ハリー・ポッターと灰の魔女   作:アストラマギカ

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第41章 ~自由への逃走~

 

 こっそりハリー達から話を聞いた私は、開いた口が塞がりませんでした。

 

 

 

「……つまり、ハグリッドは弟だという巨人をイギリスに密入国させた挙句、秘密裏にホグワーツで不法滞在させていると?」

 

 

 

 3人は深刻な顔で頷きました。

 

 

「まずいぜ。もしグロウプが見つかったらノルウェーに強制送還、ハグリッドもアズカバン送りだ」

「ええ、アンブリッジならやりかねないでしょうね」

 

 

 ……それに関してはアンブリッジ先生の判断も妥当なのでは?

 

 

 明らかに私がドン引きしているのを見て、ハリーが慌てて補足します。

 

「グロウプは巨人にしては小さい方だから、群れではイジメられてたみたいなんだ。そんな境遇の家族をハグリッドは見捨てられなかったんだと思う」

「そういう話なら、単純に逮捕して強制送還しろとも言えませんが……」

 

 かといって、危険な巨人が野放しにされてる状況を放置するわけにもいきません。

 

 

「であればノーバートの時と同じく安全な受け入れ先を探しつつ、見つかるまでは『禁じられた森』で一時的に保護する……といったところでしょうか」

 

 

 さすがのハリー達もグロウプが定住するのは危険だと考えていたらしく、無難な方向で話がまとまりました。

 

「僕、チャーリーに聞いてみるよ」

「お願いします」

「でも、とりあえず今はハグリッドを助けないと」

 

 ロンに言われて再び校庭に目を戻すと、ちょうどハグリッドが闇祓いの一人をパンチでノックアウトさせたところでした。

 

「……これ、本当に援軍いるんでしょうか」

 

 集中砲火を受けながらも依然として暴れ回り、それどころか失神呪文を跳ね返しているようにも見えます。

 

「ハグリッドやばくね!?」

「やはり筋肉……筋肉は全てを解決する……!」

「やっちまえ! そこ右フックだ!」

 

 もちろん、森番の思わぬ大立ち回りにホグワーツ生は大興奮。基本は辛辣なスリザリン生ですら、拍手喝采で大盛り上がりしておりました。

 

「……あなた達、ほんと誰の味方なのよ?」

 

 

「「「強いやつに決まってんじゃん」」」

 

 

今までは「魔法が使えない」「授業が下手」で低評価だったハグリッドですが、その気になれば闇祓いを物理でワンパンできることが判明したこともあり、さも当然といった顔で圧倒的手の平返しをかますスリザリン生たち。

 

「最近のスリザリン生って、ほんと……」

 

 頭を抱えるハーマイオニーに「きっと来年からは魔法生物飼育学を真面目に聞く生徒も増えますよ」などと気休めの言葉をかけていると、不意にポケットの多機能両面鏡がヴーと震えました。

 

 通知画面を開いてみると、そこにはジョージ・ウィーズリーさんからのメッセージが。

 

 

 

『イレイナ、ちょいとオレたちの悪戯専門店を手伝ってくれないか?』

 

 

 

 私は首を捻りました。

 

『お二人の悪戯専門店なんて、オープンしてましたっけ?』

『これから開店するんだ。ありがたいことに、愛しの高等尋問官殿が最高の晴れ舞台を整えてくれたんでね』

 

 ふむ。なんとなく意図が読めてきました。

 

『それで、私は何をすれば?』

『とりあえず校庭で待機しててくれ。すぐに分かるさ』

『了解です』

 

 銘剣ガラティーン片手に「義によって助太刀いたす!」と叫ぶガウェイン卿のスタンプを送ったあと、試験官のトフティ教授に答案を提出しました。

 

「君、まだ試験中じゃよ」

「大丈夫です。もう全て書き終えましたので」

 

 

 教室を出て早足で階段を降り、校庭へと繋がる橋にさしかかると、既に大勢の野次馬が集まっておりました。

 

 

