ハリー・ポッターと灰の魔女   作:アストラマギカ

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※引き続きヴィクトリカ(イレイナさんの母親)視点
※独自解釈あり。苦手な方はご注意ください
※なお、作中でマグルの歴史・政治に言及する描写がありますが、本作品は現実の歴史・政治問題について何ら支持・不支持を表明するものではありません。


第33章 ~魔法族の魔法族による魔法族のための魔法界~

 

 恐らくダンブルドアは緩やかな禅譲を狙っていたのだろう、とグリンデルバルドは顎に手をやる。

 

 

「平和をもたらすと同時に、ダンブルドアはホグワーツ校長として未来を担う魔法使いを育て続けた。いつか自分に代わる次世代の指導者が誕生する、と信じてな」

 

 

 気概のある次世代を1人でも多く育て、イギリス魔法界に権威と権力の分立を確立させる。さしずめホグワーツ校長と魔法大臣による、疑似的な立憲君主制といったところか。

 

 かくしてイギリス魔法界は「最悪だが、他の魔法界よりマシ」な社会へと生まれ変わり、自分はそれを見届けながら緩やかに“過去の人”としてフェードアウトしていく……。

 

 

 

「あと30年、あるいは20年あれば――そうなっていたかもしれない」

 

 

 

 ダンブルドアの年齢と魔法族の平均寿命を考えても、40年前後をかけて緩やかに魔法界を変革していくという計画は、それなりに現実的なものだった。

 

 

「彼の不運は、ヴォルデモート復活がこのタイミングだったということだ。権力を保持し続けるには15年という時間は長すぎ、さりとて放棄するには短すぎた」

 

 

 結果的に、ヴォルデモートの復活によって計画は破綻した。ダンブルドアは計画の修整を迫られた。

 

 

 

 私は老いた革命家の瞳をまっすぐに見る。

 

「それで貴方は、どうするつもりなの?」

「私なら、もっと徹底的にやる」

 

 黒と青のオッドアイには燃えるような光が宿り、不吉な雰囲気を醸し出していた。

 

「古今東西、敵の敵は味方という。マグル好きのダンブルドアは、社会を団結させるために魔法大臣を生贄にしようとした。だが、今はもっと強大な共通の敵―――ヴォルデモート卿がいる」

 

 ゆったりとした手つきで頬髯を撫でるグリンデルバルド。

 

 

「しかし、知っての通りヴォルデモートは強大だ。たった一人でも配下の全てを束ねたより強く、たとえ肉体が滅びようと、魂ある限り繰り返し復活する。そんな史上最悪の魔法使いを倒すのは、果たしてダンブルドア(天 才)だろうか? それともハリー・ポッター(英 雄)だろうか?」

 

 静まり返った部屋に、演技がかった声が響く。

 

「いいや、どちらも否だ。天才はいつか老いる。英雄もいずれ死ぬ。だが、不死身の怪物(ヴォルデモート)は何度でも蘇る。たとえ決闘に勝利しようと、滅ぼすことは不可能に近い。ならば、そんなバケモノを倒すにはどうすればいい?」

 

 

 沈黙が降りた。

 

 

 グリンデルバルドは私の答えを待っている。だが、考えれば考える程、やはり同じ答えに行きついてしまう。

 

「……普通に考えれば、数を揃えるしかないわ。イレイナの考えと同じ」

 

 天才の個人プレーを集団の連携プレーで倒す。ありきたりな話だ。

 

「でも、それは貴方の望む答えじゃない」

「そうだ。騎士団と魔法省が手を組むだけでは勝てない。君の娘のやり方には、もっとも大切なものが欠けている」

「……それは?」

 

 出来の悪い子供を見るような優しい表情で、グリンデルバルドは答えを言った。

 

 

 

「端的に言って、『愛』がない」

 

 

 

 ―――愛。

 

 

 

「もちろん数は力だ。君の娘のように、味方の頭数を揃えること自体は間違いではない。だが、そこに『愛』はあるのかね?」

 

 思わず言葉に詰まる。何故そこで愛なのか。

 

「ヴォルデモートを滅ぼしたのは、我が子を守るために自らを犠牲にした親の『愛』だった。愛するもののために死すら受け入れたリリー・ポッターの魔法に、死を恐れるヴォルデモートの魔法が勝てる道理も無かろう」

 

