ハリー・ポッターと灰の魔女   作:アストラマギカ

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第20章 ~卵の秘密~

 

 第1の課題を終えた後、選手たちの順位が発表されました。

 

 1位:フラー・デラクール

 2位:ビクトール・クラム

 3位:セドリック・ディゴリー 

 

 ランク外:イレイナ・セレステリア、ハリー・ポッター 

 

 もともと私とハリーはオブザーバー参加扱いで点数は付かないことになっていたため、まずまず妥当な順位でしょう。 

 

 

 1位となったフラーさんの作戦は、「魅惑の呪文」でドラゴンを恍惚状態にして無力化するというもの。試合終了までにかかった時間は最短の10分で、優雅で素早い試合運びが評価されました。ドラゴンのいびきによって鼻から吹き出した炎がスカートを燃やすというアクシデントはあったものの、すぐに杖から水を出して鎮火したので大きな減点にはならなかった模様。

 

 

 2位のクラムさんはドラゴンの弱点である眼を狙うというオーソドックスな戦法をとり、「結膜炎の呪い」を見事に直撃させました。しかしドラゴンが苦しんでのたうち回ったため、本物の卵の半分が潰れてしまって減点となったようです。

 

 

 3位のセドリックさんは私と似たような戦術で、変身術を使った陽動作戦でした。岩をラブラドール犬に変身させてドラゴンの注意をそらした隙に卵をとったものの、時間が15分と長めで火傷を負ってしまったことで減点されていました。

 

 そしてハリーは「呼び寄せ呪文」でファイアボルトを呼び寄せ、箒を使って追いかけてくるドラゴンを翻弄し、スニッチを掴む要領で卵を掴んだようでした。シーカーの本領をいかんなく発揮した試合でしたが、ドラゴンを回避する際にその棘が肩を掠って怪我をして減点が入りました。

 

 

 しかし、公式の点数とは別に「どの生徒の試合が良かったか?」というアンケートをとったところ、その戦いぶりの圧倒的なビジュアル映えで、見事1位に輝いた美しくも強く賢い魔女がいます。彼女は一体誰でしょう?

 

 

 

 ―――そう、私です。

 

 

 

 ***

 

 

 

 後日、スリザリンの談話室では豪華な慰労パーティーが開催されました。

 

「イレイナ、あなたが実質1位よ!」

 

 パンジーがはしゃぎ、ドラコたちが大量の料理と飲み物を用意してくれ、さっそく皆でグラスやらジョッキやらを手に持ち、ダフネが記者会見よろしくマイクを差し出します。

 

「では、本日の主役に感想を伺いましょう!」

 

 せっかくなので私の方も、もったいぶって「おっほん」と咳払い。

 

「えー、そうですね……勝ったとはいえ序盤が終わっただけなので、まだ先は長いと言いますか……しかし、やはり初戦に勝てた意義は小さくないとは思っていましてね、改めてこの勝利を皆さんと分かち合い、今後の――」

 

「んじゃ、話長くなりそうだし、先に乾杯するか」

 

 

「「「「かんぱーい!!!」」」」

 

 

 主役であるはずの私の勝利コメントを遮ったミリセントの音頭に合わせて、スリザリン生全員が「おめでとー!」とか「おつかれさまー!」みたいな感じで互いのグラスをかちゃかちゃと合わせます。

 

 私の扱い、年々雑になっているような……?

 

 

「イレイナ、ほら」

 

 ぷくっと頬を膨らませている私にドラコが差し出したのは、1本のバタービール瓶でした。他の生徒も次々にファイアウィスキーやらアイスさくらんぼシロップソーダやらを手に持ち、バタービールシャワーの準備は万端です。

 

「では、いきますよ」

 

 私もバタービール瓶を構えて、そして。

 

「スリザリンは――」

 

「「「「地上、最強ぉぉおおおおっ!!!」」」」

 

 豪快な叫び声と共に、全員で持っていた飲み物をかけ合います。瓶や炭酸飲料のボトルをシャカシャカ振って豪快に中身を泡と共に噴出させ、びちゃびちゃになるまで誰彼構わず浴びせ合う私たち。

 

 ちなみにイギリス魔法界では保護者(親ないし教師)の監督下であればホグワーツ入学時から飲酒が認められているため、スネイプ先生も当然のように出席していますが、金持ちセレブご子息たちの派手な身内ノリのバカ騒ぎには辟易気味。

