いろんなウマ娘短編   作:球磨猫

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拝啓、桜咲く今日この頃。

拝啓、桜咲く今日この頃。"私の"モルモット君へ

 

やぁ愛しのモルモット君、久しぶりだねぇ。君と出会ってから今年で20年ほどになるのかな。

私と共にトゥインクルシリーズを駆け抜けた日々が懐かしく感じてしまうよ。

 

私はもう既に引退し研究者としての道を___いわゆるプランBを進めているわけだが、これが中々思うように進まなくてね。

ここ20年で怪我・故障を抑えることには成功したが肝心の肉体改造に関しては一向に進まないんだよ。

 

なにせ、肉体の【改造】だ。どうしてもマイナスのイメージがついてしまう。

 

ここ数年で私の理解者は増えたものの、実験に失敗はつきものだ。新しい世代である未来あるウマ娘たちを巻き込むには、私も些か抵抗を覚える。

 

………今、変な顔しているんじゃないかな?恐らくは「トレセン学園時代に散々、君や他のウマ娘を実験台にしてただろう」と思ったんじゃないかな?

 

まぁ実際あの時はそうだったさ。だがあの研究室と予算でできる薬などたかが知れてるし、君に関しては

ほら、「君と共に果てを見たい」だったかな? ククッ、今でも思い出すたびに笑ってしまうよ。

あの時の君の狂気的な瞳、モルモットでも構わないという宣言、あぁ、今でも君はあの瞳を宿しているのかい? 私としてはそれが望ましいが…

 

まぁともかく。あの時とは薬も実験も、質が上がっているんだ。下手にはできなくてね。

私の肉体を使うことも考えたんだが……それをやると君が悲しむだろう?

そう言うこともあって、研究が遅々として進まないんだよねぇ。

 

 

さて本題を話そう…あぁいや、その前に聞くことがあった。

君は今でもあの学園でトレーナーとして活躍しているのかい? それとももう引退して余生を過ごしているのかな? はたまたトレーナーではない何かをしている、というのもあり得るね。

 

ともかくだ。君がこの手紙を読んでいるときにトレーナーをやめているのであれば今すぐ復帰したまえ。

私は君の下を去りはしたが、君のモルモットとしての役目を外した覚えはないんだから。

君は今でも、私の最高のモルモットであり、私の最高のトレーナーであり、私の生涯のパートナーであるんだからね。

 

んんっ 改めて本題だ。

これを読んでいると言うことは彼女___ダイワスカーレットもいることだろう?

彼女に持たせたのだから当たり前ではあるが、まだ会っていないのであれば今すぐ会いに行きたまえ。そしてしっかりとその目で確かめたまえ。彼女の肉体、そして才能を。

 

彼女、ダイワスカーレットは言うなれば私の最高傑作だ。

私の今までの研究の成果を、私の才能を、私の足を、全てを捧げたといってもいい。

彼女なら私がみた『限界速度のその先』、あの有馬記念で私がみた世界を見ることができるだろう!!

 

しかし、それには一つ大きな問題があってね。

君も知っての通りどれほどの才能があろうと、どれほどの知識があろうと、それを生かし育てるトレーナーがいなくては意味がないんだ。君と出会う前の私のように、ね。

 

ここまで言えば察しの悪い君でもわかるだろう? 君には彼女を、ダイワスカーレット君を育てて欲しい。

既にトレセン学園の編入等の手続きも済んでいるし、君のことも伝えてある。

君がやることは彼女のトレーナーとして彼女をトゥインクルシリーズで輝かせ、私の見た世界と同じものを___或いは、さらにその先を___魅せることだ。

 

彼女をよろしく頼むよ、私のトレーナー君。

 

 

___________________________________________

 

 

そこまで読んで、手渡された手紙から目を離す。

目の前には手紙に書かれた「ダイワスカーレット」であろうウマ娘。どこかソワソワとした様子で座布団の上に座っている。

 

 