 もともと5年生以外は試験もなく、それどころか普段は夜の見回りしている先生たちまで試験監督で手が回らないとなれば、外出を躊躇う理由がありません。野次馬たちには見知った顔もあり、その中の1人がサヤさんでした。

 

 

「あ、イレイナさん!!」

 

 

 しかしこの子、ホントどこにいても私を見つけてきますね……。

 

 

「来てください! すごい事になってますよ!?」

 

 

 **

 

 

 サヤさんに手を引かれながら野次馬の最前列に立つと、少し離れたところでアンブリッジ先生がイライラしたように叫んでる姿が見えました。

 

「ドーリッシュ、さっきから何をしているの!? 早く逮捕しなさい!!」

「既にやっています! ですが、半巨人相手に非致死性の攻撃魔法は威力不足です!」

 

 ちなみに魔法族が自分の魔力に蝕まれて自滅しないのは、魔法に対する遺伝的な免疫のおかげ、というのが通説です。

 巨人やドラゴンになると更に強力な免疫を持ち、魔法に対して高い防御力を持つ一方で、免疫が強すぎて魔法を操るのはそれほど得意ではない、という話も。

 

「なんとかしなさい!」

「無理なものは無理です!」

「人事評価に響きますよ!」

「っ」

 

 ここで「知ったことか!」と言い返せないのが、職業選択で安定を選んだ勤め人の世知辛いところ。ドーリッシュさんは無言でアンブリッジ先生を睨みつけた後、ほっそりとした女性の魔法警察に「ジェーン!」と声をかけました

 

「作戦を変更する。魔法警察特殊部隊(ヒットウィザーズ)にも攻撃に加勢するよう伝えてくれ」

「あら、そんな命令は受けていないけれど?」

 

 肩まで伸ばしたアッシュベージュの髪をくるっと指に巻き付けながら、ジェーンと呼ばれた女性警官は愉快そうに答えました。くすんだ藍色の制服に制帽を被り、防呪チョッキを着こんだ警官を2人従えています。

 

「私たちの担当は容疑者宅周辺の封鎖と市民の安全確保で、逮捕は闇祓い局の担当でしょう? 命令を変更するなら越権行為にならないよう、スクリムジョール局長とボーンズ執行部長の決済をもらわないと」

「構わない。責任は全て私がとる」

 

 ドーリッシュさんがぶっきらぼうに答えると、彼女はまたもや愉快そうにハシバミ色の瞳を見ひらきました。

 

「ジョン、今日はずいぶん大胆なのね」

「このまま呪文を撃ち続けても無駄に消耗するだけだ。対高等魔法生物用の物理的捕獲作戦に切り替える」

「そうこなくっちゃ」

 

 ジェーンさんは快活にこたえてから、淡いピンクのマニキュアをした指をパチンと鳴らしました。

 

 

「魔法警察副局長ジェーン・ドーリッシュより全部隊に通達――これより容疑者に対し、対高等魔法生物物理捕獲作戦“グリフォンクロー”を発動する」

 

 

 個々人の戦闘力を重視する闇祓いと違い、魔法警察は数の多さを生かした組織力に重点を置いています。てきぱきと指示を出す上司に従い、12名ほどの警官隊が襲撃に加わりました。

 

 

「「「「プロテゴ・インフラマーレイ-炎の護り!」」」」

 

 

 4人の警官が同時に詠唱すると、赤い炎が小屋を取り囲むように円を描いていきます。それはハグリッドを閉じ込める檻であると同時に、マクゴナガル先生ほか部外者を阻む壁でもありました。

 

 続けて、別のチームが大きめのスーツケースに浮遊呪文をかけ、ハグリッドの近くまで移動させます。

 

 

警察猫(マタゴ)を放ちなさい」

 

 

 直後、スーツケースの中から4匹の不気味な黒猫が飛び出しました。瞳は白濁しており、大きさは猫というよりチーターほどのサイズで、軽々と飛び跳ねるようにして獲物との距離を縮めていきます。

 

