死神の黙示録   作:瑠威

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  憤怒に身を捧げた彼は──
  ──全てを理解するような瞳だった
 


日常編
第5話


 

  独立暗殺部隊のクーデター。通称『ゆりかご』は失敗した。作戦は完璧だった。だが、()()()()のだ。

 

  失敗したその理由を私は知っている。

 

 

「君はいつもここにいるね。飽きないのかい?」

 

 

  ヴァリアーの廊下にて。1部、ステンドガラスの張ってある窓がある。私はそこから見える夜景が好きで、その夜景を暇な時は眺めているのだ。

 

 

「マーモン」

 

 

  ふよふよと浮かんでこちらにやってくるマーモンはすぽりと私の腕の中に収まる。どうやら私に抱かれるぐらいには、マーモンも気を許してくれたらしい。

 

  ちなみに、マーモンはベルと同時進行の方が色々ラクだからとスクアーロに押し付けられたがために、私のお目付け役もやってくれている。

 

  最初は文句を言っていたマーモンだけれど、スクアーロが金に物言わせたのか、最近じゃ文句や小言を聞かなくなった。

 

 

「ベルが探していたよ」

「あら、探しに来てくれたの? ごめんなさいね」

「まあ、粗方ここだとは思っていたかね。大丈夫さ」

 

 

  満月の夜。月の光に反射し、ステンドガラスがキラキラと輝く。実に神秘的で、綺麗だ。

 

 

「金にもならないのにこんなのを見て何が楽しいんだい?」

「金色に光ってて綺麗でしょう? あれを見てると思い出すの」

「…ああ。時々、君が気の向いた時に話す恋愛話か」

 

 

  その話はベルにしてあげればいいじゃないか。ベルは君に興味深々だよと言うマーモンはどうやら私の身の上話に興味が無いようだった。

 

  私は自分自身のことをあまり話さない。ベルはどうやら気になるらしいが、精神年齢が上なヴァリアーの幹部達は無理に聞き出そうとはしなかったし、時々話しても暇つぶしに聞く程度。ベル意外は関心や興味を持っていないようで、実に有難いし助かっている。

 

  まあ、ヴァリアーに入隊する前は色々と聞かれたりしたけれど、全無視してやった。お陰でスクアーロがうるさいことうるさいこと。

 

 

「月は太陽に力を借りて輝いてるけど、私の好きな人は違うの。自分自身で輝いていてね、とても美しくて男らしくて、でも子供っぽくて可愛いの」

「ふーん。興味はないけれど1度は会ってみたいね」

「近々会えるんじゃないかしら」

「近々ってどのくらいだい?」

「…18年後とか?」

「全然近々じゃないじゃないか。…僕を揶揄うと痛い目にあうよ」

 

 

  ムと口元を歪めるマーモンはどうやらご機嫌ナナメらしい。いや、私が怒らせたという方が合っているか。

 

 

「ふふふ、ごめんなさい。謝るから怒らないで」

「…全く。早く行こう。そろそろベルが癇癪を起こしてスクアーロにドヤされちゃうからね」

「そうね。最近、スクアーロ疲れてるようだし、労わらないと」

 

 

  ヴァリアーのボス、ザンザスがクーデター後から帰ってきていない。死んではいないが、どうしても帰って来れない理由があるとスクアーロは言っていた。

 

  ザンザスが城からいなくなり、明らかにスクアーロの元気が無くなった。一緒にいた時間が少ない私でも分かるんだから、幹部の皆もわかっていることだろう。

 

 

「それ、ベルに言ってあげなよ。あの子なりにスクアーロを心配して無駄絡みしてるみたいだし」

「微笑ましくて私は好きよ?」

「…全く、同じ子供の筈なのにどうしてベルと君はそう違うんだろうね。君の爪の垢を煎じてベルに飲ませたいぐらいだ」

 

 

  暇だ暇だと無駄に部下を殺してるみたいだしね、と呆れたようにマーモンは言った。多方、死体の処理代を考えて頭を痛めているのだろう。

 

 

「そんなこと言うの、マーモンぐらいよ。私の知り合いは全員声を合わせて、もっと子供でいるべきだって私を叱ったわ」

「君は手がかからないし、言葉だって通じるから僕的にはこれぐらいがいいんだけどね。まあ、親とかは少し気味悪く思っちゃうのかも」

「母は優しい人だし、変わらず愛してくれてるわ。…父親は知らないけれど」

 

 

  相変わらず父親のことを嫌っているねと興味無さげにマーモンは聞いてくる。

 

 

「嫌ってなど無いわ。関心が無いの」

「…好きの反対は無関心だって僕は聞いた事があるけど?」

「ノーコメント」

「…全く」

 

 

  談話室へ続くドアを開ければ、中では喧嘩しているベルとレヴィの姿があった。

 

 

「てめーはどっか早く姿消せ。そろそろマーモンがリリー連れて戻ってくっから」

「む、何故俺が姿を消せばならぬのだ!」

「おっさんがリリーのことエロい目でみってからだろーが!!」

「誰があんな小娘をエロい目で見るか!!」

「いっつも目で追って「可憐だ…」って呟いてるヤツの言うことに信憑性ねーだろ!!」

 

「あらあ、やっと帰ってきたのぉ?」

「全く騒がしいね。どうしたんだい?」

「ベルちゃんが言ってる通りよ」

 

 

  ドッタンバッタンドタドタと喧嘩を始めるベルとレヴィは、どうやら私たちが入ってきたことに気がついてないらしい。

 

  呑気に紅茶を飲んでいるルッスーリアの元に行けば、ルッスーリアはおほほと笑っている。どうやらこの喧嘩を止めるつもりがないらしい。

 

 

「全く、監視下におわれてるとは思わないほど、平和ねぇ」

「こうして見るとベルも子供にしか見えないよ」

 

 

  平和ぼけしちゃいそうで困っちゃうわぁ、とルッスーリアは言った。それに同意するかのようにマーモンもホントだよと頷く。

 

 

「…ボスはいつ戻ってくるのかしら」

「それ、スクアーロの前で言っちゃダメだよ」

「分かってるわよ。ボスが戻ってこなくて1番気が病んでるのはスクちゃんだもの」

 

 

  いつもはうるさいスクアーロだが、最近は叫ぶことも無くなった。スクアーロを元気づけようと、嫌がらせをするベルに構わないぐらいにはどうやら滅入ってるらしい。スクアーロがつまんねーとベルもご機嫌ナナメだ。

 

 

  そんなボスが帰ってくるまで──

  ──後、8年。

 

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