ハリー・ポッターと灰の魔女   作:アストラマギカ

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※独自設定あり。苦手な方はご注意ください。


第03章 ~ゼネラル・マギティクス社~

  

 私が目を開けると、あたり一面を真っ白な光が覆っていました。

 

 

「イレイナ、久しぶりだな!」

「お久しぶりです、ジョーダンさん」

 

 最初に声をかけてくれたのは、双子の悪友リー・ジョーダン。パーカーにTシャツ、カーゴパンツにスポーツシューズというカジュアルな恰好で、陽気な印象が本人のキャラも相まって似合っています。

 

 

「やぁ、名誉顧問兼名誉会長さん」

「改めてそう呼ばれると、なんだかムズムズしますね……」

 

 続けて声をかけてきたのは、ハッフルパフ監督生で6年のセドリック・ディゴリーさん。ポロシャツとジーンズに厚底スニーカーという滅茶苦茶ラフな恰好なのに、セドリックが着ると無駄にキマってくるので不思議なものです。

 

 

 ちなみにこの二人はバイトで業務を手伝っており、どちらも貴重な戦力とのこと。

 

 

 それからやってきたのは、元ホグワーツ女子首席にして実質的な経営者の一人であるペネロピー・クリアウォーター先輩でした。

 

 

「よかった、みんな揃ったみたいだね」

 

 波打つ金髪を前髪アップでかき分け、知的な青い瞳に温和な表情を浮かべて「久しぶりー」と手を振り、彼氏のパーシーさんを見つけると嬉しそうに顔をほころばせます。

 今日の先輩は爽やかな白いオフショルダーのシャツにブルーのデニムスカートを組み合わせで、シンプルながら少し大人びたファッションでした。

 

 

 

「おや、ルーピン先生とファーレイ先輩は?」

 

 不在の残る共同経営者2人の事を聞くと、青い瞳にどこかブルーな色を浮かべるペネロピーさん。

 

「セキュリティの問題で一人残ってた方が楽だから、リーマスさんは工房にいるよ。ジェマは仕事終わりに男子のフレンズとナイトプールをエンジョイして、今ちょうど戻って来てるとこ……だと信じたい」

 

「――おっと、言い回しにそこはかとない悪意を感じるぞ?」

 

 幸い、ペネロピーさんの心配は杞憂だったようで、ひょっこりと『姿現し』で元スリザリン監督生のジェマ・ファーレイ先輩が現れました。

 

 

「よっす」

 

 ウルフカットにした透明感のある黒髪を肩まで伸ばし、モデルのようなスタイルに整った目鼻立ち、そしてネコのような緑色の瞳にはドキッとするようなズル賢い色をたたえています。

 こちらはライトブルーを基調とした七部丈のスキニージーンズに、黒のへそ出しTシャツの上から涼しげな半袖ワイシャツを羽織り、くびれのある引き締まったウェストを惜しげもなく見せつけていました。

 

 

「いやー、遅れてゴメンね。併設のバーでお酒飲んだら盛り上がちゃって」

「どうして大人の人って、隙あらばお酒を飲みたがるんでしょうか……」

「ふふっ、それは飲んで忘れるためよ」

「何を?」

「飲んだから忘れちゃった♪」

「お酒やべーですね」

 

 

 酔いどれパリピな先輩に「酔い覚まし魔法薬」をぶち込んだ後、ペネロピーさんが集まったメンバーに向き直りました。

 

 

「じゃあ、改めて――ようこそ、『サークル』へ」

 

 

 嬉しそうにそう挨拶したペネロピーさんに続いて廊下を歩いていくと、真夜中だというのに大勢の人々が本や書類を抱えて行きかっており、マグルの大学キャンパスみたいな雰囲気です。

 

「オフィス・ビルというより、小さな町みたいね」

 

 ハーマイオニーが呟くと、ペネロピー先輩が「そうかも」と返しました。

 

「スーパーマーケットに病院、パブにナイトクラブまであって、だいたい20ヵ国から200人ぐらいが住んでるの」

 

 しばらくハーマイオニーが質問した後、今度はパーシーさんがペネロピーさんに話しかけてきます。

 

「その社員証みたいなの、何て書いてあるんだい?」

「あ、これのこと?」

 

 ペネロピーさんの吊り下げ式IDカードには、見慣れない文字――東洋の漢字が書かれていました。

 

