ナイスNTRネイチャ   作:ルイ提督

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京都新聞杯

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トレーナー室に集まったのはいつものメンツ、トレーナーさんと私とステイゴールドだ。しかし、その雰囲気はいつも以上に静かで真剣だった。中央に置かれたホワイトボードには”京都新聞杯作戦会議”とデカデカと書かれている。そんな中、最初に口を開いたのはトレーナーさんだった。

 

 

 

「という事でステイゴールドの重賞初挑戦、京都新聞杯への出走が決まったぞ。解説のネイチャさん、お願いします」

 

「えっと……はーい、京都新聞杯は中京レース場、芝2200mで行われるレースですね。上位三頭のウマ娘は菊花賞への優先出走権が与えられるので、最後のクラシックレースへ滑り込みたいウマ娘にとっては何が何でも取りたいレースです。あ、ちなみにあたしは去年出走し、無事1位になってますよ」

 

「うーん、流石は俺のイチ押しのウマ娘、照れながらの笑顔が可愛いですね。という事で重賞初挑戦となるステイゴールドさん、意気込みはどうでしょう?」

 

「えっ……いや……うん……?」

 

「京都新聞杯を制するのは菊花賞を勝つためにも重要ね。ここで力を示せば、菊花賞にもきっと勝てる……ってね……んふふっ……!」

 

「姉貴……?」

 

 何故かステイゴールドが私に呆れたような目線を送ってくる。トレーナーの突発的な茶番にノって付き合ったのが悪かったのだろうか。

 

「クソ雑魚トレーナー、作戦会議をするっていうならもう少し真面目にやってくれ」

 

「お、おおう……ステゴからそんな言葉が出るなんて!」

 

「いや、当然だろ。オレはこれでも色々と背負ってるもんがあるんだ。勝利に繋がるならオレはなんだってするからな」

 

 そう言って偉そうにふんぞり返るステイゴールドにトレーナーは何故か小さな拍手を送っていた。

 

「それでクソ雑魚トレーナー、なんか作戦はあるのか? 参考程度には聞いてやるよ」

 

「その作戦だが……いつもの必勝法で問題ない。つまりは逃げや先行は気にせず脚をためて最後に差す。それだけだ」

 

 トレーナーさんの言った必勝法とやらは実に初歩的な事であった。思わず出そうになった文句は彼に手で制されて止められた。

 

「この必勝法は差しを得意とするウマ娘にとっては基本的な事だが、この基本をきっちりこなせるやつは意外と少ない。ウマ娘一人一人が違った作戦や仕掛けをするんだ。自分のペースを維持するのは至難の業だ」

 

 珍しく真面目な彼に私は確かにそうだと頷きを返す。良く言われるレースに絶対はないというヤツである。だがそれを聞いていたステイゴールドは口を尖らせて不満気であった。

 

「んじゃ、こんな作戦会議意味ねえじゃんか」

 

「まあ、待て。今回は自分のペースを維持する上で障害となるウマ娘をピックアップした。そいつらの事は一応頭に入れとけ」

 

 そう言ってトレーナーはホワイトボードにウマ娘のデカデカとした写真をマグネットでとめた。その写真を見て、ステイゴールドはうげっとした表情を浮かべる。写真に写っていたのはふわふわのロングヘアーの一部を長い三編みにし、柔和な微笑みを浮かべた容姿端麗なウマ娘だった。

 

 

「まずはステイゴールドの世代の注目株、メジロブライトだ。どんな奴かはよく知ってるよな? 確か、お前の友達なんだよな?」

 

「なんでオレの交友関係知ってるんだよ。気持ちわりーなオイ……まあその情報はちょっと古いがな」

 

「何かあったのか?」

 

「察しろ。今はちょっと疎遠なんだよ。同じクラスにいるけどな」

 

 舌打ちをしながら不機嫌な顔になるステイゴールドにトレーナーさんは肩を竦めつつも、マーカーを持ってメジロブライトの実績をホワイトボードに書き始めた。

 

「出身は名が示すように名門メジロ家だ。主な勝ち鞍はホープフルステークス、共同通信杯、クラシックレースは皐月賞4着、日本ダービー3着とこの世代のトップ層である事はもう疑いようがないな。脚質は追い込みだから、こっちからは何も出来る事はない。ただ、ラストの直線でコイツがお前より前にいたなら……まあ頑張れ!」

 

「おいこら、そのクソ雑魚アドバイスやめろ」

 

「まあ、出遅れ癖があるからそれに期待って事だな。それに、メジロブライトの性格や走りについてはお前の方が詳しいだろ? この際だから本人に聞いてみろ。今度の京都新聞杯はどうするんだってな」