 リリーちゃんの『愛』がヴォルデモートを打ち破った――それ自体はダンブルドアから耳にタコができるほど繰り返し聞いている。

 

「認めよう。かつての私は、ダンブルドアが好む『愛』を軽視していた。天才の思考を理解できぬ凡人であったと」

 

 ヌルメンガードで反省の日々を送る内、ついに気づいたのだという。

 

 

「愛とは力だ。魔法を持たぬマグル共が、愛で魔法族を超えられるほど強大な力……ダンブルドアはそれに気づいていた」

 

 

 ゆえにダンブルドアはマグルに対して敬意を示し、魔法族に対して愛の力を説いて回ったのだとグリンデルバルドは主張する。考えたことも無かった視点だ。

 

「マグルが魔法族より優れてる点って、科学技術とか物量なんじゃないの?」

「違う、愛だ」

 

 グリンデルバルドによれば、いくら科学技術と物量があろうとも「愛」がなければ真に使いこなすことは出来ないという。

 

 

「魔法族が愛せるのは、せいぜい家族か恋人、あるいは友人ぐらいのものだ。そこまでであれば、恐ろしい敵から愛するものを守るために命を投げ出せる。だが、マグル共は違う」

「そ、そう……?」

「彼らは我々と違い、自分たちが暮らす社会そのものを愛することができる。国家という名の、想像の共同体をな」

 

 もし大陸からの侵略者が栄えあるグレートブリテンの大地を汚そうとするのであれば、誇り高き英国人はその手に武器を取る。愛する祖国を守るため、昨日まで顔も名前も知らなかった英国人同士が手を握り合い、命を懸けて勇猛果敢に戦うであろう。

 

 だが、魔法族は違う。魔法界は魔法族が暮らす社会ではあるが、愛すべき祖国ではない。魔法界を守るために戦う義理はないし、顔も名前も知らない魔法族は赤の他人で、もちろん魔法省への愛着など持ってはいない。

 

 

「つまるところ、魔法族には『愛』が足りん」

 

 

 『愛』こそが魔法族に欠けている、単純にして根源的な問題なのだとグリンデルバルドは指摘する。

 

 

「中世のマグルと同様、魔法族が愛せるのはせいぜい知り合いの知り合いまでだ。中世イングランドのヨークシャーに住む農民が“ヴァイキングの襲撃でロンドン市民が大勢殺された”などと聞いたところで、他人事にしか思えなかったように」

 

 現代のマグルは違う。もしロンドンがドイツ空軍に爆撃されれば、全てのイギリス人が怒りの声を上げるはずだ。

 

「我々に必要なのは、たまたまイギリス魔法界に住んでいるだけの顔も名前も知らない『イギリス魔法族』なるもの、その全てを愛する力だ。その程度の浅い共通点しかない同胞を守るために命を投げ出せるような、大きな『愛』こそがヴォルデモートを倒す力となる」

 

 これまでの価値観を揺さぶるようなグリンデルバルドの言葉。頭の中で「この会話を続けてはいけない」と警鐘が鳴る。それでも好奇心を抑えられない。

 

 私の沈黙を肯定と受け取ってか、グリンデルバルドは再び口を開いた。

 

 

「――無論、マグル共とて昔は我らと同じか、それ以下だった。変化が訪れたのは、1879年にフランスで起きた革命からだ」

 

 

 それまで身分や貴族の領地ごとに分断されていたフランスのマグルは、初めて祖国フランスへの愛ゆえに侵略者に立ち向かった。

 

 愛する祖国を守るために結集したフランス革命軍は、それまでの傭兵主体の軍隊では考えられないほどの大軍となった。金で雇われた傭兵は負け戦になるとすぐ逃げだすが、フランス革命軍兵士たちは文字通り祖国を死守した。祖国への愛は膨大な兵士の犠牲を可能にし、フランスに勝利をもたらした。

 

 

「フランス革命によってもたらされた『愛』は、伝染病のように欧州全土に広まっていった。フランス革命軍の強さは欧州各国にとって大きな脅威となり、欧州各国に住むマグルもまた祖国への愛に目覚めてゆく」

 

 

 それができなかったマグルの集団は、ことごとく戦争で敗れた。戦争に負けて自分たちの住む社会を統治する存在――国家を失えば、結局は愛する家族や友人を守ることも出来ない。愛する人を強大な敵から守れる力は、それを打ち破れるほど強大な同胞への愛だった。

