いろんなウマ娘短編   作:球磨猫

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5月13日25時約50分、間に合ったな!()
というわけでダスカ視点のお話です。キャラ崩壊著しいので注意!
そしてダイワスカーレット誕生日おめでとう!!



紅いティアラの追憶

私が物心ついてからの最初に自覚した感情はきっと『恐怖』だったと思う。

私を覗き込む母親の目。その狂気を宿した瞳に私はおそらく、恐怖を覚えたのだ。

 

 

母はよく、1番という言葉を使った。最高とも、優秀とも。

その時は母がその言葉に含ませた意味も知らず、ただ自分が1番だと思い込んだ。1番でないといけないと、思い込んだ。

 

 

家庭環境はお世辞にも良いとは言えなかった。

母は朝から夜まで仕事をしていたし、父親と言える存在を私は知らなかった。

そんなもんだから、私の面倒を見ていてくれたのは主にアグネスデジタルとマンハッタンカフェという母の友人たち(カフェさんはこう言うと渋い顔をするが)だった。

 

朝にお世辞として美味しいとは言える母の朝食を食べ、幼稚園に預けられる。

そのまま夕方ごろ、他の子が皆帰ったような時間になって母が(研究に忙しい時はカフェさんやデジタルさんが)迎えに来る。

 

夕食を食べ風呂に入り、宿題と母の出す勉強を終え1人で寝る。

寂しくはあったし、寝れない夜もあった。それでも、母は残っている仕事を終わらせるためか忙しく甘えることが出来なかった。

 

何度か、「トレーナー君」「モルモット君」と誰かの名前?を呟くこともあった。私以外の誰か。私じゃない人に思い耽る母。

私は愛されているのだろうか。母は私をどう思っているのだろうか。そんなことすら考える夜もあった。

母譲りの賢さが恨めしく思った。

 

これが、私が小学校に入る前までの記憶。

 

 

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1番で無いといけないという拘りが強くなったのも、恐らくこの頃だろう。

 

ある日のテストで私は満点を取った。母から教わっていたのもあり、さほど難しいことではなく。これなら喜んでもらえる、褒めて貰える。そう思い母に報告すると母はたいそう喜んで褒めてくれた。

私の中で「1番になる=母が喜ぶ=褒めて貰える」という図式が成立してしまった瞬間だった。

 

 

今ではそんなことはないと分かっているけど、アレは9:1でお母さんが悪いと思う。もちろんお母さんが9だ。

お父さんも、お母さんへの想いや周りの好意に気付くのにだいぶ時間がかかってたみたいだし、五十歩百歩の似た者同士だと思う。うん。

 

 

それからというもの私は死に物狂いで努力した。テストでも、成績でも、体育でのレースでも一番を取るために。母はそんな私に更に色々と教えてくれたし、余裕があるときはトレーニングにも付き合ってくれた。(小学校低学年にやるようなトレーニングじゃなかったと思うけど)

 

 

でもそれも、最初の内だけだった。

研究が行き詰り始めた母は家を空けることが多くなったのだ。時には2日間丸っといなかったり。

そういったときはいつもの2人(極偶にエアシャカールさん)が家に来て料理を作ってくれたり遊んでくれたりと私の面倒を見てくれた。

特にデジタルさんは最初こそ私を見るなり鼻血を噴き出してギョッとしたが、慣れてくる内に色々と話してくれた。

トレセン学園でのこと。ウマ娘のこと。レースのこと。多分エアシャカールさんはおろか、カフェさんや下手すれば母より懐いていた事だろう。

 

そうなっていって段々と、私と母の距離が開いていくのを感じていた。

 

 

これが、私が小学3年生までの記憶。

 

 

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私と母の関係性が大きく変わったのは小学4年生の運動会、ウマ娘用のレースだった。

他のウマ娘の子たちもトレセン学園を意識しだして、トレーニングを始めるこのころ。

でも私はもっと小さい時からトレーニングしてたし、ましてやレースと言ってもそこそこ大きなグラウンドを1周するだけの簡単なもの。1着なんて簡単に取れると思っていたし、それだけの実力も実際にあったと思ってる。

