ハリー・ポッターと灰の魔女   作:アストラマギカ

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長らく更新が止まってしまい、大変お待たせ致しました。

※今回はダフネ視点です。


第22章 ~純血の幼馴染たち~

    

 DAでトーナメントが開催される少し前の夜――私、ダフネ・グリーングラスはパンジーに呼び出されて、ユフィちゃんの部屋にやってきた。

 

 部屋にはユフィちゃん……ユーフェミア・ロウル先輩は純血名家の幼馴染で、ドラコやノット、ミリセントに妹のアストリア、フローラちゃんとヘスちゃん達カロー姉妹、ピュシー先輩といった純血名家の幼馴染が集められている。

 

 

「えー、それでは第1回『目指せ!打倒イレイナの会』を始めようと思う」

 

 

 号令をかけたのは、部屋の真ん中にあるソファでふんぞり返ったドラコだ。肩にはソファの後ろからパンジーがもたれかかっていて、久しぶりにめちゃくちゃ偉そうにしている。

 

「なんだそりゃ」

「言葉の通りよ。どうすればイレイナと対抗できるか、みんなで考えるの」

 

 ミリセントの疑問にパンジーが答えて、ドラコが補足する。

 

 

「ちなみに正式名称は『純血魔法族の未来を考える会』だ」

「急に思想が強くなったな」

「だから表向きの名前を変えたんだ」

 

 

 イレイナやトレイシー、寮長のジェイク・ファーレイ先輩あたりがいないのは、そういう理由なのか。

 

 

 

「でも、なんで純血だけ?」

 

 何の気なしに聞いた質問にドラコは意を決したような表情で、敢えて今まで誰も考えないようにしていた事実を突きつける。

 

 

 

「それは―――『例のあの人』が復活したからだ」

 

 

 

 思わず、全員が息を呑む。

 

 

「父上がそう証言した以上、恐らく間違いはない」

 

 

 ルシウスさんが死喰い人のリーダー格だったということは、いわば公然の秘密という奴だ。

 

「ですが、ユフィちゃ……ロウル先輩はずっと“違う”って……」

「だって首席だもの。立場的に言えるわけないじゃない」

 

 アストリアが文句を言うと、ユフィちゃんが仏頂面で答えた。

 

「スリザリンにだって親を死喰い人に殺された人は大勢いるし、その逆だって大勢いる。監督生としてもスリザリンの分断を深めかねない話題には触れたくなかったの」

 

 あまり大きな声では言えないけど、半純血のリリィなんかは親を死喰い人に殺されてる。逆にユフィちゃんの叔父のソーフィン・ロウルは元・死喰い人だから、そういう心配も理解できなくはない。

 

「では、何故このタイミングで認めたのですか?」

「……本当は卒業まで認めないつもりだったんだけど、ドラコがしつこくてね。せめて純血名家だけならって条件で認めることにしたの」

 

 アストリアは「むぅ」と頬を膨らませ、今度はミリセントに顔を向けた。

 

「ミリィちゃ……ミリセント先輩は知ってました?」

「なーんも。てか、ウチの親は別に死喰い人じゃないし」

 

 ミリセントが首を横に振ると、視線が今度は死喰い人の親がいる人――セオドール・ノットに向けられる。

 

「ノット先輩は?」

「いいや。一応、聞いてはみたが、“政治に興味を持つヒマがあったら、将来のためにO.W.L.(ふくろう)試験の勉強に集中しろ”で話は終わった」

「そこだけ急に正気に戻られましても……」

 

「こら」

 

 肘で妹を突っつく。言いたいことは分かるけど、もうちょっとデリカシー覚えよっか。 

 

 

「逆に、マルフォイ先輩はよく教えてもらえましたね」

「屋敷しもべ妖精のチェルシーに命令して、こっそり聞き出したんだ。母上ほどじゃないが、父上も未だに僕の事を子供扱いするところがあるからな」

 

 ドラコが口を尖らせて答えた。ずっと家族ラブだったけど、ついに遅めの反抗期が来たっぽい。

 

 

 とはいえーー。

 

 

(私は、ナルシッサさんとかノットのお父さんと同意見かなぁ)

 

 

 だって実際、私たちまだ子供だし。

 

 良く言えば守られていて、悪く言えば期待されていない。ただ、あくまで「今は」という話で、大人になるための研修期間が学生時代なのだとも受け取れる。

 

 だから大人たちも半人前の私たちを、色んな危険から遠ざけようとしているわけで。半人前のまま大人の問題に首を突っ込むより、大人たちに感謝しながら一人前になるための準備をする方が無難だと思う。

 

 

 それに、長い人生でたった7年の貴重なスクールライフなのだ。かわいいホグワーツの女子制服を着れるうちに、キラキラの青春ライフだって満喫したい!

