ハリー・ポッターと灰の魔女   作:アストラマギカ

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※今回はハリー視点


第31章 ~クリスマスデート~

 

 ウィーズリーおじさんが襲われた後、僕――ハリー・ポッターは「自分はヴォルデモートに取りつかれているんじゃないか」と悩んだ時期もあったけど、そう長くは続かなかった。

 

 

 

 あの後すぐ闇祓いのシーラさんがやってきて任意同行を求められ、魔法省で念入りに身体のあちこちを調べられた。

 

(伝染病患者のように扱われるのは嫌だけど、魔法省に監視されてれば誰かを傷つけることもないか……)

 

 不安と安心がごちゃごちゃになる中、次の日にシーラさんが「重要参考人」として連れてきたのはジニーだった。

 

「本人たっての希望だ。ハリー、何があったのか彼女に詳しく話してやってくれ」

  

 意外な人選に首を傾げる。

 

「ジニー? なんで君が?」

「あら、私が“例のあの人”に取りつかれた経験者って忘れたの? それがどういう感じか、私なら確かめられると思って」

「あ」

 

 めちゃめちゃ単純な解決策に、今まで悶々と悩んでいた事が馬鹿らしくなる。

 

「……僕、忘れてた」

「幸せな人ね」

 

 ジニーが冷静に言う。

 

 それから質問をいくつか受け、僕が答えて、シーラさんが調書に書き込んでいく(といってもメモは全て自動速記羽ペンが書いてくれるので、シーラさんはひたすらタバコ吸ってただけだった)。

 

 

 

 かくして――。

 

 

 

「喜べハリー、釈放だ」

 

 

 2日後には、シーラさんが通知文をヒラヒラさせて現れた。

 

「釈放? じゃあ、僕は……」

「集めた情報をもとに神秘部の専門家が協議したんだが、『取りつかれた』というより『あの人の見たものを見せられた』可能性が高いってさ」

「そんな事できるの?」

「ああ。熟達した『開心術』の使い手は、自分の心のイメージを相手の頭の中に植え付けることも出来る」

 

 ジニーの時と違って記憶の空白が無いから、多分こっちだろうという話だった。

 

「ホグワーツの中じゃ『姿くらまし』は出来ない。いくら“例のあの人”だって、ハリーをグリフィンドール寮から無理やり転送させるなんて真似は無理だ。証言者もいるしな」

「証言者……?」

 

 

「僕さ!」

 

 

 シーラさんが答える前に、扉から現れたのはロンだった。

 

「僕、君が少なくとも1分は眠りながらのたうち回ってるのを見たよ。途中からはシェーマスたちも見てた。ベッドを離れてないって、少なくとも4人は証言できる」

 

 言い終わると、ロンはニヤッと笑った。

 

「去年と違って、今回は信じられた」

「うん。ロンも成長したね」

「なんだその上から目線」

 

 それから2人でクスッと吹き出し、笑い合う。

 

 

(結局、僕はヴォルデモートの武器なんかじゃないんだ)

 

 

 気持ちが軽くなり、安堵で胸が膨らむ。もう少しでクリスマスだし、今年はシリウスたちとグリモールド・プレイス12番地で過ごせる……そう思うと、このままクリスマス・ソングでも歌い出したい気分だった。

 

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 

「って、安心してる場合じゃないでしょーっ!?」

 

 

 

 屋敷中に響きそうな叫び声と共に乱入してきた侵入者ーーニンファドーラ・トンクスは、両腕をぱたぱた振りながら慌てたように叫ぶ。

 

「トンクス、どうかしたの?」

「呑気か! クリスマスでしょ!?」

 

 訳が分からず、「はぁ」と気の抜けた返事を返す。

 

 ウィーズリーおじさんの無事がわかって、僕がヴォルデモートに取りつかれてないこともわかった。のんびりクリスマスを楽しみに待つことの何がいけないんだろうか?

 

 

「えっ、マジで分かんないの? チョウちゃんだよ! 君の彼女! 恋人! たぶん初恋の人!」

 

 

 あっ。

 

 

 すっかり忘れてた、といった僕の顔を見たトンクスは呆れ返った表情で。

 

「まったく、こんなんじゃジニーも浮かばれないよね。せっかく泣く泣く引き下がってくれたのに。草葉の陰で泣いてるよ」

「いや普通にそこのソファで寝転がってますけど」

 

 なぜかジニーは騎士団協力者の一人、ジェマ・ファーレイに膝枕されていた。気持ちよさそうに頭を撫でられながら、多機能両面鏡で脚痩せストレッチのやり方を調べている。未練とか無さそう。

 

 

「まぁ、いったんジニーは置くとして――ぶっちゃけハリーとチョウちゃん、どこまでいったの?」

 

 ニヤニヤして耳元に顔を寄せてきたかと思えば、この調子だ。公務員がセクハラするのはどうかと思うけど、それはチョウと付き合ってからずっと引っ掛かってた疑問だった。

 

 

 ――付き合うって何だ?