 

開始のピストルが鳴り響く。

誰も私の横に並び立てない。誰も私を追い抜かせない。このまま。このまま。

 

コーナー。内側をキープして逃げる。誰も抜かせない。

 

直線でさらに加速。小学校の運動場なんてターフどころかダートとも言い難いような足場だ。激しい砂ぼこりが舞い、歓声が飛ぶ。

 

 

最終コーナーを曲がった時、私の足に鋭い痛みが走った。足を捻ったのかじくじくと痛む。でも、こんなところで負ける訳にはいかないのだ。私は、お母さんのためにも1番じゃなきゃいけないんだ。

痛みに耐えて曲がりきり最終直線へ___!。

 

 

「あっ______」

 

ウマ娘の走るスピードは人間より速い。それは例え小学校低学年であろうと変わることなく、アグネスタキオンによってトレーニングを受けてきたダイワスカーレットは尚更、同世代のウマ娘よりも速い。

そんなスピードを出しながら躓けばどうなるか___

 

 

宙を飛ぶ視界

打ち付けられる痛み

不安そうに見ながらも走り抜かしていく後続

慌てて駆けつける先生

 

「スカーレット‼︎」

 

母の、声。

 

 

後にデジタルさんが、その時の母は有馬記念を走った時より速かったなんて笑いながら教えてくれた。

私が躓いた瞬間に現役さながらのスタートを決め血相を変えて飛び出して行ったと言う。

 

母は駆けつけて来た先生から私を引ったくるとそのまま鬼気迫る勢いで保健室の場所を聞きだし連れて行った。

保健室に飛び込むとベットに寝かせ何処から取り出したガーゼや消毒液で手当てをしてくれた。

 

 

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そこからの事はあまり覚えていない……。

あーいや覚えてはいるけども、恥ずかしいから話したくない。

 

分かったのは私もお母さんも、お互いに不器用ですれ違っていたこと。

それと………お母さんが私を「世界で一番愛している」って言ってくれたことかな。

結局お母さんは私にどう接すれば良いのか分からなかったらしい。

1番1番言っていたのも単に「うちの娘が1番可愛い」みたいな惚気話だったのだとか…。

ちゃんとお互いに話し合えば直ぐに解決するようなことで10年近くギクシャクしてたなんて……。

 

それから私はお母さんに甘えるようになり、お母さんも私を見てくれる様になった。

水族館や遊園地に連れて行ってくれたり、怖い夢を見てしまった時は一緒に寝てくれたり。

私もお母さんの家事力の無さに呆れて自分で家事をする様になったりと色々と変わっていった。

 

それでも、私は1番で居続けることは変えなかった。負けるのが悔しかった。お母さんに勝ちたかった。

だから私は私の意思で、1番を目指す。そしていつか言ってやるのだ。

 

 

「私はお母さんよりも1番になったわよ!」って。

 

 

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「ねぇお母さん、私のお父さんってどうしたの?」

 

そんなことを聞いたのは運動会からしばらく経っての事。

食事中に出すような話題ではなかったかもしれないが、ふと思うと聞かずにはいられなかった。

 

「……………あー…それはだねぇ…。」

「……そんなに酷い人だったの?」

 

私はお母さんが好きだ。だからこそ、私とお母さんを放ってどこかに居るならば許せない。

もし亡くなっているのなら、その時はお墓参りに行きたかったし。

 

 

「あぁいや酷いわけじゃないさ、うん。そういう人じゃないよ彼は」

「え…じゃあもしかして…既に…?」

「違う違う死んで無いから!………多分」

「???」

「あ~~……そのだね…。う~~む…どうしても聞きたいのかい?」

「もちろん。私のお父さんの事な訳だし気になるわよ。」

 

どうにも煮え切らないお母さんは珍しい。こんなの余計に気になるに決まってる。

結局、明日のご飯を人質?にしたら折れたんだけども…

 

 

「………えーっと…要するに無理やり襲ってそのまま逃げてきて私を生んで、しかもそのことを未だにずっと伝えてない…ってこと?」

「ははは、バッサリ言ってくれるじゃないかスカーレット君 (^^;)」

「お母さんってさ」

「……なんだい?」

 

