ハリー・ポッターと灰の魔女   作:アストラマギカ

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第07章 ~三大魔法学校対抗試合~

「あ、いたいた!」

 

 いつものように一人で汽車に乗り込もうとすると、駅のホームには見知った顔が並んでおりました。ルームメイトのパンジー・パーキンソン、ミリセント・ブルストロード、そしてダフネ・グリーングラスの3人です。

 

 

 まず、パンジー・パーキンソンですが、少し成長して可愛い系から美人系への脱皮途中といった感じ。

 

 もう少し背が伸びればモデル体型なのですが、まだその一歩手前の標準的より少しスマートぐらいの体型で、今年は黒髪にパーマをかけたらしく毛先がくるっと緩めに巻かれていました。元々の強気な性格とバッチリと濃い目にした化粧も相まって、スクールカースト上位にいそうなイマドキのギャルといった印象でしょうか。

 

 

 続いてミリセント・ブルストロードの方を間近で見ると、この夏休みで更に背が伸びたようでした。

 

 最初に会った頃は大柄でゴツいイメージだったものの、ダイエットを成功させてからは運動系に打ち込み、今ではボーイッシュなスポーツ少女といった感じに。男子並みの長身と無駄なく鍛えられた長い手足、ショートカットの茶髪とシャープな切れ長の瞳で、化粧っ毛は薄いものの、体育会系女子特有の健康的な美しさがあります。

 

 

 最後にダフネ・グリーングラスになりますが、相変わらず快活で元気な雰囲気を醸し出していました。

 

 くりくりした大きな緑色の瞳に、緩やかにウェーブした金髪をセミロングに伸ばし、それほど目立たない程度にメイクもキメて、目立ってる感じの派手めなJKといった雰囲気。スタイルは均整がとれていながらバストやヒップは男性の目を惹きつけるだけの存在感があり、むっちりした太ももからすらっとした脚が伸びていました。

 

 

 もちろん、私も負けてはいません。

 

 長いまつ毛に白い肌、ほっそりとした手足の華奢な体型に、クールで知性を感じさせる瑠璃色の瞳、あどけなさの残る整った目鼻立ち。風に靡くサラサラの綺麗な灰色の髪をした、品行方正で誰からも好かれる優等生。まるでおとぎ話の世界から飛び出してきたような非現実的な美しさの美少女に、歩くたびに道行く人々が振り返ります。

 

 

 **

 

 

「ねぇ、みんなクリスマスはどうすんの?」

 

 コンパートメントに入るなり、ダフネが切り出してきたのはクリスマス・ダンスパーティーについての話でした。

 

「ほら、今年あれじゃん? 三大魔法学校対抗試合で、ダームストラングとかボーバトンからも人が来て踊るでしょ?」

「あー、そんなイベントもあるんでしたねぇ」

 

 三大魔法学校対抗試合の開催には国際交流という意味合いもあるため、クリスマスには他校との親善を深める場として、『ユールボール(Y u l e B a l l)』と呼ばれる格式高い舞踏会が催されるのです。

 

 もっとも生徒の大半はマグルのプロムと同じ感覚で単なるリア充イベントぐらいにしか思っておらず、ダフネたちもここぞとばかりにイケメンを狩る気満々のようでした。

 

 

「聞いた? トレイシーたちはもう彼氏できたって」

「ちゃっかりしてんなー。ちな相手は誰?」

「トレイシーが1つ下のハーパー君で、リリーがレイブンクローのベルビィ先輩、ソフィーはグリフィンドールのマクラーゲン先輩」

 

 ダフネ情報によると同じスリザリン4年の女子生徒の内、トレイシー・デイビス、リリー・ムーン、ソフィー・ローパーの3人が既に彼氏持ちとのこと。

 

「青春ですねぇ……」

「アンタは近所のお婆ちゃんか」

 

 パンジーのツッコミを受けた後、ミリセントが「そういえば」と切り出します。

 

「誰か、夏休み中に彼氏とかできんかった?」

 

 その言葉と共に、自然と3つの視線がパンジーに集中します。

 

「………」

「………」

「………」

 

「なっ、何なのよ!?」

 

 反射的に両腕で謎ガードの構えをとるパンジーに、もはや何度目になるか分からない溜息を吐く私たち。

 