「私の苗字なの。ペネロピー・ (クリア) (ウォーター)

 

 どういうわけか『サークル』では漢字が「最高にクールだ」と流行っているらしく、実に極度冷凍(スーパークール)なセンスでした。

 

 

 

 ***

 

 

 

「そろそろ着くよー」

 

 しばらくしてファーレイ先輩が廊下の先にあるガラス張りの扉の前で足を止め、ガラスに掌を押し付けると「認証完了、入室を許可します」と完璧な発音の女性の音声が響いて扉が開きました。

 

 

 扉の横には古代ルーン文字に似せた字体で『ゼネラル・マギティクス』と書かれたプレートが設置され、その上には水晶をかたどった背景に『GM』と書かれたシンプルなロゴが真鍮文字で書かれていました。

 

 

「さぁ、入って入って」

 

 先輩たちに続いて、退社後の人気のないオフィス・ルームを抜けると、今度は銀行の金庫のような丸い金属製の扉に突き当たります。

 

 すると清水先輩ことクリアウォーター先輩とファーレイ先輩とがそれぞれ扉の反対側に立ち、金属板の上に指を押し当てて何度か滑らせると、ガチャン!ガチャン!と音が鳴って金属製の扉が開きました。

 

 

 分厚い扉の先にはガス灯に照らされたモダンな白い滑らかな内装の部屋があり、謎の液体が入ったフラスコやビーカー、貯蔵タンクに蒸気機関、天球儀からアストロラーベ、そして様々な工作機械が配置され、壁際には本棚が並んでいました。

 

 そればかりではありません。最新のコンピュータや電子機器、謎のロボットアームやプラスチック製のガジェットで埋め尽くされている区画まであり、まるでアメコミに出てくるヒーローの地下秘密基地のよう。

 

 

 その奥にいたのは――。

 

 

 

「ルーピン先生!」

 

 

 

 ハーマイオニーが歓声をあげ、隅の方で巨大な機械の歯車をいじっていたルーピン先生が顔をあげました。

 

 

「やぁ、思ったより早い再会だったね」

 

 1ヵ月ぶりに見るルーピン先生はそれなりに顔色も良く見え、今日はオフだからかグレーのTシャツに青いジーンズというノームコアな恰好でした。

 

 

「それから、もう先生じゃないよ。今はこのGM社で、製品部門担当をしているんだ」

 

 

 

 ***

 

 

 

 さっそく私と双子がハーマイオニーのアイデアを話したところ、返ってきた反応は曖昧なものでした。

 

「技術的には、既に完成している」

 

 そう言ってルーピンさんが指さしたのは、壁にかけられている長方形の大きな鏡でした。

 

 縁にあるボタンを押すと鏡に『サークル』の庭が映し出され、さらにダイヤルを捻るとウィーズリー家の庭やダイアゴン横丁の大通り、ホグワーツ城の湖といった風景がライブ映像で映し出されました。

 

 

「これは『通信鏡』といってね、マグルのテレビのように映像を中継したり、録画した映像を再生できる魔法道具だ」

 

 

 壁掛け式の鏡のような『通信鏡』を指さした後、ルーピンさんが手に取ったのは、ネビルの『思い出し玉』のような形をした小型魔法カメラ。小さなガラス玉のような球体内部には小型の鏡が内蔵されており、これを置けばそこから映像が『通信鏡』に中継され、気に入った映像があれば録画もできる仕様です。

 

 

「映像技術は両面鏡、通信技術は魔法ラジオ、録画技術は万眼鏡に使われている魔法テクノロジーを流用している」

 

 

 こうして“既存技術を流用して組み合わせた”と聞くと簡単そうに思えますが、実際には「言うは易く行うは難し」で、品質と生産を安定させ、価格を抑えて商品の利点を小売店や消費者にセールスしていくのは、中々に困難な作業です。

 

 

「率直に言って、製品としては悪くないものが出来たと思う」

「でも、商業的にはほとんど失敗だったんだ」

 

 ルーピンさんに続いて、ペネロピー先輩が悔しさの滲む声を絞り出しました。

 

 

「マグルのテレビと違って、魔法界には放送局……つまり番組を作る所が無いの」

 

 

 正確に言えば魔法ラジオがあるのでラジオ局はあるものの、現状では魔法界にテレビ局は存在しないため、「テレビを作っても、肝心の放送できる番組がない」という本末転倒な状況に。

 