 

 

「かくして『愛』はマグルの戦争を根本から変えた。同時に戦争の変化は、マグルの社会を根本から大きく変化させた」

 

 

 民主主義の骨子となる選挙権は、フランス革命の中で徴兵の義務と引き換えに民衆に与えられた。マグルの先進国が誇る社会保険制度は、富国強兵政策を推し進めたドイツ帝国で生まれ、「アメとムチ」と呼ばれた。

 

 かつての限定戦争とは比較にならない総力戦に勝利するため、マグルと国家の共依存関係はかつてないほど強まっていく。教育、医療、産業、福祉、政治といった全ての分野で、国家はマグルにサービスを提供した。

 代価として、マグルには祖国を愛する『国民』となることが求められた。国民国家の最盛期とは、ほとんど戦争の世紀であった。

 

 

「マグル共が破滅的な戦争に明け暮れている間、一方の魔法界は平和な時代を謳歌していた。1689年に制定された国際魔法機密保持法が、マグルの危険な革命思想を最低限に押しとどめたのだ」

 

 まぁフランスやロシアの魔法界では失敗したが、とグリンデルバルドは皮肉げに嗤う。

 

「マグルの上流階級と癒着していたマルフォイ家が、急速に純血主義に傾いたのもこの頃からだ」

「そういえばマルフォイ家の起源はフランスだったわね」

 

 今でこそ純血主義の代名詞とも呼べる彼らだが、かつてはマグルの社会に入り込むことで成功を収めていた。

 

 

「親しかったマグルの友人が次々とギロチンにかけられていく様子を見て、当時の当主セプティマス・マルフォイが何を思ったかは想像に難くあるまい」

 

 

 なんだかんだ親しい相手には甘い彼らの事だ。表向きはどうあれ、深く嘆き悲しんだに違いない。

 

 そして同時に、セプティマスは激怒したはずだ。自由・平等・民主主義といった危険思想を、必ず魔法界から除かねばならぬと決意したことだろう。

 

 

 だが、どうやって除けばいい?

 

 

 答えは単純だ。危険思想を持ち込むマグル生まれを受け入れなければいい。

 

 以降、マルフォイ家は急速に反マグルと純血主義へと傾いていく。

 

 

『問おう――魔法族は本当に、マグルを受け入れる必要があるのだろうか? 否、大事なのは数ではなく質なのだ! 行政のムダと非魔法族優遇を無くし、魔法族のための政治を取り戻せば、少数精鋭で発展することも不可能ではない。我々は今こそ純血の魔法族だけで、強く、賢く、美しく、豊かで、皆が安心して暮らせる、新しい魔法界を目指すべきなのだ!』

 

 

 後に『純血演説』として知られる有名な演説の最後に、セプティマス・マルフォイはこう締めくくった。

 

 

『――魔法族の魔法族による(Wizarding world of the wizard,)魔法族のための魔法界を( by the wizard, for the wizard)、我々は取り戻さなければならない!』

 

 

 奇しくもマグルの社会はナショナリズムと民族主義の全盛期でもあり、その影響が魔法界において純血主義という形で現れたのは、まったくの偶然ではないだろう。

 

 

「だから、魔法界の名家は一気に純血主義に傾いたのね。マグルとの関わりを持ち続ければ、自分たちの特権どころか命も危ういから」

「最悪の場合、革命や内戦すら起こり得た。実際、フランスとロシアの魔法界ではその懸念が現実のものとなってしまったからな」

 

 

 後にマグル生まれを含む魔法族至上主義ではなく、彼らを排除した純血主義でなければならなかった理由はそこにある。真実はもはやマルフォイ家の倉庫にも残っていないだろうが、彼らの唐突な純血主義への傾倒を説する仮説としては実に興味深い。

 

 

「かくして、魔法界を支配する純血名家は、国際魔法機密保持法と純血主義の熱心な擁護者となった。その結果として純血という特権階級は生き延び、そうでない魔法族もまた長きにわたる平和を謳歌した」

「平和……ね」

 

 認めたくないが、これまでの話をまとめれば「純血主義」は実によく出来た社会システムだ。

 

 マグルの世界で起こった破滅的な戦争、野蛮な虐殺といった歴史を知れば、その遠因となったマグルの価値観や思想を平和な魔法界に持ち込むな、と感じるのは当然だ。

 

