アプリ版トレーナー基準ですがトレーナーは出てきません。
あと毎度のごとく短いです。
2021/06/18 一部設定を変更
沈まないからこそ
人類のほとんどが消え、徐々に荒廃していった世界。
その世界をただ一人、ゴールドシップは歩いていた。
「ったく、だからゴルゴル星行こうぜって言ってたのによー。最後になるまでだーれも信じてくれねぇんだもんなー。」
今の世界、人類の9割は死に絶え、残りの1割の人類は細々と、死に怯えながらも生き残っていた。
原因は何か、と聞かれたらばそれは誰しもが「あの隕石のせいだ」と言うだろう。
ある日突然観測されたそれは、ゆっくりと、だが確実に地球へと落ちてきていた。
今の人類に落下を阻止する方法などまったく存在せず、明確な死神となって向かってくるそれに人々は恐怖し、世界は混乱へと落ちいった。
どうせ終わるならと暴れだす人々によって治安は悪化し、根拠のないうわさを信じて逃げ惑う人々によって交通網は崩壊していった。
そんななかで唯一、日本の極僅かの人間___それも人類文明の再建という重大な役割を担った人物たちだけ___は、宇宙へと飛んだ。
ゴールドシップだけは知っていた。明確にではなく、漠然とでしかないが。
だが確かに人類の滅亡と、一時的にではあるが人類が住むことのできる星__彼女曰くのゴルゴル星のことを。
だからこそゴールドシップはトレセン時代に様々な組織の手を借りてロケット開発を行っていた。
その殆どは学園側によって中止させられていたものの、その技術は最後に残った希望として
「さーて、帰ってきましたトレセン学園。何か面白いもんはねぇかなー!」
今やかつての騒がしさすら見る影もなくなった、トレセン学園の正門をくぐり探索を始める。
かつてゴールドシップの様々な奇行によって無駄に蓄えられた資材も、いまや欠片も残さず失われていた。正門から教室に残る古い跡を見るに誰かが持って行ったのだろう。
暫くはここで過ごしていた者たちもいたのだろう。壁や床には落書きの跡が残っていたり、ゴミ箱には封の空いた缶詰などが残されていた。
___そして、紅い液体の流れたと思わしき染みも。
粗方の探索を終え、最後にかつてのトレーナー室に来たゴールドシップ。
昔自分とトレーナーでバカ騒ぎしていたこの部屋も、今や伽藍としてしまった。
トレーナーが良く寝ていたソファも、自分が中を勝手に漁って色々と食べていた冷蔵庫も、トレーニングと称して一緒に見たテレビも、予備だからと置いて行った錨すらもない。
「まぁ、やっぱり何にもねぇか・・・あん?」
ふと、部屋の隅に、乱雑に捨て置かれた破棄資材の山の中。ひっそりと落ちていた紙の束に気が付く。持ち運んだ時にでも落としたのだろうか。
すこし潰れるように折曲がった癖の付いたそれを拾い上げる。
題名は、『ゴールドシップのやってはいけないことリスト』
「そういや、こんなのもあったなぁ。今じゃ誰も止めやしねぇけどさ」
拾い上げたそれを見て、懐かし気に、しかし自嘲するかのように寂し気に。
その呟きを拾う者も、もういない。
時間は、崩壊した世界でも残酷に、或いは残された者たちに対する慈悲であるかのように、変わらず過ぎていく。
トレセン学園の広く、今では荒れ放題となった芝に覆われたグラウンド。
その一画を、周りに火が燃え移らないように土を露出させ焚火の準備を始める。
文明の灯りを失ったこの世界において頼りになる光源は基本、火だ。稀に見つかる中身の残った電池は万が一を想定してあまり使っていない。
そのため着火剤ともなる紙もまた、今となっては貴重な資源である。
トレーナー室で見つかった『ゴールドシップのやってはいけないことリスト。無駄に何枚もの紙を使い書き上げられたそれを、一つ一つ懐かしみながらに読んでいく。最後の項目は___
「『これ以上の追記を禁止し、上記全ての禁止項目を完全撤廃します』・・・か。」
小さくパチパチと燃え上がる焚火に、彼女はそのリストを放り投げた。
後には燃え盛る炎と焼けて空に舞う灰ばかりが残るだけである。
リストの中身は各自のご想像にお任せいたします