 

 

 例えば――。

 

 

 

 放課後に集まって、みんなで勉強会。最初は真面目に分からないとこ教えっこしてるけど、途中で軽めの休憩挟んだつもりが、いつの間にか門限までお菓子食べてジュース飲みながらガールズトークしちゃったり。

 

 休みの日、ライブの帰りにたまたま知り合いとばったり出くわして。少し話してみたら推しメンの話で盛り上がって、実はお互いこっそり楽器の練習してたとかで、ノリと勢いでバンド組んだりだとか。

 

 休み時間、こっそり空き教室に入って彼氏とキス。ぎゅーっと抱き合ったりしながら、知能指数0.5ぐらいの会話しながらイチャイチャしてる時に限って、掃除しにきたフィルチさんに見つかって超絶気まずくなって。

 

 

 

 ――みたいな経験はきっと学生の間だけの特権で、大人になってから何十倍のガリオン金貨を払ったって味わえない。

 

 

(どうせ大人になれば嫌でも苦労するんだから、今は目の前のことを目いっぱい楽しみたい!とか思っちゃう私は、きっと意識低いんだろうなぁ……)

 

 

 ただ、イレイナもドラコも大好きだし、親友だからできるだけ応援したい。その気持ちは本当だ。だから困ってる。

 

(イレイナは前からそうだったけど、ドラコも少しずつ変わってる気がする……)

 

 監督生バッジをもらって責任感が湧いたのか、パンジーと付き合ってカッコつけたくなったのか知らないけど、親に頼らず自分の力で何かをしようとしている姿を見ていると、それはそれで応援したい。

 

 

「とにかくだ」

 

 話を戻すようにドラコが言う。

 

「イレイナもやり方は違えど、ポッターやダンブルドアと同じく、『例のあの人』打倒を目指している」

 

 というか、それしか選択肢がないんだろう。目の前で逃げられてメンツを潰されたんだとしたら、『例のあの人』がイレイナを許すようには思えない。

 

 

「だから誰かが――僕たちが、止めないと」

 

 

 声のトーンを下げ、事実を確認するように一人一人の表情を見ていく。

 

 

「僕たちは皆、スリザリン生だ。勝てない戦いはしない」

 

 善悪や好き嫌いよりも、損得や強弱の方が大事。勝った方が正義で、強いものが好き……そう考えてしまうのは、スリザリン生の本能みたいなものだ。

 

 

「はっきり言おう。『例のあの人』と戦うのは自殺行為だ。勝ち目は無い」

 

 

 そう断言するドラコに、それまで静かに話を聞いていたピュシー先輩が口を挟んだ。

 

「珍しいね。君がここまでハッキリと断言するなんて」

 

 そのまま、内心で皆が思い浮かべた疑問を代弁してくれる。

 

「ファッジはともかく、ダンブルドアが本気出せば勝てる可能性もゼロではないと思うけれど?」

「たしかに『例のあの人』が唯一恐れた人物がダンブルドア、というのは有名な話です」

 

 でも、それすらも予想していたようでにドラコはピュシー先輩の青い瞳を覗き込んだ。

 

「恐らくダンブルドアは()()()()()でしょうが、同時に()()()()()()

「また随分と含みのある言い方をするね」

「グリンデルバルドと違って、『例のあの人』はダンブルドアに決闘で負けた訳ではありません。ポッターを殺そうとして、自滅しただけです」

 

 そう聞くとすごく間抜けっぽく聞こえるけど、問題はそこから「復活した」ということ。

 

 

「ポッターが『生き残った男の子』なら、『例のあの人』は『生き返った帝王』です」

 