 

「ワリントン先輩、身長差ずるくないですか!?」

「冷たっ!?ってザビニおまえぇええッ!」

「へへへ……アストリア嬢ちゃんよぉ、もうビチョビチョじゃねーか」

「食らえユフィっ、日頃の恨み!」

 

 ダフネが大柄なカシウス・ワリントン先輩から一方的にバタービール責めに遭い、ドラコは後ろに回り込んだザビニにロックアイスの塊を襟から服の中へと突っ込まれ、ミリセントはアストリアさんをずぶ濡れにした挙句セクハラをかましています。同期に囲まれたユーフェミア・ロウル先輩は監督生の権力を振りかざして「私に浴びせたら減点に――」と脅しかけたものの、最後まで言い終わる前に洪水のようなバタービールシャワーで口を塞がれてしまいました。

 

 

「「「イ・レ・イ・ナ! イ・レ・イ・ナ!」」」

 

 そのうち私の名前を呼ぶコールが始まり、拍手されながら談話室の中央に移動した私を、スリザリン生の全員で胴上げです。

 

「「「「わっしょい! わっしょい!」」」」

 

 そのうち皆が酔い始め、関係ない人まで「いえーい♪」とか「うぇーい☆」みたいなノリで胴上げする流れになり、イラクサ酒を飲んでほろ酔い状態だったスネイプ先生に胴上げを断固拒否された頃、マイルズ・ブレッチリー先輩が金の卵を持ちあげました。

 

「これ、開けてみようぜ!」

「なにぃ~、ドラゴンの卵焼きでも作るのぉ?」

 

 へらへらと酔っぱらったパンジーが返し、ザビニがニヤッと笑って私を手招きします。

 

「イレイナ、開けてみろよ!」

「ぱんぱかぱーん、ドラゴンの卵割りショーのはっじまりー!」

 

 ダフネが音頭を取り、私は渡された卵の周りについている溝に爪を立ててこじ開けます。そして、

 

 

 ――――絶叫――――

 

 

 次の瞬間、泣き妖怪バンシーもかくやという恐ろしい悲鳴が響き渡り、全員が耳を覆いました。

 

 

 

 ***

 

 

 

「あれ、何だったんでしょう?」

 

 深夜まで続いたパーティの翌日、私はさっそく卵の調査に入りました。さすがに城で開けると騒音公害なので城の外れ、人気のない湖の傍まで移動して再びこじ開けます。

 

 スプラウト先生からマンドレイク用の耳栓を借りて、しばらく金の卵の絶叫を聞いてみます。単なる大声で聞き取れないだけというなら、これでどうにかなるんですが、流石にそこまで課題も甘くはありませんでした。

 

 ただ、なんの収穫もなかったわけではありません。聞いていると、どうも闇雲に叫んでいるわけではないらしく、一定のリズムがあるようでした。

 

「リズムがあるということは、この音波を解析すれば何らかのメッセージが読み取れるかもしれませんね」

 

 

 さっそく図書館で音に関する魔法を調べてみたのですが、やはりそう簡単な課題ではないようで、結局は何も分かりませんでした。

 

 

「こういう時、例の『魔導解析機関(ウィザーディング・エンジン)』でもあれば暗号解読の要領で解析できるんでしょうが……」

 

 餅は餅屋ともいいますし、週末の定例会議でGM社の先輩たちに相談することにしたところ、『多面鏡』にペネロピー・クリアウォーター先輩が現れました。

 

「あれ、ファーレイ先輩は今日いないんですか?」

『うん。‟名家のエロオヤジたちに媚びてくる”って』

「言い方」

 

 要するに、打ち合わせを兼ねた接待なのでしょう。

 

 しがない学生ベンチャーだったGM社が急成長した背景には、『多面鏡』や『防呪チョッキ』といった商品そのものの魅力も然りながら、投資家による出資や信頼できる委託業者の紹介、取引先への口利きといった営業活動があります。

 

『レイブンクローにいると知恵は他の寮より身に付くけど、それだけじゃビジネスは難しいんだなーって、働いてから改めて思い知らされたよ。なんだかんだコネとお金は大事だし、その辺はスリザリンが圧倒的だから』

 

