ハリー・ポッターと灰の魔女   作:アストラマギカ

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 半年ほど更新が止まってしまい、大変お待たせ致しました。

 ※今回はハーマイオニー視点です。


第13章 ~擦れ違い~

  

 ハリーとイレイナが4人目と5人目の代表選手として選ばれてからというもの、ホグワーツ中がその話題で持ちきりだった。

 

 

 反応は様々だったが、私――ハーマイオニー・グレンジャーにとって意外だったのは、次の日の朝食に現れたロンの隣にハリーがいない事だった。

 

 

 ロンに話を聞くと、いくら「炎のゴブレット」を出し抜いた方法を聞いても「僕はやっていない!」の一点張りで、売り言葉に買い言葉で喧嘩になってしまったらしい。

 

 

「他の人に知られたくないって言うなら、それで構わない。けど、僕にまで嘘をつく必要ないだろう?」

 

 

 まるで去年のスキャバーズ・クルックシャンクス論争を彷彿とさせるロンの態度に、上手な返しが見つからず、曖昧に頷くことしかできない。

 

 ただ、去年の一件で学んだことがあるとすれば、こういう時にハリーの肩を持つような形で相互理解を促すのは悪手だということだ。ロンの態度や言い分が正しいとは思えないけれど、頭ごなしに否定すれば却って拗れてしまう。

 

 正しい間違いはともかく、とにかくまずは自分の話を誰かに聞いて欲しい……去年の自分もそうだったからこそ、まずはロンの言い分を聞いてみることにした。

 

 

「―――それでさ、いつも目立つのはハリーで、僕はせいぜい添え物扱い。ハンバーグの隣についてる、甘ったるいニンジンみたいにね」

 

 あれ美味しいじゃない……などと内心で思ったりしながら、相槌を打ちながらロンの話を聞くこと十数分ほど。それまで感情に任せてわーっと愚痴を吐いていたロンの口調が、少しずつ落ち着いたものへと変化していった。

 

「……僕だって、これが馬鹿みたいな嫉妬だってのは分かってる」

 

 溜まっていた鬱憤を吐き出して少し気が晴れたのか、ポツリと心の奥にあるものを絞り出すような語り口になるロン。

 

「けど、君たちには分かんないよ。兄貴たちはみんな優秀で、ハーマイオニーは学年トップの秀才、ハリーは“例のあの人”を倒した。けど、僕にはそれに釣り合うようなものはない」

「そんなことないわ。貴方だって、良いところは沢山あるわよ」

「例えば?」

 

 疑るようなロンの言葉に、いったん息を吸って一言ずつ言葉を紡ぐ。

 

「チェスが上手なところ。冗談をよく言うところ。ペットを可愛がるところ。友達想いなところ……」

 

 

「そこだよ。最後の言葉」

 

 

 ロンが寂しげに笑う。

 

「僕はずっと、ハリーの親友だった。ノーバート事件でグリフィンドールが150点減点された時も、ハリーがスリザリンの継承者だと思われていた時も……僕はずっとハリーの味方だったし、ハリーも僕のことを信頼してくれた」

 

 だからコンプレックスを感じていても今まで抑え込めたんだ、とロンがやるせないような声音で呟く。

 

 

「ダンブルドアがハリーの名前を読み上げた時、周りがどんな目でハリーを見てたか覚えてるだろ?」

「……ええ。絶対にズルしてる、って目だったわ」

「そう。だから僕はその時、ハリーの味方をしようと思った。たとえハリーがどんな手を使って周りがそれに何を言おうとも、親友として応援してやろうと思ったんだ」

 

 初めて聞くロンの真剣な独白に、私は言葉を失う。

 

「ハリーも僕にだけは、こっそり打ち明けてくれると思ってた。だから二人っきりの場でも‟僕はやってない”って言われた時、まるでハリーに信用されていないみたいに感じちゃったんだ」

「それは……」

 

 

 知らなかった。ロンがずっと、そんなことを考えていたなんて。

 

 

「勝手に嫉妬して疑心暗鬼になって、それがハリーのせいじゃないことも頭の中じゃ分かってる。けど、まだ気持ちの整理がつかないんだ」

 

 ロンは小さな声でそう打ち明けてから、ゆっくりと席を立つ。

 

 

「僕、もう行くよ。今は少しだけ、君たちと距離を取りたいんだ」

 

 