 そうでなくとも文化・価値観の違うマグル生まれを受け入れれば、多かれ少なかれトラブルは発生する。魔法界のルールが全て正しいとは思わないが、それを守るより「マグルの社会では〜」と見下すマグル生まれも少なくはない。

 

 しかも「「マグルの両親か魔法族の友人か、どちらか選べ」と言われたマグル生まれの全員が後者を選ぶとは限らないから、どうしても潜在的な売国奴やスパイ予備軍として疑いの目が向けられがちだ。

 

 火のない所に煙は立たぬというけど、マグル生まれがスケープゴートにされやすい性質を持っているのは否定できないだろう。

 

 

 だが、スケープゴートという「共通の敵」の存在があればこそ、残りの魔法族は団結できる。社会に勝ち組と負け組が生まれようとも、「敵の敵は味方」だからだ。

 かくして国際魔法機密保持法と純血主義のある限り、魔法界で内戦は起こらない。

 

 

「だが、平和には代償が伴う。停滞という代償が」

 

 

 争いのない社会に進歩は生まれない。あっても犠牲を伴わない程度の緩やかな成長だ。近現代においてマグルが支払った、おびただしい犠牲とは比べるべくもない。

 

 平和の名の下に痛みを伴う改革を先送りし続け、古い伝統を捨てきれなかった魔法族が後れを取るのは必然だった。

 

 

「道は2つに1つだ。共通の敵(マグル生まれ)を魔法界の内部に作る(純血主義)か、それとも共通の敵(マグル)外部に作る(魔法族至上主義)か。前者を取れば平和と停滞が、後者を取れば戦争と進歩が、それぞれ手に入る」

 

 オッドアイが意地悪く細められる。

 

 

「でも、貴方は後者を取るべきだと言いたいのよね? ヴォルデモートを倒すために」

「私にそれを確信させてくれたのは君だ、ヴィクトリカ。魔法には、まだまだ無限の可能性がある」

 

 上品なコートに手を忍ばせ、優雅に多機能両面鏡を取り出すグリンデルバルド。ただそれだけの動作なのに、いちいち絵になる。

 

 

「だから私はファッジをけしかけた。君の娘のやり方では手ぬるい。愛が無いからだ。家族や友人を超えた、我々の社会そのものへの愛……それを守るために戦って死ぬことのできる愛国者の軍隊こそが、魔法界の未来を守る盾となる」

 

 

 嫌な予感がした。

 

 

「魔法界の未来を守る盾……ヴォルデモートを倒す力、ではなくて?」

 

 言葉だけを聞けば、私の方が物騒に聞こえる。だが、目の前にいるのは稀代の詐欺師だ。よく出来た生徒を見るような眼差しと共に、老人はゆるりと髭を撫でる。

 

「その通りだ。私は君に“魔法界の秩序と安定”を約束した。ヴォルデモートを倒すのは手段に過ぎん」

「倒しても国民国家と国民軍(マグル式戦争マシーン)は維持するってこと?」

「当然だ」

 

 

 グリンデルバルドは鷹揚にコーヒーを飲み干す。

 

 

「こう見えて、私はマグルが発展させた科学技術というものを高く評価している。いくら国際魔法機密保持法で隠蔽しようとも、連中はいずれ魔法界の存在に気づくだろう。その時、マグルは我々を同胞と見なすと思うかね?」

「……いいえ」

「そうだ。マグルは魔法界の文化や社会を見下し、一方で()()()()()()()()()()()()()を羨み、そして恐れる」

 

 

 反純血主義者たちは認めたがらないが、純粋に生物学的な意味では、魔法族はマグルの上位互換にある。

 

 

 マグルと魔法族の違いを一言で表現するなら、進化した猿が人類を支配する有名なマグル映画のようなものだ。

 

 たとえばマグルの傷害や疾病は魔法族を害せないが、魔法の障害や疾病はマグルを害しうる。

 

 魔法族の多くは銃の扱いを知らないが、使い方さえ教われば物理的に扱えないことはない。しかし、マグルはどれほど修行しても電力会社幹部に「服従の呪文」をかけて原発テロをさせることはできない。

 

 さすがに数の問題で魔法族が完全勝利するのは難しいだろうが、魔法の疫病や精神操作系の魔法の存在はマグル同士を疑心暗鬼に陥らせる。マグル同士の国家間対立に魔法という劇薬が加わることで第3次大戦がはじまり、全人類が共倒れになるような未来であればグリンデルバルドやヴォルデモートが計画していても不思議はない。

