ハリー・ポッターと灰の魔女   作:アストラマギカ

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第13章 ~クィディッチ~

 ハロウィンから数日が経ち、すっかりホグワーツの話題はトロール侵入からクィディッチへと移っていました。

 

 

 そして注目の初戦は、グリフィンドール対スリザリン。基本的に仲の悪い2寮同士ということもあり、ただでさえ険悪な寮生同士がこの時期には殴り合い、はては呪文を使った決闘にすら発展することも。

 

 

「今年もグリフィンドールをギッタギタのメッタメタにしてやる!」

 

 

 スリザリンのキャプテン、マーカス・フリントの宣言に、寮全体がすごい熱気に包まれています。

 

 ここ数年はスリザリンが勝ち越しているのですが、慢心することなく盤外戦上等とばかりにグリフィンドールのチームメンバーにちょっかいを出していました。

 

 

 特に今年は超有名人のハリー・ポッターが花形ポジションのシーカーとなったことで、グリフィンドールは勿論のこと、スリザリンに負け越しているレイブンクローやハッフルパフまでが期待して敵に回る始末。

 

 

 一応、ハリーと彼のニンバス2000はグリフィンドールの‟秘密兵器”という事になっていたのですが、肝心のグリフィンドール寮が自慢しまくって最大の流出源になるという、なんとも本末転倒な事態に陥っています。

 

 

 

 そんな注目の本年度クィディッチ初試合に向けて、私もまた、それはそれは忙しい日々を送っていました。

 

 

 というのも―――。

 

 

 

「はい! そこの紳士淑女の皆さん。ええ、ハッフルパフのあなた達3人組ですよ」

 

 

 私が声をかけると、通りすがりのハッフルパフ生が3人、こちらに振り返ります。アーニー・マクミラン、ハンナ・アボット、そしてジャスティン・フィンチ=フレッチリー。そこまで親しいわけではないのですが、同じ1年生同士ということもあって挨拶ぐらいはする仲です。

 

 

「さぁさぁ注目の本年度初クィディッチ、スリザリン対グリフィンドール戦! あなたはどっちが勝つと思います? ここ数年ずっと勝ち越しているスリザリンか、はたまたハリー・ポッターを手に入れたグリフィンドール?」

 

 自分で言うのもなんですが、私も1年生の間ではトロール事件のおかげで、ちょっとした有名人です。大広間前の通路で呼び込みをしている内にも、興味を惹かれた生徒たちがざわざわと集まってきました。

 

 

「自分はハッフルパフだから関係ない? いいえ、そんな事はありません。観戦するだけじゃあ、せっかくのクィディッチが勿体ない。試合に参加せずとも、その手で勝利を、栄光を掴み取ろうじゃありませんか!」

 

 

 そう言って、私は券と用紙を差し出します。

 

「こちらは現時点での、スリザリン対グリフィンドール戦の勝敗予想とオッズです。予想が当たれば、あなたもちょっとした小金持ち。さぁ、クィディッチ賭博……改めクィディッチ優勝杯ダービーはいかが?」

 

 

 そう、試合といえば賭け。そして我らがイギリス人は賭けが大好きです。競馬やサッカーはもちろん、選挙から天気予報まで何でも賭けるのです。

 

「お金はため込んでいるだけのコレクションじゃありません。リスクを恐れて動かないなんてのは、年金頼りの老人がすることです。賭け金はシックル銀貨1枚からガリオン金貨100枚まで。あなたも推しチームに賭けて、一山当ててみませんか?」

 

 

 そんな感じで私が勝敗予想倍率を見せると、3人とも興味津々といった様子で見つめてきます。

 

「なんか面白そうな事してるね」

 

「おや、さすがアボットさんはお目が高い。残りのお二人もどうです? 今年はどっちが勝つと思います?」

 

 私が質問すると、ジャスティン・フィンチ=フレッチリーが自信たっぷりに持論をぶち上げちました。

 

 

「今年はグリフィンドールの勝利に決まってますよ! なにせシーカーはあのハリー・ポッターです。なんでも、初めての飛行訓練で箒を使いこなしてマルフォイさんの投げた『思い出し玉』を見事キャッチしてのけたとか。しかもここだけの話、マクゴナガル先生がニンバス2000をプレゼントしたって噂です」

 

 

 まるで自分がグリフィンドール生にでもなったかのようなジャスティン・フィンチ=フレッチリーの言い分に、アーニー・マクミランが「分かってないな」と反論します。

 

 

「甘いぜ、ジャスティン。たしかに今年のグリフィンドールはエースを手に入れたかもしれないけど、クィディッチってのはチーム戦だ。2年生以上は変わりない。僕だったら、安定と信頼のスリザリンだね」

 

 

 なるほどなるほど、聞いてみればどちらの言い分にも一理ありますね。

 

 私とアボットさんが相槌を打ちながらお二人の話を聞いていると、男子二人のクィディッチ談義はどんどんヒートアップしていきます。

 

「分かっていないのはアーニー、貴方の方です。クィディッチは結局のところ、シーカーがスニッチを掴めるかどうか。つまり最新最速の箒ニンバス2000と期待の新人ハリー・ポッターがスニッチさえ掴めば、一気に150点獲得して戦況は簡単にひっくり返ります!」

「いいや、違うねジャスティン。箒の性能の違いが、戦力の決定的差ではないことを教えてやるよ!」

 

「なら、賭けてみますか? アーニー」

「よし! その勝負乗った!」

 

 

 はい、毎度ありー。

 

 

「ではマクミランさん、グリフィンドールにいくら賭けますか?」

「4ガリオン、……いや6ガリオン賭けてやる!」

 

