いろんなウマ娘短編   作:球磨猫

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終末世界は北斗のヒャッハー的世界ではなく、絶体絶命都市の被害が酷くなった感じをイメージしてください。
或いは少女終末旅行とかそんな感じ。

追記:なんか文章重複してた…。修正しました。報告感謝


終末デジタル

 

 

終末世界。

 

そんなことを言ったのは誰だったか。

偶々読んだマンガに書いてあったか、或いはウマッターの呟きか。

兎にも角にも、今の世界を表すにはぴったりの言葉だろうな、と荒れ果てた道路を一人歩く彼女__アグネスデジタルはそう、思った。

 

世界から文明の灯が消え去ってからはや数か月。

 

世界人口が大きく減った原因は様々だ。戦争、災害、人災、それらによる民衆の不安から生まれた暴動に治安の悪化……。不幸中の幸いと言うべきか。核が使われることがなかったのは、人間の最後の意思だろうか。

日本もまた、他と比べると被害が少ないとはいえ例外ではなかった。

隕石の衝突を始めとする数々の災害、気流変動や地震などを原因とする交通網の崩壊と、それに伴う物資不足。空中高く舞い上がった塵は世界を覆い、天候を悪化させていった。

わずかに生き残った者たちは細々とグループ、或いは個人でシェルターに籠り、僅かな物資を求め周辺地域をさまよい歩くのが大半だった。

 

 

アグネスデジタルが巻き込まれたのは、レースのためにトレセンを離れ北海道へと向かっていた時のことだった。

レースが終わり1日くらいのんびりしようか、なんて考えていた時に隕石の存在が発覚。

予約していたはずの飛行機の席は、更に代金を積んだ誰かに盗られていた。

学園にいるであろうほかのチームメンバーが心配だからと自身のトレーナーを先に帰らせ、すし詰めの電車に乗り青函トンネルを渡ったはいいものの、道路は渋滞に次ぐ渋滞、公共交通機関はまともに動かず、徒歩で帰るしかなかった。

やっとの思いで東北の中央辺りまで来たはいいもののついには隕石が落着。

慌てて避難したさきでしばらくを過ごし、粗方の災害が治まるまで待つこと数カ月。

 

 

ようやく戻ってきたトレセン学園は、当の昔に放棄されていた。

まぁ、仕方がないだろう。

南海トラフ地震の発生と富士山の噴火。学園の校舎の天井も、噴石によって穴だらけであった。

 

「あはは…、まぁそうだよねぇ…」

無人となった寮の自室で独り言つ。

同室のアグネスタキオンは荷物を纏めてどこかへ向かったようで、ご丁寧に書置きが遺してあった。

 

「はぁ~~…。」

これから、どうしようか。

タキオンの書き置きと学園の掲示板に書かれた連絡から、都心から少し離れた場所に生存者のシェルターがあるらしい。

しかし、今更自分が向かって良いものか。労働力という点においては優れるウマ娘だが、燃費が悪いため食事は最低ラインとしても量を必要とする。

 

デジタルはそこまで多いほうでないとはいえ、それでも食料が不足している今の世界では十分な重荷になってしまうことはよくわかっていた。

 

悩む。悩んで、悩んだ末にたどり着いた結論は

 

(明日のアタシに任せよう)

 

放棄することだった。このトレセン学園までずっと歩いてきたのだ。

そら疲れる。今日はぐっすり休んで、リフレッシュした頭でまた考えればいい。

それでも思いつかないならまたあさって考えればいい。

 

そして彼女は数か月ぶりの自室で、ぐっすりと眠りについた。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

翌朝、眠気覚ましに散策でもしようかと向かったところで、思わぬものを見つけてしまった。

アグネスデジタル愛用の一眼レフカメラと、その予備バッテリー。

トレーナーが残してくれたのだろうか、それとも偶然だろうか。

自分たちのチーム部屋の端っこにぽつんと置かれたそれを手に取る。

 