 

 

 さすがに去年のダンスパーティーから1年も経つから、デートは何回もした。食事して、買い物して、湖の周りでピクニックしたりとか。

 けれど、それは普通にロンやハーマイオニーみたいな友達ともするわけで。

 

 

「……恋人って何したらいいんだろう」

 

 

 今さらながら、根本的な悩み。なんとかその問いかけを絞り出すと、驚いたように目を見開いたトンクスとジェマが顔を見合わせて。

 

「ねぇ奥さん、今の聞きました!? 」

「聞き逃すはずないじゃない!今どき滅多に獲れない天然モノよ!?」

「“恋って何?”なんて聞いたの何年ぶりかしら~」

「やっぱり若いっていいわぁ。羨ましいわぁ。嫉妬しちゃう」

 

「ねぇジェミー、それからトンクス先輩も」

 

 ハーマイオニーとチェスをしていたペネロピー・クリアウォーターが、頭だけをこっちに向ける。にこりと微笑み、再びチェスに戻った。

 

 

 ……怖い。

 

 

 普段は落ち着いたシゴデキお姉さんって感じだけど、たまーにすごくドライな一面がある。彼氏のパーシーによれば、ペネロピーが仕切るGM社の技術開発部は「一番自由だけど、一番成果が求められる部署」らしい。

 

  

「ええっと……そうだ!“恋人になったら何するか”だっけ?」

 

 やや上擦った声でトンクスが話を戻す。

 

「とりあえず今はクリスマスシーズンなんだし、普通にクリスマスデートでもすれば?」

「だから、そのクリスマスデートで具体的に何をすればいいのか分からないんだって」

 

 トンクスが首を45度ぐらいに傾ける。

 

「難しく考え過ぎじゃない? 普通にその辺のカップルみたく、映えそうなカラフルケーキとか食べながらラブラブチュッチュして、キラキラのイルミの前でイチャイチャラブラブしながら自撮りとかしてるバカップル見てると腹立つ……じゃなくて、そんな感じで幸せなキスをして終了しとけば任務完了だって」

 

 前半は真っ当なアドバイスだったのに、途中から私怨が混ざってたような……。

 

 

「家でちょっとクリスマスっぽいことするだけでも、充分に楽しいと思うけどね」

 

 ジェマが柔らかい表情で口を挟む。

 

「必ずしも特別なことしなくたって、好きな相手となら一緒にいるだけで幸せじゃない? だから恋人として付き合ってるわけで」

 

 襟ボアのレザージャケットから取り出した紙タバコを口に咥え、小綺麗なグラデーションネイルの先に炎を灯す。

 

「一口に恋人同士って言っても、人それぞれだしね。よく相談して、ハリーとチョウが一番居心地良いって思える形を探せばいいんじゃない?」

 

 それもそうだ。2人の関係なのに、あれこれ1人で悩んでいても仕方ない。

 

「僕、チョウと話してみるよ」

「クリスマスプレゼントも忘れずにね~」

 

 煙をくゆらせながら、ひらひらと手を振ってくるジェマ。掴みどころのない印象だったけど、思ったより頼れる人なのかもしれない。

 

「ちなみに、ジェマって今年はどんな感じのクリスマスデートする予定なの?」

「私? 普通にサンタコスしたり、トナカイコスに首輪つけて散歩とかするつもりだけど」

「……」

 

 あれ、思いのほかデートのレベルが高いな……?

 

 

 

 ――ともあれ、善は急げだ。

 

 

 

 さっそくチョウにフクロウ便を送ってみると、すぐ「もちろん!楽しみにしてる♡」と嬉しそうな返事が来た。

 

 ルーピンやウィーズリーおばさんも応援してくれて、去年すっぽかしかけたパーシーからは「がんばれ」と激励された。

 

 僕と過ごすつもりで張り切っていたシリウスはちょっと落ち込んでいたけど、すぐにそんなこと言ってられなくなった。

 どこからか話を聞きつけたギルデロイ・ロックハートが押しかけてきたからだ。

 

「――ハリーがいないのは残念ですが、心配ご無用! なぜって、この私がいるからです!」

「心配しかないんだが」

 