 朝食もそこそこに立ち去るロン。その後ろ姿は、いつになく小さく見えた。

 

 

 

 ***

 

 

 

 そしてロンと入れ替わるようにハリーが大広間に入ってくると、フレッドとジョージを始めとするグリフィンドール生が拍手でハリーを迎えた。

 

 しかし、当のハリーには元気がない。やはりロンと喧嘩したことが堪えているのだろう。私を見つけた時も、不安そうな顔で縋るように口を開いた。

 

「僕、本当にやってないんだ」

「分かってるわ」

 

 憔悴したハリーに疑っていないことを伝えると、ハリーの眼が驚いたように見開かれた。

 

「君……信じてくれるの?」

「ええ、もちろんよ」

 

 マーマレードをトーストに塗りながら答えると、ハリーの顔に安堵と疑念の両方が同時に浮かぶ。ロンに何度も説明しても信じてもらえなかったせいか、あっさり信じた私の言葉を信じ切れずにいるように見えた。

 

 あまりハリーが思いつめないよう、気にしてない感と明るい口調を意識して言葉を続ける。

 

「そんな顔しないの。言っておきますけど、同情でこんなことは言わないわ。私は、心の底からあなたがゴブレットに名前を入れていないと信じています」

「本当の、本当に?」

「当り前じゃない。だって、あなたの成績じゃダンブルドアの魔法を突破できるわけないもの」

 

 その言葉を聞いたハリーはポカンとしていたが、ややあって恥ずかしそうに顔を紅潮させた。

 

「……こういう時ってさ、普通、もっと優しい言葉とかかけてくれるもんじゃないの?」

「あら、おあいにくさまね。私は嘘をつくのが苦手なの」

 

 そこでハリーと目が合い、してやったりと言わんばかりにウィンクする。それから、段々と耐えられなくなって2人でプッと吹き出した。

 

 

 **

 

 

「ありがと。気が晴れたよ」

 

 軽口を叩き合って緊張がほぐれたせいか、さっきよりも少し表情に余裕の出てきたハリーが再び口を開く。

 

「けどロンの奴、どうしたら信じてくれるんだろ」

 

 そうね、と少し考えてから答える。

 

「嘘を言ってないことを証明するだけなら、それほど難しい話じゃないわ。でも、そうじゃないの」

 

 ハリーは紅茶を啜る手を止め、不思議そうに首を傾げた。

 

「難しくない? どういうこと?」

「全員の前で『真実薬(ぺリタセラム)』を飲んで証言すれば、誰も貴方を疑わなくなるわ。強力な自白剤で、4滴もあればダンブルドアだって嘘はつけない」

 

 一瞬、ハリーが『真実薬』に興味を惹かれたような顔になる。けれど、すぐに思い直したように眉をひそめた。

 

「すごく魅力的な提案だけど、その『真実薬』とかいうの、スネイプの薬品庫にあるみたいなオチじゃないよね?」

「………」

「わかった。とりあえず『真実薬』は諦めよう」

「そう言うと思ったわ。それに、あなたが飲んでも多分、ロンは納得しないもの」

 

 仲違いの本質的な原因は、ロンのコンプレックスに起因する嫉妬だ。ロンから聞いた事情を話している間、ハリーはずっと無言だった。

 

 

「とにかく、あまり気に病まないで」

 

 真っ直ぐにハリーを見る。

 

「ロンが落ち着くまで、今は少し待ちましょう。きっと時間が解決するわ」

 

 去年に私とロンが喧嘩した時も、しばらく時間が必要だった。

 

 当たり前のように一緒にいると、それがどれほどありがたいことなのか、時々忘れてしまう。思い出すには、少し離れて一緒にいられない寂しさを身をもって知るという経験が、一度は必要なのかもしれない。

 

「今度、ロンに会ったら伝えておくわ。貴方が好きで有名にしてくれと頼んだわけじゃないって」

「頼むよハーマイオニー。今ならオマケで額の傷もサービスするって、ロンに伝えておいてくれ」

 

 強がるように軽口で応じるハリーに合わせて、私もその肩に軽くチョップで返した。

 





 半年ほど更新が止まってしまい、大変失礼いたしました。

 社会人学生やってて仕事と研究で物理的に時間が無かったのですが、ようやく落ち着いてきたので、今後はリハビリしながら更新していきたいと思います。

 何卒よろしくお願いいたします。
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