 

 これまで死の呪文(アバダケダブラ)を受けて、生き返った人はいない。けれど、『例のあの人』はその不可能を可能にした。

 

 もし、何度も復活できるような闇の魔術が使えるのだとしたら――何回かは運よくダンブルドアが勝っても、終わりのない戦いを強いられることになる。

 

 それに、校長先生もいい歳だ。今でもイギリス最強の魔法使いだけど、それでも全盛期に比べれば衰えてるという。時間は『例のあの人』の味方で、極論を言えば、校長先生が老衰で亡くなるまで待てばいい。

 

 

 ピュシー先輩もその可能性に気付いたようで、綺麗にアートメイクされた眉がピクリと引きつった。

 

「なるほどね、たしかに君の懸念はもっともだ」

「納得いただけたようで何よりです」

 

 再びドラコが全員を見る。

 

「前回、イレイナが生き残ったのは運が良かった。だが、2度目があると思えない。現にセドリック・ディゴリーの方は……――そこまでの幸運が無かった」

 

 まだ遺体が見つかってないから公式には生死不明だけど、生存が絶望的であることは皆が知っている。そして代表選手に選ばれるほどの実力を持ったディゴリー先輩を殺せる人間なんて、そう多くはないことも。

 

「しかし、ダンブルドアのことだ。イレイナを止めるより、むしろポッターたちと組んで帝王と戦うようけしかけるだろう」

「そこまで?」

 

 校長先生が単なる「いい人」止まりのお爺ちゃんじゃないことには薄々気づいているけど、さすがに色眼鏡で見過ぎなんじゃ……と口を挟むと、ドラコは肩をすくめた。

 

「だとしても、守れるだけの力が無いのは事実だろう? 現にホグワーツは僕たちが入学してから、クィレルやらバジリスクやらブラックやら偽ムーディやらの侵入を毎年のように許している」

「まぁ、それは……そうかもだけど」

 

 言葉に詰まる私を見て、パンジーが「要するに」と話をまとめるように言う。

 

 

「純血の未来は純血で守るってこと。ダンブルドアなんてアテにしちゃダメ」

 

 

 ドラコは「魔法省もだ」と付け加えて、一人一人を見ながら続けた。

 

「僕たち全員、これから難しい状況に置かれると思う。大人たちも今までみたいな余裕は無くなるだろうし、少しずつ独り立ちしていかないと」

 

 最後に、私を見て言う。

 

 

「僕たちも、いつまでもイレイナに頼ってばかりじゃいられないからな」

 

 

 それでようやく、この集まりの意図を理解する。

 

「あ、だから内緒のイレイナ対策ってこと? いざって時は力づくでも止められるように」

 

 何かを守るためには、守れるだけの実力が必要だ。実力が無ければ、単にイレイナの足を引っ張るだけにしかならない。

 

「そうだ。そのためには、せめて対等に渡り合えるようにならないと」

「対等……」

「役に立ちたいとか支えたいなんてのは、結局のところ頼ってるのと変わらない。イレイナの方から、僕たちを頼ってくれるようにならなきゃ」

 

 

 言われて、ハッとする。

 

 

 ホグワーツに入学してから色々なトラブルがあったけど、多分いつも無意識に心のどこかで誰かに甘えてた。なんだかんだで困ったらイレイナが助けてくれるし、最後にはきっとダンブルドアが何とかしてくれる……。

 

 けれど、イレイナだってダンブルドアだって生身の人間だ。いつまでも皆のヒーローじゃいられるわけじゃない。

 

 

 そんな時、今度は私たちが――。

 

 

 

 唇の端を歪め、ミリセントが好戦的な表情で呟いた。

 

「なら、せめて誰か一人ぐらいアイツに勝てるようにならないとな」

 

 

 イレイナに勝つ。

 

 

 改めて言葉にしてみると、どこか現実感のない目標のように聞こえてくる。クラブ活動の最初にコンクールで金賞取るとか全国優勝目指すみたいなノリで、一応は目標にするけど誰も本当に達成できるとは思ってない感じ。

 

 でも、もし同じ位置に立ちたいと思うのなら。

 もっと強くなるしかない。

 

(だったら……!)