 口ではぼやきつつも、なんだかんだ良いコンビに見える。ルーピンの話だと「ロックハートがアレ過ぎて、一周回ってシリウスが慎重になるんだ」とのこと。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 こうして、僕――ハリー・ポッターはホグワーツ5年目にして、人生初のクリスマスデートをすることになった。

 

 

 待ち合わせ場所はダイアゴン横丁に新しくできたカフェ『コメットバックス』、略してコメバ。「大盛り×写真映え」がコンセプトで、お腹いっぱい食べたい男子と盛れる写真を撮りたい女子に人気がある。

 

 クリスマスシーズンということもあって、店は若い魔法使いと外国人観光客でいっぱいだった。最近は移民も増えてきたけど東洋系はまだ珍しいから、チョウはすぐ見つかった。カウンター席で、隣のチャラそうな男と談笑している。

 

 一瞬知り合いか浮気かとも思ったけど、チョウの笑顔が少し困った風だったことで事情を察する。

 

「やぁ。待たせちゃった?」

「あ、ハリー」

 

 僕が割り込むと、チョウはホッとしたように明るい表情になった。チャラ男も僕の方を見る。

 

「あ~、彼氏と待ち合わせしてた感じ? 悪いね、邪魔しちゃって」

 

 爽やかな笑顔をチョウに見せてから、僕にも「かわいい彼女さんだね。良いクリスマスを~」と微笑んで軽やかに去っていく。

 

「……チャラいのに割といい人そうだったね」

「スリザリン7年のブレンダン・ザビニ。最近、シャーリー・フォーセットと別れたみたいなの」

 

 さっきまでブレンダンが座っていた椅子を、チョウがぽんぽんと叩く。テーブルの上には冬限定いちご&ホワイトチョコ味のスコーンが手つかずのまま残されている。

 

「もう会計は済んでるし、残すのも勿体ないから食べちゃいましょ」

 

 無駄に手際が良いな……と感心しながら、コーヒーを追加してスコーンを食べる。けっこう美味しい。チャラ男はあれで、きっと普段から色々とリサーチしているのだろう。

 

 

 **

 

 

 会計を済ませて外に出ると、外は一面の雪だった。吐く息が真っ白になる。

 

 それでも、道を行き交う人々の顔は楽しげだ。ヴォルデモートが復活してるだなんて、想像すらしてなさそうな明るい表情。 

 

 

「――さむっ! 雪やばっ!?」

 

 聞き覚えのある声に振り返ると、上機嫌なダフネ・グリーングラスが彼氏のアンソニー・ゴールドスタインを連れ回していた。

 

「出たばっかなのに脚の感覚無くなりそう!」

「そんな恰好してるからだよ」

 

 ダフネは上半身こそオフホワイトのダウンにグレーのタートルネックといった防寒仕様だったけど、下はベージュのチェック柄プリーツミニと黒のロングブーツという組み合わせで、快適さよりお洒落を優先した格好だ。

 

 さすがに寒いだろうと思って見ていると、案の定ぺたんと地面にしゃがみこむ。そして上目遣いで期待するように彼氏を見て。

 

「もームリ。私、寒くて歩けないんだけど」

「はいはい。ではお嬢様、背中にどうぞ」

「わーい♡」

 

 茶番劇の後、彼氏におんぶされて喜ぶダフネ。アンソニーは平静さを保とうとしてるけど、背中と腕にあたる胸と太ももの心地よさには勝てなかったのか、見たことないぐらい気持ち悪い顔をしている。ああはなりたくないけど、なりたい。

 

 

「……ああいうの、興味あるんだ?」

「あっ」

 

 だいぶ顔に出ていたらしい。真っ赤になる僕を見て、チョウがクスクスと笑う。すごく恥ずかしいけど、気持ち悪がられてないことに少しほっとする。

 

「ごめん、チョウ。寒いし、そろそろ行こっか」

「そうだね、寒いし?」

 

 目の前では、真っ白になったチョウの手がふらふらと揺れている。息が白くなるほどの気温だというのに、コートに引っ込めようという気配はない。

 

「………」

 

 

 ――これ、手ぇ握っていいやつだよね?

