ハリー・ポッターと灰の魔女   作:アストラマギカ

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※普通に下ネタ回的な話なので、そういうのが苦手な方はご注意ください。
  


第11章 ~より大きな善の為に?~

           

 今さらですが、ホグワーツ魔法魔術学校は魔法を学ぶ学校であると同時に、健全な少年少女たちが思春期の大半を過ごす場所でもあります。

 

 

 当然、12歳から13歳ごろとなれば男女の色恋に興味を持ち、性知識についてあれこれ調べ出す時期でもあったり。

 

 ところがホグワーツにはマグルの学校のような保健体育に相当する講義がなく、また図書館にもそういた本は置いてありません。

 明らかに市場の需要に対して供給が足りていない、というのは由々しき問題では無いでしょうか。

 

 

「と、私は思うのですが、どうでしょうか」

 

 深夜のホグワーツ、他の寮生でも謎さえ解ければ勝手に入れるレイブンクロー寮の談話室にて、暖炉の炎に照らされた美しい横顔がありました。そう、私です。

 

 そして私以外に、本来レイブンクロー談話室にいるべきではない人間が3名ほど。

 

「おいおい。ジョージ、俺たちは天才児を見つけちまったみたいだぜ」

「だな。リーもそう思うだろ?」

「今まで気づかなかった自分が恥ずかしいぜ」

 

 レイブンクロー生が遠巻きに避けていく中、私と双子のウィーズリー兄弟とその悪友リー・ジョーダンの4人は顔を見合わせました。

 

「で、やるんですか?」

 

「「「もちのロンさ!」」」」

 

 私たちは互いに拳を合わせ、誓いを胸に高らかに謳いあげます。

 

 

 ――より大きな善のために。

 

 

 

 ***

 

 

 

 それから一週間後、私がこっそり男子寮に足を踏み入れると、何やらドラコたちの部屋からヒソヒソ声が聞こえてきました。

 

「んで、ドラコはどの子がお好み?」

「ザビニお前なぁ……」

 

 ザビニのウキウキ声に答えるのは、ドラコの呆れと恥ずかしさの混ざった声。

 

「絶対に、誰にも言うんじゃないぞ。もし僕がこれを買うためにお小遣いを使ったなんて、父上に知れたら……」

「わかった、わかった。オレが買った、お前はたまたま目に入った――んで、誰がタイプよ?」

 

 ちょっと間が空き、ドラコが「敢えて言うなら」と勿体を付けた後、ザビニがはしゃぐ声がしました。

 

「マジか! お前そういうのがタイプなの?」

「騒ぐなって! 僕は下品なのは苦手なんだ」

「そりゃ顔は綺麗かもしれないけどよ、出るとこ出てねーじゃん」

 

 ふむ、どうやらドラコたちはすっかり私の術中に嵌ったようです。

 

「ねぇ」

 

 不意に背後から声がしました。

 

「イレイナ、こういうの良くないと思うんだけど」

「じゃあパンジーは帰ればいいじゃないですか」

「そうだよ、こんな楽しそうなの見逃す手は無いって」

「パンジーだって男子の好きなタイプ、なんだかんだで気になるんだろ?」

「んなっ!?」

 

 いつの間にか背中にべったりと張り付いていたパグ犬顔と、頭ゆるふわ金髪、そしてガタイのいい茶髪が、男子の寝室前で耳をそばだてながら胸の内を囁いています。

 

「男子も男子よ! こんな不健全な本、しかもマグルの成人向け雑誌だなんて……」

「別にいいんじゃね? この歳でエロに興味無い男子の方が闇深そうだし」

「ミリセントの言う通りです。思春期にスポーツとか恋愛より政治思想とか闇の魔術なんかにのめり込んだら、きっと拗らせた大人になっちゃいますよ」

 

 こっそり開錠呪文で開けた扉の先には、ドラコ、ザビニ、ノット、クラッブとゴイルが食い入るようにして見ている雑誌がありました。

 元はマグルの雑誌ですが、魔法をかけてグラビアの女性がセクシーポーズしたり、投げキッスしたり、服を少しずつ脱いだり……いわゆる、未成年は見ちゃダメな雑誌です。

 

 

 純血だなんだと言っても、所詮は思春期真っ盛りの野郎ども。ほとばしる熱いパトスを裏切れるはずがありません。

 マグルより保守的な魔法界にはこうした雑誌が無い(皆無ではありませんが、マグルに比べて非常に控えめ)こともあり、お年頃のドラコたちが虜になってしまうのも時間の問題でした。

 

 

「だーかーらー、こういうモデル体型はいざ抱いた時に骨があたるんだっての」

「見守る良さもあると思うんだ」

「いやいや騙されたと思って一度、むっちりした太ももとか胸に顔うずめてみ? 飛ぶぞ」

「生々しいのはやめろって。そもそも体つきより顔なんじゃないか? 見た目で大事なのは」

 

