ハリー・ポッターと灰の魔女   作:アストラマギカ

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第39章 ~第3の課題~

  

 6月に入ると、ホグワーツ中に緊張と興奮がみなぎってきました。

 

 理由は当然、学期終わりにある『第3の課題』です。私も最近ひっきりなしに呪文を練習しているハリーたちに負けないよう、魔法の練習を頑張っていたのですが――。

 

 

 

「イレイナ! もう『禁じられた森』を滅茶苦茶にするのは止めてくれ! ケンタウロス共が激怒しちょる!」

 

 「インセンディオ-燃えよ!」とか「ディフィンド-裂けよ!」なんかで森を燃やしたり大量伐採していると、悲痛な表情のハグリッドに泣きつかれたり。

 

 

 

「……セレステリア。吾輩のもとに水中人から苦情が来ておる。湖を爆撃するのは止めるように」

 

 仕方ないので場所を変えて湖で「エクスパルソ-爆破!」とか「コンフリンゴ-爆発せよ!」なんかを練習していると、スネイプ先生にチベスナ顔で要請されたり。

 

 

 

「まったく、一体どうやって練習しろというんですか……」

 

 そんな感じで備えているうちに、ついに『第3の課題』の日がやってまいりました。

 

 

 

 ちなみに対抗試合の代表選手は期末試験を免除されていたのですが、良い子の私はしっかり試験を受けました。

 

 もし受けなかった場合には一律『A( まあまあ:可)』という成績になるのですが、元より落第なんてありえない私としては、普通に試験を受けて成績表を『O(おおいによろしい:優)』と『E(期待以上:良)』で埋め尽くした方が、何かと今後の為になるからです。

 

 他の代表選手だと、セドリックとクラムさんは律儀に受けていましたが、フラーさんとハリーは免除を選んだようでした。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 そして第3の課題当日、『魔法史』の試験が終わってからマクゴナガル先生に呼ばれて大広間の脇にある小部屋へ入ると、中では既に代表選手の家族が勢揃いしておりました。

 

 

 クラムさんは隅の方で黒髪で鉤鼻の父親や母親とブルガリア語で早口で話しており、反対側ではフラーさんが妹さんと手を繋いだ母親とフランス語でぺちゃくちゃとしゃべっています。

 ハリーは「ダーズリーが来るのか……」と心底嫌そうな顔をしていましたが、待っていたのがウィーズリー夫妻であるのを見た瞬間、ぱぁぁっと顔を輝かせていました。

 

 

 そして私の両親はというと、なぜかセドリックの両親と和やかに談笑しています。私に気づくと、すぐさまお父さんが駆け寄ってきて、オーバーに抱きしめられました。

 

「イレイナ、危ない目に遭ってないか心配したんだぞ? でも今のところ実質1位とか凄いじゃないか! さすが僕たちの娘だ!」

 

 叱ってるのか喜んでるのか両方なのか、たぶん両方の感情を駄々洩れにしたお父さんがぎゅーっと強く抱きしめてきます。

 

「あなた、そのぐらいにしないとイレイナが窒息するわよ?」

 

 お母さんの苦笑するような声で、ようやくお父さんのハグから解放されます。お母さんは優しく抱きしめて、私の頭をなでなでしてくれました。

 

「イレイナ、よく頑張ったわね。でも、無茶はしちゃダメよ?」

「はぁい」

「ご褒美とお仕置き、両方豪華なのを用意したから、夏休みは期待しててね」

 

 後者は粗末なもので一向に構いませんよ?

 

 少しでもお仕置きを減らすべくお父さんに助けを求めようとすると、ちょうどエイモス・ディゴリーさんに話しかけられているところでした。

 

「公式にはゼロ点だろう?うちのセドなんか85点だぞ」

「いーや、審査員からは聞いた話じゃ、実質的にイレイナが最高得点だそうじゃないか」

 

 母親たちと子供たちの生暖かい視線に気づく様子もなく、人目も憚らずに親馬鹿マウント合戦を始める父親たち。

 

「うちのセドリックの方がイケメンだ!」

「イレイナの可愛さには勝てないぞ!」

 

 セドリックとアイコンタクトで「なんかゴメン」「いえいえ」みたいなやり取りをしていると、エイモスさんがセドリックに向き直りました。

 

「セド、目にもの見せてやれ。一度あの子を負かせてやるんだ」

「父さん、僕は別に……」

「そうはいかん。男なら強いところを見せて、頼り甲斐のあるとこを証明せんと」

 

 エイモスさんの言葉に、真っ赤になって黙り込むセドリック。

 

(あー、そういえばクリスマス・ダンスパーティーの件も伝わってるんでしたっけ?)