 

 心の中でガッツポーズを決めていると、パンジーがドラコとアイコンタクトしながら悪い笑みを浮かべてきた。

 

「というわけで、さっそくダフネにはスパイをしてもらうわ。イレイナの弱点調べてきて?」

「え」

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 そんなわけで無茶ぶりされた私は彼氏のアンソニーに協力してもらい、ザカリアス・スミスの発言をダシに使ってDAを自然な流れでトーナメント戦に持ち込んだ。

 

 とりあえず戦ってるとこ観察すれば弱点も見つかるっしょ、という安易な発想だけど多分そんな間違ってないはず。シンプルイズベストだ。

 

 

 

 ――そんなわけで。

 

 

 

「さぁ、それでは始まりました! ダンブルドア軍団・最強王者決定戦、絶対に負けられない戦いがここにあるッ!」

 

 

 ゴブレットをマイク代わりに持ったリー・ジョーダンが叫び、横ではフレッドとジョージにロルフ・スキャマンダー先輩、リーアンなんかも「いぇーい!」「うぇーい☆」とパーリーピーポーな感じの歓声をあげている。裏があるとは微塵も思ってなさそう。

 

 でも、やっぱりスクールライフはこうじゃないと。若さはノリと勢いだ。こーゆー変な詮索しないで軽く乗っかってくれるノリ、私はめっちゃ好き。

 

 

「では、選手には意気込みを語ってもらいましょう!」

 

 意気込みってなんやねん、などと思っている内にもリーは早速、悠々と椅子に腰かけているイレイナに近づいた。

 

 

「それではエントリーNo.1! 勉強にスポーツからコミュ力に容姿、金儲けまで全てが完璧超人。彼女はいったい誰でしょう? “そう私です”の私こと――セレステリア・イレイナぁぁああああッ!」

 

 決めゼリフを奪われたイレイナは何だか不服そうで、ちょっと拗ねた様子で意気込みを語り出した。

 

「選ばれし者の恍惚と不安、私に2つありです」

 

 相変わらず、自分が選ばれし側だという自覚は自信たっぷりだ。

 

 

 

 続いてリーがハリーのもとに移動する。

 

「続いてエントリーNo.2! 魔法界で知らぬ者はいない“生き残った男の子”! トレードマークは稲妻型の傷!運命に選ばれし勇者、ポッター・ハリーぃぃいいいいいッ!!」

 

 よく状況が分からないまま腕を掴まれてガッツポーズをさせられ、ヤケクソ気味に意気込みを語るハリー。

 

「時は来た。それだけだよ」

 

 ブッ!と今度はハーマイオニーが吹き出した。最近のハリーは前よりノリが良くなって絡みやすくなってきたけど、そのせいか大喜利っぽい空気になってきた。

 

 

 

「エントリーNo.3! 東洋からの刺客、愛の重さは超重量級! イレイナ一筋、恋に生きるボクっ子――サヤぁあああああああああッ!」

「イレイナさんに命預けますッ!」

 

 いや対戦相手に命預けるなし。

 

 

 

 それからも次々とチャレンジャーたちが「ケンカ売りに来ましたわ!」だの「現在、過去、未来の全てにおいて私が最強よ!」とか「先輩を超えようとして何が悪い! 未来はオレが作る!」みたいな意気込みを語っていく。

 

 そして最後にリー・ジョーダン本人が「俺はオマエらのかませ犬じゃない!」って一番かませ犬っぽい台詞で息巻いてから、トーナメント戦が始まった。

  




 長らく更新が止まってしまい、大変失礼いたしました。

 仕事とプライベートが忙しくて中々更新できなかったのですが、多少は落ち着いてきたので、今後はゆっくりでも更新していきたいと思います。

 何卒よろしくお願いいたします。


 今回はイレイナ以外のスリザリン生の動向を。マルフォイのようにヴォルデモート対策に積極的な生徒もいれば、ダフネみたく消極的な生徒もいたり。
 日本でいえば高1ぐらいの歳なので、政治に興味を持つ生徒が出始める頃とはいえ、勉強や部活に人間関係の悩みの方が大きい生徒も少なくは無いのかなと。
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