウの事が好きだ―! 世界で一番好きだーっ!」

 

「……なんでしょうね、この茶番劇」

「イレイナがやれって言ったんでしょ!?」

 

 

 

 ***

 

 

 

 いずれにせよ、善は急げだ。イレイナから「まずは知り合いから情報を集めてください」と言われて別れた後、僕はすぐにチョウと同学年のケイティ・ベルに頼んで5年生のスケジュールを確認する。

 

 ケイティはからかうように「誰か誘うの?」って茶化してきたけど、思い切ってチョウを誘うつもりだと答えたら「知ってた。頑張って!」と応援された。なんで知ってるんだ女子こわい。

 

 

 けれど、不思議と今まであった羞恥心はどこかへ消えていた。イレイナの前であんな恥ずかしい真似をさせられたら、もう失う物は何もない。

 

 

 

 ――かくして週末の早朝、僕はいつもより2時間ぐらい早く起きて透明マントを着込み、フクロウ小屋で待機していた。

 

 

 

 ケイティの話によれば、どうやらチョウは毎週の日曜早朝に両親へフクロウ便を送って近況報告をしているらしくて、その時だけは取り巻きもいない。

 

 透明マントを被っていれば冬の早朝でも暖かいし、チョウ以外の人間が来た時には隠れていないフリをすれば「ずっとフクロウ小屋で待ち伏せている不審者」扱いされることも無い……。

 

 無い、はずだ。

 

 

 そしてケイティの言っていた通り、チョウがフクロウ小屋に現れた。

 

 

「――あ、チョウ。君もフクロウ便を出すの?」

 

 

 小屋にやってきたチョウに、フクロウのいる棚からひょこっと顔を出して声をかける。チョウは驚いて「きゃっ」と小動物のように身体を震わせて振り向き、相手が僕と分かると表情が柔らかくなった。

 

「ちょっとハリーってば、驚かせないでよ」

「ごめんごめん」

 

 めちゃくちゃ緊張しているけど、それを表に出さないよう、なるべく自然な調子で答える。チョウが笑顔で返してくれると、すっと心が安堵していくのが分かった。

 

「ハリーもお手紙?」

「うん。ヘドウィグ――僕のフクロウは別件で出しちゃって」

「たしか白い子だよね?」

 

 チョウがヘドウィグの存在を知っていることに、少し驚く。

 

「そうだよ。知ってたんだ?」

「ええ。時々、見てたから」

 

 チョウの何気ない言葉に、期待が急に膨らんでいくのを感じる。

 

 どうでもいい相手のフクロウなんて普通は覚えてないし、わざわざ「時々、見てたから」なんて口に出してる……これはひょっとして、いわゆる「脈アリ」という奴なんじゃないんだろうか。

 

(待て待て……自意識過剰になるな、落ち着くんだ僕……)

 

 チョウの一言一言に一喜一憂しつつ、挙動不審にならないよう自分を戒める。そして当たり障りのない話題から、まずは無難に会話を回すことに意識を集中させる。

 

「驚かすつもりはなかったんだ。普段あんまり来ないから、ちょっと探検してて」

「探検ね……何か面白い発見はあった?」

「えっと、色んなフクロウがいっぱい?」

 

 我ながら酷い返事だったけど、チョウはおかしそうに「なにそれ」とクスクス笑う。

 

「じゃあ、手紙も出し終わったし……そろそろ戻りましょうか」

「そ、そうだね。ここ、寒いし」

 

 まだまだ話をしたい気持ちはあったけど、ぐっと我慢して堪える。それでも不幸中の幸いというべきか、チョウが一人ではなく僕と一緒に並んで帰ろうとしてくれたことに、少しだけ勇気づけられた。

 

 一緒にフクロウ小屋から外の階段に出て、凍えるほどの寒さの中で雑談しながら階段を下りる。別れるまで10分もかからなかったけど、初めてチョウと二人っきりで会話をしたこともあってか、とっても長いような短いような――とにかく濃い時間だった。