 

 どうやらカップルだと誤解されているようでした。

 

 お母さんも悪戯っぽい表情で声をかけてきます。

 

「しれっとイケメンで良い人そうな先輩の彼氏を作ってるなんて、イレイナも隅に置けないわね」

「いえ、まだそういうわけでは……」

 

 誤解を解こうとするも、「恥ずかしがらないでいいのよ」とか全く人の話を聞こうともしません。そしてお父さんはというと、監督生でイケメンで代表選手という文句のつけようがないセドリックを見て。

 

「……とっ、時にセドリック君、イレイナと……あー、その……もうキスとかはしたのかい?」

 

 なんかガチガチに緊張して、上ずった声で頓珍漢な質問をしておりました。「初対面でいきなりその質問はどうなんだ?というツッコミの視線が刺さりまくっていますが、当の本人はテンパっているのか気づく様子もありません。

 

 そしてセドリックはというと――。

 

「だっ、ダンスパーティーの日に、頬っぺたと額にしました」

 

 こっちも緊張が移ったらしく、なんか冷や汗をかいてバカ正直に答えておりました。

 

「そ、そうか………あとこれは君のためでもあるが、恋人同士であってもそういう事をする時は、きちんと言葉で何度も同意を確認するんだぞ?」

「もちろんです。あ、それからこれはつまらないものなのですが……」

 

 セドリックがカバンの中から取り出したのは、洒落た包装に包まれた小さな蜂蜜とジャムの詰め合わせ。

 

「地元のデヴォン州で採れたものです。もしよければ」

「ほう……これは」

 

 紅茶好きのお父さんの表情が心なしか柔らかくなり、エイモスさんに向き直りました。

 

「エイモス、良い息子さんじゃないか」

「そちらこそ、美しいお嬢さんで羨ましい限りだよ」

 

「………」

 

 大人って現金ですね。

 

 

 

 ***

 

 

 

 そんな感じで最終日の午後はのんびりと過ぎていき、いよいよ『第3の課題』です。

 

 場所は迷路に魔改造されたクィディッチ競技場で、何百という生徒が次々に着席し、あたりが興奮した声で満たされました。

 

「代表選手各位、何か危険に巻き込まれた時や助けを求めたい場合には、空に赤い火花を打ち上げなさい。巡回している私たちの誰かが救出に向かいます。よろしいですね?」

 

 マクゴナガル先生の言葉に私たちは頷き、それぞれが持ち場についたところで、魔法で拡大されたバグマン氏の大声がスタンドに響き渡ります。

 

「紳士淑女のみなさん! 第3の課題、そして三大魔法学校対抗試合最後の課題がまもなく始まります! 改めていま一度ここで、現在の獲得点をお知らせいたしましょう! まず、1位は85点のセドリック・ディゴリー君、ホグワーツ校!」

 

 ハッフルパフを中心に大歓声が轟き、禁じられた森に住む鳥たちが驚いて空に飛びだしていきました。

 

「続いて第2位、80点でビクトール・クラム君。ダームストラング専門学校!そして第3位は75点でフラー・デラクール嬢。ボーバトン・アカデミー!」

 

 ダームストラングとボーバトンから、それぞれ大きな拍手が湧き起こります。

 

「そして第4位は、イレイナ・セレステリア嬢とハリー・ポッター君の2人です! 2名は余興試合という形の参加であるため公式には0点ですが、どちらも85点相当の活躍で魅せてくれました!」

 

 スリザリンとグリフィンドールから歓声と拍手が響き、いよいよ本番です。

 

「では、ホイッスルの音が鳴ったら順位の順番で迷路に入ってもらいます! いち――に――さん!」

 

 バグマンさんがホイッスルを鳴らすと、まずセドリックが急いで迷路に入り、続いてクラム、そしてフラーと続き、最後に私とハリーが同時にスタートしました。

 