「…電源よし。レンズ……よし。他も…機能は問題ない…。あ、データも残ってる。まだ容量も結構あるね…」

 

 

天啓が下りた気がした。

これが残されたのはきっと運命なのだ。

 

「うん、決めた。たぶんこれがアタシのやることだよ。」

「そうと決まれば物資を集めないとね!うひひ、ここからデジたん伝説が始まりますぞぉー!」

 

叫ぶが早いが部屋を飛び出し廊下を駆け出し、自室から持っていく荷物をかき集める。

夏と冬の祭典用の大き目のリュックサックに、わずかに残った食料水その他を詰め込み、チームの集合写真の入ったお守りとカメラを首に下げ___

 

「あっと、どうせならこれも持って行っちゃおう!むふふふふー!」

スケッチブックと鉛筆も詰め込んで、背負い立ち上がる。

 

 

 

「さ、先ずは近くのシェルターかな! デジトレイン、出発しんこー!」

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

東京都内から少し東に逸れた千葉県との県境のあたり。トレセン学園から数時間___しかし災害の影響で半日はかかる場所。隕石落下前に建設されたアグネスタキオンの研究所が書き置きによって残されたシェルターの場所だった。

 

半壊した建物の周囲は多くの人員が復旧作業に勤しんでいるのが遠くからでも目に見える。その多くはトレセン学園のジャージを着たウマ娘たちでもあるとも。

 

「ふぅ…。私にはこの様な重労働は合わないと思うんだがねぇ。」

「あァ?ウマ娘な時点で他より向いてんだろーが。つーか肉体改造だかやってんだろ、それの成果見せろやオイ。」

「いやはや手厳しいねシャカール君。だがもう何人か人手をだね……おや?あれは……!」

「あん?何を見つけた…。…ケッ、生きてやがったか。」

「まったく、ここは素直に喜ぼうじゃないかシャカール君。明るいニュースなんだからさ。」

 

 

「ふへぇ…あ、足が辛い…。だいぶ遠回りしちゃったし…」

「おーい!デジタル君!無事だったか!」

「……あ。え、あ、あぁぁ…!」

「ったく、ここまではしゃぐテメェってのもなかなか珍しいデータだなオイ。…まぁ気持ちはわかるが

「ああぁぁぁ! タ"キ"オ"ン"さ"-"ん"!! エ"ア"シ"ャ"カ"ー"ル"さ"ー"ん"!!」

「うわぁぁ!? っとと。」

 

ウマ娘ちゃんオタク鉄則として【触れない、ねだらない、邪魔しない】を掲げるデジタルもさすがにこの時ばかりは号泣し、二人の胸に抱きついた。

気丈にふるまえどまだ中学生に当たる年ごろ。更にはここに来るまでの長い一人旅。ようやく友人に会えたという嬉しさ、今まで独りだった寂しさ、この世界にいるのは自分だけではないという安心感。いろんな感情がごちゃ混ぜになり胸に溢れた末の行動だった。

 

 

「ったく…。オイそろそろ放せ、テメェのせいで服が汚れるじゃねぇか」

「そう言いながら引きはがさない辺り、まんざらではないんだろう?シャカール君。」

「………チッ!」

「し"ゃ"か"ー"る"さ"ー"ん"!!そういうぶっきらぼうにしながらも見せる優しさが好きですぅぅ!!」

「平常運転じゃねぇかさっさと離れろっ!!」

「あうっ」

「照れ隠しにしては少し分かりや痛っ⁉︎ 叩く事はないだろうシャカール君?」

 

 

「まぁともかくだ。デジタル君」

「………チッ」

「???」

 

 

 

 

「おかえり、デジタル君」

「……おかえり、だ。」

 

「~~~っ!! はい、ただいま!!」

 

 

 

 

 

 

その後、デジタルはタキオンに連れられシェルターへと合流した。

シェルターでは生徒会の3人、シンボリルドルフ・エアグルーヴ・ナリタブライアンが中心となり人バ問わずに協力し生活をしていた。

ある程度の生活基盤と蓄えもあり、現状もっとも復興しているシェルターともいえただろう。

当然、アグネスデジタルもシェルターに残り協力してほしいと言われたが…

 