タキオンと共にトゥインクルシリーズを駆け抜け、彼女と共にURAファイナルの初優勝を掴んでから20年ほど。タキオンが研究のために自分の下を離れた後もトレセン学園のトレーナーとして過ごしていた。

秋川やよい理事長に残ってくれと押し切られたのもあるがトレーナーとしての生活は悪くなく、今までに様々なウマ娘たちのトレーナーとして指導してきた。今ではさすがに一線を退いてはいるが学園の裏方として働いている。

 

そしてつい先日にサブトレーナーとして入っていたチームの教え子が卒業し自分が新しいチームに入ることになっていたそんな時、彼女が訪れた。

 

「アンタが私のトレーナーね?」

 

そんな第一声から始まり、家に上げお茶を出し、この手紙を渡されたというわけだ。

 

実際この手紙に書いてあることは___彼女のことをタキオンが『最高傑作』だと呼んだことは___間違ってないのだろう。

トレーナーとして培われた経験から、一目見ただけでも才能や適性がある程度わかるくらいにはなっていた。その目で見たうえで、彼女は才能あふれるウマ娘だとわかる。

彼女を育ててみたい。トレーナーとしての血が久々に騒ぐ。頭の中にトレーニングが仮組みされ、彼女の走る様を思い浮かべる。

 

 

と、ふと。手紙がもう1枚重なっていることに気が付いた。

 

 

___________________________________________

 

 

あぁそうそう、彼女の事なんだがね。

 

実は彼女は私の子供なんだ。私がお腹を痛めて産み、授乳から始まり育て教育しここまで育ててきたのだよ。いやぁ、実にいい経験だった。

私のこの知性をもってしてここまで子育てというものが難解だったとは!

育て始めてすぐに、君に料理を教わるべきだったと後悔したよ。おかげで今では彼女が料理当番をしていてね。君の栄養バランスを完璧に整えた弁当には多少及ばないまでも、なかなかの腕前になってしまった。いや、ここは育ってくれたというべきかな?

 

しかし彼女から得られたデータはとても貴重で不可思議なものだ。一度彼女の前で軽いレースを行ったことがあってね。その時の彼女の応援はまさにあの時の、有馬記念での応援を超えるものだったのだよ!!

そのことをカフェに話したら「…貴女が子供を産むこと自体意外でしたが、まさか親バカになるとは……」なんて言われてね。

いやまぁ、うん。自分でも多少の自覚はあるさ。実際スカーレットはとても可愛いんだよ。最近はすこし反抗的と言うか、言葉が強くなってきたとこもあるがそれでも家で私の前ではとても甘えてきてね。

小さいときなんか「怖い夢を見た」と言って私の布団に潜り込んできて涙目の上目遣いで「おかあさんといっしょにねたい」なんて言って来るんだよ!?本当にあの時はもう感情が一気に高まっていくのをありありと感じたよ!

 

・・・んんっ、話を戻そう。

兎にも角にも彼女は私の子供だが、さてここで問題だ。

 

 

一体彼女の父親は誰だと思う?

 

 

当然我々ウマ娘も、父親と母親が行為をして生まれてくる。当然彼女にも血縁上の父親がいるわけだ。

 

ところで君、私が君の下を離れる最後の日を覚えているかい?

唐突に何を、と思うかもしれないがまぁ一度思い出してみてくれたまえ。

あの日は朝から君とデートをして夕方まで街で過ごし、夜には君の家で夕食を食べて過ごしただろう?

段々と思いだしてきたかな?