 結局のところ、どれだけ能力を持っていても信用されないと1クヌートたりともお金を引き出すことは出来ません。そしてビジネスの世界で信用を得るためには、やはりコネが必要になってきます。

 もちろん紹介する方にもコストやリスクはあるので、紹介してもらえる相手のレベルは自分の評価に比例しており、有力者にコネを広げるには相応の価値を提供しなければなりません。

 

 つまるところスリザリン寮とは、魔法界の富を握る純血名家が既得権益ネットワークを再生産する場でもあり、同時にエリート層の競争力を維持するために野心と能力を持った外様の半純血を同胞として受け入れるための審査の場でもあったりします。

 

 

『それでジェマが今ごろノット製作所のゴードンさんと一緒に、製造委託してる防呪チョッキの材質変更で現場視察してるとこなんだけど、問題なければ――」

 

 そんな感じで定例会議を終えた後、私がペネロピー先輩に例の金色の卵の話を持ち掛けると、やはり何らかのメッセージが暗号化されている可能性が高いとのことでした。

 

『例えばマグルの首相官邸にある電話とかだと、‟ボイス・スクランブラー”っていう装置で周波数成分を別の信号に変換して盗聴を防ぐんだ。たぶん、そういうタイプだと思う』

「つまり?」

『暗号化された情報を復元するためには『暗号鍵』が必要で、逆に言うと『暗号鍵』さえ探せればメッセージは解けるんだ』

「それが見つかれば苦労はしないんですが……」

 

 私がぼやくと、ペネロピー先輩は『音声サンプル送ってくれれば、たぶん解析できるんだけどね』と苦笑してきます。

 もちろんそうしたいのは山々ですが、さすがにそこまでするとルール違反でしょうし。

 

 なので、ギリギリの範囲でアドバイスを求めました。

 

「ちなみに例の魔導解析機関(ウィザーディング・エンジン)だと、どうやって解読するんですか?」

『いったん記憶ごと魔法で記録して、そこから暗号化された音声情報――秘話って言うんだけど――を総当たり方式で、大量の文献を読み込ませた《Riddle 94》に照合させて、暗号鍵を割り出す感じになるかな』

「めっちゃ力業ですね」

 

 いくら三大魔法学校対抗試合とはいえ、そこまでのスペックは要求されないと思いますが。

 

『とりあえず、暗号理論に関する本をいくつかフクロウ便で送るよ』

 

 

 そして翌日には早速、約束通りペネロピーさんから10冊ほどの分厚い本が私の元へ送られてきました。

 

 

 『応用:暗号理論』とか『ブレッチリー・パークの魔術師』みたいな本をいくつか読んだうち、私が注目したのは『歴史から読み解く暗号解読入門』という本でした。

 

 

 ――太平洋戦争中には、マイノリティの言語が暗号として用いられることもあった。複雑な暗号であればあるほど作成や解読に時間がかかるため、前線では傍受されても解読不可能な言語を利用することが1つの解決策として考えられたためである。アメリカ軍ではナバホ語が、日本軍ではサツマ語が、それぞれ用いられた。

 

 

「なるほど、これは……!」

 

 盲点でした。

 

「言われてみれば、単純に知能が高い魔法生物の言語なんかを使ってる可能性がありますね……」

 

 私はすぐさま図書館の魔法生物の棚を隅から隅まで調べ、言語に関する書籍を読んでいきます。

 

 

「ふむふむ……ヒトたる存在はすべて独自の言語体系を保有し、また魔法生物のうちケンタウルス、水中人、ヴィーラ、巨人、小人、泣き妖怪、妖精も固有の言語能力を有する……」

 

 だいぶ絞られました。

 

 狼人間、鬼婆、小鬼、吸血鬼、屋敷しもべ妖精、ケンタウルス、水中人、ヴィーラ、巨人、小人、泣き妖怪、妖精……これら計12種の言語をしらみつぶしに調べていけば、うまいこと解析できるかもしれません。

 

 その中でも特に可能性が高いのは、ヒトの聴力では感知できない音域で会話を行うことが可能な、吸血鬼(ヴァンパイア)泣き妖怪(バンシー)水中人(マーピープル)妖精(ニンフ)の4種類。

 

「この中で解析がしやすいのは……水中人ですかね」

 