 

「すいません。その申し出はとても嬉しいんですけど、デジた……私にはやることがありますから。シンボリルドルフ会長。」

「……その『やること』というのを教えてもらってもいいかい?デジタル君。」

「えぇ、これです。」

「それは……デジタルカメラ…? 確か、君の私物だったか?」

「えぇ!私の相棒でっす!」

 

 

私は今の世界を周るつもりです。ここだけじゃない、いろんな場所を周って色んな景色を写真に残すんです。いつか、また元通りの世界に戻った時に「昔はこんな時代があったんだよ」って、「これだけの人たちが、生きるために、未来のために、精一杯生きていたんだよ」って伝えるために。

そして、遠く離れた場所で頑張ってる人たちに、「貴方は一人じゃない」って伝えるために。

これが私にできること、やりたいことだって、このカメラを見つけた時にそう思ったんです。

 

手元の相棒をなでながら、ルドルフに語るデジタル。その瞳には決意の炎が映っていて

 

「………ここまで旅をして来た君なら、今の世界を周ることがどれだけ厳しいかはわかっていると思うのだが…」

「えぇ、わかっていますよ。十分すぎるくらいには。でも…」

 

 

「デジたんは戦場を選ばない『勇者』ですから!!」

 

 

「………、ふ、ふふ、ははははは!!」

「うぇえ!?!?デ、デジたんなんかやっちゃいました…?」

「あぁいや、すまないね。……そうか、君も…君も同じことを言うんだね。アグネスデジタル君。」

「同じこと…?」

「あぁ…。君のトレーナー君も同じことをいって旅立ったんだよ。『俺はウマ娘のトレーナーで、アグネスデジタルのトレーナー(勇者パーティーの一員)だ。困ってる奴がいるのに助けないなんてデジタルに笑われちまう』。そう言ってね。」

「トレーナーさんが……」

「アグネスデジタル君。君の覚悟は伝わった。だから私は、『皇帝』らしくこれを渡そう。」

 

そう言ってルドルフはデジタルに数日分の携行食料と水、いくつかのサバイバルグッズを手渡す。

 

「勇者の出立に、王からの餞別は付き物だろう?」

「……あ、ありがとうございます!!」

 

 

その日、デジタルはシェルターに一泊。次の日の明朝にはルドルフ、タキオン、シャカールに見送られ出立した。

 

 

「デジタル君。どうか君の旅路に幸運を。再び無事に会えることを祈ってるよ。」

「はい、会長さんも、お元気で。色々ありがとうございます。」

 

「デジタル君、これは私からの餞別だ。ぜひ効果をレポートにまとめて教えてくれ。」

「タキオンさん…これは?」

「ウマ娘の生命力を一時的に増強させる薬だよ。いわゆる回復薬とでもいえばいいかな?」

「あ、ありがとうございます…。使うことがないように祈っておきますね…」

「……あぁ、そうするといいさ。」

 

「………おい、ほらよ。」

「わひゃっ!? えーと、これは?」

「今まで集めれた災害のデータから予測した現在の地図だ。まぁ簡易すぎて碌なもんじゃねェが、ちったぁマシだろ。」

「ありがとうございますシャカールさん!!」

「ええい抱き着くな!!鬱陶しい!!」

 

 

「それじゃあ、私からもこれを。」

「これは…。」「ほう、よく描けてるじゃないか。」「……まぁ、悪かねェな。」

「ありがとうデジタル君。大切にするよ。」

「いえいえ、デジたんにはこれくらいしかできませんから…。」

 

 

 

「それじゃあ___

 

 

 

 

勇者アグネスデジタル、行ってきます!!

 

 

 

 

 

 

 

 




少しずつストックを消化していきたい(願望)
次の終末世界はキングかなぁ…。デジオペドトウでも書いてみたいけど誰も持ってないんですわ(´・ω・`)


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