 

 

「ヘタレ?」

「言い方酷くないかい!?!?」

「いや…だって…。そもそも方法が方法だし…。」(あー…だからデジタルさんに聞いたときすっごい苦い顔してたんだ…)

「し、仕方ないじゃないか! 私だってどうすればよかったのかわからなかったんだよ!?」

 

「で、お母さんはまだお父さんの事好きなの?」

「う"、それは…。」

 

「どうなんだろうね。さすがにスカーレットが出来て、彼と別れてからもう15年も経つんだ。案外冷めてるかも知れないねぇ。ははは。」

「………」

「それに彼ももういい年だろうし嫁の一人や二人いるだろうさ。今更私が名乗り上げたところで・・・」

「それは分からないじゃない。あと私が聞きたいのはお母さんがどうしたいかよ」

 

「……まぁ、もしここに彼がいてくれたら、きっと楽しいことになってたんだろうね。」

 

 

それっきりお母さんが続きを話すことは無かった。

けど私にはわかる。お母さんはまだその人のことを好きだ。だってその人のことを話すときはすっごいうれしそうに話すし、今だって寂しい顔をしてるんだもん。

 

 

私は何事も1番じゃなきゃ気が済まない。そこにはもちろん、お母さんの幸せも入っているんだから!

 

 

 

___________________________________________

 

 

 

それから約三年後。私はトレセン学園の中等部に入学が決まっていた。

試験でもばっちり1番を取っての合格し、今日は早めの入寮をするためにこの家を出る日だった。

 

荷造りも終え、あとは業者に引き渡すだけ。といっても私の私物だけだからすぐに終わったのだけども。

 

「あ、この本お母さんに返さなきゃ…本棚に戻しとけばいっか。」

お母さんの部屋に返し忘れた本を持って行った時の事だった。

机の上にぽつんと置かれた手紙が目に入る。内容は……

 

「これってもしかして…」

 

 

 

~~~~~~~

 

 

 

「ちゃんと必要なものは持ったかい?スカーレット。忘れ物があったら連絡したまえ、すぐに届けに行くさ。あぁあと向こうで変なやつに絡まれたりしたら…」

「もうお母さん!私は大丈夫だって! 本当に過保護なんだから…」

「むぅぅ、愛娘の心配をするのは親として当然だと思うのだがね」

 

「はいはい。で、これをお母さんのトレーナーさんに渡せばいいのね?」

「あぁ。デジタル君が言うにはまだトレセン学園にいるらしいからね。彼ならきっと君のトレーナーを引き受けてくれるはずだが、念には念をだよ。」

「ん、わかったわ。それじゃ、行ってきます!!」

「あぁ、気を付けて。いってらっしゃい。・・・デジタル君にもお礼を言っておいてくれよ。」

 

 

「………。いやはや、なんとも寂しくなるね…。これが親離れってやつなのかな?」

「ん、机の上に置いていたもう一枚の手紙は…。もう捨てたんだったか?まぁ、いいか。」

 

 

 

~~~~~~~

 

 

「さて、お母さんのトレーナーを探さないと…。あのー、すいませーん。」

 

 

「はい…えぇ…ありがとうございます!」

 

 

「……ここがお母さんのトレーナーの家ね。」

 

 

「あー、もしもし。お母さん?」

「別に何かあったわけじゃないわよ。うん、大丈夫。」

「ところでお母さんさ___」

 

 

 

 

 

___________________________________________

 

 

 

 

スカーレットが家を出てから数日後の昼下がり。

休暇だからと家でのんびり過ごしていた私に突然スカーレットから電話がかかってきた。

 

 

「あー、もしもし。お母さん?」

「おや、スカーレット。どうしたんだい?もしや何か忘れ物でも?」

「別に何かあったわけじゃないわよ。うん、大丈夫。」

 

「ところでお母さんさ___」

「うん?」

「___お父さんへのラブレター書いてたでしょ。」

「………うん?」

 