 かといってマグルの番組をジャックすれば、今度は『国際魔法機密保持法』に引っかかってウィーズリーおじさんの勤める当局の規制対象になってしまいます。

 

 

「綺麗な風景ぐらいなら映せるけど、それを眺めるためだけにガリオン金貨を払う消費者なんていないし、マグルの監視カメラ的な用途でアメリカ魔法議会(M A C U S A)に売り込むのがやっとだったんだ」

 

 

 つまるところ、問題点はコンテンツの不足……ゲーム機でいえば、ハードウェアは良くても魅力的なソフトがなければ売れない、という奴です。

 

 

「ですが、今回のクィディッチ・ワールドカップは良い機会になるのでは?」

「私たちも、そう思ってたんだけどね……」

 

 いざ先輩たちがダイアゴン横丁で露天を開いてセールスをかけてみたところ、消費者の反応は至って合理的なものでした。

 

 

 

 わざわざガリオン金貨を払ってそんなもん買って家で観戦するより、直接チケットを買った方が割安で試合も生で観れるだろ――と。

 

 

 

 ごもっとも過ぎて、ぐうの音も出なかったとのこと。

 

 

 これが海外旅行コストの高いマグル界であれば、まだ外国向け輸出なんかも見込めたかもしれません。

 しかし「移動キー」だの「煙突飛行粉」だの「姿現し」だので、割と安易に長距離移動が出来ちゃう魔法界では、遠隔通信の魅力はイマイチだったのです。

 

 

 

 

「俺がホグワーツを卒業したら、すぐ映像通信を使った『英国魔法放送協会』を立ち上げるのに!」

 

 リー・ジョーダンが威勢よく壮大な将来の夢を語るも、現状のGM社には今さらイチから放送局を設立して番組を作るほどの余力はありません。

 

 

 

「―――そんなわけで、新しいプロジェクトに切り替えようと思ってる」

 

 

 少し重くなった空気を和らげようと、今度はファーレイ先輩が明るい声を出しました。

 

「結果的に『通信鏡』プロジェクトは失敗だったけど、私たちの製品に不足していたもの――つまり、コンテンツの種類が足りていないって事はよく分かった。というわけで、早速その反省を踏まえようかと」

 

 

 ファーレイ先輩が取り出したのは、私たちも使っている『多面鏡』でした。

 

 

「こっちの方は用途が明確だし、両面鏡の改良型って分かりやすいセールスポイントがあるから、けっこう売れてる。でも、これをマグルのポケベルをパクっただけの魔道具にするのは勿体ない」

「つまり?」

「必要なのは、もっと沢山のコンテンツだよ」

 

 グリーンの瞳をギラリと輝かせ、ファーレイ先輩は妖しげな微笑みを浮かべました。華やかな笑顔の裏に垣間見える狡猾でしたたかな一面は、まさに元スリザリン監督生といったところでしょうか。

 

 

「実は、()()()()()()にヒントを得てね。それを参考に、日記、新聞、本、ラジオ、音楽、通話、カメラ、方位磁石、計算機、通販、チェス、天気占い……ありったけのコンテンツを、1つの魔道具に詰め込む」

 

 

 あまりに壮大過ぎて与太話にしか聞こえないファーレイ先輩の言葉ですが、双子やジョーダンさんは逆に興味をそそられたような顔になり、セドリックも興味深そうに身を乗り出しました。

 

「でも、一体どうやるんだ?」

「それを今から見せようと思ってたの」

 

 ファーレイ先輩は「待ってました」とばかりに細い指をパチンと鳴らし、私たちに付いてくるよう合図しました。

 

 

 **

 

 

 連れていかれた先は開発室の最奥部にある、小さな一区画でした。中心には宝飾品を飾るようなショーウィンドウが置かれ、天井からスポットライトの光が降り注いでいます。

 

 

 

 ――そこに保管されていたのは、古ぼけた日記帳でした。

 

 

 

 黒い表紙にはかつての所有者の名前が書かれ、真ん中には何かで刺されたような大きな穴があります。なんと言いますか、とっても見覚えがあるような。

 

 隣にいたジョージも思い当たりがあるようで、記憶を辿るように眉をひそめて唸ります。

 

「この古いボロ日記、どっかで見たことあるような気が……」

「古いボロ日記!」

 

 ジョージの言葉に、ファーレイ先輩は致命的に失礼な言葉を聞いたとばかりに、大げさに天を仰ぎました。

 