 

 

 迷路に入ると、魔法がかけられているのか外の歓声がいっさい聞こえなくなります。

 

「「ルーモス-光よ!」」

 

 50メートルも進むと分かれ道が現れ、ハリーと私はそれぞれ左右に別れました。

 

 

「ポイント・ミー-方角示せ!」

 

 杖を掌に載せて呪文を唱えると、私の杖はくるりと一回転して左を示しました。そこが北で、クィディッチ競技場の位置から迷路の中心に行くには、北東の方角へ進む必要があります。

 

 

「最短ルートで突破しましょう」

 

 私は生垣に向けて呪文を放ちました。

 

「ディフィンド-裂けよ!」

「レダクト-粉々!」

「ボンバーダ-砕けよ!」

 

 色々と試したところ、やっぱり爆発呪文で穴をあけるのが一番てっとり早いですね。

 

 

 **

 

 

 しばらく生垣を爆発呪文のゴリ押しで突破した私ですが、どうやら先生たちも想定済みだったらしく、最短距離で進もうとするとかえって大量の魔法生物に出くわす羽目になってしまいました。

 

 トロール、大蜘蛛、レッドキャップ、おいでおいで妖怪、まね妖怪ボガート、尻尾爆発スクリュート……ひたすら怪物のオンパレードです。

 

 まぁ、ことごとく返り討ちにしてやったんですが。

 

 途中、たまにハリーやフラーと出くわして「あの爆発、やっぱり君なんだね……」みたいな声をかけられたり、「イギリス人、野蛮でーす」みたいな喧嘩を売られたりはしましたが、なんだかんだで徐々に中心地に近づいていきました。

 

 

 そしてついに少し開けた場所に出ると、110ヤードほど先に三校対抗試合優勝杯が輝いているのが見えました。

 

 ちらり、と周囲を見ますが誰もいません。私が一番乗りです。

 

 

(これは、このまま普通に進めば私が実質的に優勝なのでは……?)

 

 

 一応、私はオブザーバー参加ということになっていますが、実質的に優勝すれば得られる名誉は計り知れないものがあります。インタビュー記事なんかには引っ張りだこでしょうし、自伝とか書いて売れば印税収入が入るかも知れません。

 

 そうやって欲に目がくらんだまま歩き出した私は、つい周囲への警戒を怠ってしまい――。

 

 

「わっ」

 

 

 横から出てきた大量のピクシー妖精に襲われ、慌てて「盾の呪文」を展開します。

 

「プロテゴ‐守れ!」

 

 しょせんはピクシー妖精なので「盾の呪文」を突破できるほどの力はないのですが、残念ながら逃げ遅れたスニッチ・ドローンはピクシー妖精に襲われてしまい、見るも無残な姿に破壊されてしまいました。

 

「イモビラス‐動くな」

 

 2年生の時にハーマイオニーがやったようにピクシー妖精の動きを止めると、後ろの方から足音が聞こえてきました。

 

 そこにいたのは――。

 

 

「あ、クラムさん」

 

 

 優勝杯を目の当たりにしたからか、ガンギマリな表情をしているビクトール・クラムさんでした。

 

 

 ――私は先に優勝杯を掴むべく、慌てて走り出しました。

 

 

 なにせ相手は現役のクィディッチ選手、パワーもスピードもフィジカルは向こうが圧倒的有利。となれば、スタートダッシュで差をつけるしかないでしょう。

 

 しかし、意外なことにクラムさんが追いかけてくる様子はありません。

 

 とはいえ振り返って確認するほどの余裕があるわけでもないため、そのまま走り続けていると――。

 

 

「クルーシオ-苦しめ!」

 

 

 背後から狙いすまされて放たれた『磔の呪い』に対処できず、その直撃を受けてしまったのでした。

 

 

 **

 

 

 全身を襲う、耐え難い痛み――。

 

 

 思わず悲鳴をあげてしまい、地面をのたうち回ります。

 

(痛い、痛い、痛い―――っ)

 

 未だかつて体験したことのない痛み。地面で転んで捻挫したとか、ナイフで間違って指を切ったとか、小指を角にぶつけたとか、そういう日常的な痛みとは別次元の全身を蝕むような苦痛。