 コウモリと同じ周波数で会話してるっぽい吸血鬼語などと違って、水中人語(マーミッシュ)は単に水中じゃないと聞き取れないというだけです。

 もし金の卵から発された声が水中人語であれば、単に水の中で聞き取ればいいだけなので、こんな楽な話はありません。

 

 とりあえず、取っ付きやすいマーミッシュから試してみましょう。

 

「まぁ、そう都合よくヒントが見つかれば苦労は―――」

 

 

 

 

 

「…………しませんでしたね」

 

 さっそく、スリザリン寮の女子シャワー室に備え付けられている大浴場いっぱいにお湯を張り、金の卵と一緒に沈み込むと不思議なコーラスが聞こえてきました。

 

 

 声を頼りに探しにおいで

 地上では歌えない

 探しながら考えよう

 我らが捕らえし大切なもの

 

 探す時間は一時間

 大切なものを取り返すべし

 過ぎれば望みはありえない

 二度と戻ることは無いだろう

 

 

「音声解読に必要なのは、お風呂に入ることだけ………でしたか」

 

 

 私は泡だらけの水面から顔を出し、濡れた艶やかな髪を振り払います。

 

「なんというか、種明かしされてしまえばあっけないものですね……随分と遠回りしたような気もしますが」

 

 ここまで来ればヒントは十分です。歌の内容からして相手は水中人、課題は探索、試合会場は黒い湖の中でしょう。

 

「まだ時間もありますし、ゆっくり準備といきますか」

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 予定よりだいぶ早く第2の課題の解決法が見つかり、クリスマスまでのんびり出来るかと思ったのも束の間、ホグワーツ城に戻った私を待っていたのは上級生からの呼び出しでした。

 

 

「――セレステリアさん、少しお話があるのだけれど」

 

 

 取り巻き女子を4人も連れて、声をかけてきたのは監督生のユーフェミア・ロウル先輩でした。そのまま空き教室に連行され、人気のない場所で大人数が取り囲むというイジメのお手本のような構図です。

 

 

「はぁ……それで何の用ですか?」

 

 どうせロクでもない話が始まるんだろうなー、などと考えていた私の予想はものの見事に的中しました。

 

 

 

「貴女、好きな人とかいるの?」

 

 

 

 はい?

 

 

 

 ロウル先輩の口から出てきたのは、想像の斜め上の質問でした。全く話に脈絡が見えません。

 

 しかし上級生5人に対して下級生1人というアンバランスな状況下で作り上げられた「空気」はロウル先輩の質問を全力で肯定し、有無を言わさぬ状況を作り上げています。

 

 これはアレでしょうか。ロウル先輩に好きな相手がいて、けれどその人の意中の相手が私だから手を引け、とかいう案件的な。

 

 

「いえ……特にいませんけど」

 

 しかしロウル先輩はオリーブ色の瞳に疑心暗鬼の色を浮かべ、再び質問してきました。

 

「本当に? セオドール君……が無いのはわかるとして、ドラコ君あたりとも本当に何もない?」

「普通に2人とも友達ですけど」

 

 私が淡々と答えると、ロウル先輩は「そう」とようやく表情を和らげました。

 

「なら、問題ないわね」

 

 含むような物言いに、私は首を傾げました。

 

「何かあったんですか?」

「実はこの前の祝賀パーティーの時、酔った勢いでキスしちゃって」

「はぁ、そうですか。ちなみにどちらから?」

「……冗談よ」

 

 大きく溜息を吐くロウル先輩。

 

「その様子だと、本当に何もなさそうね……ドラコ君かわいそ」

 

 ロウル先輩の様子を見るに、どうやらカマをかけて試されていただけのようでした。嫉妬するような反応だったらクロ、そうでなければシロといったところでしょうか。

 

「疑ってごめんなさい。ただ、ダンスパーティーの前に確認しておきたかったのよ。セレステリアさん、可愛いから全校生徒に注目されるでしょうし」

 

 なるほど。可愛くて全校生徒の注目の的ならば仕方ないですね。

 

 要するに呼び出しの理由は「かわいくて勉強も出来て代表選手でもあるこの私が、どこの馬の骨とも分からん輩とクリスマス・ダンスパーティーを踊るのは、スリザリン寮の沽券に関わる問題なので監督生として見過ごせない」という事のようでした。変な所で真面目というか、お節介な人ですね。

 

 

「とはいえ、別に一緒に踊るからといって必ずしも付き合うとも限りませんし……」

 