(ハグリッドの危険生物好きを逆手にとるとは……魔法警察も中々エグい手を使いますね) 

 

 案の定、狼狽えながらも説得を試みるハグリッド。

 

「待て待て! お前さんたち、俺は友達だ。わかるか?」

 

 両手を大きく広げ、支配するのではなく信頼関係を築こうとしている模様。一方のマタゴたちは円を描くようにじりじりと動きながら、値踏みするように頭を低くして襲いかかる隙を伺っているように見えました。

 

「よーし、いい子だ。ほれ、お腹がすいてるなら――」

 

 突然、流れるような身のこなしで一匹のマタゴが襲いかかり、ハグリッドの太い腕に鋭い牙を突き立てました。別の一匹も唸り声をあげて背中に飛びつき、長い鉤爪が厚手のコートを引き裂きます。

 

「イテッ! 悪い子だ! そんな風に噛むんじゃ――イテッ!」

 

 たまらずハグリッドが強めに払いのけると、地面に強く叩きつけられたマタゴが2匹に分身しました。低い唸り声をあげ、大きな白い目が獲物を睨みます。

 

(これで魔法生物の危険性を少しは理解してくれるといいんですけど……)

 

 

 徐々に追い込まれていくハグリッドでしたが、ヒットウィザーズは攻撃の手を緩めず、さらに空中からの攻撃も準備しているようでした。

 

 上空で旋回しているフリント先輩はアダマンチウムでコーティングされた特殊棍棒を振り回し、もう片方の手を箒の柄に装着された木箱にかけました。

 

「フリント班、ゴムブラッジャーの発射準備完了しました!」

「予定通りね。マタゴを一時的に下がらせるから、退避完了と同時に攻撃開始よ」

「了解!」

 

 野太く叫んだフリント先輩が木箱のロックを外すと、固いゴム製のブラッジャーが勢いよく弾け飛びます。それを特殊棍棒のフルスイングで叩きこむのを見て、ハグリッドが悔しそうに叫びました。

 

「降りてこい! こんの卑怯者どもめ!」

 

 間一髪で生垣にダイブして攻撃を躱すも、ゴムブラッジャーは追尾ミサイルのごとく空中で大きく旋回して再び急降下。いくらゴム製とはいえ、何度も直撃を受ければタダでは済みません。

 

 

「ミセス・ドーリッシュ!貴女はハグリッドを殺す気ですか!?」

 

 さすがに見かねたのか、炎の魔法で引かれた警戒線の外にいたマクゴナガル先生が批難するように大きな声を出しました。

 

「もしハグリッドが骨折したり脳震盪でも起こしたら――」

「先生、私たちは魔法使いですよ? 死にさえしなければ、治癒魔法と魔法薬でどうとでもなります」

 

 丁寧な口調ではあるものの、ジェーンさんの声にはナイフのような冷ややかさが滲んでおりました。

 

「既に4名が負傷し、うち2名は意識不明の重体です。容疑者があくまで抵抗するというなら、部下の命を守るのも私の仕事です」

 

 理論上はどの杖であろうと「死の呪文」が撃てるため、ある意味では魔法族は全員が銃で武装しているようなもの。

 

 なので警官の安全を考えれば多少のコンプラ違反は致しかたない側面もあるのですが、それが常態化してしまうと今度は警察がヤカラ化してしまうので、なかなか難しい問題です。

 

 

 

「……ハグリッド先生、このまま逮捕されちゃうんですかね?」

 

 目の前の光景を見て、委縮したような顔で聞いてくるサヤさん。

 

「いえ、そうはならないと思いますよ」

 

 私は彼女を安心させるように答えました。というのも、ちょうどジョージから『いよいよ出番だぞ』というメッセージを受け取ったからです。

 

『イレイナはこれから起こることを多機能両面鏡で撮って、出来るだけスキータグラムで拡散してくれ』

『わかりました』 

 

 一応これでもゼネラル・マギティクス社の名誉会長なのです。主力製品である多機能両面鏡の宣伝にも繋がりますし、そう言われると手伝わないわけにもいきません。

 