 

 

「―――T・M・リドル」

 

 

 

 日記の裏面に書かれた名前を愛おしそうに撫で、うっとりとした表情で艶めかしく囁くファーレイ先輩。

 

「この偉大なる魔法使いに、私たちがどれほど恩恵を受けたことか」

 

 一応、間違いなく偉大ではあっただろう魔法使いが作った、既視感のある黒い日記。その知られざる正体は――。

 

 

 

 はい、どこをどう見ても『リドルの日記』でした。

 

 

 

「これ、ジニーとペニーを石にした日記じゃないか!」

 

 パーシーさんが叫び、双子も「あっ」とようやく正体に気づいたようです。強力な闇の魔術が使われたと思われる魔道具の残骸を見て、警戒心をあらわにするウィーズリー兄弟。

 

「だ、大丈夫だよ! ダンブルドア校長にも確認済みだから」

 

 杖を抜いたパーシーさんを見て、慌てて間に入るペネロピーさん。

 

「私の方から、ダンブルドア校長に頼んで研究用に借りたの」

「君が? これを?」

 

 普通は自分を石にした原因となった魔道具なんてトラウマ物のような気もしますが、ペネロピーさんの考えは少し違うようでした。

 

「あの事件の後で私も寮監のフリットウィック先生から事情は聴いたんだけど、その時に‟すごいなー”って思ったのを思い出して」

 

 計り知れぬ英知こそ、我らが最大の宝なり――探求心と創造性を重視するロウェナ・レイブンクローの精神は、時を超えて後進の生徒にもしっかり受け継がれているようでした。

 

 

「だってほら、ジニーちゃんが日記に色々と書き込んだらアドバイスをくれたり、ハリー君にも昔の記憶を追体験させてくれたりとか、そもそも自分の人格を記憶ごと保存できるとか……所有者を支配する機能さえ無ければ、とっても便利そうじゃない?」

 

 

 フレッドは「そうか……?」と首をかしげていましたが、私としては納得できる反応です。言われてみれば、日記にリドルの意志さえインストールされていなければ、単なるめちゃくちゃ便利な魔法道具でしょう。

 

 

「校長先生も‟リーマスが付いておれば、大丈夫じゃろう”って言ってくれたから安心して」

「まぁ、ダンブルドアがそう言うなら……」

 

 パーシーさんが渋々ながら杖を下ろし、ホッとしたような顔で言葉を続けるペネロピーさん。

 

「一応、私も石にされた被害者なわけだし、 あの後そのブランクのせいで勉強にも遅れて苦労したんだから……せめて石にしてくれた分ぐらいは、この日記にも役に立ってもらおうかなって」

 

 以上の経緯もあって先輩たちはルーピンさんと一緒に解析を行い、時おりスネイプ先生もダンブルドア校長の頼みで様子を見に来て、日記にどんな魔法がかけられていたかの調査に参加していたとのことでした。

 

 

「………」

 

 かくいう私も興味を惹かれてジッと日記をのぞき込んでいると、にまにまとした表情を浮かべたファーレイ先輩が近づいてきました。

 

「それで、何が分かったか知りたい?」

「本音を言えば、実は別にそれほど……」

「いや、流れ的にそこは聞けし」

「何が分かったんですかー?」

 

 改めて解説に耳を傾けると、意外な事にそれほど複雑な闇の魔術は使われていないとのことでした。

 

 

「基本的には、ホグワーツにある『動く肖像画』がベースになってるみたい。そこに『憂いの篩(ペンシーブ)』にあるような映像追体験とか、一部の魔法が使えるように機能を追加した感じだよ」

 

 

 はらりと垂れた黒髪を指にくるっと巻き付けながら得意そうな顔になるファーレイ先輩の脇に目をやると、二人の先輩とは対照的にルーピンさんが少し微妙な表情を浮かべたのが見えました。

 

(おや? 何か先輩たちが知らない機能が他に隠されていたのでしょうか……?)

 

 しかし、もしルーピンさんが黙認しているのだとすれば、ダンブルドア校長も黙認しているということ。

 先輩たちは完全に『動く肖像画』の上位互換としか思っていないようなので、下手に口を出して藪蛇を突くような真似はしたくないのかもしれません。

 

 

 

「とにかく、大事なのはこの『日記』が実質的に『()()()使()()()()()()()()』として機能してるってとこ。何気にヤバくない?」

 

 

 改めてファーレイ先輩に言われてみて、ハッと気づいたことがありました。

 

 

(なんということでしょう……!)