そう、君は夕食を食べ風呂に入った後だんだんと眠くなってきたはずだ。そのまま微睡みに落ち、私が布団に運んだ後、朝に"私と同じ布団の中で"目を覚ました。

 

 

あの時の君の慌てようといったら…まったく。

ここで一つ謝罪させてくれ。あの時私は君に「何もなかったし、君が先に眠りについた」と言ったね。

すまない。あれは嘘なんだ。実はあの時君の飲み物にいくつかの薬を混ぜていてね。眠くなったのはそれが原因なんだ。そして私は眠りについた君から君の遺伝子……まぁ…その…アレだよ。男性が女性と男女のアレコレをしたときに出るアレだ。

それを採取していてね。その……アレと私の体で産んだのが彼女、ダイワスカーレットなんだよ。

 

 

 

要するに、彼女の父親は君なんだ。諦めて認知してくれたまえ。

 

その過程はどうあれ君には彼女の父親としての責任があるんだ。私のウマ娘としての才能と、君のトレーナーとしての才能。その二つをかけ合わせたのならその子は私をも凌駕する子供になるだろうと考えたわけだよ。そもそも子供がウマ娘として生まれてくるのか?という点に関しては……まぁ謎の確信があったとしか言いようがないんだが。

 

 

最初は君の将来のこともあるだろうと考えて黙っていたんだが、育児と研究に追われる内にこの年になるまで君に打ち明けることができなかったわけだが……もうこの際開き直ることにするよ。

 

いきなりこんなことを話されて戸惑うだろうが彼女を受け入れて欲しい。

何も知らず生まれた彼女に罪はないからね。

それに、私の家が放任主義なことは昔話しただろう?今になって思えばあの時の私は多少なりとも寂しいという感情があったんだろうね。

だからこそ彼女には今更とはいえ『ちゃんとした家庭』なるものを知ってほしいんだ。

私と君という、父と母のいる暖かい家庭を。

 

 

___________________________________________

 

 

手紙はそこで切れ、続きは無かった。

手紙と、目の前に座るダイワスカーレット___手紙に書いてある通りならば、タキオンと自分の子供___を交互に見比べる。

 

 

ピーンポーン

 

どこか気の抜けたインターホンの音が鳴る。

もしやと思い、玄関を開けると。

 

「やぁ、久しぶりだねぇモルモット兼トレーナー兼助手君。もうスカーレットには会ってるんだろう?」

 

当時の勝負服である白衣を着たアグネスタキオンが、佇んでいた。

 

「君に会うならこの格好は外せないと思ってね。それに、人生最大の大勝負なんだ。気合もいれなければいけないだろう?」

「しかし君の家が変わってなくてよかったよ。わざわざ調べながら探す手間が省けたんだから。」

「もう既に手紙は読んでいるんだろう? 私の計算が正しければ彼女は既に君に手紙を渡して読み終えているはずだ。2枚目の手紙も」

 

タキオンはこちらに話す暇を与えないかのように矢継ぎ早に話し続ける。

その頬はほんのりと紅く染まり、どこか焦っているようにも見えた。

 

「しかし今日は暑いねぇ!いやーまだ3月だというのにまったく……」

 

…………タキオン?

 

「…あー、その、だね。トレーナー君。」

 

うん

 

「10数年ほど言うのが遅れたんだが……私と…その…」

「………あぁもう!こういう時に気の利いた言葉が出ない自分が恨めしいよ!」

 

そう叫んだタキオンが自分の胸ぐらをつかみ、一気に引き寄せる。

自分の唇と彼女の唇がほんの一瞬___しかし、何分とも何十分とも思えるような時間___重ね合わさり、すぐに離される。

 

「君は!私の最高のモルモットで、私の生涯のトレーナーで、私の最愛のパートナーなんだ!今まではその…好きにさせていたが、もう私とスカーレット以外に渡す気はないからな!!」

 

真っ赤になったタキオンからの宣言に、自分は_____

 

 

 

 

 

もちろん、よろこんで。

 

 

 

 

 





気が向いたらトレーナー視点とスカーレット視点も書くかもしれない

追記;書いた!
あとこれは投稿主のガバですが、タキオンがトレーナーと会ったのが20年前
そこからトゥインクル3年、ドリームカップ2年で5年経過。
なためタキオンが襲ったのは約15年前になります。
反省の意を込めてタキオン製試験薬のモルモットになってきます。
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