 

 

 

 弱気と興奮がごちゃ混ぜになって、頭の中でロンが「行け、ハリー!」と叫ぶのと、ハーマイオニーが「男の子って……」と呆れる声が同時に響く。

 

 

「その……手、繋ごっか」

 

 

 

 チョウは少し驚いたように目を見開き、微妙な表情で「ええ」と呟いた。

 

「そう……じゃあ」

 

 僕はゆっくりと手を伸ばし、そして――。

 

 

(本当に繋いじゃったよ……)

 

 

 

 生まれて初めて繋いで彼女の手は、ひんやりして柔らかくて、とても温かくて幸せな気持ちになった。

 

 

 **

 

 

 それから、2人でダイアゴン横丁の大通りを歩く。

 

(生まれて初めて、彼女と手繋ぎで人前を歩いてるんだ……)

 

 その事実に、えもいえぬ達成感と幸福感を感じる。

 

 寄り添って歩いていると、周りにも同じように手を繋いだり密着しながら歩いているカップルが視界に入った。端にいる男女は熱々な雰囲気でキスをしており、向いの同性カップルは楽しそうにイチャイチャしながら笑い合っている。

 

 付き合う前は見る度に「人前で見せびらかすな」とイライラすることもあったけど、今となっては微笑ましさすら感じる。できれば末永く幸せになって欲しい。

 

 

 

「ね、あそこ入ろっか」

 

 チョウが指さしたのは、トウィルフィット&タッティングという店だ。マダム・マルキンよりも高価格路線のアパレルショップで、お洒落な人々がピクシーの群れのように出入りしている。

 

「どうしたの?入らないの?」

「あ、いや、みんな凄くおしゃれだなーと思って。僕が入ってもいいのかなーって」

「こういうところは苦手?」

「そう……かも。なんていうか、こんな普通の恰好でこういう店に入っちゃいけないような気がする」

「じゃあ、これからはこういう店にも入れるよう、ワンランク上の服も買わなきゃだね」

 

 うまく丸め込まれた気もするけど、チョウの言い分も理解できた。

 

 こんな時期にお洒落な街を可愛い彼女と歩いていると、さっきダフネが実用性よりも見栄えを重視してた理由も分かるような気がしてくる。やっぱ「あのカップル、彼女も可愛いけど、彼氏もカッコいいね!」って思われたい。

 

 

 と、そこで今さらながら大事なことに気づく。

 

 

「そういえば今日のコーデ、すごく可愛いよ」

「え、急にどうしたの?」

「言い忘れてたから」

 

 今日の彼女は、ベージュのボアジャケットに白のタートルネックニット、グレーのプリーツスカートに黒のストッキングと茶色のムートンブーツといった格好だ。全体的にふわふわした感じが小柄で華奢なチョウに似合っている。

 

「ありがと。ハリーのチェスターコートもカッコいいよ」

「そうかな」

「うん。スタイルいいから何でも似合うし」

「それ褒めてないやつ」

「ちょっと古いかな~、とは思ったかも。お父さんの若い頃に流行ってた服みたい」

 

 さすがの分析力だった。実際、シリウスとウィーズリーおばさんが「リリーと付き合い出した頃のジェームズそっくりだ!」「すごくハンサムよ!」とオススメしてきた服を着てきちゃったけど、ジニーやジェマは割と微妙な顔してた気がする。

 

 

「ちなみに、最近の流行りってどんな感じ?」

 

 チョウがパッと目を輝かせた。

 

「じゃ、まずはボトムスから見てみない?」

 

 食い気味に「こっちこっち!」と僕の手を引いて、チョウはそのまま人混みの中へ分け入っていった。まるでダイアゴン横丁に初めてハグリッドと来た時のような、不安と期待に包まれた状態で彼女についていく。

 

 

「あれと……あ、あっちも似合うかも……あとは――」

 

 しばらくすると、チョウはあちこちからボトムスを持ってきた。一緒に試着室に入っていくつか試した後、明らかにサイズが合ってなかったのを指さす。

 

 

「これ似合うんじゃない?」

 

 

 流行りのオーバーサイズとかいうのらしい。ぶかぶか過ぎて、まるでダドリーのお古だ。

 

「こっちの細めのが良くない?」

「悪くないけど、今はもう流行ってないかな。スキニーが人気だったのは3年も前だし」

「まだ3年しか経ってないじゃん」

「ハーピーズが優勝候補って言われてたのも3年前だね」

 

 やはり口では敵わないな、と舌を巻く。ちなみにハーピーズ弱体化の理由は、エース世代が長く続いたせいで若手選手の育成に失敗という、割とありがちな原因だ。

 

 

「まぁ、チョウがそう言うなら信じるよ」

 

 僕のセンスだと逆にダサく見えるんだけど、しょせんは素人意見だ。よく女子がカワイイと感じる服と男子ウケのいい女性服は違うと言うし、きっと逆もまた然りということなんだろう。

 

 そう自分に言い聞かせて値札を見ると。

 