 

 

 ホグワーツ中に置かれている『動く肖像画』の持つポテンシャルに気付いて、思わず戦慄を禁じえません。

 

 

 学校にいる間は存在が当たり前過ぎて意識してませんでしたが、冷静に考えれば対象の思考・言動・行動パターンを丸ごとコピーできる『動く肖像画』の作成は、見方を変えると一種の疑似人格の錬成とも呼べるもの。

 

 例えば校長室にある歴代校長の肖像画は、生前に本人から情報・知識・記憶を与えられることで、本人の死後も生きていた当時のように肖像画の中で振る舞うことが出来ます。

 

 二次元の存在ながら、本人そっくりに意思疎通したり、思考にふけることすら可能であるということは――。

 

 

 

「あっ」

 

 

 私とほぼ同時に、ハーマイオニーも『動く肖像画』の魔法を使って、先輩たちが何をしようとしているか理解したようでした。

 

 

(これ、ほとんどマグルのコンピュータというかAIじゃないですか……!?)

 

 

 情報を受け取って、記憶して、判断して、処理された情報を返す、と言う意味では『動く肖像画』は、コンピュータの5大機能である①入力 ②制御 ③記憶 ④演算 ⑤出力をほぼ網羅しています。

 

 しかも、それが魔法を使えるとなれば――。

 

 

「すごいわ! ある意味では『肖像画』の魔法って、被写体になった魔法使いの脳をコピーしてるって事ですよね!? それって、考えようによっては一種の人工知能よ!」

 

 興奮気味にハーマイオニーが声を上げると、同じマグル生まれで話の通じるペネロピーさんも嬉しそうに微笑みました。

 

「でしょ? 術者の思考パターンを丸ごとコピーしたって感じだから、ノイマン式というよりは疑似ニューロコンピュータに近いかも。自然言語処理とか当たり前のように出来てるし、おまけに『リドルの日記』に至っては魔法まで使えるなんて、スゴイと思わない?」

 

「すごいです!」

「絶対に売れます!」

 

 同時に答えるハーマイオニーと私。

 

「でも、冷静に考えてみると『肖像画』だけじゃなくて、『憂いの篩(ペンシーブ)』なんかも、ほぼ記憶装置(メモリー)の魔法版みたいなもんですよね」

 

「もし『憂いの篩(ペンシーブ)』をフロッピーディスクみたいに『動く肖像画』と接続できたら、一人の肖像画じゃ覚えきれないぐらいの情報でも保存できるかもしれないわ」

 

「いっそ複数の『肖像画』をリンクさせれば、実質的に複数の人間の脳を繋げた‟一つの巨大な脳”状のネットワークになりますし、演算速度も上がると思いません?」

 

 

 段々と話がマッドな方向に広がっていく私たちに、ファーレイ先輩も茶目っ気たっぷりにウィンクしてきました。

 

「つまりはそういう事なのだよ、ワトソン君。件の『リドルの日記』からアイデアを拝借して『動く肖像画』に使われていた魔法を使えば、いずれは沢山のコンテンツをたった1つの『日記』だけでコントロールできるかも知れない」

「……やべーですね」

「どう? このプロジェクト、興味ある?」

 

 もちろん、答えは「イエス」以外にはあり得ませんでした。

 




 「リドルの日記って実質アレ〇サなのでは?」という、くだらない思い付きから魔法界のテクノロジー進歩について、あれこれ考えている内に生まれたのが今回の話です。


 何気にハリー達の学生時代(1991~1997年)って実は「Wind〇ws 98」が出る前で、一部を除いてまだワープロとかFAXとかフロッピーディスクがバリバリ活躍してた時代だったんですよね。
 マグル界でも本格的にIT化が進んだのが2000年代なのを考えると、魔法界でも1990年代に開発された新しい魔法、魔道具が徐々に実用化されて2000年代ぐらいから普及する、みたいな展開はあるかもしれないなーと。

 
 あと変身術がハリポタで難解な学問とされてるのって、例えば巨大なチェス駒の動きをプログラミングしたり、無機物を動物に変身させる呪文って実質的に「動物の思考・行動パターンを模した人工知能を物体に付与している」という高度なことやってるからなのかなと。
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