 

 背後で「やっぱ顔なんだ……」とパンジーが呟くのが聞こえたような。

 

 

「優等生だねぇ。――ちなみにノットは?」

「普通に脚だな。スラっとしたやつ。踏んで欲しい」

「ノット、監督生のファーレイ先輩とか好きそうだもんな」

「経験豊富なお姉さんに慣れた感じで弄ばれたい」

「ノットお前……」

 

 ちょっと引いたようなドラコの声と、ザビニの「いや、一周回ってノットは分かってる!」という謎のフォロー。

 

「クラッブは?」

「胸。でけぇの」

「ゴイル」

「やっぱケツだろ」

「お前ら退屈だな。もっと世界広げようぜ」

 

 パンジーがイライラしたように舌打ちしました。

 

「男子ってバカばっかなの!?」

「そこが可愛いんだよ~」

 

 ダフネが宥めにかかるも、やさぐれたパンジーはプイッとそっぽを向いてしまいます。

 

「ザビニはともかく、ドラコまで……なに鼻の下伸ばしてんだか」

 

 

 おや?

 

 

 なんか今、声に嫉妬めいた響きが混ざっていたような。すかさずダフネおよびミリセントとアイコンタクト。

 

『やっぱりパンジーって、そういう事なんですか?』

『前々からそうだったじゃん』

『え、そういう事ってマジ?』

『二人とも鈍いよ!』

 

『んだよ、ドラコのこと好きなら最初から言ってくれればいいのに」

「なっ」

 

 途中から心の漏れていたミリセントの声に、パンジーが面白いぐらい顔を真っ赤にして腕で謎のガード姿勢をとります。

 

「いやっ、ドラコとは別にそういうんじゃないし!」

「パンジーって分かりやすい子ですよね……」

 

 しかし、いざ冷静になって考えてみれば意外でも何でもない組み合わせです。クィディッチの練習の時はまだ無意識だったかもしれませんが、ロックハート先生の授業の件は惚れてもおかしくはありません。

 

 

「そっかー、そりゃ好きになった男がエロ本で満更でもなさそうにワイワイやってたらイラつくわな」

 

 ミリセントが腕組みをして、うんうんと頷きながら続けます。

 

「そういやドラコって彼女いたっけ?」

「何人かの1年生から、クィディッチの練習前に手作りお菓子とか貰ってましたけど……」

「えっ、ちょっとイレイナ何それ聞いてないんだけど!?」

 

 だって言ってませんし。

 

「もうちょっと早く教えてくれたら、それとなく情報流せたんですが……」

「いや、その」

 

 バツの悪そうな顔になるパンジーに、ミリセントは腰に手を当てて呆れ顔。

 

「つーか、好きならさっさと言っちゃえよ」

「うっさい。単細胞のアンタと一緒にすんな」

 

 

 見かねたダフネが、パンジーの肩をぽんぽんと叩きます。

 

「ちゃんとドラコに伝えなよ。好きなんでしょ?」

「そんなこと……」

 

 普段は気の強いパンジーが、珍しく言葉に詰まっています。

 

「言わなきゃ伝わらないのは分かってるんだけど……」

「うん」

「急にそんなこと言っても、困るだけじゃん」

「困らせたくない?」

「だって、困らせて嫌われたら元も子もないし……」

 

 子供のように体育座りで自分の足の間に顔をうずめるパンジーを見て、顔を合わせるミリセントと私。

 

「乙女だな」

「お年頃ですねぇ」

 

 

 ちなみにこの間、件のドラコ・マルフォイは何をしていたのかと言いますと――。

 

「それでザビニ、あの試合でウガンダのシーカーが『ウロンスキー・フェイント』をかけた時、僕は最前列で見てたんだ!」

「マジか、やべぇな! じゃあトランシルヴァニアのシーカーが地面に突っ込むとこも生で見たのか!?」

「ああ、その通りだよ!あれぞマーリンの髭ってやつだ」

 

 恋する乙女の悩みなんぞ露知らず、いつの間にかクィディッチ談義に突入しておりました。これは前途多難そうです。

 

 

「パンジー、もういっそ当たって砕けて来いって。そっちのがスッキリするだろ」

「だーから砕けたくないっての! ミリセント今の話聞いてた!?」

 

 わーっ、と叫んで情緒不安定気味に涙目になるパンジー。

 

「うぅ……ダフネ先生、気になる男はどうしたら落とせると思いますか?」

「聞いた感じ、顔とおっぱいとスタイルだね」

「どうしたら顔とおっぱいとスタイルはいい感じになりますか?」

「メイクと牛乳とダイエットかな」

 

「―――決めた」

 

 パンジーがすっくと立ちあがりました。

 