 

 

 そんな存在を、マグルが脅威だと思わないはずがないだろう。そして脅威だと思った集団に対しては、今なおユーゴスラビアで行われているような民族浄化という手段が取られることだってある。

 

 

 

Si vis pacem, para bellum(汝、平和を欲さば戦に備えよ)

 

 

 グリンデルバルドは古の格言をそらんじる。

 

「ヴォルデモートを倒すために必要なもの、それはまさしく『愛』だ。我々は『愛』によって団結し、この社会を作り替えねばならない。魔法族の魔法族による魔法族のための魔法界を防衛する市民軍こそが、愛の力によって魔法界に平和をもたらす」

 

 生まれ変わった魔法界では、誰か彼もが無数の駒の一つに過ぎなくなる。ダンブルドアもハリー・ポッターも、イレイナもファッジも――すべてが交換可能な歯車だ。

 

(暴論だけど、筋は通っている……)

 

 魔法界初の国民国家という名の戦争マシーンは、どれだけ死傷者を出そうと敵を滅ぼすまで動きを止めることは無いだろう。ヴォルデモートが何度復活しようとも、自動化された機械のように再び戦時体制へと移行し、永遠に敵と戦い続けられる……。

 

 

「軍隊は私が揃えよう。戦時体制も私が整えよう。挙国一致内閣も私が作ろう。だが、宣戦布告をするのは君たちだ」

 

 

 グリンデルバルドの瞳がギラリと光る。

 

 

「ヴォルデモートを倒し、マグルからも自衛するために、魔法界を未だかつてない戦争機械へと作り替える――その覚悟はあるかね?」

 

 

 

 グリンデルバルドが全てを語り終えた時、私は悟った。

 

 

 

 ……こいつ、全然反省してねぇ。

 

 

 

 **

 

 

 結局、グリンデルバルドは、どこまでもグリンデルバルドだった。

 

 「魔法界の安定と繁栄」という理想のために、周囲の全てを巻き込む暴走列車。骨の髄まで革命家で、その在り方は下手をしたらダンブルドアよりもよっぽどグリフィンドールに近い。

 

(でも、ヴォルデモートを倒すには、もう……)

 

 狂人には狂人を。ヒュドラ(不死の蛇)を倒すには、リヴァイアサン(巨大な人造怪獣)を作るしか――。

 

 

 

「いいえ」

 

 

 口を挟んだのは、イレイナだった。

 

 

「それは違うと思いますよ」

 

 青い顔をしながらも、瑠璃色の瞳は最悪の老魔法使いをしかと見据えて。

 

 

「グリンデルバルドさん、貴方は言いました。宣戦布告をするのは私たちだと」

「そうだ」

「貴方もしてください」

 

 黒い魔法使いのオッドアイに「ほう」と興味の色が浮かんだ。

 

「では、君が軍隊と戦時体制と挙国一致内閣を作ると?」

「それも違います」

 

 細い首を横に振り、イレイナはハッキリと告げる。

 

 

()()()()()()()()()()()――イギリス魔法市民軍を」

  




 あけましておめでとうございます!新年初投稿です!


 「死喰い人」と「不死鳥の騎士団」に続く、第3陣営「イギリス魔法市民軍(魔法省)」の成立です。
 あくまで「既存の魔法省の体制内で近代化を目指していく」という路線で、イメージとしては19世紀頃に内憂外患に陥った非ヨーロッパ諸国が近代化と富国強兵を目指そうとした感じ。
 イレイナさんがグリフィンドールだったら革命軍になってたかもしれませんが、スリザリンなので幕末の佐幕派みたいな方向に。
 

 一説によると戦争の強さは「その国がどこまで自国民の被害を許容できるか」で決まるという話もあり、「死から逃れる機会があるにもかかわらず、同じ危機に瀕する愛する者のために自らを犠牲にした際に生じる」という『愛』に通じる部分もあるような。

 もちろん技術や物量も大事ですが、優れた技術を持っていても国民意識が低くて負けた軍隊(アフガニスタン共和国軍)とか、物量があっても国内がまとまらずに負けた軍隊(ベトナム戦争時のアメリカ軍)みたいな事例もあるので。

グリンデルバルド「愛が、足りんよ」
ダンブルドア「違う、そうじゃない・・・」
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