「まぁ、なんかイイ感じに頑張ってください」

「粉微塵も興味無さそうな応援ありがと!?」

 

 ワールドカップというビッグイベントがありながら、パンジーとドラコの間に大した進展は無かったようでした。

 

「そりゃ、皆の言いたい事は分かるけど……アタシとドラコは純血名家同士の繋がりで子供の頃からの付き合いで半分ぐらい家族みたいなもんだし、実際に家系図を調べたら遠い親戚だし……」

 

 まぁ、付き合いが長すぎると却って異性として意識されない、みたいな話はチラホラ聞かなくもありません。俗に言う幼馴染は負けヒロインの法則、という奴でしょうか。

 

「だから去年は化粧とかダイエットとかして見た目だけでも女の子っぽくなろうとしたんだけど、やっぱり直接会うと幼馴染のノリが抜けないっていうか……多分そのせいで意識されないっていうか……」

 

 

 すっかり悩める乙女モードに入ったパンジーに、ダフネがやれやれと首を振ってから、私の方に悪巧みするような顔を向けました。

 

「てか、もうこの際だしさ、いっそイレイナがドラコと付き合っちゃえば? クィディッチ・チームで一緒だし、ルックスも抜群だし、どうとでもなるっしょ」

「わざわざクリスマスに惨劇を起こす気はないんですが……」

 

 警戒の表情を向けてくるパンジーに両手を上げる降参ポーズで敵意が無いことを示しつつ、形の良い顔をしかめる私。

 

 

「でもさー、やっぱドラコのタイプって、パンジーとかイレイナとかアストリアみたいなのだと思うんだ」

 

 ダフネの言葉に、ミリセントがうんうんと頷きます。

 

「なんか分かるかも。ドラコも大概ヘタレだから、ちょっと勝気なぐらいのが好きそう」

「逆にザビニは、駆け引きとか出来るタイプぜったい好きだよね」

「じゃあ、トレイシーかイレイナ、あるいはレイブンクローのスー・リーってとこか」

「とりあえず直情型のパンジーは合わないかな」

「別にいらんし」

 

 ツンと返すパンジーに、けらけらと笑うミリセントたち。

 

「ノットは……マジでよく分からん」

「自我の無い女の方が楽とも、滅茶苦茶に振り回されたいとも言いそうですしね」

「ならハッフルパフのアボットかレイブンクローのマクドゥガル、あるいはグリフィンドールのランコーンとかダフネあたりかしら?」

 

 

 態勢を立て直したパンジーがニヤッと笑い、反撃すべく肘でダフネを軽く小突きます。

 

「ていうか、そういうダフネこそ、誰か気になる人とかいないの?」

「沢山いるよー」

 

 しかしダフネはあっさりと澄まし顔で答え、指を折って数え出しました。

 

「ピュシー先輩とかディゴリー先輩とか、あとデイビース先輩にマクラーゲン先輩あたりも気になってる。最近だと3年のベイジー君もカッコ良くなってきたと思うんだ」

「いっそ清々しいぐらいの顔採用ですね……」

 

 もっともロックハート先生の時から面食いの片鱗は見えていたので、今さら驚きはしませんが。

 

「あー、憧れのイケメンマスター……なりたいなー」

「ならなくちゃ?」

「絶対なってやるーっ!」

 

 

 たとえ火の中水の中森の中、なかなか大変だけど必ずGETだぜ! と謎の決意表明をするダフネを「こいつアホだな……」と一瞥した後、ミリセントが今度は私に質問してきました。

 

「ちなみに、イレイナはどういう男子がタイプなん?」

「えっ……お金持ち?」

「イレイナさぁ、インターンとか転職の志望動機に‟給料高いから”って素直に答えちゃうタイプでしょ」

 

 そう言われましても、なにせ私の長所は素直なところです。学生時代にはそれを活かして、スゴイことをしました。えへん。

 

「いいですかミリセント、お金は必ず数字に表れます。そして人間と違って、数字は絶対に嘘をつきません」

「そんな孤高の天才学者みたいに言われても……」

「数字は嘘つかないって、良い響きじゃないですか」

「いいの響きだけやん。性根は最低やぞ?」

 

 