 

「やめ、やめて……ください――っ!?」

 

 痛みで思考が麻痺してしまい、涙目で見上げた先には無表情のビクトール・クラムさんが私を見下ろしていました。

 

(どうして………禁じられた呪文を使うなんて、クラムさんは一体なにを考えて――)

 

 思考がまとまらないまま、少しでも逃れようと悶えながら後ずさりするも、クラムさんは更に杖先に魔力を込めて迫ってきます。

 

「っ―――」

 

 やばい死ぬ、と思った次の瞬間でした。

 

 

「ステューピファイ-麻痺せよ!」

 

 

 背後から赤い閃光が飛んできて、クラムさんを直撃しました。同時に『磔の呪い』が解除され、苦痛から解放される私。

 

 

「イレイナ!!」

 

 

 不意打ちを食らって倒れたクラムさんに替わって、現れたのはセドリックとハリーでした。その表情には焦りと不安、そして怒りが浮かんでいます。

 

「イレイナ、怪我はないかい!?」

 

「ひっ」

 

 慌てて近づいてくるセドリックさんですが、心配するような大きな声は却って私の恐怖心を刺激し、反射的に身を引いてしまいます。

 

「ご、ごめん。大丈夫、僕は味方だから」

「――っ」

「安心して、ほら」

 

 セドリックさんが杖をベルトにしまい、両手を上げて心配そうに見つめてきます。そしてセドリックが何かを言いかけた時でした。

 

 

「2人とも、左を見て!」

 

 

 後ろの方からハリーの声が轟き、驚いたセドリックが左を見やると、密かに生垣の影から忍び寄っていた大蜘蛛がジャンプしてくるところでした。

 

 慌ててセドリックが避け、ハリーが失神呪文を唱えるのが聞こえます。

 

「ステューピファイ-麻痺せよ!」

 

 しかしハリーの呪文は毛むくじゃらの黒い巨体に傷ひとつ与えらず、逆上した蜘蛛が今度はハリーに向かって突進してきました。

 

「インペディメンタ-妨害せよ!」

 

 蜘蛛が大きすぎるせいか、ハリーの呪文の威力不足なのか、巨体の割に俊敏に動く大蜘蛛にハリーは回避が間に合わず、蜘蛛の前脚に挟まれて宙づりになってもがきました。

 

「コンフリンゴ-爆発せよ!」

 

 セドリックが大蜘蛛の足元目がけて爆破呪文を唱えると、小さな爆発が起こって驚いた蜘蛛がハリーを離します。地面に激突したハリーは打ちどころが悪かったのか痛そうな顔をしていましたが、すぐに杖を構えます。

 

「イレイナ、僕たちも!」

「ぁ、え――?」

 

 日頃の私らしくもない、間抜けな声。思えば、これまでの3年間でも危険な目には何度も遭っていたのですが、()()()()()()()()()()のは今回が初めての経験でした。

 

 人生初の『磔の呪文』は想像以上の痛みで、軽く茫然自失になっていた私にセドリックが再び大声で叫びました。

 

「しっかりして! 3人で大蜘蛛を倒すんだ!」

「あ――は、はいっ!」

 

 ようやく我に返った私も杖を構え、3人で同時に呪文を唱えました。

 

 

「「「ステューピファイ-麻痺せよ!」」」

 

 

 呪文が重なることで威力が上がり、大蜘蛛は横倒しに吹き飛び、生垣を押しつぶして仰向けに転がりました。

 

 別に爆発呪文で粉々にしてやってもよかったのですが、なんとなく3人とも「あの大蜘蛛が弾けたら全身に体液とかかかりそう」と無意識のうちに失神呪文を選択していたようです。

 

 

 

「ハリー!大丈夫か!?」

「なんとか!」

 

 セドリックの叫び声にハリーが答え、足を引きずりながら現れました。やはり大蜘蛛から落ちた時に足を捻挫したようで、顔をしかめています。

 

「僕のことはいいから、早く行きなよ」

 

 ハリーが息を切らして促しますが、私は首を横に振ってセドリックと、倒れているクラムさんを見やります。

 