 そんなに重く考えなくとも、と言いかけた私の台詞を遮ってロウル先輩は首を振りました。

 

「そうとも限らないわ。約200年ぶりに開催される今回の三大魔法学校対抗試合には、ホスト国である魔法省の威信がかかってる。魔法省はワールドカップと共に今回の対抗試合を欧州全土に宣伝するつもりだから、もう少し立場を自覚なさい」

「また余計なことを……」

 

 私がぼやくと、ロウル先輩が小馬鹿にしたように鼻を鳴らしました。

 

「そうかしら。あなたにも関係のある話だと思うけど? GM社の名誉会長さん」

 

 首をかしげる私に、ロウル先輩は続けました。

 

「たしかに最近の不祥事から目を逸らす目的もあって過剰に宣伝されてるきらいはあるけれど、もともとファッジ大臣の公約はバグノールド前大臣の路線継承……つまり迅速な戦後復興によるイギリス魔法界の正常化よ」

 

 ヴォルデモートの台頭によって事実上の内戦状態に陥った英国魔法界では、人が死んでいくのはもちろんのこと、亡命などによる人口流出や国内外からの投資の減少などにより、多くの富や社会基盤を失いました。

 

 そのためバグノールド前大臣は、相手が元・死喰い人であろうと復興に協力すれば司法取引を行い、治安の回復と経済の再生に尽力し、「イギリス魔法界は治安が悪い」という懸念を払拭して、亡命者の帰還や投資の活性化に奔走しました。

 

「クィディッチ・ワールドカップのような大型の国際イベントをきっかけに観光客が増えればダイアゴン横丁は活性化するし、三大魔法学校対抗試合といった英国魔法界の復興が外国にも周知されれば、対内投資やビジネスチャンスが増えてGM社のような企業も成長できる」

 

 私たち純血名家のファミリービジネスだって無関係じゃないし、と付け加えるロウル先輩。

 

「というわけで、今度のダンスパーティーに妥協は許されないわよ。貴女には我がスリザリン寮の顔として、それ相応の相手をパートナーに選んでもらわないと」

 

 なんだか政略結婚じみてきました。

 

 

「まぁ、話は分かりましたけど……」

 

 だったら最初にわざわざ「好きな人いる?」とか回りくどい聞き方しなくとも――などと愚痴を漏らすと。

 

「両想いの恋人を無理やり引きはがすほど、私も鬼じゃないわよ」

 

 あれ、意外と優しい……。

 

「相応の相手ならばそれでよし、不相応ならば試練を与えて周囲が納得できるような美談に。試練に耐えられず破局したら、その時は傷心に付け込んで相応の相手を手配するわ」

「あなた、人の心とか無いんですか」

 

 とにかく、と私のツッコミをスルーしてロウル先輩は続けました。

 

「特に好きな人がいないというのであれば、相手はこちらで候補者を数名ほど用意します」

「あの……女友達と一緒に行くとかは」

「13世紀から続く、三大魔法学校対抗試合500年の伝統を何だと思っているわけ?」

 

 マクゴナガル先生を思わせる厳格さで一刀両断されました。

 

「いい? 貴女はスリザリンの代表選手として、重要な式典に出席するの。自分の立場をしっかり自覚して、パートナーを選ぶように。そのために必要な環境は、私たちが責任をもって用意するから」

「はぁ……」

 

 ちなみに、その‟必要な環境”って何です?

 

「クリスマスの2週間前に、マクゴナガルから正式にダンスの通達があるから、争奪戦になる前に先手を打つわ」

 

 ところで‟先手を打つ”って何の話でしょうか?

 

 

 困惑する私を他所に、ロウル先輩は不敵な笑みを浮かべ、高らかに宣言しました。

 

「勝負は今週の日曜日――スリザリン寮主催で三校の有名人と美男美女を選りすぐった、お見合いパーティーを開催するわ! モテる男女をスリザリン寮で独占して、格の違いを見せつけるのよ!」

 

 そして最後に、ロウル先輩はこう付け加えたのでした。

 

「もちろん、グリフィンドール抜きでね」

 




前回から間が空いてしまい、大変お待たせ致しました(汗)

文献調査と専門家のアドバイスをもとに仮説を立てて、1つづつ地道に調査・検証していく真面目イレイナさん。
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