 

「じゃあ、またね!」

「うん、また」

 

 

 ――それから、チョウとは廊下ですれ違う時に軽く挨拶するぐらいの距離感になった。

  

 

 単なる挨拶とはいえ、今までそれすら出来なかったことを考えると、人類にとっては小さな一歩でも僕には偉大な一歩だ。

 

 やがて少しづつ雑談も増えていき、変に緊張することも減ってくる。話題が途切れることも無くなってきて、チョウの方から話しかけてくれる事も増えてきた。

 

 

 そしてパーティまで残り1週間となった学期末最後の金曜日、ついに僕は大博打に挑んだ。

 

(いざ、出陣の時……!)

 

 スネイプの授業が終わると共に教室から飛び出し、『闇の魔術の防衛術』のクラスから出てくるチョウを待ち伏せる。どうせスネイプの解毒剤のテストは最低点だろうけど、そんなこと知るか。 

 

 

 そして、予想通りにチョウを見つけた。

 

 

 いつも通り沢山の女の子たちに囲まれていたけど、慣れれば前ほど怖くもない。それどころか、もはや顔馴染みとなったチョウの友達――マリエッタ・エッジコムとシャーリー・フォーセットの方から、僕に声をかけてきた。

 

「授業終わったの? お疲れー」

「明日からクリスマス休暇だけど、予定とかはもう考えた?」

 

 向こうも慣れてきたのか、今では自然と会話できている。

 

 聞けば今までのヒソヒソ声やクスクス笑いも別に悪気があったわけでは無いらしく、マリエッタは親友のチョウに悪い男が寄り付かないか心配してたという話で、シャーリーは単に年下男子の初々しい姿を微笑ましいと思っていただけのようだった。

 

 なので僕が真剣であることが伝わり、挙動不審も収まってからは、2人ともチョウの背中を押すような発言が増えてきた。外堀が埋まる、というのはこういう事なんだろうか。

 

 

「チョウは何か予定立てた?」

 

 僕が聞くと、チョウは少しはにかんで答えた。

 

「ダンスパーティーまで1週間だから、ダンスの練習でもしようかなって」

「いいアイデアだね。僕もそうしようかな」

「あら、相手は決まったの?」

 

 チョウが期待するような眼差しで言う。気づけば、マリエッタとシャーリーの2人はどこかへ消えていた。

 

 

 僕はチョウの顔をまっすぐに見つめ、意を決して――。

 

 

「ぼくとダンスパティいたい?」

「え?」

 

 

 やらかした。

 

 

 耳まで真っ赤になるのが分かる。けど、こうなったらヤケクソだ。

 

 

「よかったら、その――僕とダンスパーティーに行かない?」

 

 

 チョウも赤くなった。僕はローブのポケットに手を突っ込み、うまくいくように指でおまじないをしながら待つ。

 

「ええ、喜んで」

 

 そう言われた瞬間、僕は何も考えられなくなっていた。ぼうっとするような現実感の無い感覚が体中に広がり、腕から足、頭へ痺れが広がっていった。

 

 

 

 ***

 

 

 

 夢見心地のまま部屋に戻ると、ちょうどジニーやサヤに支えられたロンがおぼつかない足取りで戻ってくるところだった。

 

「ロン、元気出して。早く忘れましょ」

「……僕、どうしてあんな事しちゃったんだろう」

 

「どうしたの?」

 

 僕が聞いても茫然とした顔のロンは答えてくれず、代わりにジニーが兄の腕を慰めるように撫でながら口を開いた。

 

「えっとね……ロンはフラー・デラクールに―――ぷっ―――ごめん、フラーを誘ったのw」

 

 思い出し笑いで噴き出した妹の失礼なリアクションを受けてなお、ロンの呆けた表情は変わらない。かなり重症みたいだ。

 

「嘘でしょ……!?」

 