「セドリックが取るべきです。セドリックが助けてくれなければ、私はとっくに『磔の呪文』でリタイアしてたんですから」

「それを言うなら、僕だってハリーが助けてくれなきゃ大蜘蛛に襲われてリタイアしてたよ」

 

 動こうとしない私たちを見て、ハリーが焦れったそうに言いました。

 

「二人とも、こんな時にカッコつけるなよ」

 

「こんな時だからこそですね――」

「カッコぐらい、つけさせてくれ」

 

 私とセドリックの声が重なり、目をパチパチさせて「息ピッタリだね」と微笑むハリー。一瞬の沈黙のあと、3人でどっと笑い出しました。

 

 

「せっかくですし、いっそ3人でとっちゃいましょうか?」

 

 冷静に考えれば、ハリーと私はオブザーバー参加なので別に取っても取らなくても、どうせ公式に優勝するのはセドリックです。ホグワーツの優勝に変わりもありません。

 

 なので「3人で優勝杯を取る」というのは、ある意味で私たち3人の自己満足みたいなものです。でも、そういうのも悪くないかな、なんて思い始めていました。

 

 

「3人で帰ったら、観客はきっとビックリするだろうね」

 

 破壊されたドローン・スニッチを見て、セドリックがおどけるように言いました。

 

「ハリーたちも?」

「僕のは大蜘蛛の幼体の群れに出くわした時にやられたんだ。そいつらが吐いてきた糸に絡まって、そのままバリバリ食べられて……」

 

 ハリーはその光景を思い出してか、嫌そうに顔をしかめました。

 

 ちなみにドローン・スニッチの映像は観客席にリアルタイムで中継されているため、ハリーを中継していた通信鏡は、うじゃうじゃ集まってくる大蜘蛛の群れに糸で絡めとられて食べられるまでを大画面で映しており、少なくない観客にもトラウマを植え付けたものと思われます。

 

「セドリックは?」

「僕のは“悪魔の罠”に壊された。尻尾爆発スクリュートから逃げようとして、隠れた生垣に『悪魔の罠』が潜んでいてね」

 

 セドリックはギリギリで『悪魔の罠』が炎に弱いことを思い出して難を逃れたそうですが、ドローン・スニッチの方はツタに絡めとられて引きずり込まれてしまったのだとか。

 

 

 しかし、今のところ追加のドローン・スニッチが来る気配はありません。

 

「待ちますか?」

 

 2人に聞くと、視線が同時に斃れた大蜘蛛の方へと向かいました。

 

「追加のドローン・スニッチとコイツの仲間、どっちが早く来ると思う?」

「もし賭けるなら、僕は大蜘蛛に10ガリオンだ」

 

「……やっぱり賭けは止めて、早く試合を終わらせましょうか」

 

 さすがに連戦続きで疲れていましたし、別の魔法生物ともう一戦交える気力は残っていませんでした。後は優勝杯を掴むだけですし、掴んだら試合終了なので魔法生物と戦うリスクを冒してまでドローン・スニッチを待つ意味もあんまり無いですし。

 

 

「よし、それじゃ」

 

 セドリックと2人でハリーの肩を支え、優勝杯の載った台までゆっくりと進んでいきます。辿り着くと、3人で優勝杯の輝く取っ手にそれぞれ手を伸ばしました。

 

「3つ数えたらだ。いいね?」

 

 ハリーの言葉にセドリックと二人で頷きます。

 

「いち――に――さん――」

 

 3人で同時に取っ手を掴んだ、その直後でした。

 

 

 突如、へその裏側辺りがぐいと無理やり引っ張られるような感覚がして、両脚が地面から離れます。異変に気付いて優勝杯から手を放そうとしても外れず、風が唸る中、私たちは渦の中へと引っ張られて行きました。

 




 偽ムーディ「やることが……やることが多い……!!」

 途中まではドローン・スニッチで中継されるも、それぞれ選手たちのピンチ(偽ムーディがめっちゃ頑張って難易度上げた)で映像が途切れ、終盤は原作通り誰が優勝するのか観客は心持ちにしていたところ、3人とも移動キーでリドルの墓へ……。

 第3の課題で3人とも疲れてたので、「もう優勝杯も目の前だし、さっさと試合終わらせよう」というまともな判断が仇になってしまいました。
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