「――は、8ガリオン!?」

「どうかした?」

「いや、ちょっと高いなーって……」

「タグウッドのプロデュースだからね。これでも安い方だよ」

「僕が買った今までで一番高い服って、ホグワーツの制服なんだけど……上下セットで8ガリオンぐらいだったんだけど」

「制服の2倍カッコよく見えるよ?」

「………」

 

 

 買ってしまった。

 

 

 なんか騙されてるような気がしないでもないけど、試着した時に「ハリー、かっこいい!」とはしゃいでいたチョウの笑顔を思い出すと、もうそのために払ったことにしていい気がしてきた。

 

 

「次はローファーだね」

「ローファー? 学校指定のがあるのに?」

「あれは制服用でしょ。デート用なら、デート服に似合う色とか素材とかデザインにしないと」

「そういうものなの?」

「そういうものなの」

 

 

 こんな調子でチョウに選んでもらった服を買っていき、軽くニンバス2000が買えるぐらい散財した。10ガリオン以上買うと配送料が無料になるので、後でフクロウが指定の日時に家まで届けてくれる。

 

 

(でも恋愛とかお洒落って、お金も時間も知識も必要なんだなぁ……)

 

 なんとなく今までハーマイオニーのような優等生やアンジェリーナみたいなスポーツマンより、ファッションや美容に強いラベンダーやパドマのことを少し下に見てたけど、今日でだいぶ評価が変わった気がする。

 

 あと文武両道才色兼備のイレイナはやっぱりおかしい。タイムターナーで人生何周かしてると思う。

 

 

 

 ***

 

 

 

「いい買い物したね。楽しかった~」 

 

 心の底から楽しそうに笑うチョウを見ていると、デートしたんだなという実感が湧く。ハーマイオニーやジニーみたいな女友達でも頼めば一緒に回ってくれるかもしれないけど、ここまで熱心にはやってくれないだろう。

 

「また、季節が変わったら行こっか」

「え、いいの、本当に!?」

「うん。僕だけじゃ絶対、ああいうオシャレなコーディネートできないから。それに楽しんでるチョウを見てると、僕まで嬉しくなってくるし」

「やめてよ~、なんか恥ずかしい」

 

 照れくさそうに顔を隠すチョウを見て、改めてクリスマスデートに誘って良かったと思う。

 

「夕食はどうする?」

「あ………えーっと、ごめん。夜は家族と過ごす予定があって………」

「えっ」

 

 バツの悪そうな顔になるチョウ。

 

 さっきまで良い雰囲気だっただけに、なんだか水を差された気分だ。完全にディナーまで誘えるものだと思ってた。

 

「……だよね。大丈夫、急に誘ったのは僕の方だし」

 

 もともとクリスマスに家族と過ごすのは、イギリスでは一般的な光景だ。僕だってトンクスにあれこれ言われる前は、普通にシリウスたちと過ごすつもりだった。

 けれどジェマに変なデート吹き込まれたり、さっきダフネたちがイチャイチャしてるの見て、知らず知らずのうちに浮かれていた。

 

 僕の微妙な変化を感じとったのか、チョウは何度も手を合わせる。

 

「本当にごめんね! ホンコンとソウルから親戚まで来てて、それで」

「いいって。気にしてないよ」

 

 申し訳なさそうなチョウの手を引き、のろのろと歩きながら「漏れ鍋」の前に着く。店の横には巨大なクリスマスツリーが色とりどりにライトアップされ、別れを惜しむカップルがハグしたりキスしたりしている。

 

 

 その時だった。

 

 

「ねぇ、ハリー」

 

 小柄なチョウが緊張の滲む声で、僕を見上げて近づいてくる。マスカラをつけた睫毛の一本、涙袋メイクのラメまで見えるぐらい近くに……。

 

 

「あなたが好きよ」

 

 

 柔らかい感触を唇に感じる。自然と鼻で息を吸う形になり、甘いローズの香りに心が湧き立つ。ぞくぞくした感覚が体中に広がり、頭、腕、脚がしびれていった。

 




 本作でハリーとチョウのカップルが原作より安定している理由として、

①セドリックと付き合ってないため、チョウの情緒が比較的安定
②イレイナとも交友があるおかげでハリーがやや女子慣れ
③イレイナが魔法省や他寮との間で緩衝材になり、ハリーが原作ほどバッシングを受けてない(なのでチョウに気遣う余裕がある)

 愛って相性や意志も大事だけど、環境と経験も同じぐらい大事なんじゃないかなと。


 ともあれ、こういう日常もヴォルデモートが暴れてないから満喫できるわけで。お辞儀様がいたらマジなリア充爆破とかありそう。


 ちょうど話のタイミング的にもクリスマスシーズンだったので、それっぽいお話でした。では、皆さまメリークリスマス!!
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