 謎のアイルランド訛りで返してくるミリセントに、今度は私の方から聞き返してみました。

 

「じゃあ、そういうミリセントはどういうのがタイプなんですか」

「んー、無難にちょっとワルっぽい男子かな」

 

 即答ですか。田舎の女子中学生ですか。いや、ホグワーツ田舎なんですけど。あと無難とは。

 

 

「しかし、こう聞いてみると一周回ってパンジーが一番いい女に思えてきましたね……」

「後はヘタレさえ無きゃなー」

「それはみんな思ったよね」

「いや3人とも、もう少し危機感持とう? 人の事どうこう言う前に、自分の内面もっと見つめ直そ?」

 

 呆れ顔のパンジーが大きく溜息を吐くと同時に、遠くにホグワーツ城が見えてきたので制服に着替える私たち。いよいよ、4年目が始まります。

 

 

 ***

 

 

 ホグワーツ特急の旅を終えて大広間に入ると、例年通り祝宴に備えて見事な飾り付けが施されていました。

 

 いつもの通り組み分けが終わり、今年も「かっこめ!」というダンブルドア校長の声を合図に宴が始まり、そして終わると再び校長が笑顔で全員を見回しました。

 

「みんなよく食べ、よく飲んだことじゃろう。いくつか知らせがあるので、もう一度耳を傾けてもらおうかの」

 

 ダンブルドア校長は生徒たちを見回してました。

 

「まず管理人のフィルチさんからお知らせじゃが、持ち込み禁止品リストが更新されて、新たに『叫びヨーヨー』と『噛みつきフリスビー』に『殴り続けブーメラン』など437項目が加わった。リストはフィルチさんの事務所で閲覧可能じゃ」

 

 「確認したい生徒がいればじゃが」と追加してるあたり、ダンブルドア校長も効果があるとは思っていないようで、半分ぐらいはフィルチさんの趣味みたいなものなのでしょう。

 

 

 

「さて、続いて新しい『闇の魔術に対する防衛術』の先生を紹介しよう」

 

 

 ところが『闇の魔術に対する防衛術』の席は空でした。他の生徒も首を傾げ、ダフネが聞いてきます。

 

「今年は透明人間なのかな?」

「去年は狼人間でしたし、ありえなくはないですね」

 

 まぁ狼人間だろうと詐欺師だろうとヴォルデモート憑きだろうと、しっかり教えてくれれば問題はありません。そんな風に他愛もない話をしていると、耳をつんざく雷鳴と共に大広間の扉がバタン!と開かれました。

 

 

 ――戸口に立っていたのは、異様な風貌の男の人でした。

 

 

 真っ黒な旅行用のマントをまとい、長いステッキに寄り掛かった男の人が歩き出すと、コツ、コツという鈍い音が響き、再び稲妻が天井を横切ると恐ろしい形相の顔が露わになります。

 

 顔の皮膚は傷だらけで、口は斜めに切り裂かれた傷口のように見え、鼻は大きく削がれていました。何より恐ろしいのはその左目で、眼帯に張り付いた大きな青い瞳は瞬きもせず、ぐるぐると上下左右に絶え間なく動いています。

 

「今年の先生は人造人間でしたか……」

「だとしたら、酷い失敗作ね。設計者は作る前に図面を見直すべきだったわ」

 

 パンジーの毒舌に頷いていると、見知らぬ男の人はダンブルドア校長と握手し、教職員テーブルに着席しました。

 

 

「では、改めて紹介しよう。元・闇祓いのアラスター・ムーディ教授じゃ」

 

 

 ダンブルドア校長は努めて明るい声でそう告げたものの、生徒たちはムーディさんのあまりに不気味な有様に呪縛されたように、じっと見つめるばかり。

 

 しかしムーディさんの方も気にしてないようで、目の前のかぼちゃジュースには目もくれず、旅行用マントから取り出した携帯用酒瓶からグビグビと飲んでおりました。

 

 

 **

 

 

 それからは例年通りの「禁じられた森」立ち入り禁止、ホグズミード村は3年生から、といった確認が続きます。

 

 一言も聞き漏らすまいと真面目に聞いている1年生たちとは対照的に、私たち4年生ともなるとすっかり慣れた様子で「ふーん」「へー」と聞き流しておりました。

 