 

 

 ―――というわけで。

 

 

 

 私が多機能両面鏡のカメラ機能をONにした直後、どこからか甲高い飛翔音が暗闇を切り裂きました。そして次の瞬間、ゴムブラッジャーが派手に爆発してカラフルな火花がほとばしります。

 

 

「くそっ、何が起こった――!?」

 

 

 驚いた警官の一人が叫ぶと、さらに別方向から赤い閃光が飛んできて、みるみる内に一匹の巨大なドラゴンへと変身していきました。

 

「回避ぃいいい――っ!」

 

 慌ててスクランブルする警官たち。しかし、(おとこ)マーカス・フリントは一味違いました。

 

 

「うろたえるな! 魔法警察特殊部隊(ヒットウィザーズ)はうろたえないッ!」

 

 

 半ば自分に言い聞かせるように怒鳴りながら、杖でドラゴンに照準を定めます。

 

 

「エバネスコ-消えよ!」

 

 

 杖先から紫色の光球が射出され、みごとドラゴンの眉間を直撃。しかし、どういうわけかドラゴンは消失することなく、そればかりか10倍以上の大きさに膨れ上がりました。

 

「フリント、いったい何をしてるの!? 大きくしてどうするのよ!」

 

 アンブリッジ先生が怒り狂ったように叫びました。横にいたジェーン・ドーリッシュさんは不安そうな表情で杖を構え、別の呪文を唱えます。

 

「ステューピファイ-麻痺せよ!」

 

 赤い閃光が飛び出し、爛々と黄色く光る目玉を正確に撃ち抜きました。一瞬、ドラゴンが空中で固まってホッとしたのも束の間、空中で大爆発して凄まじい衝撃波がハリケーンのように迫ってきます。

 

 アンブリッジ先生が息を呑み、ジェーンさんが悲鳴をあげる中、ドーリッシュさんは即座に「盾の呪文」を展開。なんとか自分と奥さんを爆風から守ったものの、アンブリッジ先生はバランスを崩してクレーターへと転げ落ちてしまいました。

 

「いったい誰がこんなことを――」

 

 互いにしがみつくようにして後ずさるドーリッシュ夫妻。すると2人の疑問に答えるように、煙の中から聞き覚えのある声が聞こえてきました。

 

 

「いったい誰がと聞かれたら」

「答えてあげるが世の情け」

 

 

 ちなみに私は微妙に関係者になったせいでオチを知っているのですが、何も知らなず目を丸くしているサヤさんのためにもネタバレはしない方向でカメラを構えております。

 

「性悪ガマガエルの悪事を防ぐため」

「ホグワーツの自由を守るため」

「正義と勇気の悪戯を貫く天才双子――」

 

 

「フレッド、ジョージ! こんなところで何しちょる!?」

 

 

 大きな口をあんぐりと開け、ハグリッドが双子に向かって声を張り上げました。

 

 

「ここは危険だ! 下がっとれ!」

 

 

 急に常識的なことを言い出すハグリッドでしたが、そんなことで退却する双子ではありません。

 

「助けが必要かと思ってね」

「ヒーロー参上、というわけだ」

 

 フレッドとジョージはニヤリと笑い、呆気にとられるハグリッドに逃げるよう促します。

 

「ここは俺たちに任せて逃げてくれ」

「ちなみに脱出経路は『禁じられた森』ルートがオススメだ」

 

「おまえさん達……!」

 

 涙ぐむハグリッドに、双子は照れくさそうに手をひらひらさせて。

 

「お礼なら、ホークランプの体液とダグボッグの舌がいいな」

「ついでにアッシュワインダーの卵もあったら最高だ」

 

 ハグリッドは目を擦って「もちろんだ!」と大きく頷いてから、そのまま全速力で「禁じられた森」の奥へと走り去っていきました。

 

 

 **

 

 

 

「なんたること! なんということを!」

 

 