「『私と君という、父と母のいる暖かい家庭を』だっけ?」

「ああああああああああああああああああああああ!?!?!?!?!?!?」

「ちょっ…!? お母さん声デカい!」

「待てマテマテなんでそれを君が知っているスカーレットぉ!?!?」

「えだって今持ってるし」

「はぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」

「お母さん、やっぱりお父さんの事好きなんでしょ。」

「えーーーあーーーそれはーーー・・・」

 

「じゃあトレーナーさん私が貰うね?」

「は?」

「私お父さん知らないしー。お母さんがいつまでも奥手なら私が先にゴールインするからー」

「ちょちょちょ待ちたまえ待って待ってくれ待ってくださいスカーレット。さすがにそれは色々とだねぇ!?」

「とりあえず、今からおと…トレーナーさんの家行って手紙渡してくるから。」

「ちょっ、それは色々不味いから一回私が行くまで待ちなさ「それじゃあ楽しみにしててね!」スカーレット君!?」

 

「……マズイマズイマズイ。ッととりあえず早くトレーナー君のところに行かなければ!」

 

 

 

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「ふぅ・・・」

お母さんとの電話を切り、一息つく。あとはお母さんを載せてくるカフェさんからの連絡を待って、ベストなタイミングで家に上がれば良い筈。

まったく、なんで娘が親の恋のキューピッドをしないといけないんだか。相変わらず手がかかる母親である。

 

 

~~~~~~~

 

 

しばらく学園周りを散歩し、予定通りお母さんを乗せたカフェさんからの連絡をもらう。

「よし・・・。行くわよ、ダイワスカーレット。ここでビシッと決めてお母さんとお父さんをくっつけるんだから!」

 

震える手を抑えながら、インターホンを押す。

 

 

 

「アンタが私のトレーナーね?」

 

 

 

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「やぁ、久しぶりだねぇモルモット兼トレーナー兼助手君。もうスカーレットには会ってるんだろう?」

 

 

 

 

「…あー、その、だね。トレーナー君。」

 

 

 

 

「10数年ほど言うのが遅れたんだが……私と…その…」

 

「………あぁもう!こういう時に気の利いた言葉が出ない自分が恨めしいよ!」

 

 

 

 

「君は!私の最高のモルモットで、私の生涯のトレーナーで、私の最愛のパートナーなんだ!今まではその…好きにさせていたが、もう私とスカーレット以外に渡す気はないからな!!」

 

 

 

もちろん、よろこんで。

 

 

 

 

かくして、計画通りにくっついた2人。それを見事繋ぎとめた紅い恋のキューピッドは___

 

 

 

 

 

 

(え!?ちょ、お母さん!?!? ちゅちゅちゅちゅーしちゃってる!?!? こ、こんな人目のある所でえぇーー!?!?)///

 

 

 

 

 

………母親の血をしっかり引いていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アグネスタキオン:ヘタゲフンゲフン恋愛奥手でめっさ子育て不器用。 いつの間に家庭内ヒエラルキーは逆転、でも親バカの極みでモーマンタイ。

トレーナー君:お父さん このあとめちゃくちゃイチャイチャした。

ダイワスカーレット:主役でマザコン 家の外では優等生、でも身内の前では甘えん坊。最近は父親に料理を教わっている。 母親をアレコレ言ってるけど子供の作り方はまだ習ってないしちゅーで真っ赤っかになる初心っ子。

マンハッタンカフェ:タキオンのスカーレットへの惚気を10数年間受けてきた被害者。 これでこっちへの惚気が減るならと思い計画に協力した。なお結果はお察しである。3X歳独身

エアシャカール:怖い顔のお姉さん。でもなんだかんだ面倒見の良いツンデレ。

アグネスデジタル:実は今回の最大の功労者。くっ付ける計画もトレーナー君の情報もタキオンをトレセン学園の教師枠にねじ込ませたのもこの子が主導。本人は元気にトレーナーしながらむっはーしてる。ウマ娘ちゃんに囲まれて過ごすことでなんか色々強くなったスーパーデジたん。でもダスカの上目遣いにはカテナカッタヨ…。

球磨猫:ふと一発ネタで書いた走れテイオーの方がUAとか多くて笑ってる。



この話で一旦タキモルダスカは〆です~。
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