 

「だけどよ……」

 

「ステイゴールド、お前は阿寒湖特別に勝って重賞に挑戦してるんだ。少し遅れたかもしれないが、同じ土俵に立つ仲間だ。もう一回、メジロブライトと腹を割って話してみろ」

 

「うっせーバーカ」

 

 少し語気が小さいステイゴールドはそのまま黙りこくってしまった。それから、トレーナーさんは苦笑を浮かべながらもう一枚の写真をホワイトボードに止める。満面の笑みを浮かべる栗毛のウマ娘だ。彼女についてはこの前テレビでも見かけた話題のウマ娘だった。

 

「そして一番警戒すべきなのがこのウマ娘、マチカネフクキタルだ。直近でさくらんぼステークス、神戸新聞杯を連勝している。問題なのはそのレース内容だ。神戸新聞杯ではラストの直線で恐ろしい末脚で逃げるサイレンススズカを最後方から差し切って勝利してる。菊花賞への出走も確定してる今話題のウマ娘だな。こいつがラストの直線でお前より前にいたら……まあ頑張れ!」

 

「またそれかよ!」

 

「仕方ねえだろ。基本的にレースは自分との戦いだ。毎回勝てる作戦なんてない。ただ、それはそれとして今日はそのマチカネフクキタルが出張占いをしてるようだからここに呼んでおいた。まあ、親しみやすい奴だし、必要以上に恐れる事はしなくていいさ。占いついでにレースの事も聞いておけ、少しは口を滑らせるかもな」

 

「えっ……試合前にライバルのウマ娘を呼びつけるなんて……なかなかやるねトレーナーさん」

 

「おう、ネイチャ。もっと俺を褒めて良いぞ! つ―ことで彼女が来るまではここで座学だな。中京レース場は最後の坂が……」

 

 そのまま、トレーナーさんによるレース場解説が始まり、まとめに入った段階で件のウマ娘、マチカネフクキタルがトレーナー室へ姿を現した。だが、部屋に訪れたのは彼女だけではなかった。

 

「はいはいどーも! 出張占い師のマチカネフクキタルです! 私に占いを頼むなんてとってもいい判断ですよ! それとこの機会に是非私と一緒にシラオキ様の……むぐっ!?」

 

「布教活動はやめようねフクキタル」

 

「むむっ、今日は助手なんですから私の指示にむぐっ!?」

 

「助手じゃなくて貴方のストッパーだから」

 

 そう言ってマチカネフクキタルの口を押さえるのは、栗毛をストレートヘアにしたどこか儚げなウマ娘だ。彼女を見てトレーナーさんはどこか興奮した表情で、ステイゴールドはというと苦虫を嚙み潰したような顔をしていた。

 

「フクキタルの占いを受けたいって言うから。どんな人かと思ったけど、貴方だったのね、ステイゴールド」

 

「チっ! 嫌な顔見ちまったな」

 

「毎日クラスで顔を合わせてるじゃない。メジロブライトとサニーブライアンとは仲直りしたの?」

 

「あーうっせえ!」

 

 どこか心配したような顔つきの栗毛のウマ娘に、ステイゴールドはそっぽを向けていた。そして、私はと言うとトレーナーの袖を引っ張って小さく耳打ちしていた。

 

「トレーナーさん、あの子は……」

 

「あいつはサイレンススズカ。最近、あのレジェンドトレーナーが自分のチームに引き抜いたらしくてな、トレーナーの間でも話題のウマ娘だ」

 

「へえー」

 

 言われてみれば納得である。マチカネフクキタルも、サイレンススズカも私の”眼”からみてとてもキラキラと輝いていた。世代の主人公格が相手となると、ステイゴールドも今回は厳しい戦いとなりそうであった。

 

「さて、邪魔は入りましたがさっそくステイゴールドさんを占ってあげましょう!」

 

「オレは占いなんて信じねーぞ……」

 

「大丈夫です! 貴方が信じなくても私は信じてますからね! 京都新聞杯で戦う貴方の”運”を見定めます!」

 

「こいつ……」

 

 どうやら、マチカネフクキタルもステイゴールドを偵察する意図があったらしい。彼女は妙にキラキラとした目を輝かせながら懐から取り出した水晶玉に手をかざし始めた。

 

「むむむっ! 結果が出ましたよ! 貴方の運勢は……末吉ですね! このまま真面目にレースに取り組めばいつか幸せを掴めるでしょう! ちなみに今回の京都新聞杯は貴方にも運が向いてるので、お互いがんばりましょうね!」