 轟くような怒鳴り声は、ようやく這い上がってきたアンブリッジ先生のものでした。

 

 

「それで―――あなた方たちは魔法省の警官隊に奇襲爆撃をかけて、おまけに周囲一帯を底なし沼に作り替えたら面白いだろうと、本気で考えているわけね!?」

 

 

 煙が晴れると、ハグリッドの小屋周辺は第一次世界大戦中のクレーター地帯のように様変わりしておりました。そこら中が穴だらけで、しかも水が溜まって文字通りの泥沼と化しております。

 

 

「あぁ、なかなか面白いね」

 

 恐れるどころか、むしろ煽るように返事をするフレッドさん。一触即発の空気の中、恍惚とした表情のフィルチさんが鞭と羊皮紙を手に現れました。

 

「先生、書類を持ってきました。鞭も準備万端です――あぁ、今すぐ執行させてください……!」

「いいでしょう、アーガス」

 

 アンブリッジ先生が勝ち誇ったように言いました。

 

「これは立派な公務執行妨害です。そこの半人間もろともアズカバンに送り込む大義名分が出来たというもの。この学校で悪事を働けばどうなるか、そこの2人に思い知らせてやりなさい!」

 

「ところがどっこい」 

「思い知らないね」

 

 どう見ても追い詰められた状況にもかかわらず、双子は軽口を叩きながら同時に呪文を唱えました。

 

 

「「アクシオ-押収品よ、来い!」」

 

 

 城の方で何かが崩れたような音が響いた後、いくつもの木箱が持ち主めがけて流れ弾のように飛んできました。重そうな鉄の鎖や杭を引きずったまま飛んでくる木箱めがけて、双子は続け様に呪文を唱えます。

 

 

「ボンバーダ-砕けよ!」

「エクスパルソ-爆破!」

 

 

 

 一瞬のうちに、ハグリッドの小屋包囲戦は無秩序な恐慌状態へと陥りました。

 

 

 

 何匹もの大きな紫色のコウモリが不気味な煙を吐き、直径5フィートもあるピンクのネズミ花火は空飛ぶギロチンのごとくビュンビュンと破壊的に飛び回っております。緑と金色のドラゴン花火が火の粉をまき散らし、線香花火は闇夜に火花の文字で悪態をついておりました。ロケット花火は銀色の星を長々と噴射しながら壁に当たって跳ね返り、爆竹はあちこちで地雷のように爆発しています。

 

 

 運悪く「ゲップ粉」を被ってしまったフリント先輩はゲップが止まらなくなり、「噛みつきフリスビー」はフィルチさんを追い回し、よく訓練されたマタゴも「臭い球」の強烈な匂いには敵いません。「クソ爆弾」から「ヒューヒュー飛行虫」に「鼻食いつきティーカップ」まで、ありとあらゆる悪戯グッズのバーゲンセールに、魔法警察たちも身を守るのに背一杯の様子でした。

 

 

 右往左往する闇祓たちに、アンブリッジ先生が自分も逃げ回りながら金切り声で叫んでいます。

 

「逃がすな! 捕まえろ!」

「了解!」

 

 煤まみれで汗ばんだ顔のジェーンさんが杖に手を伸ばすも、それを制したのは泥だらけのジョン・ドーリッシュさんでした。

 

 

「やめた方がいい。あれを見ろ」

 

 

 指さした先にいたのは、城から出てきた大勢の生徒たち。興奮したようにあることないことを噂したり、私と同じようにカメラや多機能両面鏡で撮影する生徒もいて、中にはドローン・スニッチを飛ばして動画配信を始めようとする生徒までおりました。

 

 

「このまま任務を続ければ、我々は完全に悪役だ!」

 

 

 ドーリッシュさんが厳しい声を出すと、ジェーンさんは青ざめた顔で口をきっと結びました。

 

 魔法省のエリート官僚たちは、誰もが才能と野心に策略にものを言わせてライバルの失脚を虎視眈々と狙っております。このまま命令に従っても、世論が炎上すれば支持率を気にするファッジ大臣に責任転嫁されるだけ、と悟ったのでしょう。