 ところが、最後に付け足されたダンブルドア校長の一言で、上級生たちの弛緩した空気が一変します。

 

 

「これを知らせるのは儂の辛い役目なんじゃが、今年のクィディッチの寮対抗杯は取りやめとなる」

 

 

 その言葉を聞いた時、まだ三大魔法学校対抗試合の事を知らないハリーやロンたち多くの生徒が「えーっ!」と絶句しました。選手でないハーマイオニーやネビルたちも唖然として、口をパクパクさせております。

 

 

「というのも、10月に始まって今学期末まで続くイベントのためじゃ。この開催を発表するのは、儂としても大いに嬉しい。これから数カ月にわたり、ここホグワーツで100年以上行われていなかった『三大魔法学校対抗試合』を開催する!」

 

 

 しばしの沈黙の後、大広間が騒然とした空気に包まれました。

 

 

「ご冗談でしょう!」

 

 

 大声を張り上げたジョージ・ウィーズリーさんに続き、誰もかれもが興奮気味に語り出し、その反応を見たダンブルドア校長も満足そうに微笑みました。

 

「しかしながら、我が国の『国際魔法協力部』と『魔法ゲーム・スポーツ部』が再開の機は熟したりと判断したのじゃ。今回は一人の死者も出ぬよう、ひと夏をかけて一意専心で取り組んだ」

 

 ダンブルドア校長が続けます。

 

「ボーバトンとダームストラングの校長が代表選手最終候補生を連れて10月に来校し、ハロウィンの日に各校代表選手3名の選考が行われる。選ばれた代表選手は3つの課題をこなし、みごと優勝した暁には優勝杯のみならず賞金1000ガリオン、そして永遠の名誉が与えられる」

 

 

「1000ガリオンですか……ほほう」

 

 思わず頬を緩めると、何人かの生徒たちも私と同様に欲と栄光に目がくらんでいるようでした。

 

 優勝すれば1000ガリオンという大金はもちろんのこと、「永遠の名誉」という将来めちゃめちゃ魔法界で役に立ちそうな称号が付いてくるのです。その(ほまれ)は次代を経ても陰ることはなく、圧倒的な権威と栄光が持つパワーは計り知れません。

 

 

 ところが――。

 

 

「諸君の多くが、優勝杯を我が校にもたらそうという熱意に満ちていることは承知しておる。しかし各校の校長と魔法省の合意により、今年の選手には年齢制限を設けることとした。具体的には、17歳以上に達した者だけが代表候補として名乗りを上げることを許される」

 

 

 即座に一部の生徒からブーイングの声が上がります。しかしダンブルドア校長も怯むことなく、言葉を続けました。

 

 

「これは試合中の事故死が相次いだ、過去のような過ちを犯さぬための安全措置じゃ。安全対策を施しているとはいえ、やはり試合の種目は危険で難しい。よって6年生や7年生より年少の者が課題をこなせるとは考えにくい。くれぐれも公明正大な審査員を出し抜いたりせぬよう、儂みずから目を光らせることとする」

 

 

 ダンブルドア校長の明るいブルーの目が、反抗的なウィーズリー双子の顔をとらえ、どういう訳か私にも向けられました。

 

 

「残念だったな、イレイナ」

 

 憮然とした顔になる私とダンブルドア校長を交互に眺め、反対側の席にいたドラコ・マルフォイの瞳が悪戯っぽく光ります。

 

「今回ばかりは流石の君でも、1000ガリオンはお預けじゃないか?」

「諦めたらそこで試合終了ですよ、ドラコ」

 

 

 かくして、いかにダンブルドア校長の防衛線を突破できるか、明晰な頭脳を活かして策を張り巡らせる私なのでした。




Q.「そういえばフラン先生は何してるんですか?」
A.「まだボーバトンとダームストラングが来てないので、その辺ほっつき歩いてます(職務怠慢とか言ってはいけない)」

名前だけ出てきたキャラについて
 本作だと作者のインタビューにあった「全校生徒数1000人」説を採用しており、また原作3巻で「スリザリンの観客は200人ほど」という文章から、スリザリン生は1学年あたり30人弱となります。マイナーキャラはファンサイト等から引用。
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