「アタシ、来年までにメイクと牛乳とダイエットでいい感じの女になる!」

 

 ローマは一日にしてならず、千里の道も一歩から。

 パンジー・パーキンソンは覚悟を決めたようでした。

 

「よし、頑張るわ!」

 

 

 ――ということで。

 

 

「フリント先輩、パンジーとミリセントもよろしくお願いします!」 

 

「は?」

 

 翌日、スリザリン・チームの練習場にはジャージに着替えたパンジーとミリセントの姿も。

 

「よ、よろしくお願いします」

「押忍!」

 

「セレステリア、俺にも分かるよう状況を説明してくれ」

「気になるあの子を落とすために、まずは身体から仕上げようとダイエットを。ミリセントはオマケです」

「なるほど。詳しい事情は知らんが、その意気や良し!」

 

 基本ノリと勢いで生きてくフリント先輩のスタイル、最近ちょっと良さが分かってきました。

 

「喜べ野郎ども、女子と一緒にランニングだ!」

 

「「「「うぉぉおおおおーーーーっ!!」」」」

 

 こうしてハロウィンが近づく中、パンジーとミリセントは有酸素運動と筋トレに加え、食事も可能な限りサラダと温野菜、鶏ムネ肉、ベイクドビーンズ、ミネストローネなどを中心にお菓子は控えさせます。

 

 もちろん、いきなり生活スタイルをガラッと変えるとフィジカルにもメンタルにも不調をきたすので、来年あたりに美少女になることを目指して、無理のない長期的な計画をダフネと一緒に考えました。

 

 

 **

 

 

 とまぁ、そんな感じでホグワーツ中に桃色の風が吹き荒れていたのですが、件のエロ雑誌を発行していたのは創設者4人の頭文字をとってGELF(ゲルフ)と名付けられた秘密結社でした。なお、中世イタリアの教皇党(ゲルフ)と特に関係はありません。

 

 発足してから1か月も経たないうちに、フィルチさんの仕事はうなぎ登りに増えていき、ついには大広間にデカデカと「発禁処分」の告知が出てしまいます。

 

 

「イレイナ、どうして嬉しそうなんだい?」

 

 昼食後、すれ違った‟L”ことリー・ジョーダンは怪訝な顔をしていましたが、私に言わせれば思うつぼという奴です。

 

「決まっているじゃないですか。禁止されると、人はさらに欲しくなるものです。元々興味無かった人まで、きっと‟禁止されるほど不健全な本なんて、一体どんな本だろう?”って好奇心をそそられるに違いありません!」

 

 

 かくして予想は大当たりし、便乗値上げにもかかわらず、売り切れが続出する始末。フィルチさんは抜き打ちで生徒を呼び止めてはポケットをひっくり返すように命じたりしたものの、生徒たちの方が一枚上手でした。

 

 本に合言葉を唱えないと白紙のノートに見えるようにしたり、魔法をかけた眼鏡を通さないと教科書に見えるようにしたり、ありとあらゆる手を尽くして管理人の目を欺きます。

 

 付け加えると男性向けエロ雑誌だけでなく、ミュージシャンを特集したティーン向け雑誌やファッション誌なんかは男女問わず一定の需要がありました。

 

 

 で、その結果どうだったのかと言いますと。

 

 

「基本的に魔法族はマグルより優れているが、何事にも例外は存在する」

 

 

 マグル嫌いのスリザリンや他寮の純粋魔法族の中で、ちょっとした意識変化が起こりつつありました。まぁ、往々にして偏見というのはそれが珍しいから起こるもので、なし崩し的に広まっていけば案外「慣れ」て大目に見るようになるものです。

 

 

 そして私たちはというと。

 

「こんな大量のガリオン金貨、見たことないぜ」

「何より、先生方が本気出しづらいってのが最高だな!」

「きっとダンブルドアあたりは面白がってるぜ」

「ちょろいもんですね」

 

 深夜の空き教室、そこには薄汚い手法で金儲けをしながら、マグルに対する偏見是正にも取り組む?4人の活動家がおりました。

 

「「「「より大きな善の為に」」」」

 

 時として善とは言い切れぬものが思わぬ善を為す、ということも世の中にはあるようです。

   




 
スリザリン男子の性癖
・ザビニ・・・チャラ男でトーク上手、ちょいS
・ノット・・・むっつりスケベ、ドMの紳士
・マルフォイ・・・お坊ちゃまゆえ、割と草食系
・クラッブ&ゴイル・・・本能に忠実、性癖は普通

 雑誌はマグルの古本をマンダンガスあたりから仕入れて、魔法で写真とかが動く魔法界仕様にして付加価値をつけて販売してます。

 パンジー・パーキンソンは映画版3作目みたいな美少女になる下準備を開始。
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