 

 

「どうするの?」

「ここまでだ。撤収する」

 

 ドーリッシュさんが背を向けると、ジェーンさんも近くにいた闇祓いたちと一緒に続きました。フリント先輩たち魔法警察も舌打ちしながら、渋々といった様子で撤退を始めます。

 

 

 

「バカなことを言わないで!」

 

 

 真っ赤な顔でアンブリッジ先生が叫びました。

 

「これは立派な敵前逃亡ですよ! ドーリッシュ、職務放棄は懲戒免職の対象に――」

「お言葉ですが、容疑者は既に逃亡していると思われます。であれば、もはやホグワーツに用はありません」

 

 ドーリッシュさんの視線が双子からアンブリッジ先生、そしてマクゴナガル先生へと移っていきます。

 

「それに私の見たところ――問題児の指導は闇祓いというより、教師の仕事ですので」

 

 慇懃にソフト帽のつばをつまんで「失礼します」と踵を返し、律儀にマクゴナガル先生の前でも脱帽してから去っていきました。

 

 

 **

 

 

 撤退していく魔法警察隊を見て、ジョージが双子の片割れに言いました。

 

「さてと、俺たちも出ていくとするか」

「あぁ。どうやら学生家業も卒業しちまったようだからな」

「結果的に最高の宣伝にもなった」

「そうそう。なら、もう思い残すことも無い」

 

 生徒たちは歓声をあげながら写真や動画を撮り、嬉々としてスキータグラムに投稿していきます。双子の活躍は多機能両面鏡を通じて知り合いにシェアされ、口コミで瞬く間に広がっているようでした。

 

 

「「ついに俺たちの才能を世の中で試す時が来た」」

 

 

 アンブリッジ先生が何も言えないうちに、2人は杖を喉に当てて「拡声呪文」を唱え、小屋を囲む生徒たちに向かって声を張り上げました。

 

 

「皆さんの目の前で実演した『ウィーズリーの暴れバンバン花火』は、『基本火遊びセット』が5ガリオン、『デラックス大爆発』が20ガリオンとなっております!」

「お買い求めの方は、どうぞダイアゴン横丁93番地までお越しください! 我らが新店舗『ウィーズリー・ウィザード・ウィーズ』にて承っております!」

 

 

「あの2人を止めなさい!」

 

 

 アンブリッジ先生が叫ぶも、もはや全てが手遅れでした。フレッドとジョージは箒で生徒たちの頭上をビュンビュン飛び回り、騒ぎを聞きつけてやってきたポルターガイストの前で一時停止します。

 

 

「ピーブズ、後は任せたぜ!」

 

 

 それから、奇跡が起こりました。なんとピーブズさんは鈴飾りのついたシルクハットをさっと脱ぎ、敬礼の姿勢を取ったのです。これまでピーブズさんが生徒の命令を聞く場面なんて、誰ひとりとして見たことがありませんでした。

 

 

 フレッドとジョージは向きを変え、やんやと騒ぐ生徒たちの拍手喝采を受けながら、輝く月に照らされて遠い夜空へと吸い込まれていったのでした。

        




 魔法警察のマタゴ相手にジュラ〇ックポーズを決めるも、普通に噛まれるハグリッド……きっと少しは反省した、はず……。

 魔法警察の逮捕マニュアル、相手も杖で攻撃呪文が使えるからデフォルトで立て籠もり犯の制圧みたいになってそう。アメリカとかだと犯罪者の重武装化に対応して自転車泥棒レベルでSWATが出動みたいなことになってますが、たぶん魔法界は昔からずっとそんな感じかなと。
 逆に魔法界に軍隊がいないのも「警察が軍隊化してるから」みたいな事情もあるのかなと。

 「ウィーズリーの暴れバンバン花火」とかいう圧倒的火力、通信魔法を駆使した魔法道具による認知戦……アンブリッジの敗因:技術進歩に付いていけなかった
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