 本を読んでいたハーマイオニーまでがあんぐりと口を開け、「こいつマジか」みたいな顔して慌てて駆け寄った。

 

「それでどうなったの?」

 

 正気とは思えないロンの行動――今ならイレイナが僕に呆れていた意味が分かる――に、噂を聞きつけたパーバティたちまで集まってきた。

 

「……もちろん、ノーでしょ?」

 

 ハーマイオニーの無慈悲な問いかけにロンが首を横に振ると、怪訝な顔をしていたハーマイオニーが真顔になった。

 

「まさかイエスなの!?」

 

 ハッと両手で口元を抑えるハーマイオニーに、ロンは力なく呟いた。

 

「そんなわけないだろ……」

 

 ロンはそれから、少しづつ黒歴史を語り始めた。

 

「フラーが目の前を通りかかったんだ……そしたら歩き方が素敵で……それで、僕……急に取りつかれたみたいになって……気づいたら申し込んでたんだ」

 

「それも、すっごい大声でした!」

 

 サヤは逆に何故かロンを見直したらしく、キラキラした顔をしていた。

 

「諦めたらそこで試合終了ですよ! やっぱりOKしてくれるまで申し込みましょう! やっぱりボクもイレイナさんに今からでも―――!」

 

 

「「「それはやめろ」」」」

 

 

 グリフィンドール全員でサヤを止めにかかった。

 

「サヤ、普通に迷惑だからやめよ?」

「でもボク、グリフィンドールらしく勇猛果敢な申し込みをですね……」

「いや普通にストーカーは犯罪だから」

 

 サヤはがっくりと項垂れた。ロンも両手に顔をうずめた。

 

 

 この二人、けっこうお似合いなんじゃないんかな……?

 

 

 そこでロンもハッとした。急にサヤが別人に見えたような目で、まじまじと彼女を見る。

 

「ねぇサヤ、君もたしか女の子だよね?」

 

 次の瞬間、スパァン!!とハーマイオニーが教科書で思いっきりロンを引っぱたいた。うん、これはロンが悪い。

 

「はっ、そうでした!?」

 

 サヤはもう少し女の子の自覚持とう?

 

 

 けれどダンスまであと1週間しかないということもあってか、ロンも必死だ。

 

「でも、ほら……僕と行けば、会場でイレイナにも会えるだろう?」

 

 しかし、サヤは微妙な顔をして、少し迷ってから口を開いた。

 

 

「いえ、その……実はボク、とある人から誘い――というか脅されてまして」

 

 

 サヤの受けた誘いは、実に奇妙なものだった。

 

 

 ――別に踊らなくてもいいし、むしろ踊りたくはない。途中からイレイナと踊っていいし、校則違反は知らなかったことにしてやるから、最初だけ形式的なパートナーとして出席して欲しい。さもないと校則違反でグリフィンドールから80点引く、と。

 

 

「え、何その意味不明な誘い」

「しかも謎の上から目線……」

「その男、ぜったいロクでも無い奴だよ」

 

「ボクもそう思います」

 

 

 しかしながら、何やら弱みを握られてるらしく、サヤは従わざるを得ないという。

 

「なんかやらかしたの?」

「ええっと……その人の持ってた毒ツルヘビの皮を、無断で借りてしまって」

 

 

 ――あっ。

 

 

 頭の中で、全てのパズルのピースが繋がった気がした。

 

 

「そっかー。なら仕方ないかー」

 

 たぶんロンも気づいた。その上で、この件には関わらないことを決め込んだようだ。賢明な判断だと思う。

 

 

 最終的にロンはパーバティに頼み込んで、双子の妹であるパドマを紹介してもらい、どうにかペアを組むことまでこぎつけたようだった。

 




 この時期の原作ハリー、思春期男子って感じで結構好きだったりします。

 地味にムーディ(クラウチ)のアリバイが出来てしまった件。まぁサヤさんは透明マントもないし闇の魔法使いでもないので、むしろバレる可能性の方が高い……。
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