 おお、思ったより大きく出ましたね。するとジャスティンさんの方も負けてられないと思ったのか、財布を確認して不敵な笑みを浮かべ――。

 

「10ガリオンだ」

 

 これはいよいよ、負けられない戦いになりましたね。まぁ、どっちにしても胴元の私の懐は苦しまないのですが。

 

「せっかくだし、私も賭けてみようかな。グリフィンドールに3ガリオン」

 

 同級生の言い争いを聞いていて興味が湧いたのか、ハンナさんもグリフィンドールに賭けてくれました。来てます、これは良い流れが来ています。

 

 

 ジャスティンたちの騒ぎを聞きつけて、他の生徒たちも口々に叫びはじめました。

 

「俺も賭けるぞ! グリフィンドールに5ガリオン!」

「なら、僕はスリザリンに30ガリオンだ!」

「やめとけ、破産するぞ。あ、オレはグリフィンドールに8ガリオンで」

 

「はいはい、皆さん慌てないで列にならんでくださいねー。はい、ではこちらの用紙に名前と賭け金の額を……」

 

 賭けの主催者である私は大忙し。しまいには騒ぎを聞きつけたグリフィンドールとスリザリンの生徒がぞろぞろと駆けつけ、互いに負けじと自分の寮に大金をつぎ込んでいきます。

 

 

「うふふ……」

 

 

 そして賭け金の総額が膨れ上がればそれだけ、主催者側である私の取り分は増えていきます。胴元の取り分は勝敗にほとんど関係ないわけですから、こんなちょろい儲け話はありません。

 

 ああ、試合が終わったら何を買いましょうか? 手始めに欲しかった本や漫画の大人買いでもしてみましょうか。ふっふっふ……。

 

 

 最終的に忙しすぎて人手が足りなくなり、その辺で暇そうにしていたセオドール・ノットを捕まえて受付バイトを依頼するぐらい、それはもう大盛況でした。

 

 

 

 ***

 

 

 ―――そんなこんなで。

 

 

 私は約束された勝利の主催者収入と共に、クィディッチの観戦へと向かいます。

 

 

「おー、イレイナやけに機嫌良さげだけど、どうしたよ」

「うふふ、えへへ。いや、クィディッチって最高ですねぇ」

 

 ぐへへ。ふっふっふ。

 

 私は上機嫌でミリセントに笑いかけ、試合会場へ来る前に買い込んできたジュースとお菓子の袋を開けます。かぼちゃジュースからサイダー、ポテトチップスにポップコーン、百味ビーンズから甘草飴まで何でもござれ。

 

「なんだ、美味そうなの持ってんじゃん」

「どうぞどうぞ、たーんとお食べ。ダフネとパンジーもどうです?」

「いいの? やった! サンキュ!」

「なんかやけに気前いいわね……まぁ、もらっとくけど」

 

 どうぞどうぞ、遠慮なく食べていってください。今日の私は上機嫌なのです。朝から笑いが止まりません。

 

「そういやイレイナが機嫌いい時ってアホ毛が揺れるのね……」

「よしよし、いい子いい子」

 

 パンジーのぼやきを聞き流し、ダフネがなでなでしてくるのに身を任せつつ。私は試合が始まるまでの間、買ってきたチョココロネにかぶりつきます。美味しい。

 

 

「あ、来た来た!」

 

 ダフネが立ち上がると、ちょうど緑色のユニフォームに身を包んだスリザリンのチームが入場してくるところでした。周囲から歓声が沸き上がり、冬の寒さなど吹き飛んでしまうほどの熱気です。

 

 もちろん、稼がせて頂いた私もです。

 

 ――クィディッチ・チームの皆さん、本当にありがとうございました。あ、試合自体は別にどっちが勝っても負けても構いませんので、適当に頑張ってください。

 

 

 **

 

 

 スリザリンに続いて赤いユニフォームのグリフィンドール・チームが入場すると、スリザリンの時よりも大きい歓声が会場に響き渡りました。

 

 

 グリフィンドール席には『ポッターを大統領に』なんて旗まで用意されていて、大層な力の入れようです。

 もちろん、スリザリンからは打って変わってブーイングとヤジが飛び、普段は気取ったドラコ・マルフォイでさえ腕を振り上げて大はしゃぎ。

 

 

 残るレイブンクローとハッフルパフは、それぞれの生徒が推しチームの旗を振っています。

 例年だと試合に関係ない寮は、基本的に勝ち越してるスリザリン以外の旗を振ることが多いそうなのですが、今年は一味違います。

 

 ミリセントから双眼鏡を借りて確認すると案の定、ハッフルパフのジャスティンはグリフィンドール、アーニーはスリザリンの旗を振っていました。

 

「ポッターさん、何が何でも勝ってください!」

「負けるんじゃねぇぞ、スリザリン! お前らに大金賭けてるんだからな!」

 

 パブでビール片手に競馬の実況を見ている中年オヤジのようなセリフを吐きながら、応援してるだけの2寮も必死。絶対に負けられない戦いが、そこにはありました。

 




 賭博にはあんまり詳しくないので、明らかおかしいとかあったらご指摘いただけると幸いです。

 金額とか法律的にOKなのかという点に関しては、最大100ガリオン=約500ポンド(5万円ぐらい)とそれほど高額ではないこと、原作でも魔法界の法律けっこうガバガバなこと、あと原作3巻でパーシーとガールフレンドが10ガリオン賭けていたこと、あと賭け大好きイギリスなので、大目にみていただければ幸いです。
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