 

「はいはい、毒にも薬にもならない占いしてくれてありがとよ」

 

「ところでステイゴールドさん、貴方は日々の生活に退屈していませんか? それならこれを機に私と一緒にシラオキ様を信仰してウマ娘革命を……むぐっ!?」

 

 占い結果を伝えた後、変な事をいいながら詰め寄るマチカネフクキタルをサイレンススズカが口を抑えて捕縛する。そうして、苦笑を浮かべながらスズカはステイゴールドと向き合った。

 

「フクキタル、もう帰りましょうね。それと、ステイゴルードは今度のレース、頑張ってね。普段のフクキタルは少し頭がおかしいけど、レースでは本当に強いから……」

 

「油断はしねえよ……」

 

「ふふっ、以前の貴方はメジロブライトやサニーブライアンの傍で高笑いしてたのに、雰囲気が変わったわね」

 

「うっ……」

 

「それじゃあまたね、いつか、私とも走るでしょうから」

 

 サイレンススズカはそう言って微笑んだ後、彼女に抑えられてジタバタと暴れているマチカネフクキタルを引きずりながらトレーナー室を後にした。色んな意味で濃い二人が去った後、トレーナー室はしんと静まり返った。

 

「まあ、あれだ。頑張れステイゴールド。俺は応援してるぞ!」

 

「お前はお前でもう少し実利のある事言えよ!」

 

「そんな事いわれても……いてててっ!? 急に何しやがる!」

 

「うっせー! 俺の前にスズカを連れてきた罰だ! アイツは目が親父の愛人と似てて嫌いなんだよ!」

 

 トレーナーさんがステイゴールドのプロレス技の餌食になる。今日も今日とて、彼女に理不尽に悲鳴を上げる彼を見て私は溜息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから約一週間後、京都新聞杯の開催日となった。今回は重賞という事でチームの一員である私も彼女の応援という名目で遠征に参加している。私にとっても約一年ぶりとなる中京レース場はつめかけたファンによって満杯になっていた。

 そしてメインレースである京都新聞杯が近づくころ。私達はステイゴールドの控え室に集まっていた。珍しく椅子に座って微動だにしないステイゴールドに私とトレーナーは顔を見合わせて笑いあう。どうやら、彼女も初の重賞というだけあって緊張しているようだった。

 

「ステイゴールド、頑張れよ」

 

「うっせ! そんなの言われなくても分かってる! このクソ雑魚トレーナー!」

 

「はいはい、それより今日はステイゴールドの重賞初挑戦だからな。例え勝ったとしても、負けたとしても良い経験になる。それと試合後には俺特製の参加賞も用意してあるぞ!」

 

「参加賞……?」

 

「喜べ! 俺が丹精込めて作ったんだぞ!」

 

 そう言ってトレーナーさんが取り出したのはあの手作りトロフィーだった。やっぱり、彼女にも渡すようだ。その事実に何故だか私は胸が苦しくなる。別に価値のあるものではないが、あれは私とトレーナーさんの……

 

 

「ちょっと貸してみろ」

 

 

 ステイゴールドはトレーナーさんからそのよれよれのトロフィーを奪い取った。そして、そのトロフィーをまじまじと観察した後、彼女は大きくため息を吐いた。

 

 

 

 

「あっ……」

 

 

 

それは、思わず私の口から漏れ出た声だった。

 

 

 

 

 

 ステイゴールドはトレーナーさんが作ってくれたトロフィーをビリビリに破り捨てていた。

 

 

地面に散らばるそれを、私はただ見つめる事しか出来なかった。

 

 

「いるかこんなもん。オレが欲しいのはお前が作った偽物じゃねえ」

 

「そうか、お前らしいなステイゴールド……頑張れよ!」

 

「まあな……勝ったら肉奢れよな」

 

「ああ、任せろ。最高級の店に連れてってやる」

 

 

 

 

そう言ってステイゴールドはトレーナーと拳を合わせた後、控え室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、ステイゴールドは京都新聞杯で4着の結果に終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






ちょこっと元ネタ解説

メジロブライト

ステイゴールドやサイレンスズカ。マチカネフクキタルと同世代のメジロ家出身のウマ。同世代かつメジロ家のメジロドーベルがウマ娘化されているのに、このウマだけ実装されていないのは謎。
ステイゴールド、もしくはステゴより実装の可能性があるサニーブライアン、可能性は低いがシルクジャスティスのライバルポジションとして同時実装したいので、今の段階では実装しない。そんな可能性があるかも……?

※実装されました
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